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令和5年港区第四回定例会 代表質問

この度、令和5年11月29日第四定例員会にて斎木が質問した内容とそれに対する区長、教育長の答弁の原稿を記載させていただきます。

物価高対策について

(1)重点支援地方交付金への対応について

低所得者世帯支援枠として一世帯7万円を追加給付する国の指針が示されたことを受け、年内の予算化に向けて迅速に取り組むべきと考えます。区の見解を伺わせて下さい。
さらに低所得者枠に加えて、8つの推奨事業メニューからなる総額5000億円の予算も示されています。こうした予算枠も速やかに予算化に取り組むべきと考えます。
8つの推奨事業メニューをいくつか取り上げますと、子育て世帯支援として給食費の支援を行うことや、地域の消費を下支えするプレミアム商品券の発行、地域公共交通や観光業に対する支援などが示されております。

[区長答弁]
新たに交付される重点支援地方交付金につきましては、国の補正予算が、本日成立する見通しとなっております。区は、国の補正予算成立後、速やかに必要な支援を実施するため、区民や事業者の状況を的確に把握するとともに、低所得世帯支援枠と推奨事業メニュー枠を効果的に活用した港区ならではの支援策の準備を進めるなど、年内の予算化に向け、取り組んでおります。


(2)港区独自の物価高騰対策について

港区で活用できるメニューが多くあります。こうした推奨事業メニューの年内の予算化を求めます。区の見解をお聞かせください。
そして今回の国の政策は、予算合計2.1兆円の内、1.6兆円は低所得者への給付の予算です。推奨事業メニューが5千億円はあるものの、予算の重点は低所得者に置かれています。より具体的にみていきますと、7万円の追加給付、今年既に実施された3万円の給付との合計10万円の給付の対象となるのは「住民税非課税世帯」です。
こうした世帯への給付を否定するつもり毛頭ありませんが、その給付を支えている現役世代、働き盛りの世代からは「税金が取られる一方だ」「社会保険料も引き上げられ、実質的な手取りはジリジリ少なくなっている」こうした声が沢山聞こえて参ります。
港区はまさにこうした中間層や現役世代の人口が大変多い自治体の一つでもあります。港区こそが、中間層、現役世代にも目を配り、独自の財源によって、国の物価高騰対策を補う視点が強く求められていると考えます。
冒頭申し上げた通り、港区の歳入から歳出を差し引いた実質収支は約100億円の黒字が続いております。単純に100億円の実質収支の黒字を約25万人の区民全員に分配しますと、一律4万円の給付が可能です。令和5年3月現在、2000億円にまで積みあがった基金も活用し、未曾有の物価高の今こそ、財政出動すべきではないないでしょうか。両親と二人の子どもがいる家庭であれば、16万円の給付が受け取れます。また、例えばその100億円規模の給付を、区内の商店街で使える「区内商品券」として発行すれば、地元商店、地元企業にとっても、大きな恩恵が得られ、それはまた税収として循環してくることも期待できます。
加えて、前回の代表質問で我が会派の石渡ゆきこ区議は特別区民税の減税も、地方自治法上可能であるとの答弁を引き出しました。給付だけでなく、減税という選択肢も含めながら、全ての世代、所得層を捉えた「オールみなと」の精神の、大胆な物価高対策が強く求められます。今はお金を溜め込むタイミングではなく、機動的に活用していくべき時だと考えます。

[区長答弁]
区は、来月1日から、区内の対象店舗において二次元コード決済で買い物をした人に、最大30%のポイントを還元する10億円規模のキャンペーンを開始いたします。また、来年2月には、総額10億円、20%のプレミアム付き区内共通商品券の発行を支援するなど、物価高騰等の影響を受ける区民を広く対象に、区独自の支援を実施いたします。今後も、国が示した経済対策を含め、国の動向や社会情勢を見極めるとともに、地域の実情を的確に捉え、区民の暮らしに必要な支援を迅速に届けてまいります。


