令和5年港区第三回定例会 一般質問

この度、令和5年9月12日第三定例会にて斎木が質問した内容とそれに対する区長、教育長の答弁の原稿を掲載させていただきます。

修学旅行先をシンガポールとすることについて

①事業のプロセスについて

令和五年第三定例会において、みなと未来会議の一員として区長、教育長に質問いたします。
まず海外修学旅行事業についてお伺いします。
海外での修学旅行について、議会での議決を待たずにメディアや保護者に対して通知が行われました。
発表を聞いた子ども達は大喜び、私が独自に行っている区民アンケートにも123件の回答が寄せられ、69.1%の方が賛成を表明されています。簡易的な分析ですが、区立中学に通っている学生の保護者の方の賛成の割合が極めて高い傾向にあります。賛成理由の声の中には「港区長は凄いと思いました。どんな声があっても、絶対にこの事業をやめないで欲しいです。」との声もありました。都内初の大胆な事業を打ち出された、そのチャレンジスピリットには心から敬意を表させて頂きます。
一方で、私立学校に通わせる親御さんにとっては今回の事業は受益の対象外となる政策です。アンケートでも、「同じ税金を収めていて、私立の学費で苦労しているのに、理不尽だと感じる」との声も寄せられています。5.2億円を投じるほどの大きな予算を、結果としては「一部の子ども達」に限定して支出することは、政策として正しいのか、賛否両論が出ることは無理からぬことのようにも思われます。
また区立中学校の充実化の「手法」という観点でも、ここまで大規模な予算を投じなくとも、近しい効果を得られるような政策が考えられるのではないかといった意見や、海外修学旅行に賛成する方であっても、1人あたり67万円となる事業総予算が、三泊五日にしては高すぎるのではないかと言った声も多く寄せられています。
総じて、手法、予算額の調整など、軌道修正の余地がまだまだ沢山あるはずです。そのような政策を、議会での議論を待たずに、「決定事項」かのように保護者やメディア関係者に発表するのは、混乱を招くものではないでしょうか。議会の議決を経てから、正式な通知書を送るという段取りは最低限必要だったのではないでしょうか。9月5日の教育長付けの保護者に配布された資料には「海外修学旅行を下記の通り実施致します。」と決定事項のように明記しています。
万が一にも、補正予算が成立しなかった場合、多くの子ども達の期待に冷や水をかけることになります。
議会の質問や審議を通じて、私たち区議会議員が区民の代弁者となって、より良い政策のあり方へと深めていく役割があると考えます。しかしその審議を経ないまま決定事項のように伝える姿勢は、区民の声を反映するための議会の存在意義そのものが揺らぎかねません。
今後はより丁寧な区政運営と議会審議の尊重を求めますが、区長の見解をお聞かせください。
【区長答弁】
最初に、丁寧な区政運営と議会審議の尊重についてです。
行政と議会は、車の両輪にも例えられます。
私は、区政運営において、予算など区の重要な意思決定に関して議決を行う区議会と、行政が丁寧に意思疎通を図ることが重要と考えております。

②予算額の妥当性について

次に、総額で生徒1人あたり67万円という予算額について、質問させてください。通常のシンガポール旅行において、3泊5日の旅行であれば20万円程度で済むという話もございます。引率の人員や、企画費など、プログラム費など現時点で分かる内訳を示して頂きたいです。予算請求の段階においては、「かかるであろう最大の金額」を示しているとのお話も担当課からも伺っておりますが、それにしても金額が高すぎるのではないでしょうか。
これから、実際に旅行代理店からプロポーザルを受けて、金額について調整をかけていくものだと理解しておりますが、この1人あたり67万円という費用は、本当に妥当なものなのか、質問をさせていただきたいです。あまりにも金額が高すぎるという指摘はありますが、質の面からすれば仕方がない部分もあるかもしれません。ただし、そのような「質や安全面」のために生じている「プレミアム」のような金額があるのであれば、何にどのくらいのプレミアムが発生したのか、把握する権利が区民にはあると考えます。
ここで質問したいのは、まず、この金額は、やろうと思えば、ひとりあたりでどのくらいまで下げることが可能だと想定しているのか?また、あえて下げずにプログラムを拡充するのだとしたら、どのようなプログラムにどの程度の費用をかける想定であるのか?今回、安全面に対するプレミアムが発生しているものと推察しておりますが、その安全プレミアムはどのくらいの金額なのか?1人あたりの費用の内訳について、通常の旅行と違う部分がどこであって、差額としては何が発生する想定なのかなど、予算の妥当性について教育長の見解を伺わせてください。
【教育長答弁】
ただいまのみなと未来会議のさいき陽平議員のご質問に順次お答えいたします。
最初に、修学旅行先をシンガポールとすることについてのお尋ねです。
まず、予算額の妥当性についてです。
来年度、実施を予定している海外修学旅行の経費は、6月から9月のハイシーズンを見込んだ交通費や宿泊費、研修旅行としての学生の受け入れ経験が豊富なガイド、現地の大学生等と交流しながらのグループ行動などの費用をプログラムの代金として計上しております。
これらの経費は、生徒の安全・安心を担保しつつ、子どもたちがこれまで学んできた英語でのコミュニケーションを海外で実践し、直接異文化に触れることができるよう積み上げたものです。
今後予定しているプロポーザルでの事業候補者選定の中で、充実したプログラム、安全・安心な行程を前提としつつ、一つひとつの項目の費用について精査し、縮減に努めてまいります。

