ダンジョンで起こりうる情事について


ダンジョンで起こる心理的な諸々

最近、私は人の世を生きる辛さを緩和すべく、異世界転生小説をネットで読み漁っています。
ダンジョンを潜る人々は、日々命の危険に晒されており、時には何日もダンジョンに潜っていることもあります。
私なんかは、この過酷な環境下でえっちをしたくなったりすることは、ままありそうに思われます。
死にかけたパーティー同士がいたしている最中に、魔物に襲われ絶命なんてことは、日々起きていたりしてもおかしくはないと思うのですがどうでしょうか?

私的な体験となりますが、夜の山などにふらふらと行ってみると、異常に闇が濃く、様々な音が鳴っていて普通の現代文明人におかれましては、普通にめちゃ怖いです。
ダンジョンというのは、さらに得体のしれない魔物やらモンスターに囲まれる事があるわけで、訓練を積んでない人間が到底夜に寝れるようなものではありません。
そのため、駆け出しの冒険者などはまず一人で潜れば、この精神的心細さのようなものに圧倒され、夜は焚き火などしながら自慰などをして怖さから一瞬の逃避を行いかねません。

手練れの魔法師や剣士ならば、この恐怖から開放されているのでは?と考えている人もありましょう。
私が想うに、ダンジョンにおける死というのは刹那に起こるものです。
いきなり強いモンスターに襲われる等、どんな手練れだろうと一瞬の隙をつかれて攻撃を全身に受けてしまえば、等しく死ぬわけです。
そう思うと、ダンジョン探索には緊張感というものが常に付きまとうと考えます。

このような状況下でどのようなやりとりが行われて、えっちへと移行していくのかに興味を持っていますが、探して読んでみたものは、とにかくやりまくり系だったり、少し私の読みたい物語とは違った趣向のものでした。
私は、必然性のある物語が見てみたいというのがあり、色々妄想していたりします。

例えば、二人でいれば寂しくない、という文言はよく聞かれますが、彼氏や彼女と二人だけでいるのに妙に心もとなくなったり、寂しくなったりしたことは皆さんありませんか?

ダンジョン内で絶望的な出来事に遭遇した際、上述のような気持ちが増幅されると考えます。

はたまた彼氏・彼女とめっちゃ喧嘩をしている真っ只中なのに、何故かしたくなったりとかはないでしょうか?

そのような、理屈ではあまり説明がつかないけれど、確かにそこにあるコトとかをダンジョンに行く小説(異世界系でも何でも)で読みたいのです。

そして、あわよくば何故かパーティーメンバー同士がえっちへとつつがなく移行し、その後の関係が大きく変わってしまうといったものも読みたいのです。

何故、普通の小説にはそのようなことを感じず、このようなダンジョンに行ったりする昨今の冒険系の小説においてそう思うのか考えてみました。
ダンジョン探索ってリアルに考えれば、生と死が隣り合わせのはずで、戦争ばりにメンタルを病む人がたくさんいてもおかしくありません。

危険があるところには、必ず性愛の話も出てくるし、もっと言えばむき出しの欲望や利害関係の駆け引きなどが起こりやすくなるはずです。

利害関係のことで言えば、ダンジョン内でパーティーメンバーの一人を犠牲にして、残りは逃げてしまうといった描写は散見されます。
これは一般人の日常生活では利害関係になかなかなり得ない、「人の命」を天秤にかけざるを得なかったために起きたことです。

つまりは、命の危機に晒されてめちゃ危ない目にあうことで、普段は生じない情感の揺らぎのようなものが生じてくるわけです。
一方で、冒険でもあるのでワクワク感はもちろん必要で、そちらの方はよく描かれています。

楽しさと危険が帯同しているのがダンジョン探索の極限環境下では、曖昧な心の動きに伴ったやり取りとか、なかなか普段では起き得ない突発的な感情の発作とか、何かしらの本質的な対話が起きるんじゃないかな?と思っています。

私自身もそれが何なのか具体的には分かっておらず、書きながら模索しています。

たとえば、構想なしの妄想で物語を描いてみると、以下のような具合です。

具体例「あるダンジョンでの情事」

ミウが転送魔法陣を踏むと同時に、ロイは彼女の手を掴んだ。
「危ないっ!」
転送魔法陣は、わりかしどこにでもあるダンジョン内の定番の罠なのだが、踏んでしまったがゆえに離れ離れになり死別、などということは珍しくなかった。
同階層で見つかれば運がいいと言える。
そのため、ロイはとっさにミウの手を掴んで、離別を避けようとしたのだ。