少子化対策について

次に少子化対策について伺います。少子化対策で成果をあげたフランスのシラク大統領は「シラク三原則」を提唱したことで知られます。
その三原則とは、
1.子どもを持つことで新たな経済負担を生じさせない
2.いつでも子どもを預けられる場所がある
3.子どもを持つことでキャリアで不利にならない
の三つであります。これは今年一月の国会においても、自由民主党の茂木幹事長も引用し、このような三原則に基づく子育て支援・少子化対策を進めるべきだと主張をされております。

(1)出産お祝い金の創設について

まず、200万円の出産お祝い金の創設について、お尋ねします。シラク三原則の第一の原則は、「子どもを持つことで経済的負担を生じさせない」ことです。港区では現在81万円給付されている出産一時金は、出産費用でほとんど使いきってしまうものです。むしろ、無痛分娩や妊産婦定期検診の自己負担額なども含めると、81万円では足りないケースの方が多いくらいです。
子どもが生まれてくれば、ベビー用品、子ども部屋のある家への住み替えの準備、教育資金の積立など様々な経済負担が、子育て世帯にふりかかります。こうした「経済的負担を生じさせない」、大胆な社会転換が今まさに、喫緊の課題として求められていると考えます。
そこで200万円の出産お祝い金のご提案致します。方法としては、既に給付実績のある「子育て応援商品券」として給付することが良いと考えます。こうすることで、200万円という大きな金額が、子育て以外のお金に使われないことを防ぎます。また、港区で出産し、200万円のお祝い金を受け取り、区外に転出してしまう場合は港区の貴重な財源の流出に繋がってしまう恐れがあります。そのため、電子商品券として支給し、区外に転出した場合は、残額の効力を失う規定を導入する等した対策を講じるべきと考えます。そうすることで、国の「こども未来戦略方針」で示された2030年までの少子化対策の集中期間に、より大胆で、かつ、地域産業の振興とを組み合わせた施策が実現できると考えます。
麻布台ヒルズが開業し、大変な賑わいが生じています。既に3回も訪れておりますが、惚れ惚れするような美しい建築でこうした誇るべき街づくりの形だと感じました。この場を借りて、30年以上の長きに渡って、この再開発に関われた皆様に心から感謝申し上げます。
一方で、様々な再開発事業の陰で、古くから港区を支え、港区と共にあった地元商店街が置き去りにされていると感じられるようなことがあってはならないと思います。再開発のレジデンス棟によって、高額納税者が転入し、それによって生じている特別区民税の税収が起きている側面もあるはずです。こうした成長の果実を適切に配分する意味でも、商店街への電子商品券の強化は非常に重要だと考えます。
この少子化対策と地域商店街振興策を組み合わせた、出産お祝い金構想にかかる予算規模は、港区で生まれる約2300人の子どもに対して、200万円のお祝い金のため、事業費も含めて約50億円程度と推定されます。
出産お祝い金の特徴は、子どもが産まれてこない場合はそれ以上の新規コストはかかりません。子どもが産まれたきた場合にのみ予算が上振れることになります。効果がなければ、追加予算がゼロということに、利点があります。また、既に毎年産まれくる傾向にある2300人に対して、200万円給付されることに対しては、子育て世帯の負担軽減となり、その子どもたちに対する健やかな育ちの原資となるので、子育て支援としての効果は間違いなくあることになります。加えて、仮に第三子のみに対象者を絞ると、港区で毎年産まれている子どもは200名しかいないため、4億円程度の事業規模となります。加えて、恒久的な施策として考えると、将来の財政に与える影響を見通しづらいので、2030年までの6年間に期限を区切ることも考え、効果が出るかを専門家を交えながら検証すべきだと思います。
財政に与える影響も鑑みながら検討を重ね、その政策効果の実証まで行うべきです。200万円規模の出産お祝い金によって、どれほど若い世代の「産み控え」を解消し、出産を後押しできるかは、日本国全体にとっても重要な知見となるはずです。
港区は人口流入の街であり、私も含めて、地方から若年人口を吸い上げ成長してきた街でもあります。その若年人口を多く預かっている責務を直視し、産みたいと希望を持てば、躊躇なく産める、そのような環境を、港区が先駆けて実行すべきだと考えます。
港区こそがこの国の最大の国難である「少子化」の問題に取り組み、日本社会をリードするというその使命を果たして頂きたいのです。
そこで出産お祝い金として、200万円分の子育て応援商品券の枠を創設すべきと考えるが、区の見解を伺います。