③国をシンガポールに選定したことについて

続きまして「渡航先をシンガポールで決め打っているのは適切なのか?」という質問です。物価について考えても、シンガポールは、十分な英語学習が可能とされる台湾やフィリピン、マレーシアと比べれば物価が高く、最適な国を選んだのか?という点で疑問があります。もちろん、安全性や言語など、様々な観点からシンガポールを選んだのだろう伺っておりますが、今のうちから国については決め打ちをせず、広く旅行代理店からプロポーザルを受け取り情報収集を行った方が、もっとも費用対効果が高い国を選ぶことができたのではないでしょうか。同じ費用で、留学先としてその教育効果から人気がある、アメリカのシリコンバレーやオーストラリア等、欧米圏から修学先を選ぶこともできたかもしれません。
なぜ、具体的な見積もりをもらう前の、予算請求の段階で、国を指定したのでしょうか。国を指定せず、プロポーザルで様々な国の選択肢の中から提案をもらうことは難しかったのでしょうか。教育長の見解をお聞かせください。
【教育長答弁】
次に、国をシンガポールに選定したことについてのお尋ねです。
教育委員会では、海外修学旅行の目的の実現性、移動時間、安全面などの観点で複数の候補地について検討を重ね、行き先をシンガポールといたしました。
目的の実現性として、英語が公用語の一つであり、現地学生との交流等の活動が行いやすく、現地の方と対話する経験を通して、コミュニケーションの重要性を実感することができることです。
また、他の英語圏に比べ、移動時間や時差が比較的短く、生徒の体力的な負担も少ないものと考えております。
安全面では、現地の医療体制や事故発生時の緊急対応の体制が整備されており、治安が安定しております。
シンガポールは、日本の学校の研修旅行の受け入れ実績も多く、生徒の充実した学びの環境としてふさわしい国と考えております。
修学旅行の実施後は、学校、参加した生徒、保護者の意見も伺い、取組の成果を検証し、プログラム内容の充実とともに、学校の希望によって実施可能な行き先等についても検討してまいります。


④修学旅行の自己負担について

次に、修学旅行の自己負担のあり方について質問をさせていただきます。
ここまで大きな予算を投じるなら、旅行の費用を負担軽減を優先して欲しいという意見も私の元に寄せられています。たしかに、今回の7万円という自己負担分は、京都や奈良へのこれまでの修学旅行と金額は同じということであっても、家計が厳しい家庭においては、簡単に出しているものではありません。実際に、家計所得が平均収入よりはるかに少なく「就学援助制度」を利用する必要がある家庭が、24.6%存在するというデータもございます。
港区では、お金持ちとその子息だけが住んでいる自治体だと誤解されることも多いですが、公の支援なくては就学が厳しい家庭も多くおられ、また、そのラインには届かなくとも教育費用の負担を強く感じている家庭も多くあります。そこに7万円の費用を要求することは、かなり無理をさせているということでもあります。こうした、自己負担額のケアを、国際教育の充実以前に行うべきではないかという指摘について、教育長としてはどのようにお考えでしょうか。
【区長答弁】
次に、修学旅行の自己負担についてのお尋ねです。
教育委員会では、経済的な理由で就学が困難な家庭に対し、就学援助制度により、修学旅行宿泊費や交通費などの実費及び支度金を支給し、就学援助受給家庭の経済的な負担を軽減しております。
就学援助制度では、生活保護を受けている方に準じる程度、経済的に困窮している、いわゆる準要保護者の認定基準についても、平成25年8月の生活保護基準引下げ以降も、引下げ前の基準を継続して適用するなど、経済的に困難な家庭を広く支援しております。
海外修学旅行においても、これまでと同様の負担軽減を行う予定です。

⑤私立学校との不公平感について、区の見解は。

次に私立学校、私立に通わせている保護者からは不公平感と不満の声をいただいております。
たとえば、修学旅行ではなく、現在港区立学校に通う学生のみが応募対象となっている「小中学生海外派遣事業」を拡充する形として実施すれば、区立・私立に限らず全ての子どもたちが、意欲さえあれば国際教育の機会に参加でき、私立に通う学生たちからの不公平感をなくすことができたかもしれません。区の見解をお聞かせください。
また今回の事業に合わせて、私立学校の子ども達に向けた何らかのフォローを同時に打ち出していれば、不公平感は緩和できたとも考えます。今後私立学校に通う区民の子ども達に向けて何らかの支援を行っていく考えがあるかについてもお聞かせください。
【教育長答弁】
次に、修学旅行の自己負担についてのお尋ねです。
教育委員会では、経済的な理由で就学が困難な家庭に対し、就学援助制度により、修学旅行宿泊費や交通費などの実費及び支度金を支給し、就学援助受給家庭の経済的な負担を軽減しております。
就学援助制度では、生活保護を受けている方に準じる程度、経済的に困窮している、いわゆる準要保護者の認定基準についても、平成25年8月の生活保護基準引下げ以降も、引下げ前の基準を継続して適用するなど、経済的に困難な家庭を広く支援しております。
海外修学旅行においても、これまでと同様の負担軽減を行う予定です。