「いったぁ・・・。ロイくん、ごめんね?」
「ううん、大丈夫だけど・・・何階層だろう?さっきと雰囲気全然違うような。」
あたりを見回すと、洞窟のような岩肌からほんのり光る鉱石のダンジョンに変わっていた。
どうやら結構高い場所のようで、片側は鉱石の崖になっており、道幅は人二人がすれ違える程度しかなかった。
「ロ、ロイくんっ⋯!あれっ!!」
「んー?」
ミウが指さした場所に、目を向けると崖下は丸い部屋になっているようで、部屋はモンスターで埋め尽くされていた。
その奥には扉があることから、どうやら異なる階層のモンスターハウスに飛ばされてしまったようだ。
「ま、マジかぁ・・・これってモンスターハウスってことだよね?」
確認するようにミウの方を見やると、彼女は俯いて息をそっと吐いた。

「そうだと思います…。銀の回廊使ってみるから待っててね?」
彼女はマジックバックから、いざという時ダンジョンを抜け出すことが出来る「銀の回廊」という高価なアイテムを取り出した。
銀色に光り輝く鳥の羽根みたいな形状をしていて、ダンジョンの大体の場所で使用することが出来るのだ。

「えいっ!始まりの街の冒険者ギルドまで!」
いくら唱えようと、銀の回廊はうんともすんとも言わず、この場所では使用不可であることを物語っていた。
このアイテムは、特定のボス戦など条件を満たさないと出られない場所では使用出来ないのだ。
「やっぱりだめか。きっとあのモンスターを全部倒すなりしないと出られないんだよ。」

攻めるようなつもりも一切なく、普通に話したのだけどミウには大分こたえたようで、魔法師特有のとんがり帽子をぽんと地面に置くと、僕を気まずそうに見つめた。
「ロイくんっ。ごめんなさいっ!私のドジでこんなことに。今回のは取り返しがつかないかもしれないです。」
確かに彼女のドジは今に始まったものではないけれど、魔法師としての腕は全然悪くない。
むしろ、魔法師という点だけで言えば彼女はかなり尖った能力を有していた。
だから、特段そのことについて気にはしていなかったし、持ちつ持たれつだと考えていた。
僕だって完璧ではないし、助けられていることだって多々あるのだ。
「ミウさん。大丈夫だよ。気にしてないし、いつも僕だって助けてもらってるじゃん?体調悪い時とかも見てくれたり⋯そもそも僕なんかとずっとパーティー組んでくれてるし。今回のはたまたま運が悪かっただけだよ」

本当に気にしてはいなかったから、手を振って感謝の意を伝えるようにゆっくりと話した。

「ううん、ほんとごめんなさい。私はいつもほんとにいっぱい助けてもらってますっ。ドジで済まされないです。。。あんないっぱいモンスターいますし・・・」
確かに数は凄かったけれど、部屋に降りない限り襲ってこないタイプのモンスターハウスだろう。
作戦を練ったり休む時間はありそうなので、まずは落ち着いてもらおうとなるべく明るめに話すよう努めた。

「いっぱいモンスターはいるけど、きっと部屋に侵入しない限り検知されないシステムっぽいよね。ちょっとゆっくり作戦でも立てながらお話でもしよっ?」

ミウがぺたんとその場に座り込むと、ショートに切り揃えられた髪がふわっと浮いて、履いていたスカートも一緒にふわりとしたものだから、僕はその仕草に少しドキッとしてしまった。
二人しかいない僕らのパーティーもランクはそこそこだったので、名のある服飾屋さんに統一感のあるパーティー専用の制服を作ってもらったのだ。

スカートといえど戦闘用のものなので、対物理防御や対魔法防御などの優れた効果を織り込んでおり、しかもミウさんの要望でかわいらしいものだ。
当国の騎士をモチーフとしたシンプルな作りで、服もブラウスを少し冒険用に変化させたものにしており、一番上のボタンには赤いリボンがついていた。