[区長答弁]
区は、今年度から、出産費用助成として、出産育児一時金に区独自で最大31万円を上乗せし、助成額を81万円まで拡大するとともに、出産・子育て応援事業では、妊娠期及び出産後に各5万円相当のギフト券を新たに追加し、合計15万円相当を支給しております。
さらに、出産後の精神的な負担を軽減するため、産後母子ケア宿泊型ショートステイ事業を実施し、宿泊費用のうち1泊2日で最大約6万円を補助しております。
区独自の制度として、新たに出産お祝い金を創設することは予定しておりませんが、引き続き、妊娠や出産に伴う経済的かつ精神的な負担を軽減し、子どもの成長に合わせた支援を充実させ、安心して生み育てられるよう支援してまいります。


(2)子育て世帯を対象とした特別区民税の減免について

次に、特別区民税の減免措置による実質減税(港区版年少扶養控除)について伺います。年少扶養親族に対する控除、いわゆる「年少扶養控除」は、子育て世代の税負担の軽減を目的とする制度でした。扶養控除とは、納税者の所得金額から一定額を差し引けるという所得控除です。
具体的な控除額は所得税が38万円で住民税が33万円で、所得金額からこれらを差し引き、最終的に求められた課税所得に税率を乗じて納税額が算出されていました。しかし、2010年度の税制改正により、年少扶養控除は廃止が決定されました。
これは「控除から手当へ」という政府の方針であり、代わりに導入されたのが児童手当でした。しかし、現在政府が支給している児童手当の金額では、控除で得られていた金額を下回り、中所得以上の子育て世帯にとっては実質的な「こども増税」となってしまっています。この少子化の最中に、です。そして実質的な「子ども増税」の実害を受けている人が最も多い自治体の一つこそ港区です。
今、大変残念なことではありますが、結婚している世帯は所得の低い層ではなく、所得の高い、収入が安定している世帯なのです。低所得の方の、所得向上を図り、安心して、結婚・子どもを作る環境整備を進めることと同時に、既に結婚している所得が高い層の人たちの子どもを持つこと、第二子、第三子を持つことに対する経済的インセンティヴを高めることが港区の少子化対策として重要だと考えます。また、総務省市町村税課にも確認したところ地方税法第323条の規定に基づき、港区の裁量で減免できるとの回答を得ました。
例えば、所得が1000万円の世帯への住民税が10%で100万円の所得税額があるとします。その内6%が市区町村の財源分となりますが、その6%の区の徴収分、ここでは60万円に対して、年少扶養控除で得られていた実質減税額や大学生の年少扶養控除を参考に、子ども1人あたりで5万円減免するといった政策が考えられないでしょうか。2人子どもをお持ちであれば、年間10万円の実質減税となります。
港区にはフリーランスや女性経営者も多くいらっしゃいますが、産前産後の有給の産休や育休もなく、パートナーに安定した所得があれば別ですが、税の負担感は組織に属している方より大きいように思います。そんな方々を救う観点からも、こうした税の減免措置はより効果的だと考えます。
低所得の人に給付で応援し、所得が高い層には税による応援、こうした組み合わせによって、子どもを持つことの経済的インセンティヴを充実させていくことが重要だと考えます。
今、高校生の扶養控除の縮小や廃止が国でも検討を進められています。こうした事態が実現してしまった時、最も実害を受けるのは港区の子育て世帯です。年少扶養控除の廃止によって、実質負担増となっている状況も踏まえつつ、子どもを持つ世帯への特別区民税の減免措置を実現すべきです。
子どもを持つことの経済的インセンティブを高めるため、子どもを持つ世帯の特別区民税の減免措置を実現すべきと考えます。区の見解をお聞かせください。