⑥国際教育の強化のためのプログラムの内容について

次に「英語でのコミュニケーションを発揮する集大成の場」という趣旨と照らし合わせての課題について、確認したい点がございます。確かに、海外にいくことは、非日常の体験という点で、価値があります。しかしながら、「修学旅行では同じ学校のクラスメイトと一緒にいる時間が長く、結局日本語を使ってしまうばかりになるのではないか」といった懸念の声も寄せられています。これだけの費用をかけて行う海外修学旅行としてのプログラムで、生徒たちにどのような力を身に付けさせたいと考えているのでしょうか。現時点での、具体的なプログラムの内容について、教えてください。
【教育長答弁】
次に、国際教育の強化のためのプログラムの内容についてのお尋ねです。
現地での研修プログラムは、各学校で生徒が、事前に現地で学びたい内容を主体的に選択できるようにいたします。
具体的には、現地学生と少人数のグループで市内観光地や自然体験施設を巡る活動、現地企業と連携したキャリア教育や、現地校での授業体験など、生徒たちの興味・関心を高めるプログラムを予定しております。
教育委員会は、学校とも連携し、事前・事後学習、現地でのプログラムを通して、英語を用いて体験的に異文化も理解する目的が達成できるよう取り組んでまいります。
中学3年生の多感な時期に、海外での英語によるコミュニケーションを実践し、異文化の中に身を置くことで、多くの学びや可能性を見いだし、将来、国際人としてたくましく成長してもらいたいと考えております。

⑦区民の声をより反映した事業全体のあり方について

海外修学旅行については、次が最後なのですが、現時点での事業のあり方について、区民から様々な声が上がっています。繰り返しご紹介しているアンケートでも「五億円を別の子ども政策に充てるべきか?」と聞くと、65.9%の方が賛成とも答えています。
今後、より区民の声を反映し、事業を改善していく余地があるかどうかについて、教育長の考えをお聞かせください。
【教育長答弁】
次に、区民の声をより反映した事業全体の在り方についてのお尋ねです。
海外修学旅行のプログラム案については、オーストラリアへの海外派遣事業の成果や、中学校長の意見も踏まえて検討を進めてまいりました。
海外修学旅行の実施に向けた事前学習では、生徒や保護者の意見を取り入れながら、英語科国際の授業で現地についての学習を行うなど、生徒の学びがより深まるよう各中学校で取り組む予定です。
実施後は、学校と連携し、プログラムを体験した生徒とその保護者からのご意見も踏まえて事業の効果を検証するとともに、次年度に参加する生徒やPTA、学校運営協議会からも広く意見を伺い、海外修学旅行がより充実したものとなるよう取り組んでまいります。

区立学校の魅力化について(国際教育の拡充のあり方について)

次に、国際教育の拡充について伺います。
私が実施した独自のアンケートで今回の海外修学旅行は「加熱する中学受験に一石を投じたのは間違いありません」との意見に着目しました。
確かに、私立の中高一貫校への中学受験競争に同調圧力的に巻き込まれるという声も聞かれます。私立進学を否定するつもりは毛頭ありませんが、区立中学という選択肢をより魅力的なものにすることは、区の子育て世帯にとって非常に大切なことです。そしてどんな家庭に生まれた人も良質な公教育にアクセスできることは、この国において最重要なことだと考えます。
今、海外修学旅行の事業を通じて「区立中学」という選択肢が大きな注目を集めています。この機会を生かさない手はありません。海外修学旅行事業と相乗効果を持つ国際教育の拡充施策について伺います。
第一に、オンライン英会話の活用などは進められないでしょうか?第二に、港区所在のインターナショナルスクールとの交流事業や、港区所在の大使館との連携した教育プログラムを今こそより進化させて取り組むべきではないでしょうか。教育長の考えを聞かせてください。
【教育長答弁】
次に、区立学校の魅力化についてのお尋ねです。
まず、国際教育の拡充についてです。
教育委員会では、国際理解教育を区独自の重点的な施策として掲げ、海外派遣事業や小学校の国際科、中学校の英語科国際の授業、オンラインを活用した放課後英会話教室などを実施しております。
また、各学校では、区の地域特性を生かし、近隣の大使館への訪問や、学校に大使館の方を招き、各国の生活様式や伝統文化について学ぶ機会を設けるなど、児童・生徒が、海外や日本の文化を理解する教育活動を行っております。
昨年度、教育委員会が実施した学校教育推進計画改定に向けたアンケートの結果で、保護者が、学力向上策、受験対策、国際理解教育の充実を中学校選択の判断材料としていることが分かりました。
今後も、教育委員会は、これまでの取組に加え、全ての学校で、大使館との交流の機会を検討するなど、児童・生徒が、異文化を直接体験する機会を重視した教育を展開し、更なる国際理解教育の充実を図り、区立中学校の魅力を高めてまいります。

区立学校の魅力化について(スクールファンド)

