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人と調和する―星座になれたら

孤独は山になく、街にある。一人の人間にあるのでなく、大勢の人間の「間」にあるのである。

三木清:人生論ノート「孤独について」(新潮文庫)

独りを感じるとき

風邪や腹痛で休んだりしたとき、休みが長引くと学校や職場に行きづらくなること、ありませんか?
3日間くらい空くと、なんか友達や同僚の話題についていけてないような気がするのです。そして、ちょっと寂しい気持ちになったりします。あげくの果てに、みんなは自分のことを無視しているんじゃないかと悪意に思ったりすることもあるかもしれません。

外国に行くと、あるいは国内でも自分が知っているものと違う文化の場所へ行くと、何となく違和感を覚え、どうしようと不安になることもあります。
特に日本人は強いようですが、ある程度自分と周りのペースが同じでないと、不安を感じるようです。

「ぼっち・ざ・ろっく」の後藤ひとりちゃん

ぼっちちゃん(後藤ひとり)も、他人とうまく話ができないコミュ障という状態でした。最初は会話も演奏も、他人とうまくかみ合わず孤独を感じています。
彼女が所属する「結束バンド」のメンバーのリョウさんも一人で買い物へ行ったりしますが、リョウさんは孤独を感じているのではなく、独り居(独りで居ること)が好きな人でした。
ですが、ぼっちちゃんもギターが上手いという特徴から、それがツールになって、少しずつですがバンドメンバーと打ち解けていきます。
演奏も、自分への悔しさと他者への思いから、少しずつ調和していきます。音やリズムが合わさった瞬間、心がホッとして満たされるという気持ちのよさを感じます。

逆に病気などで、周りのペースにうまく合わせられない時って、孤独や寂しさを感じます。合わせたくても、自分の努力だけでは難しく、周囲の協力がないと合わせられないこともあります。楽器は、一人でも他者とでも演奏できますが、バンドなど複数のメンバーで息を合わせられるようになったとき、満たされた感覚を覚えます。

「結束バンド」のライブ ーWe willーを観て

© 2018 Zepp Hall Network Inc.

札幌は当日の夜、雪が降るくらいの寒さになりましたが、会場内は熱気に包まれていました。皆が同じ思いを持ってステージに集中して、歌に、演奏に、応援に、調和していました。
他者と同じ空間で、同じ場面で一つの思いを共有できたのは、そういえば自分も久しぶりのことでした。
こんな感覚を味わいたいから、わざわざ遠い会場まで移動して、宿泊までして、あー、人とつながっているんだ、という気持ちを確認するのです。

©はまじあき/芳文社・アニプレックス

作業療法という関わり

作業療法は、病気や障害などがあって、今までやれていたこと、あるいはこれからやろうと思っていたことができなくなって人と合わせられなくなった状態を、合わせられる状態に変化させるものです。その時に、楽器だったり、ゲームだったり、料理だったり、何か活動を一緒に行います。
ああ、また一緒にやれるんだ、という思いを取り戻してもらいます。

結束バンドの曲では、「星座になれたら」という曲が一番好きです。
「星になれたら」ではなく、「星座」なのです。
公式ポスターの英文では、「IF I COULD BE A CONSTELLATION」となっていますが、「WE」ではなく「I」なのです。
まだ、「みんな」という意識になっていません。この曲を書いた頃のぼっちちゃんの思いがうかがえます。
アニメではこの間奏シーン、ぼっちちゃんを中心に、背景が天体のようにゆっくりと回っています。

作業療法をやっているときに、対象者の途中経過で、「I」が「WE」に変わる瞬間があります。
ああ、これでこの人は社会の中でうまくやっていけそうだ、と安心する場面です。
自分は独りではないんだ、とわかってくれたから。

人とピッタリ同じでなくていいけれど、一緒に何かをやれているという気持ちになることが、自分を強くしていくのだと思います。
私も、この作品を観てからベースを始めました。何とかまだ続いています。自分にも、もっとやりたいことがたくさんあるんですよね。


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#ぼっち・ざ・ろっく
#結束バンド
#結束バンド ZEPP TOUR 2024 “We will”

作品ご紹介

片手がうまく使えない子がバンドをはじめたら、、?
2023年度の第30回電撃小説大賞で一次審査を通過したものです(一次通過作品数 190 / 全作品数 4467)。
「インクルージョン・ガールズ」の続きになっています。
よろしかったら、どうぞ。

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