[区長答弁]
区は、これまで、第二子以降の保育料を区独自に無料としたほか、18歳までの子ども一人当たり5万円の子育て応援商品券を支給するなど、子育て世帯の負担を直接的に軽減し、安心して子どもを育てるための支援をしてまいりました。
子育て世帯を対象とした特別区民税の減免については予定しておりませんが、引き続き、子育て世帯に寄り添った切れ目のない支援策を着実に講じてまいります。


(3)若年世帯に対する包括的な生活費の支援制度について

次に、若年カップル向けの無利子ローンの創設について伺います。ハンガリーは近年、名目GDPの5%もの金額を少子化対策に支出する大胆な対策を行い、成果をあげていることで注目されています。2010年に1.25だった出生率を、2021年には1.59まで改善させています。出生率が0.36改善するということは、日本で置き換えて考えれば、80年くらいのサイクルで人口が約2166万人改善する計算になります。出生率1.23と1.59は【とんでもない差】となります。
そしてそのハンガリーの目玉政策の一つが、無利子ローンです。妻が18歳から40歳までの夫婦は、3万ユーロ、日本円にして約350万円の無利子ローンを受けることができます。このローンの月々の分割返済額は150ユーロ以下(2万円程度)で、20年以内に返済することが求められます。そして、最初の5年間に少なくとも1人の子供が生まれた場合、無利子のままで返済が3年間猶予されます。2人目の子供が生まれると、さらに3年間返済が猶予され、かつ元本の3割が帳消しにされます。そして3人目の子供が誕生すると、残りの借金は全額返済不要となるのです。経済的に子どもを持つことを躊躇する若年カップルにとっては、非常に有難い施策として歓迎されています。
こうした若年カップル向けの無利子のローンの創設を港区独自の創設すべきと考えますが、区の見解を伺わせて下さい。

[区長答弁]
区は、多子世帯の移動を支援するタクシー利用券の給付、所得制限を設けない高校生世代までの医療費助成など、子育て家庭の負担軽減に取り組んでおります。今後は、居住に係る経済的な負担を軽減するため、子育て世帯等が住宅を購入する際の、住宅金融支援機構と連携した支援制度について検討してまいります。
若年世帯に対して包括的に生活費を支援する制度を創設することは考えておりませんが、引き続き、若い世代が結婚や子育てに、夢や希望を抱けるよう、全庁横断的に様々な支援に取り組んでまいります。

以上様々、提案して参りましたが、財政状況も鑑みながら、効果的な政策を選択し、待ったなしの少子化対策を実行に移されることを求めます。


 安心して子どもを預けられ、働ける港区の実現について

(1)区立保育園の定員について

まず保育士の定員問題についてです。今年10月23日に令和6年度の保育定員についての方針が示されました。そこでは令和3年9月「港区待機児童ゼロ達成後の新たな課題への対応方針」を定め、「区立保育園についても保育定員の適性化を行う」としています。数字の上で待機児童はゼロではあるものの、兄弟で同じ区立保育園に預けられず、それぞれを離れた地区まで預けに行くことができないために諦めている家庭や、制度のはざまで区立保育園に預けることができない家庭など、本当は区立保育園に預けたいが様々な事情で預けられないという声をたくさん耳にしてきました。現状よりも定員を削減するとなれば、数字には現れないが、保育園に預けることを諦めてしまう家庭が増えてしまうのではないでしょうか。令和3年に定めた対応方針に囚われることなく、安心して子どもを預けられる港区の実現を求めます。
区立保育園の定員は増やすことはあっても、これ以上の定員の削減はないようにして頂きたいと考えるが、区の見解はいかがでしょうか。