「ロイくん、ありがとうです。こんな時こそ落ち着かないとですよね。とりあえず薬草茶でも入れましょっか?」

こうして、僕らは小さく火を炊くと、二人で薬草茶をすすっていた。

「ミウさん、落ち着いた?」
と聞いている僕は、実際の話あまり現実感がなかった。
5割か、もっと高い確率でここで死ぬだろうという予感はあったけど口には出さなかった。
彼女もあの大群を見た時、死を予感したからこそ先の謝罪があったのだと思う。
死ぬ確率はまあまあ高いだろう、けれどそもそも生きるってそういうことだということを嫌と言うほど見てきた訳で、それが自分に降り掛かって来たからと言って、今更どうということもないと思っていた。

ミウさんが落ち込んでいたことも、相対的に僕を冷静にさせる大きな要因だった。
「はいっ。なんだか変な話だけどホッとしてます。さっきまで凄い気持ちが落ちてたんですけど⋯。ロイくんのおかげです。」

「⋯⋯でも、ほんとミウさんと一緒のパーティーで良かったよ。僕こそありがとうね?このパーティー組んでなかったら冒険者やめてたかも」

「そんなこと。ロイくんはきっとどこでもやっていけちゃうと思います。真面目ですからねっ。冒険者じゃなくてもきっと大丈夫です。私こそ、感謝しかないです」

火を囲んで僕らはいつものように、あるいはいつもと違った真面目さを伴って、それでも軽やかに話していた。
なんだか、最後の別れみたいな雰囲気なっているので、努めて明るく話した。
実際の所、僕はと言えば、正味心細い気持ちはあった。

この旅もこれで終わりなのかな?といううっすらとした予感や、まだ知らないこの壁を成している鉱石のことを知りたいなって思ったり、眼の前のミウさんが近くて遠いような気がして、色々なことが混ざり合って、ただ心細さが襲ってきていた。

小さい頃、死んでしまった父を隠れて見ながら、母と手を繋いでいたことがある。
それはいわゆるスタンピードと呼ばれる現象で、ダンジョンから溢れ出たモンスターによって近場の村が壊滅した、というありきたりでつまらない理由からだ。
その時、母に抱きしめられているのに、底冷えするくらい心細くて、誰かが一緒にいるという実感が湧かなかった。

「もしこれで僕の旅が終わりになったら、ミウさんは次のパーティーを探してね?約束だよ?」

思ってもいない言葉が、不意に溢れてしまって、零れ落ちてしまったその言葉はきっと彼女の気分を害すだろうと思ったけれど、ある種の覚悟を持った明るさのもとに発せられたからか、その場には刹那のつんざくような静寂が広がった。

水がどこから滴る音が聞こえた。

「ロイくんっ!となりいってもいいですか?」

彼女はそのことには答えずに、とても優しい声で答えてくれた。
その時の彼女は有無を言わさない感じで、ちょっと怒っているような、子どもを諭すような口調だったけれど、その口調の甘やかさのようなものはとても言葉にすることは出来ない。

彼女は鉱石の壁に頭をもたれている僕の隣にピタッとくっついて、足を伸ばして座った。
「私、身体柔らかいんです。ロイくん、足まっすぐ伸ばしたまま手をどこまで伸ばせますか?」
そうやって彼女は手を靴先にくっつけると、上目遣いで微笑んでくれた。

「僕は全然だめだなぁ。ほらっ、足首が限界だもん」
そう言って手を伸ばすと、ゆっくりと背中を押してくれて、そのまま撫でてくれた。
「んー、、ミウさん?なんかこんなにミウさんに触れられたの初めてかも。長い事一緒にいるのにね」
少しくすぐったそうにしていると、ミウさんは少し照れたように僕の瞳をじーっと伺うように見つめてきた。

「そうですねっ。私は、今までロイくんに触れてこなかったの損しちゃいました。ロイくんはこんなにもあったかかったんですね。」

僕はなんて答えたらいいか分からず、そこで押し黙ってしまった。
ただ鉱石の壁に身体をもたせかけ、足を伸ばして二人で黙っていると、どこかから水がたれているのか、ぴちゃんっと一定の間隔で液体が滴る音が聞こえていた。
―ぴちゃん
――ぴちゃんっ⋯