次に、上記でも提案したような独自施策の実現するためのスクールファンドについて伺います。
鎌倉市では「鎌倉スクールコラボファンド」という独自の取り組みを推進しています。社会に開かれた教育課程を実現するために、ふるさと納税の仕組みを活用して教育委員会の下に設立したガバメントクラウドファンディングを行っています。
国際教育の拡充だけでなく、プログラミング学習やSDGs学習(持続可能な開発目標)、PBL・課題解決型学習など社会要請に基づく教育テーマが大量に流れ込んできていますが、現場の先生方はやりたいと思っても制度などの事情から実現が難しいことも多く、日常的な業務もあるために疲弊しています。企業なら新たな取り組みに対して適宜必要な資金が投入されますが、公教育の場合はそうもいきません。そこで、未来を見据えた教育の実現に向け、外部の人材や組織と連携するための資金をすべての公立小中学校に提供しようというのが、このファンドの狙いです。
鎌倉市においては、学校が要望を出し、教育委員会で承認されればファンドの資金を活用できます。実際、2020年~22年までに約1500万円の調達に成功しており、この資金を基に、複数の学校が大学や企業、NPO法人など外部組織とコラボレーションし、プログラミング授業、STEAM教育、キャリア教育などが実現されています。
通常なら、こうした教育活動を学校単独でやるには何年も研修が必要ですし、予算執行にも時間がかかります。しかし独自財源を用意するこの仕組みなら、年度内に教育活動を始められるのです。社会のゴールや教育に対するニーズがどんどん変わる中、『今やるべきだ』と思ったことをスピーディーに実現できるこの仕組みを、港区でも実現すべきだと考えます。
港区には国内屈指の大企業や先進的なベンチャー、国際的に活躍するNGOやNPO、先程述べてきた大使館やインターナショナルスクールなどが多く立地し、日本随一の地域資源を有した自治体です。こうした地域資源を活かした区立学校の魅力化を、今こそ加速化すべきと考えます。
ふるさと納税の仕組みを活用して、教育委員会の下に設立したガバメントクラウドファンディングを創設するなどして、区立学校が独自財源に基づいた機動的な教育活動を展開できるようにする考えはあるか、教育長の考えをお聞かせください。
【教育長答弁】
次に、区立学校の魅力化についてのお尋ねです。
まず、国際教育の拡充についてです。
教育委員会では、国際理解教育を区独自の重点的な施策として掲げ、海外派遣事業や小学校の国際科、中学校の英語科国際の授業、オンラインを活用した放課後英会話教室などを実施しております。
また、各学校では、区の地域特性を生かし、近隣の大使館への訪問や、学校に大使館の方を招き、各国の生活様式や伝統文化について学ぶ機会を設けるなど、児童・生徒が、海外や日本の文化を理解する教育活動を行っております。
昨年度、教育委員会が実施した学校教育推進計画改定に向けたアンケートの結果で、保護者が、学力向上策、受験対策、国際理解教育の充実を中学校選択の判断材料としていることが分かりました。
今後も、教育委員会は、これまでの取組に加え、全ての学校で、大使館との交流の機会を検討するなど、児童・生徒が、異文化を直接体験する機会を重視した教育を展開し、更なる国際理解教育の充実を図り、区立中学校の魅力を高めてまいります。

少子化対策の数値目標

次に、港区の少子化対策のあり方について伺います。港区の出生率は2016年の出生率では「1.45」となったものの、2021年の速報数での出生率は「1.27」と落ち込みをみせています。2021年に生まれてきた赤ちゃんの数は2461人で、2016年に生まれた赤ちゃんの3048人から約20%も少なくなっている状況です。こうした状況を放置してしまえば、区の経済・社会システムの維持することが困難になってしまいます。全ての区民にとっての「静かな有事」。それが港区における少子化です。だからこそ誰もが希望どおり結婚でき、希望する数のこどもを持てる社会の実現を図るべきだと考えます。
先月、私が委員長を務めているこどもまんなか・少子化等対策特別委員会のメンバーで、福井県及び石川県かほく市に行政視察に行って参りました。福井県においては「結婚・子育てに関するニーズ調査」を行い、結婚・出産を望むすべての女性の希望が実現した場合の希望出生率を「1.99」と把握していました。また、「ふくい創生・人口減少対策戦略」で目標数値についても、「2.07」と明確に示し、その目標実現に向けた戦略を示していました。石川県かほく市も同様に、平成22年から出生率の目標数値を毎年定め、令和3年の出生率は県平均の「1.38」を大きく上回る「1.66」を達成していました。担当職員からもお話を伺いましたが、出生率向上の要素について、市の独自施策ごとの寄与を分析しておられました。目標数値を示すことで、戦略も明確になり、政策の効果を検証、そして修正のサイクルが作られるようになると考えます。
もちろん、結婚や出産は行政が強制するものではありません。あくまで区民の皆様の希望を叶えることが行政の使命だと考えます。そこで福井県のように希望出生率を把握し、希望出生率の実現を港区の目標数値と掲げるべきではないでしょうか。
一つ目の質問は、区民が希望する出生数を調査し、区民の結婚に対する希望、理想的な子どもの数を把握する考えがあるか。区長のお考えをお聞かせください。
二つ目の質問は、希望出生率を行政の目標数値として定め、全ての区民が希望通りに結婚・出産ができるようになるための戦略を明確化し、政策の効果検証のサイクルを作っていくお考えがあるか、お聞かせください。
【区長答弁】
次に、少子化対策の在り方についてのお尋ねです。
まず、希望出生数の実態把握のための調査についてです。
区は、来年度予定している(仮称)港区こども計画の策定に当たり、本年10月から11月の間に、港区子ども・若者・子育て支援に関する実態調査を実施いたします。
本調査においては、保護者、中学生、高校生、若者を対象として、結婚に対する希望、将来子どもが欲しいか、希望する子どもの人数等について調査し、子ども若者などの意見や将来への展望を把握してまいります。
次に、数値目標及び戦略策定についてのお尋ねです。
区は、希望する人数の子どもを安心して産み育てられる環境を実現するため、結婚、妊娠、出産、子育てと様々なライフステージに応じた切れ目のない支援に取り組んでおります。
一律に出生数の数値目標を設定することではなく、若い世代が結婚や子育てに対し、夢や希望に満ちた展望を抱き、希望する誰もが安心して、望む人数の子どもを産み育てられるよう、少子化対策に全力で取り組んでまいります。