[区長答弁]
次に、安心して子どもを預けられ、働ける港区の実現についてのお尋ねです。
まず、区立保育園の定員についてです。待機児童ゼロの達成後、私立認可保育園を中心に定員の空きが増加しており、定員の空きは、運営事業者の収支悪化につながるため、区立と私立認可保育園を含む区内全ての保育施設におけるバランスの取れた適切な定員管理が必要です。そのため、区立認可保育園の定員は、小規模保育事業所との連携や、地域の保育需要数を考慮した上で昨年度から段階的に縮小しております。 
今後も、希望する人が入園できるよう、区内の入園動向や保育需要の変化に迅速かつ的確に対応し、区立・私立認可保育園ともに適切な定員管理に取り組んでまいります。


(2)夏休み一時預かりについて

次に、夏休み一時預かりについてです。夏休み一時預かり事業については、毎年多くの申込があると聞いている。一方で、受け入れる側の園にとっては、受け入れ体制を整えることなどが必要であることから、現場の声を聴き、より負担のない形で実施すべきと考えますが、区の見解をお聞かせください。

[区長答弁]
区は、定員に余裕がある区立・私立認可保育園に対し、一時預かりの実施の可否などを確認し、保育園運営に支障がないよう受入れ人数を十分に協議の上、実施しております。
今後も、受入園の事情に十分配慮してまいります。


(3)保育園入園の制度について

実際に港区にお住まいの方からの声です。
「第一子を育てており育児休業を取得しているため、保育園に預けずに自分で育てていました。来年度から復職しようと思っていたタイミングで第二子を授かり、第二子出産のために、第一子を保育園に預けようとしたところ、第一子を保育園に預けていなかったために、保育が必要な事由が「育児休業」ではなく、「出産」となり、出産日翌日から数えて57日目の属する月末までしか保育園に預けられず、入園を断念したということが起きてしまいました。」このように稀ではありますが、制度のはざまで苦労をしてしまっている方がいます。
入園を希望するご家庭の状況が様々な中、実態を把握したうえで、制度の見直しを検討する必要があると考えますが、区の見解をお聞かせください。
[区長答弁]
認可保育園等への入園に関しては、毎年度、区民の皆さんから寄せられる声や保育ニーズを分析し、必要な人が利用できるよう、入園時の基準や利用調整を検討しております。育児休業期間における入園については、保護者の体調や家庭の事情に応じて対応しておりますが、より安心して保育園を利用できるよう、今後も実態を踏まえた保育園入園の制度を検討してまいります。


(4)私立保育園の戸外活動の支援の強化

次に、私立保育園の戸外活動の支援について伺います。
先日、私立認可保育園の園長会の皆さんと意見交換をする機会がありました。
園長先生から、
「私立認可保育園は、園庭のない保育園もあることから、園庭を備えている区立認可保育園に比べて、保護者が保育園を選ぶときに、園庭の有無を考慮するケースもあること」という意見や、「私立認可保育園が運動会などの戸外活動をする場合に、より広い場所で子どもたちの活動がしやすいよう、のびのびと遊べるように区としても支援してほしい」という意見をいただきました。
区では、すでに、区有施設の一部を貸し出すなどの工夫を行っています。また様々な区の施設を使いたいという声が私立認可保育園からあった場合に、適切に対応するよう周知いただいていると思いますが、より区全体で、特に施設を所管している職員が意識して対応できるよう、周知徹底を図るべきではないかと考えるが、区の見解をお伺いします。

