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働くことの意味―自分であることを証明する

自分を証明できない自分

大学に入る前、1年間浪人する期間がありました。今の時代、浪人という言葉は死語になっているけれど、志望校に入れなくて次の年にもう一度受験するなんてことはよくやられていました。

予備校にも行かず、働きもせず家でブラブラしていましたが、それは何にも所属していないという状態でした。運転免許証もまだ持っていなかったので、自分を証明するものが何もなかったのです。
自分が自分であるということを自分では証明できず、他人に証明してもらわなければならないというのは、何か矛盾してますよね。

誰かとのかかわりを求め、誰かの役に立つ自分

証明というものとはちょっと違いますが、自分であることを確認するのに、他人とのかかわりを使うこともあります。他人とかかわっている自分が、自分であるということを確認できる。
不思議な感覚です。

そのために、誰かの役に立つ、という行為をすることが多いです。
誰かの役に立っている自分を感じて、自分の存在を意識します。また、無意識のうちにも誰かの役に立ちたい、と思うようになります。

自分を見失ったとき、それはたぶん他人との関係性も途絶えがちになっている時ではないでしょうか。自分を見失うことが起きるのは、病気や障害を抱えたときにも起こります。先が見えなくて自分が何をしていいかわからなくなった時です。
友人や家族、他の親しい人のことが考えられなくなるーもう、そう思った時にはすでに身動きが取れなくなっています。



「everlasting flowers」のシナリオ

ゲームメーカーであるspriteからこの夏に発売された「everlasting flowers」というゲームがあります。(PS4、Nintendo SwitchまたはSTEAM)


学校で孤立してしまった高校生が不登校になり、そこから抜け出したいという気持ちがあふれて、家から遠いレストランで働くことになりました。
初めはホールでの接客など無理で、キッチンで細かい仕事をしますが、そのうちに慣れてホールに出ることになりました。

仕事ではユニフォームを着なけらばならないのに、嫌な思い出とつながりのあるそれがどうしても着られず、オーナーに反抗もします。
いろんな場面を経験する中で、自分が何のために生きているかわからない、といった思いを共有できる同学年の子の存在もあり、徐々に人とかかわることが今の自分には大事なことで、それを支えて見守ってくれる人がいることの大切さがつづられています。

これはもう、作業療法そのものです。
生活の中で、自分ができる活動を何かをすることで、課題に向き合って前向きに進むことができる。
作業療法をよく表している内容だと思いました。

このゲームは、『 FILMIC NOVEL® 』というコンセプトで作られており、絶えず変わる絵と美しい音楽、それに声優さんの演技だけで成り立っていました。約10時間、ほぼコントローラーを触りませんので、誰でもプレイしやすいと思います。


COPYRIGHT©sprite ALL RIGHTS RESERVED.


休むことは大切、そして少しずつ動き出す

人には人それぞれの思いがあり、悩みを解消するための方法も千差万別です。
友人、学校、職場、家族、進学、就職、病気、障害など生きていればいくつもの解決しなければならないことが、誰にでも生じます。

今は何でも、自分で決めなさい、目標を持ちなさい、夢を持ちなさい、と言われるけれど、決められる時ばかりではありませんよね。
そんな時は、誰かを頼りたくなります。
それでいいんですよ。

何かをするためには理由が必要です。
その理由の一つに、誰かが言ってくれた、教えてくれたことを素直にやってみる、という他人に頼るものがあってもいいと思うのです。

自分では理由を作れなくても、相談できる誰かがいるという環境は、一人でいる時よりも立ち向かおうという気持ちが強くなるかもしれません。

誰かとの関係ができてくれば、もう一人じゃありません。自分をわかってくれる人がいることで、自分は自分なんだと感じる瞬間です。

もう、証明書も必要ないでしょう。
私は、私なのだから。


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作品ご紹介

普通高校に電動車いすに乗った4人が入学しました。普通の高校生活を過ごしたい―!
2021年度の第28回電撃小説大賞で一次審査を通過したものです(一次通過作品数 489 / 全作品数 4411)。
よろしかったら、どうぞ。

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