黙っていると、その音は意外と大きい音で、しっかりと聞こえてしまう。

そう、スタンピードで村が襲われたときもそうだった。
父が家の外でモンスターに囲われて戦っている間、母と手を繋いで息を殺して身を潜めていたのだけど、その時も家の中のどこかから水が滴っていて、同じ音が聞こえていたのを思い出した。

――――あの時と同じか

幼い自分は、あの時何も出来ず、ただ事が終わるのを待っていただけたった。
怖くて怖くて、母と手を繋いでいる部分だけが、あったかかった。
外では鐘がカンカンとなって、村の戦えるものは総出で戦っていたようだけれど、いずれ大きな屋敷から火が出て、いよいよ鐘の音も消えてしまった。
人々の泣き叫ぶ声や、殺される瞬間の絶叫などが聞こえてきて、耳を塞いでも塞いでもこびりついて離れなかった。
途中からは外のむせかえるような血生臭さい臭いが部屋にも侵入してきていて、吐いた。
それでも外の狂騒はなかなか収まらず、郡庁から派遣された騎士団の投入により終わったのはその次の日の早朝のことだ。

あれから10年は経ったはずなのに、未だにその記憶が鮮明にちらついて、冷静ではいるはずなのに、どこか現実感のなさがあって、あの絶望が始まったのか、というような冷めた心持ちだった。

そんな風に僕の世界が現実感を無くし始めたときに、きゅーっと手を握られて、ハッと我に返って、咄嗟に謝ろうとした。
「ご、ごめっ」
「そーだっ♪おてても繋いじゃいましょう。きっと元気になれます」
ミウさんは珍しく、僕の言葉を遮るように言葉を被せてきたが、その口調は優しく、それでいて得体のしれない力を持っていた。

彼女は、様々な場面でこうやって心を助けてくれていたのだ、ということに改めて気付かされたと同時に甘えたくて仕方がなくなってしまった。
こんな時なのにも関わらず、少し股がうずうずとしてしまい彼女が凄い近くにいること、ぎゅっと手を繋いでいることが意識されて、性器は勃起してしまっていた。
その昂りを抑えようと頑張ってみるが、どうしても抑えられそうになかった。


ロイくんとパーティを組んで3年位は一緒にいたことになる。
ロイくんはかの有名な惨劇、「セントロイドの消滅」と呼ばれた事件の被害者だ。
お父さんは戦って殺され、お母さんは手を繋いでいたのだけど、ロイくんを守って殺されていて、小さかった彼はお母さんに抱きしめられて下敷きになっていたから、運良くモンスターに殺されずに済んだんだって。
そこら辺の記憶はかなり曖昧になっているという話だけど、とっても辛いことだ。
私は小さな村の村長の娘で、優しいお兄ちゃんと可愛い妹に挟まれた次女だけど、とても美しい田舎町で、ロイくんみたいな辛いことはなかった。
私の幼少時代はまず幸福な思い出で溢れていた。
彼の話を偶然聞いてしまった時、私はどうしたらいいのか分からなかった。おとぎ話のような辛い目にあったことがある人が、眼の前にいるって想像出来なかったことだし、どんなに想像してみてもきっと想像し得ない辛さだ。

普段、ロイくんは優しくて、とてもそんな辛い目にあったことなんてはたから見ると分かりようもないのだけど、ずっといっしょにいて分かったこともある。
時に表情を失ったような顔をしていることがあって、どうやら真っ暗闇が苦手なのかも?ってことだ。

でも自分からは決して辛いとも言わないし、基本私を気遣ってくれる。
誰に対しても距離を縮めようとせず、なるべく同じくらい離れたところに居ようとしていることも知っていた。
だけど不思議と暗くはないのだ。
ただ、距離を取っていたのだと思う。

私はロイくんに近づきたいと思っていたけど、どうしたらいいのか分からなかった。

パーティは何故かずっと続けてくれていて、仲は良いのだけど、そこからどうしたら進展するのか分からなかった。

ロイくんは人を遠ざけがちな人だと書いたけど、彼が私を気遣う気持ちはいつもその心根は本当だということは分かった。
自分が辛かったことは一言も誰にも話さないのに、人とは距離を取って、それでも気遣う時は無償の優しさをくれるのだ。

