メッセージ4
電話を切ってからも、M子から伝わった言葉たちが私の周りをぐるぐると回遊していた。
地に足がつかず、頭がふわふわとどこかへ行ってしまいそうだった。
と同時に、腹の底から不思議な困惑と怒りがねじれたエネルギーが沸々と湧いていた。
どういうこと?
死んでるんだよね?
どうやって?
信頼してるって何よ。
こっちは大変なのよ。
いい加減にしてよ。
早く帰ってきて。
私のこれまでの世界をひっくり返してしまうような出来事に対して、頭が吹き飛んでいきそうな畏怖の念を持ちながらも、疑念と不満と怒りの言葉で身体を防御しようとした。
次第に何を感じていいか分からなくなり、私は暗闇の中で小さくカチコチになって固まった。
すると、またスマホのあかりがピコン、という音とともに点灯した。
M子からだった。
「奈美、こちらから何も言ってないのに、F先生から、言葉が足りなかったので念のため、とお電話がありました。なんとお父様のことです。」
お父さんともっと対話がしたかった、というのは、大きな優先事項ではないという前提で…
お父様から褒められたり、期待に応えるのが嬉しい一方で、ときに反発も覚えたり違和感があったことはあるけど、お父さんが自分のことを自慢していることを人伝に聞くのは嬉しかった。自分の仕事のことなど喜んでくれてよかった。お父さんとは男同士の微妙な関係もあり、弱音を吐くことはほとんどなく、相談もしなかったけど、いつかそんな日がくればと思ってた。
奈美からは、このことは伝えなくてよくて、生前に、お父様がMさんのご活躍を喜んでくれているのを誇りに思ってたと伝えるので十分では、とのことでした。」