無言歌集より/F.メンデルスゾーン
無言歌集は、ドイツの作曲家フェリックス・メンデルスゾーン(1809-1847)によって作曲された一連のピアノ独奏のための作品集である。
ドイツ語の原題では“Lieder ohne Worte”(言葉のない歌)である。「無言歌集」と題して出版された曲集は、作品19、作品30、作品38、作品53、作品62、作品67、作品85、作品102 の全8巻があり、それぞれ6曲ずつ、計48曲の「無言歌」を収めている。
全部で48曲残された「無言歌」は、当時のドイツ・ロマン派音楽の中で作曲されたピアノの性格的小品集の中でも、最もよく知られた傑作の1つとなっている。
このメンデルスゾーンの『無言歌集』やシューマンの初期のピアノ作品群の影響を受けて、多くの作曲家たちがこの分野で種々の名作を書いてきた。
全48曲にはそれぞれ表題があるが、メンデルスゾーンが自分でつけた表題は5曲しかない。それ以外の曲名は大半は楽譜出版社などが曲想からつけたものがほとんどであるが、楽譜の冒頭にある発想標語からついた標題もある。
本日は以下の5曲を演奏する。
〜19−1《甘い思い出》〜
まさに甘く柔らかい旋律が過去の思い出を紡いでいる音楽にぴったりである。
〜67−4《紡ぎ歌》 〜
楽譜の冒頭に「紡ぎ歌のように」(ドイツ語:Spinnerlied genannt.)という発想標語があり出版社によってこの標題がつけられた。紡ぎ歌とは仕事歌の一つで、糸を紡ぐ作業をしながら歌われた民謡という意味である。《蜜蜂の結婚》という別の表題で呼ばれることもある。
〜30−4《さすらい人》〜
《道に迷って》とも呼ばれる。
さすらい人とはあてもなく彷徨う人の事を言う。どこか焦っているような心境が伺える。
〜38−6『デュエット』〜
これはメンデルスゾーンが自分でつけたオリジナルの表題で、上声部と下声部による“二重奏”から名づけたものである。
まさにB♭クラリネットとバスクラリネットがソプラノとテノールの二重唱のように演奏される。
〜53−2 《浮き雲》〜
浮雲とはその名の通り空に浮かんで漂う雲の事を意味する。転じて、不安定でどこへ漂うか分からない身上の形容としても用いられる。この浮き雲は情景的なものなのか、はたまた心境的な浮き雲なのか想像してお楽しみ下さい。