[区長答弁]
区は、これまで、園庭を持たない保育園の園児の遊び場確保のため、区立保育園の園庭や区立運動場の提供、区立中学校の敷地の一部開放など、区有施設を活用した遊び場確保に取り組んでおります。
本年7月には、各地区総合支所に対し、私立保育園等が運動会などの行事を実施する際に、区有施設を提供するよう、周知を徹底しております。
今後も、全庁一丸となって支援を強化し、区内のあらゆる資源を活用して園児の遊び場確保に積極的に取り組んでまいります。


子育て支援について

次にベビーシッター代の助成事業について伺います。港区の子育て層の方々との意見交換を行った際に、「1人の子どもを育てるだけ本当に手がかかる。」「2人欲しいとも考えていたけれども、1人育ててもこんなに大変な状況では、とてもじゃないけれど2人目は考えられない」というご意見を伺いしまた。
その方からすれば芝にある「子育て応援プラザの「ポッケ」の一時預かりの予約枠は本当にあっという間に終わってしまう。」「シッター代の助成も本当にありがたいが、中々希望通りの予約が取れない」こうしたお声を頂きました。
今回の事例で言えば、シラク三原則の二番目の「いつでも子どもを預けられる場所がある」の環境の整備が十分でないということが言えると思います。
シッター助成事業の論点は三つあると思っています。

(1)ベビーシッター利用支援事業の利用者アンケート調査の実施について

申請者のリストは区として把握している状況かと思います。まずは、利用者がシッターを利用したいと思った時に、実際に確保できているかどうかを把握するアンケート調査を行うべきではないでしょうか。
そうすれば、ニーズが逼迫しているか、そうでないか、逼迫しているのだたらどの程度逼迫しているか、どのような時間帯、季節に逼迫しているかんどを分析することができるようになると考えます。そうすることで、対応策も考えていくことができます。ぜひ、利用状況のアンケート調査をすべきと考えるが、区の見解をお聞かせください。

[区長答弁]
区では現在、ベビーシッター利用支援事業補助金の交付申請書類において、ベビーシッターを利用する主な理由を調査しており、更なる子育て施策の充実に向けて利用者の状況を把握しております。
今後は、予約時の状況や利用を希望する時間帯、必要な時間数などを新たに調査、分析し、利用者にとって必要な支援を提供できるよう、サービスの充実に取り組んでまいります。


(2)ベビーシッター派遣事業者の拡大について

このシッター代助成について、小池都知事のリーダーシップによってできた事業でもあります。そして東京都が依頼できるシッター事業者を指定しており、その数が限られているために、ニーズに応じたサービスを提供できない恐れがあります。港区の独自枠を設立し、事業者を拡大していくべきと考えますが、区の見解をお聞かせください。

[区長答弁]
ベビーシッター利用支援事業では、保育の質や子どもの安全を確保するため、東京都の認定を受けた事業者に所属する保育者が従事しており、昨年度の22事業者から今年度26事業者に拡大しております。
利用者からは、「利用目的を限定していないため活用しやすい」「気軽に利用できる」などのご意見をいただいている一方で、他区と比べて利用者数が多く、「ベビーシッターを手配するのが難しい」などのご意見も寄せられております。
今後とも、利用者の実態やニーズを踏まえ、希望に沿った派遣が可能となるよう、東京都に事業者の拡大を要望してまいります。


(3)産前産後家事・育児支援事業の利用期間の拡大について

関連して、港区の「港区産前産後・育児支援サービス」についてお伺いします。この制度は他区と比べても、非常に充実した制度であり、多くの区民から感謝される事業であることを高く評価しております。
現時点でも非常に充実している制度と理解しつつも、「家事支援サービス」が3歳まで利用できなくなるのは、残念だと思っています。シッター助成と家事支援サービスの両方を、より長い期間で利用できると、親の目線からみてよりありがたいものになると考えます。区の独自施策として、更なる延長を行うべきと考えますが、区の見解はありますでしょうか。