――私も、彼の力になりたい。笑顔にしたい

いつしかそういう気持ちが芽生えていた。
そんな最中のこの出来事だ。
正直、私はどれだけ自分が馬鹿なのかと、自分のダメさを呪って、落ち込んだ。
本当はそんなことを考えている場合ではないはずなのに。

ロイくん、こんな時なのに、私のことを気にかけてくれていて、途中からはおそらくとても怖い気持ちをしていることが分かってしまった。
もしかしたら、昔のことを思い出してるのかもしれない。

――今私がやるべきことは、自分を嘆くことじゃない。

「ロイくん。大丈夫ですよ。さっき私にだって言ってくれたじゃないです?怖くありません。大丈夫ですよ⋯。だいじょうぶ、だいじょうぶだよ」

手を繋いだだけじゃ、きっとダメだと思った私は、ロイくんの眼を見たくて、前に回って向かい合うように彼に跨ってぎゅーっと抱きしめた。

「わわっ・・・ミウさん?だ、大丈夫だから・・・ね?」
「いやっ、大丈夫じゃなさそうに思いました。でもそういうの関係なくて私がしたいからしてるんです」

彼は普通にしていては、距離を縮めることは出来ない。
だから、優しい言い訳をわざと作った。
もちろん私の本心でもあるのだけど。

「み、ミウさん….密着しちゃうからダメだって….」
「密着しちゃってもいいですよ?今はいっぱいくっついてください」

私は、ずっと前から薄々気付いていた。
自分でも知っていたのは、ロイくんの助けになりたいという気持ち。
今日新しく分かったことは、ロイくんとこれからも離れたくないし、一緒にいたいということだった。


僕はなんとかミウさんに密着しないようにしたけれど、ミウさんがぎゅっとしてくるため、もうどうしようもなく勃起した性器は彼女に触れてしまった。

「ふぁ・・・?!ろ、ロイくん⋯」
「ご、ごめんっ⋯離れてくれたら大丈夫だから」

彼女の瞳をちらっと見てみると、少しびっくりしたような顔をしたけれど、それでも雰囲気は柔らかかった。
「ロイくんは悪いこさんだなぁ?でも、怒ってないよ。大丈夫だよ」

まるで赤子をあやすかのような、聞いたことない優しい声色だった。
誤解ないように言えば、ミウさんはいつも優しさが滲んだ話し方だ。
だけど、今日は本当に僕を、僕の存在を肯定してくれている、という熱のようなものが彼女の体温を通して、言葉ではなく存在として伝わってきた。

彼女が話すたびに熱い吐息がかかって、それがくすぐったくて、不意に泣きそうになってしまった。
なんでこんなに優しくしてくれるんだろう?
分からない。

相対的に自分は醜かった。
こんな時なのに、自分だけ欲情していたこともそうだし、自分の感情の制御のようなものがあまり効かなくなっていた。
そうなるのが怖くて人と距離を取っていたのに…。

ぎゅーって抱きしめて、そのまま性器をミウさんにすりすりと押し付けた。

ここで自分が生きているということを、その罪のようなナニカが薄まるかもしれない。
時にはどこにいても、自分が生きているということがたまらなく嫌になることがあった。
兎にも角にも、なにかもが嫌で嫌でたまらなくなることがあって、何故自分だけ生きているのだろう?とよく考えてしまうこともあった。

客観的に見れば、天災のようなもので特に特筆すべきことは本当に一切ない。
ただ、たまたま住んでいた村で起きた偶然の惨事。
それは分かりすぎるほどに分かっているのだけど、自分の中心にある核のようなものが、過去の出来事に深く根付いてしまって、感情をうまく切り離せなかった。

そして今、またミウさんが死んでしまったら、自分は何のために生きて、剣や武術の腕を磨いてきたのだろう、と問うことになるだろう。
それがたまらなく怖かった。

「ロイくん……したぃんですか…?」
そんな醜い自分に対し、優しさを、許しを、光を、そしてまなざしをくれた。

「嫌いにならない…?」
「嫌いになんてなるわけないじゃないですか….」
「ミウさんの中に入れたい・・・です」
「⋯⋯わかりました。いいですょ。」
そう言って、彼女はスカートの中に手を入れて、ためらうこともせず、下着を脱いでぎゅーって抱きしめてくれた。
「ロイくんっ…どうしたいんですか?」
ミウさんは首を傾げて、真っ直ぐ僕の瞳の奥を見つめて、聞いてくれた。

