変わり果てたパパとの対面
義両親との電話を切ると、弟から電話がかかって来た。妹から連絡が行き、父と一緒に子供たちを病院に連れてくるという。
「でもさ、今親父とも話しているんだけど、ウイルスのこともあるし、子供たち連れて行かないほうがいい?」
「ウイルスなんてどうでもいい!早く来て!」
どこからともなく湧き出て来た怒りのような勢いに押され、弟は
「わかった。」
と言った。
なんなの、こんな時に。ウイルスのことなんてどうでもいい!彼が死んだんだよ、ウイルスのことなんてどうでもいい!!彼のためにみんなくるの!!
彼のためと思いながら、実際は自分のためだ。早く誰かに来て欲しい。もう、これ以上一人でいることが耐えられなかった。
5、10分後だろうか。弟からまた電話がかかってきて、病院についたという。
ほっとしたのも束の間、急に子供たちにどう説明すればいいんだろうとパニックになった。
子供たちが上がって来た。病院のロビーで出迎え、抱きしめた。
すると、また身体の中の別の声のようなささやきが聞こえた、というか感じた。というか、何を言えばいいか知っていた。
気づいたら膝をつき、彼らを見上げながらそのまま口に出して話していた。
「いい、よく聞いてね。これからいくお部屋にいるパパはもう身体だけになっちゃったの。だから、いつものパパとは違うよ。怖いかもしれないけど、大丈夫だからね。パパはもうそこら中にいるようになったから。怖くないからね。」
自分は何を言っているんだろうと不思議に思いながら、抱きしめた。強く強く抱きしめた。
個室に入ると、子供たちはパパの亡骸をみて、喚いた。二人とも小さな身体を震わせながら、喚いて、泣いた。
「パパー!!!!!!!!!」
そして、映画館で怖い映画を観た時のように、部屋から逃げた。私も一緒に逃げて、その部屋には戻らなかった。
ごめんね、こんな思いをさせてしまって。まだこんなにも小さいのにごめんね。
ロビーのソファに横たわる二人を膝に乗せながら、心の中で何度も謝った。