子育て世帯への住宅支援

続いて、子育て世帯に向けた住宅支援についてお伺いします。行政施策に訪れた石川県かほく市では市独自の住宅支援を重点的に行い、成果を挙げておられました。 
国の「こども未来戦略方針」でも、理想のこども数を持てない理由の一つとして若い世代を中心に「家が狭いから」が挙げられており、また、子育て支援の現場からも子育て世代の居住環境の改善を求める声があることが示された。そして、「子育てにやさしい住まいの拡充」を目指し、住宅支援を強化する方針を打ち出しました。
こうした方針も踏まえ、港区も独自施策として、子育て世帯に対する住宅支援に取り組む必要があると考えます。区長の見解をお聞かせください。
【区長答弁】
次に、数値目標及び戦略策定についてのお尋ねです。
区は、希望する人数の子どもを安心して産み育てられる環境を実現するため、結婚、妊娠、出産、子育てと様々なライフステージに応じた切れ目のない支援に取り組んでおります。
一律に出生数の数値目標を設定することではなく、若い世代が結婚や子育てに対し、夢や希望に満ちた展望を抱き、希望する誰もが安心して、望む人数の子どもを産み育てられるよう、少子化対策に全力で取り組んでまいります。

不妊治療

続いて、不妊治療の自己負担分の助成についてお伺いします。
令和4年4月から、人工授精等の「一般不妊治療」、体外受精・顕微授精等の「生殖補助医療」について、保険適用されることとなりました。しかし、保険適用開始後も、保険診療の対象にならない治療が一部あるため、港区は独自に、治療を受ける方の経済的負担軽減を図ることを目的として、公的医療保険の適用外の治療にかかる費用を助成する「港区特定不妊治療費(先進医療、自由診療)助成金制度」を、令和5年1月から実施しています。こうした施策は高く評価されるべきものと考えております。
先ほども紹介した石川県かほく市では、不妊治療の保険対象診療の自己負担分を独自に全額を助成している施策を実施し、成果を挙げておられました。
厚生労働省からは2021年の体外受精などによる出生数が発表され、前年から一気に1万人近くも増えたことが報告されています。これは不妊治療の保険適用化が目覚ましい成果を挙げたことを示すものであり、更なる支援強化は、少子化の改善にスピーディに直結することが強く示されたと考えます。
一方で医療の「受益者負担の原則」も鑑みる必要があるため、理想的には全額助成が望ましいと考えますが、まずは不妊治療の港区における自己負担額は「一割負担のみ」とし、残りの二割分を区が独自に助成すべきと考えます。区長はどのように考えるかお聞かせください。
【区長答弁】
次に、不妊治療助成の拡充についてのお尋ねです。
区は、昨年4月の診療報酬改定を踏まえて、不妊治療の先進医療や診療報酬外の自由診療にも助成しております。助成額は、最大30万円と都内では一番多い額となっており、本年4月から7月末までの4か月間で、119名の申請があり、助成総額は約2,400万円となっております。
医療保険制度においては、所得や年齢等に応じた受益者負担が原則であることから、保険適用の自己負担分を含めた助成は考えておりませんが、引き続き、不妊に悩む多くの方々にご利用いただけるよう、積極的に周知してまいります。

