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歌い手たちの宴会~やっぱり、こいつら何処でも歌う~

音楽を演奏する人間は、ステージも好きだが打ち上げも好き。
そう思っているのは、私だけだろうか?
「むしろ、打ち上げこそが本番だぜ!」と言わんばかりに人が集まる。

正直、大人数の呑み会は苦手。気を遣うし、やかましい。4~5人いれば充分だし、なんならサシの方がいい。
そんな私だけれど、今回の演奏会は運営に携わっていたので、顔をだすか……と腹を括って参加を決めた。

参加人数は84人。

演奏会に参加した人数を考えると半分以下だと思うけど。とにかく人がいっぱい。少し狭い店内に押し込まれ、若干身動きできないくらいで笑ってしまう。どこにこんなに合唱に携わる人が隠れていたというのか。不思議でたまらない。

参加費を徴収している間に、飲み物を持ってテーブルにつく。人数の関係で立食式になったこの呑み会は、始まる前からカオスを極めていた。
横にいるお兄さんは、乾杯もしていないのに酒を呑み始めている。ポテトもつまんでいる。そして、唐揚げをその辺の人たちに配っている。何してるんだ。
せっかちなタイプですか?と訊くと
「俺はね、披露宴のビュッフェとか並びたくないんだよ。」
と意味のわからん返事がくる。
いや、まぁ並ぶのは嫌だけどさ。フライングするのとは違くない?
そんなお兄さんを横目に乾杯をした。なんだっていいや。楽しくて素敵なステージを無事に終えることができたのだから!

乾杯が終わると、ガヤガヤがさらに大きくなる。
その辺にいた運営の人やら某団の指揮者様やらとお話する。集団で話すのは苦だけど、サシで話すのはむしろ好き。サシに持ち込めばこっちのもの。今日の演奏の感想を述べたり、指揮はどうだった、MCがどうだったなどとお話していく。たくさんの人に褒めて頂けるのは本当にありがたい。私も、あの曲がよかったと丁寧に感想を述べる。本当にみんな上手い!私も、もっと上手くなりたい!純粋にそう思う。もっと、努力しないとだ。

本日の主役という名の主催も無事に到着し、交流を深めるために各団体の団員がちょこっとずつ有線マイクを使ってお話していく。
主催はラストにとっておこうと思って、幹事からマイクを貰った。そして、息を吸う。

「盛り上がってるかーいっっ!!!」

「いぇーい!」だの「ひゅー。」だの聞こえてくるから、とりあえず声は通っているらしい。
「来年の夏にコンサートやりますっっっ!」
やっべぇ、シャウトすんの久々すぎる。加減わからん。喉ぶっ壊しそう。
「夏に演奏会するからみんな来てねっっっ!!!」
全力で宣伝。「場所はー?」などと煽ってくれるそこのお兄さん。ありがたやー。こういう時だけは頼りになる。
完全に明日は喉が枯れてそうな気もするが、仕方ない。やっぱり、お客さんあっての演奏会だし。やれることをやっておく。
もちろん、個別でもお声かけ。聴いて欲しい人はたくさんいる。音楽は生が1番だよ。会場をお客さんで埋めつくしたい!

マイクを幹事に返して、そのままドリンクを取りに行く。道行く人と乾杯しまくるけど、その8割は知らない人である。名前も所属団もわからないけど、「音楽」が私たちを繋いでいる。某団の指揮者曰く、「一緒に歌ったら仲間」らしい。
これだけ素敵な仲間なら、何人だって大歓迎だ。

そして、夜も深まり酔いも回る頃。
幹事の一言で最高潮の盛り上がりを見せる。
「歌いましょう!!!」
うぉぉーーー!!と会場のボルテージは最高潮。
というか、アレだ。歌うためにわざわざ貸切できる店を探してるのだから。そんなもんは大前提である。
指揮を振りたい人を募って、ふんふんと最初の音取りをして。いや、その音あってるのか?謎。
まぁ、いいじゃん。余興みたいなもんなんだからさ。楽しければすべてよし。
私たちは、歌わないと生きていけない。
そういう生き物なのだ。

歌ったのは4曲ほど。
曲が終わる度に歓声と拍手で盛り上がりまくる。
特に、最後の曲だった「酒頌」。なんで、最後にこの曲なのか。
タイトルにもあるように、この曲は酒と恋のうただ。

うまし酒は 口より入りて
うまし恋は 目より至ると
これぞこれ この世のまこと
われら老いて やがて死すとも その前に
いざ わが口に さかづきを
いざ わが目にに君を その息を

酒頌

この後に、乾杯という歌詞が3回続く。フレーズごとに周りの人たちと乾杯する。
酒ラッシュ、再び。
歌い人の勢いは留まることを知らないのだった。

最後に主催のご挨拶があったけれども。そんなの誰も聞いちゃいない。私もさっぱり覚えていない。
覚えているのは、楽しい時間が過ぎてしまう寂しさとほんの少しの疲労だった。
この楽しさがもう少し続けばいいのにな、と思ったのは内緒。

大人数の呑み会は苦手。やかましいし、ちょっぴり疲れる。だけど、私もこの楽しい打ち上げのために歌っているところが少しだけあるのかもしれない。

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