僕もゆるりとした道着のような下を脱ぐと、生の性器をミウさんの股に押し付けた。
「ふ⋯ぁ⋯。ロイくん凄いあついですっ。」
「ミウさんっ….」

子どものように彼女を耳元で呼ぶと、彼女はそのたびにちゃんと答えてくれた。
「はぃ。ロイくんっ….ん⋯」
そのまま彼女が受け入れてくれるのか試すように、ぎゅーっと抱きしめて、固くなった性器を彼女の中に押し込んだ。
「ミウさん….んぅ….」
「ロイくんっ….いい子いい子ですよ。んぁ…ッ…//」

ぎゅぅっと根本まで性器を突っ込んで、彼女の胸にぎゅっと抱きついて背中に手を回していた。
「ロイくんあまえんぼさんですね….大丈夫だよ⋯好きにしていいからね….//」

大して動くこともなく、じーっと彼女に抱きついて胸に顔をうずめていた。
いつまでもいつまでも、ミウさんは頭を撫でてくれて、耳にキスしてくれたり、優しくしてくれた。
「ロイくん⋯いい子だねっ⋯わたしがぎゅーってしてるからね…」

抱きついている内に、初めての経験で我慢出来なかった僕は、あっけなく彼女の中に思いっきり射精してしまった。
「ミウさんっ・・・んぅぅ⋯⋯!」
「ロイくんっ…ロイくんっ….!!!」
それは、えっちというより、ただただ彼女の中で自己を浄化させる儀式のような行為だった。

ピチャン…
ピチャン……

その後も、滴る音が聞こえる位、静寂で辺りが満たされるほど時間が経って尚、ずっとミウさんを抱きしめていた。
彼女の顔を見るのが怖かったのかもしれない。

「ロイくん⋯大丈夫ですか?」
少しうとうとしたりして、どれくらい経ったか分からない程の時が経って、彼女が声をかけてきた。

僕はとてつもなく悪いことをしたかのような顔をしていたかもしれない。
ふっくらした胸から顔を少し離して、上目で彼女を見やると、彼女の優しい眼差しとおどどした僕の視線がぶつかった。
彼女はこれまでと同じ優しい笑みをたたえていて、負の感情は全く浮かんでいなかった。
「ミウさん⋯えと、、、」
「んー?どうしましたか….?」
一瞬、ごめんなさいと謝りかけたけれど、今伝えるべき言葉ってなんだろう、と踏みとどまった。
「……ミウさん?」
「はい?なんですか?ロイくん」
「ありがとう」

彼女は満面の笑み、初めてちゅっと口づけをしてくれて、それ以上は言葉としては何も言わなかった。

そんなこんなで、ミウさんの水魔法でお互い少し身ぎれいにした後、このモンスターハウスをどう切り抜けるかについて、話し合うことになった。

ミウさんがどう思っているか気になったけど、普段と変わらず接してくれていた。

「ずっと、どこかで水が滴ってるよね?」
「そうですね。」
「どこなんだろ?」

歩き回って探してみると、反対側の方で鉱石の壁の裂け目から、ちょろちょろと水が流れていた。
山で流れる湧き水のような感じだった。
流れる先を見ると、モンスター達の飲み場になっているようで、ちょくちょくモンスターが水を舐めたりしていた。

「これって、水は流れてもトリガーに引っかからないってことなのかな?」
ふとした疑問が浮かんだ。

「そうですね…魔法を崖の下に撃ったら、間違いなく反応しちゃうと思うんですけど、お水は魔力反応を示す訳じゃないですし、問題ないんでしょうね。」

「ってことはさ、この水に毒とか混ぜても大丈夫なのかな?」
「ロイくん、毒になる草とかやたら収集してましたよね!?やってみます…?私、調合しますよ?」

僕はダンジョンでたまに毒を使って時間稼ぎをすることがあり、周りの人が見向きもしない毒草などを結構集めていた。

「ありがとう。あんま使わないから無駄にかなりあると思うから、水に混ぜて少しずつ流してみよっか。」

そういう訳で、2人で調合を行った。
その後、後半は僕一人で調合を行っている間、彼女には魔法陣をいくつも書いてもらうことにした。
まず、雨を降らせる魔法だ。
この鉱石は水が染み込んだりしないから、割れ目に吸い込まれない限りは、水はたまる。
もしも毒を入れてモンスターハウスのトリガーが発動し、戦闘になったときのためのものだ。
ちょっとでも水に触れれば、モンスターは毒に多少は侵される訳で、戦闘になった瞬間に水を降らせて、毒状態にする案だ。
さらに、雷の魔法陣も用意してもらった。