「待機児童」と「保留児童」について〜待機児童対策のその先へ

次に、隠れ待機児童問題について伺います。港区は「待機児童ゼロ5年連続達成」を宣言していますが、4月1日時点で、総数がゼロになっているに過ぎません。認可保育園を希望しているのに、近くの認可外が空いていたら「地方単独保育施設を利用している」として、待機児童の数から除外されます。また、兄弟・姉妹が通っている保育園に、送迎の関係で希望した場合も「特定園希望」として待機児童の数から除外されます。こうした事態を「隠れ待機児童」や「保留児童」と呼び、問題提起されることが増えています。
「どの保育園にも入れない」、「子どもをどこにも預けられない」と言ったような事態を収束させたという意味で「待機児童ゼロ」は高く評価されるものですが、今日の子育て層のニーズを捉えきれているとは言えなくなっています。待機児童対策の「その先」に港区の子育て支援をレベルアップすべき時が来ていると考えます。
赤坂の盆踊り大会や、港区を中心に活動する子育て支援コミュニティ「ママティブ」のイベントに伺った際に、子育てをする区民の方から切実なご要望を伺いました。兄弟と同じ認可保育園の入所を希望しているが、入所できていない現状があるとのことです。港区が多子世帯の移動を支援するため、未就学児が二人以上いる世帯を対象にタクシー利用券を配布していることも承知しておりますが、最大の問題である「時間的コスト」の問題を解消できる訳ではありません。朝のお父さん、お母さんは、本当に時間がなく、忙(せわ)しない状況です。そうした親御さんの立場に寄り添う姿勢こそが、港区の子育て支援体制に求められていると考えます。
こうした多子世帯の支援を考えることは、特に第1子を設けたばかり、2人目を検討中の世代に有効な対策の一つであるのは間違いありません。2人目、3人目の子どもを持ちたいと考える親御さんの希望の実現の障害を一刻も早く取り除く姿勢が、少子化対策の観点からも重要だと考えます。
このように待機児童ではなくとも、希望する保育園所等を利用できていない方を「保留児童」と定義し、実態調査や対策が講じられ始めています。例えば、神奈川県横浜市では、「経験×データで待機児童対策のその先へ〜保留児童対策タスクフォースによるデータ分析結果」を、令和4年9月9日に公表しています。ちなみにこうした保留児童の分析及び公表は横浜市が全国初で行いました。こうした分析に基づいて、横浜市はきめ細やかな保育ニーズを汲み取り、保育の必要性が高い保留児童の解消に向けて対策を進めていく方針を打ち出しています。
それを踏まえ、質問です。一つ目は、港区においても、保留児童の調査を行い、対策を講じる方針を打ち出すべきと考えますが、区長の考えをお聞かせください。
二つ目は、兄弟・姉妹の保留児童の実態調査と対策強化を行うべきと考えるが、区長の考えをお聞かせください。
【区長答弁】
次に、隠れ待機児童問題及び保留児童対策についてのお尋ねです。
まず、保留児童問題の実態把握と対策についてです。
希望する認可保育園等に内定しなかった保留児童については、その保護者一人ひとりに対して、別の保育施設を選択したか、育児休業の延長をしたかなど、個々のご家庭の現況を把握しております。
さらに、区は、令和3年9月に待機児童ゼロ達成後の新たな課題への方針を策定し、保育定員の適正化や待機児童解消施策の見直しに取り組んでおります。
引き続き、保留児童の実態を的確に捉え、必要な対策を実施してまいります。
次に、兄弟・姉妹の入園希望の実態把握についてのお尋ねです。
区は、新規に保育園入園申込みする際の利用調整において、既に兄弟姉妹が在籍している園を希望する場合や、新規に兄弟姉妹が同じ園を希望する場合には、調整指数を加点し、同一園に入園しやすいよう配慮しております。
同一園への入園に至らない理由としては、調整指数を加点しても、就労時間など保護者の状況で決まる基準指数が他の申込者よりも低い場合や、定員に空きがない特定の園を希望している場合などがあります。
今後も、保育を望む全ての家庭の子どもが入園できるよう、適切な定員の設定に努めてまいります。

スポーツや文化芸術など青少年の課外活動を支援する取り組みについて

次に、スポーツや文化芸術など青少年の課外活動を支援する取り組みについて伺います。
先日、三田を拠点とする「ブラジリアン柔術」に取り組む道場「カルぺディエム三田」の指導者及び保護者の皆さんから相談を受けました。この道場に通う港区の小中学生たちは日頃からトレーニングに励み、毎年5名程度の学生たちが全国大会を勝ち進み、世界大会への出場権を得ているとのことです。大変喜ばしい成果である一方、世界大会への渡航費用や現地での宿泊費は保護者にとって大きな経済的負担になっているとのことです。港区から世界に羽ばたこうとする子ども達を応援する枠組みが必要だと考えます。
またもちろんここに挙げた例は一例であり、区内には様々な青少年が課外活動に取り組んでいることと思います。
応援する枠組みとして一つの候補として考えられるのが、港区版ふるさと納税の「団体応援寄付金」です。港区のホームページを確認しますと、団体応援寄付金は、「区内の公益的活動団体の活動がより一層、地域社会の発展につながるよう団体の支援を行います。」とあります。青少年が課外活動に取り組むことを支援することは、私は、「区内の公益的な活動団体に含まれる」と考えます。
そして課題活動に取り組む団体が必要に応じて、その費用を、ふるさと納税で寄付を募ることができるようになれば、それはひいては、70億円近くに膨らんでいるふるさと納税の赤字の削減の一助にもなると考えます。
しかしながら、現状の「団体応援寄付金」の寄付先となるには、港区特別区税条例で指定する税額控除団体であることを港区側が独自ルールの条件として定めています。
そこで質問です。一つ目は、こうした青少年の課外活動に取り組むグループなど、公益性が高いと認められる団体を、団体応援寄付金として対象に拡大することについて、区長の考えをお聞かせください。
また、区内にはスポーツや文化芸術など青少年が活動するグループのほか、地域の大人たちが、地域の青少年ために、課外活動の場作りに取り組むグループもあります。このような幅広いグループの活動を支援することも重要な施策です。
2つ目の質問は、区内の青少年の課外活動に取り組むグループを支援する制度を拡充されるのか、具体的にどのような取り組みがあげられるのか、区長の考えをお聞かせください。
【区長答弁】
次に、青少年の課外活動を支援する取組を強化することについてのお尋ねです。
まず、団体応援寄付金の対象を拡大することについてです。
現在、団体応援寄付金で指定することができる団体については、区内に主たる事業所があり、公益的な団体で税制優遇を認められた団体としております。
地域に根差した活動を応援したいという寄付者の希望に応えられるよう、対象団体の拡大を検討してまいります。
次に、青少年の課外活動を支援する総合的な考えについてのお尋ねです。 
区は、区有施設を利用する際、各施設の設置目的に応じた団体登録制度を設け、優先予約や利用料を減免し、活動を支援しております。
また、青少年を対象とした自然体験等の課外活動に取り組んでいる港区青少年対策地区委員会や、地域が自主的に運営する港区総合型地域スポーツ・文化クラブ「スポーカル」に対して、活動費や活動場所の支援など、地域における青少年の健全な育成を推進しております。引き続き、地域における青少年の課外活動が活発となるよう、支援の拡充を検討してまいります。

