【舞台鳩】三人どころじゃない吉三(少年社中)
少年社中 25周年記念第一弾 第40回公演【三人どころじゃない吉三】
原案◎「三人吉三巴白浪」二代目河竹新七 脚色・演出◎毛利亘宏
2023年 6月8日(木)- 18日(日)
紀伊國屋ホール
紀伊國屋書店提携公演
あらすじ
キャスト
お嬢吉三:梅津瑞樹
和尚吉三:井俣太良
お坊吉三:竹内尚文
金貸し 太郎右衛門:大竹えり
海老名軍蔵:南圭介
花魁 一重:杉山未央
八百屋久兵衛:山川ありそ
釜屋武兵衛:川隅美慎
花魁 吉野:加藤良子
黒子:川本裕之
木屋文里:廣瀬智紀
庚申丸:木津つばさ
夜鷹 おとせ:あづみれいか
木屋の手代 十三郎:長谷川太郎
安森源次兵衛:廿浦裕介
土佐衛門伝吉:村田充
感想
歌舞伎の演目「三人吉三巴白浪」の<悲劇を回避>する翻案作品。
元の作品を見ていないのが悔しいけれども、内容はなんとなく入れてから見に行きました(いつか見たい)。
(注:以下ネタバレあります)
黒子さんはなんとなく怪しいな〜と思っていたけれども、庚申丸(刀)がゲームチェンジャーなのが、なるほどな〜となった。
ありえない存在(人間ではない)がいることで、タイムリープに疑問を抱かせないというか、そこに唐突感がなくてすんなり入ってくるのが個人的には良い。
話がどんどんややこしくなる……!
進行上仕方ないし、その入り組み方が面白いのですが、根から人物と名前設定を覚えるのが苦手の鳩、右上(概念)に相関図がほしい……! となっていた(これはだいたい何を見ても言っています)。
でもぎりぎりついていけたので良し!
何度も巻き戻す、早回しの演出のところのコメディ感と、何度やってもうまくいかないところの、スローモーションで、周りだけが殺し合いをしている絶望感の緩急に震えた。
?「罪の数ほど衣服を着込んで〜」のような台詞が劇中であり(「衣服を重ねるように罪を重ねて」?うろ覚えなのですが……)その台詞が衣装のコンセプトにつながっており、大団円で全員が軽装になる演出が、良いな〜と思いました。
最初にビジュアルを見た時、すっごい盛り盛りでビジュアル的には好きだけど、お話の内容的につながってくる衣装なのか……?(なんか不思議なコンセプトしてるな……?)と思っていたので、衣装も物語に密接している演出になっており、思わず膝を打ちました。
(これは全然関係ない話なのですが、この公演を見た同時期に椎名林檎のライブに行っており、そこでも林檎さんが頭上に招き猫のついた熊手を戴いていて、みんな頭の上にでかいものを戴きたい季節なのだな……と勝手に思いました)
大団円にいたる道筋が見てみたかった気もするのですが、それをやるとコメディ的にはテンポが悪くなりそうだし、スパッと大団円をしてくれた方がすっきり終わるのかもしれない。
客席ではお静かに、のようなアナウンスが初めからあって、なんか不思議なアナウンスの仕方するな? と思っていたのですが、演出上大向こうのようなものがかかるからだった。なるほど。
完全に計算された大向こうだと思うので、収拾つかなくなったら困るものね。
お嬢吉三(梅津さん)への掛け声、\ウメツ屋!/は分かるとして\おいも!/\大好き!/が唐突で笑っちゃった。
知らなかったけどお芋大好きなんですね……。
\ペットは!/\フェレット!/で満足そうな顔してたのも面白かった。
というか総じて楽しそうに演じているな〜と思いました。
なんかにこにこしているところが多かった(気がする)。
庚申丸(木津さん)の身のこなし方がものすごく軽やかで、刀という説得力があった。
ビジュアル的にも盛った衣装の枠からは外れていたのでよく視線を奪って行ったのかもしれない。
クールなようでいて熱量のある素敵なお役だった。
観劇した日は一日あらゆるところをうろついていて、最後の目的地が紀伊國屋ホールでした。
上演中、劇場を余すところなく使った演出が楽しさを倍増させていて、舞台上だけが演劇ではない、というところが感じられるのも良かった。
全体的に楽しく、パワフルで元気が出る公演で、晴れやかに家路につきましたとさ。
めでたしめでたし。