水を浴びたモンスターに雷魔法で感電させようという考えだ。
何日もかけて、入念に準備を行い、魔法陣もかけるだけは書いた。
自分が発動する魔法だけだと、発動は自分の魔力量に制限されるし、無詠唱だとしても人一人が発動出来る魔法の量には限界がある。
魔法陣にしておけば、いつでも魔力をほぼ使わずに発動させることが出来るのだ。

「よく考えつきましたね!毎回ロイくんの機転に助けられてます」
「そんなことないよ。この作戦もミウさんの魔法が要だからね。僕は何もだよ」
「いえ、ここを出れるかも?ってなったのはロイくんのおかげです。私、お水を利用とかは思いつかなかったです」

僕は、どう答えたらいいのか分からなかった。
ただ、最初にあったどうしようもない心細さのようなものはもう消えていた。
なんとかここを抜けれそうな気がしていたのだ。
毒を流した時点で、モンスターハウスのトリガーが反応しなければ、かなり脱出の確度は上がるだろう。

「じゃあ、準備はいいかな?毒を流そうと思う。」
「ちょっと待って下さい」

どうしたの?と聞くよりも早く、ミウさんは僕のことをぎゅーっと抱きしめてきた。
「わわっ…ミウさん…..?」
「もしものときのために、今充電してます」

僕は何も答えられなかった。
自分が彼女を抱きしめる資格があるのか、まだはっきりとしていなかったからだ。
彼女に抱きしめられるといい匂いがするし、我慢するのが大変だったけど、ここから出て彼女と関係を紡ぐためになんとか我慢した。
ほどなくして彼女は「充電完了です♪」と言ったかと思うとぱっと離れた。

「いけます!」
「じゃあ、流すね?」
調合した毒薬の中でも、錯乱系のものをちょろちょろと流れる水に流し込み始めた。
錯乱系の毒は同士討ちを狙ったものだ。
上手くいくかは分からないが、とりあえずやってみる。

すると、30分経っても、モンスターハウスは発動しなかった。
「流石にもう大丈夫でしょうか・・・?」
「いや、モンスターに効いたかどうか確認してから」

すると、パワー系のモンスターが錯乱し始めたようで、他のモンスターを攻撃し始めるのが観察できた。
「おおっ!効いてるみたい。ってことは、毒を流すのはここでは大丈夫ってことみたい」

効きにくいモンスターと効きやすいモンスターがいるようで、特定の種族などがどんどん錯乱にかかり内部でパワー系のモンスターが、キメラなどにぼこされていた。
すると、キメラの撃った炎の玉が他のモンスターにあたったりして、そうなると攻撃を食らったモンスターも反撃などするわけで密集していることが仇となり、いよいよ大乱闘になり始めていた。
「もしかして、このまま大部分倒せちゃったりしないかな?」
「す、すごいですっ、私こんな光景始めてみました。」

数時間が経過すると、もう残りのモンスターはおよそ五体くらいとなっており、そいつらもだいぶ弱っていた。
キメラなどの空を飛べるやつが数体と、植物系のモンスターが残っていた。

「作戦通り、雨をらせる魔法いける?」
「はいっ!」
一息つくと、彼女はこの世界では独特の詠唱を始めた。
「水面は呼応し、
 指先が波紋を描けば、
 遥か空へとその声は届かん。
 澄み渡る水鏡から、
 満ち溢れる慈雨の調べを奏でよ。」

彼女の詠唱が終わるより先に、ぽつぽつと水が落ちてきた。
さすがにモンスターハウスが発動し、モンスターたちもこちらに気づいたようだ。

僕は、その瞬間にすかさず麻痺の薬を塗った矢を飛んでるモンスターへと放つ。
綺麗な弧を描き、浮遊するモンスターたちが矢に射抜かれると、麻痺の効果で地面に落ちていった。
その瞬間に、この世界でも普通に使用されている上級雷魔法をミウさんがすかさず地面に打ち込んだ。
「ライトニングボルト!」