町会・自治会の支援体制の強化について

この夏、コロナが明けて、4年ぶりの盆踊り大会、お祭りが開催されました。どの地域でも盛況であり、改めて町会・自治会が地域を支える中心的役割を果たして頂いてるのだと痛感致しました。その一方で、出店に大行列が生じたりするなど、需要の急増に対して運営体制が追いついていない状況もみられました。また高齢化によって、担い手不足の問題についても指摘されています。
来月10月には港区町会・自治体連合会が設立後、最初の総会を開催する予定とのことで、町会・自治会を持続可能で、より力強いものにしていく機運を高めていくべきだと考えます。
複数の町会長や会長経験者にお話を伺ったところ、「町会・自治会長には時間的負担だけでなく、懇親会などの主催などの経済的負担など様々な負担がある中で、地域のためにという強い思いで役割を引き受けている。しかしながら、区の支援体制が十分出ないところがあると感じる」とのことでした。「区からの表彰制度を強化してもらえないか」「町会費の一部を補助してもらうことはできないのか」、といった様々な声を伺いました。
加えて、町会・自治会連合会への区からの補助は初年度わずか6万円に留まっています。初年度という事情はあるものの、連合会を支えるには6万円では足りないのは明らかです。地域コミュニティの維持の観点からも、祭りなどの憩いの場の創出の観点からも、そして防災の観点からも、町会・自治会をもっと力強く区として支援すべきだと考えます。
そこで質問です。区として、町会・自治会の活動を支援するため、具体的にどのように取り組むのか、区長の考えをお聞かせください。
【区長答弁】
次に、町会・自治会に対する支援についてのお尋ねです。
区では、複数の町会・自治会が合同で取り組む祭り等のための補助金制度を設け、地域のコミュニティ活動を支援しているほか、加入促進策の一例として高輪地区では町会・自治会活動の担い手育成講座を実施し、加入のきっかけを創出しております。
今年度からは、デジタル回覧板アプリによる役員の負担軽減を進めるなど、町会・自治会への支援を強化しております。これらの取組を一層地域に浸透させ、町会・自治会への総合的な支援を積極的に推進してまいります。

高齢者の声を積極的に掬い上げる施策について

先日、港区老人クラブ連合会の「カラオケ大会」に参加させて頂きました。思い思いの選曲で、晴れ姿のためにおめかしをされる、参加者お一人お一人が輝いておられる素晴らしい場でございました。
その日は昼食の時間まで残らせて頂くことができ、参加者の方々と交流すると様々な声やご要望を伺うことができました。区や行政に対して要望があったとしても、わざわざ自分の意見を伝えるために、役所にまで足を運んだりするのが億劫だとか、誰に聞けばいいのかわからないという方々が沢山おられました。カラオケ大会のような高齢者の方々が集まる催し物の昼食の時間などを活用して、港区の高齢者福祉に関わる職員が意見交換をするなど、アウトリーチ型の発想で、より積極的にシニアの意見を収集していくといった取り組むを強化すべきと考えます。区長のお考えをお聞かせください。
【区長答弁】
次に、高齢者福祉の拡充についてのお尋ねです。
まず、高齢者の意見を収集する取組の強化についてです。
高齢者の地域の拠点であるいきいきプラザでは、日常的に利用者とコミュニケーションを図るとともに、利用者懇談会などの場でも、積極的にご意見を伺うことで、サービスの改善や高齢者支援策の充実につなげております。さらに、さわやか体育祭や介護予防フェスティバルなど、高齢者を対象とした区主催のイベントの開催時にも、職員が参加者と意見交換し、情報収集に努めております。
引き続き、高齢者が集う場を好機と捉え、職員が高齢者の抱える悩みやご意見を丁寧に伺い、区の施策に反映してまいります。

高齢者対象の慶祝品の利便性向上について

港区は、高齢者の長寿を祝して、港区内共通商品券を贈る制度を行っています。対象者は、77歳(喜寿御祝)、80歳(傘寿御祝)、88歳(米寿御祝)、90歳(卒寿御祝)、99歳(白寿御祝)の人です。この慶祝品の対象者の方と街頭活動で偶然お目にかかる機会があり、ご要望を頂きました。その方は車椅子でご移動で、商品券を貰っても、車椅子で移動できる範囲では慶祝品の商品券を利用できないというのです。
そこで質問です。慶祝品については、その趣旨に鑑みて、共通商品券ではなく現金で給付するなど、足が不自由な高齢者にとっても活用しやすい形式に変更することについて、区長の考えをお聞かせください。
【区長答弁】
次に、寿商品券を現金給付に変更することについてのお尋ねです。
寿商品券は、高齢者の社会参加の促進と区内商店街の振興につなげるため、区内共通商品券としております。
医療機関やタクシーの利用など、高齢者にも有効に活用できるものとなっており、さらに、港区商店街連合会と連携し、利用可能店舗の拡大にも取り組んでまいります。