すると、目論見通り地面にいるやつも含めて感電したようで、一気に煙を上げる個体もあった。

「ミウさん、なるべくオーバーキルしよう。まだボス級が出てくるかもしれない」
冒険者にとって勝ち筋が見えた時、一番死ぬ確率が高くなるというのは、よく言われていることだ。

「はいっ。魔法陣を発動させます。解!」

掛け声とともにいくつかの雷魔法の魔法陣が光り輝き、モンスターハウスの全体が光に覆われた。

次の矢をつがえて待機していたが、どうやらモンスターは全滅しているようだ。
手を上げて彼女に合図し、魔法の準備をしてもらう。
発動が可能になった所で、僕は単身、崖下に飛び込むことで、ボスが出てこないか確かめた。
もしボスが現れた際は、速攻ミウさんに先制攻撃を噛ましてもらう手筈だった。

しかし、一向にボスが出てくる気配もなく、奥の扉を押した所、すぐに開いた。
ようやくひと心地ついたように思って、大きな声で彼女に答えた。
「もう大丈夫ー!魔法キャンセルしてオーケーだよ――!」
「よかったですー!」

そんなこんなで、鉱石を採取し、外に出てから少しだけあたりを探索してみた。
モンスターは居らず、様々な鉱石やらが落ちていたり、道具があったりしたので、1日採取をしてから銀の回廊を使って街へと戻ってきた。

「はー、死ぬかと思ったよ。水浴びたい…」
「ちょっといい宿取ってあったかいお湯でも浴びてからご飯に行きますか?」

「そうだねっ。でもその前にちょっと話したい事があって・・・・」
「はぃ?なんでしょう…?」

その時のミウさんは、ちょっと困ったように笑った。
表情を見るに、今言うべきではないのかもしれないと思ったけれど、どうしても今言わなければならないだろうと腹を決めていた。

「ミウさん…いきなりなんだけど、好きですっ!!良ければ僕とおつきあいしてくれませんか?」

そう言って、彼女に頭を下げた。
色々言いたいこともあったけど、どれも言い訳みたいで見苦しいと思ったし、先のダンジョンで自分の醜さをさらけ出した僕としては、これ以上の言い訳を重ねる訳にもいかないと思っていた。
それにミウさんとはもっと近い距離で仲良くしたかった。

「あ・・・えと・・・・」
彼女はかなりあたふたとしていて、当たり前だけど玉砕かぁ・・・と感じ始めていた。
控えめに言ってミウさんは可愛らしい人で、さらには様々な魔法に精通しているので、2人でいても彼女はやたらと引き抜きにかけられていた。

「はぃ。。。よろしくお願いします。」
彼女はダンジョンで触れてきたときと同じ人物とは思えないほど、そっと手を握ってくれた。

「ふぇ!?あの・・・嫌なら嫌って言っていいやつだからね?僕のことは気にしないでいいっていうか、」

「いえ、嬉しくて。私もロイくんのこと好きです」
彼女は少し泣きそうな顔で、だけどいっぱいの笑みを浮かべた。

「ありがとう…玉砕覚悟だったから。ちょっと自分でも信じられなくて変な感じなっちゃってる。とりあえず宿取りに行こっか。」

「玉砕って、、、私そんな普段冷たくしてないですよう。はいっ!提案があります。」
「なあに?」
「今日から、宿のお部屋は一部屋でいいですよね?節約にもなります!」

――fin――

あとがき

自分で書き終わったらこうなっていたのですが、えっちの形はどんなものでも良いのです。
今回はnote自体がえろを禁止しているのかどうか不明瞭だったため、えっち部分は少なめにしています。

あまり、精神的揺らぎを書いたというほどではないですが、きちりと0から連載して書けば、もう少しヤバみを出せたかもしれません。

えっち描写が色々な問題に抵触するようであれば、今後は少し課金バリアーをはるか、他のとこに書くか検討してみたいと思います。

上述のような、ダンジョンでの情事についておすすめの作品があれば教えて下さいませ。








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