産業振興に資するAI人材育成について

次に産業振興に資するAI人材育成について伺います。これからの港区産業の未来を考える上で、AI人材の育成は重要な課題となっております。経済産業省によると2030年にはAI人材は12.4万人不足すると言われており、AI人材はますます重要視されると予測されます。
産業振興センターを活用し、港区の将来を担うAIを活用する人材育成を強化していく考えはあるか、区長の考えをお聞かせください。
【区長答弁】
次に、産業振興に貢献するAI人材の育成についてのお尋ねです。
現在、産業振興センターでは、試作品の開発等を支援するビジネスサポートファクトリーにおいて、先端機器を活用したハイレベルAIエンジニア育成講座など、AI人材の育成を図る事業を実施しております。
今後は、若年層を対象に、生成AIといった新たな技術を活用したプログラムの実施を検討するなど、将来、港区から世界の産業をけん引する人材の輩出を目指し、AI人材を育成する取組を充実してまいります。

基金

最後に、公金管理および運用体制について伺います。最新の港区の年度末基金残高は約1980億円と、過去6年間で約500億円近く増加しています。それに伴って基金の運用額も平成28年度の479億円から、令和4年度の約901億円まで増加しています。一方で、その債券の運用利回りは0.106%と極めて低い利回りの水準がずっと続いています。
結論から申し上げますと、低い利回りの原因は基金の運用を支える体制がそもそも構築されていない構造的な課題があると考えます。

基金の運用は、「港区公金管理運用方針」に基づいて、「公金管理運用委員会」が行っています。この公金管理運用委員会は合計6名の区職員で構成されています。会長は会計管理者、副会長は企画経営部長、委員4名は産業・地域振興支援部長、財政課長、産業振興課長、会計室長となっています。この委員のメンバーが、金融商品の選択や危機管理を行うことが「公金管理運用方針」に定められています。
しかしながら、この委員のメンバーは、基金運用の専任ではなく、それぞれの役職が本業となっております。さらに言えば、現在会長である「会計管理者」と「会計室長」は兼務されているという実情もあります。そして、この公金管理運用委員会の開催頻度は年に1~2回でもあります。
「約900億円規模のファンドの金融商品の選択と危機管理などの業務をたった5名で、かつ、兼任の者たちで行う。しかもその会議は年1〜2回である。」
このような状況で、区民の貴重な財産である900億円の資産を「確実かつ効率的」に運用するということ自体が、「逆立ちをしながら水を飲みなさい」と要求しているようなものではないでしょうか。
区長は第二回定例会における私の基金運用利回り向上に対する質問に対して、「金融の専門家である港区公金管理運用アドバイザーから助言を頂きながら、管理・運用しております」と御答弁頂きました。その公金管理運用アドバイザーは三名が上限であり、その会議もわずかに年2回しか開催されていません。アドバイザーへの報酬も一回あたり27400円です。年間の報酬は5万円程度です。これで十分なアドバイザリー機能が果たせているとは、区民に説明できないのではないでしょうか。
結果として、非常に保守的な基金運用にしかならず、0.1%という極めて低い利回りに留まっていると考えます。実際に「確実かつ効率的」に運用するためには、金融商品の選択の専任人員、リスク管理の専任人員など、多数の人員を要することになると考えます。
しかし、それだけの人員体制を構築すべき領域だと、私は確信しています。900億円の基金運用で、一般的な金融資産の利回りである2%でも確保できれば、年間の運用収益は18億円となります。これは海外修学旅行を4回実施できるような予算規模になります。区民目線に立った時、真剣に検討すべき事柄だと考えます。
そして、この貴重な基金を積み上げた功績が、5期19年務めてこられた武井区長にあると考えます。ぜひ武井区長自らの手で、この急増した基金の運用のあり方への対処を進めて頂きたいと強く考えます。
そこで質問です。基金のうち債券による運用額が約900億円と急速に膨らむ中で、その運用体制は全く見直されていません。区民の貴重な財産を万全の体制で運用するあり方の研究を開始すべきと考えますが、区長はどのようにお考えでしょうか。
【区長答弁】
最後に、基金の管理運用体制についてのお尋ねです。
基金は、地方自治法で確実かつ効率的に運用しなければならないとされており、区では基金の元本を損なうことなく、また必要な時に必要な資金を準備できるように確実な運用を行っております。
また、港区公金管理アドバイザーからの助言を基に、港区公金管理運用委員会で毎年度、公金管理運用計画を策定し、効率的な運用にも努めております。
今後も、アドバイザーの専門的知見に基づく助言を得て、金融商品の選定や金融機関の健全性の判断などを行い、基金の安全な管理運用を図ってまいります。
よろしくご理解のほどお願いいたします。

録画配信|港区議会 (city.minato.tokyo.jp)


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