[区長答弁]
産前産後家事・育児支援事業は、特に家事・育児の負担が大きい妊娠中及び出産後の家庭を支援するため、昨年度から家事支援ヘルパーの派遣を出産後120日までから3歳になる日の前日まで延長しております。
区は、今年度から保育園の空き定員を活用した余裕活用型一時保育の拡大や、多子世帯の移動を支援するタクシー利用券の配付を開始するとともに、今回、病児保育室の定員拡大を補正予算に計上するなど、様々な視点から子育て負担の軽減に取り組んでおります。
今後とも、子育て施策を総合的に検討する中で、更なる子育て家庭の負担軽減の取組を推進してまいります。


みなと区民の森の更なる活用について

次に、みなと区民の森について伺います。先日、管外施設である東京都あきるの市にある「みなと区民の森」を視察させて頂きました。
この森は、平成19年度より、地球温暖化対策の一環として港区とあきる野市の交流事業『みなと区民の森づくり』がスタートしました。港区があきる野市から約22ヘクタールの市有林を借り受け、長く手つかずだった森を整備し、二酸化炭素(CO2)の吸収林としてよみがえらせています。
港区は都市部として、どうしても二酸化炭素を多く排出しているのですが、あきる野市では管理しきれなくなっていた市有林を港区がお借りし「里山」に蘇らすことで、カーボンオフセットに貢献しています。
私は大変素晴らしい仕組みだと感じました。都市の課題を、都市の中だけで解決しようとするとどうしても限界があります。そうした課題をより大局的、広域的な視点に立って、地方とウィンウィンの関係を築きながら気候変動対策に取り組める。平成19年度に始まったと伺って、武井区長の先見の明に、深い感銘を受けました。
この森には環境学習教育施設もあり、「あきる野環境学習」で検索すれば主に夏頃に色々な体験学習ができます。里山散策や、植樹体験、川魚の掴み取りなどなど。都心に暮らす人たちにとっても魅力的なコンテンツが揃っていて、定員40名ほどのイベントもすぐ埋まってしまうそうです。倍率も平均で三倍程度、釣り体験のイベントは定員20名に対し140名が申し込んで7倍といった高倍率になっているものもあります。
視察の際に、現地のNPOの方ともお話をし、まだまだ受け入れ余地があるものの、港区の予算が追いついていないとの課題も伺いました。
また、大変恥ずかしながら、私は港区議会議員になるまで、こうした森があること自体知りませんでした。素晴らしい取り組みだけに、広報活動がさらに拡充されていくべきだとも感じます。
こうした「環境学習」は子どもたちにとっても貴重な体験になると考えます。また、都市で暮らす大人たちにとっても、自然の中で癒される大変な貴重な場でもあると感じます。
自然豊かな環境でより多くの区民が、みなと区民の森でアクティビティができるように支援すべきだと考えます。区の考えをお聞かせください。

[区長答弁]
みなと区民の森を活用した環境学習は、区主催の環境学習事業に加え、保育園、小学校、児童館で実施する校外学習等により、1年間に約1,400名と多くの利用があります。
今後、区民の皆さんが事前申込により、個人単位でみなと区民の森での環境学習や自然体験ができることを区のホームページやSNS等を活用して積極的にPRし、より多くの区民に活用していただけるよう、取り組んでまいります。


区立学校における学力支援体制について


(1)中高一貫校の設立について

次に、港区の保護者からも待望の声が根強い「中高一貫校」について伺います。義務教育(小中学校)の運営は市区町村、高校の運営は都道府県という行政の役割分担があることから、中高一貫校を創設することには難易度があります。公立の高校は原則全て都立高校であり、東京都が一括して教員採用・研修の仕組みを構築しているからです。
港区が中高一貫校を設置するには、港区が独自に高校の教員を採用する必要があり、難易度が高いことは事実です。
しかしそれが不可能かと言われるとそれも違います。実際に、東京都千代田区では中高一貫校「千代田区立九段中等教育学校」を実現させています。実はこの学校の前身である「都立九段高等学校」の卒業生は、まさに武井まさあき区長でもあります。
私たち「みなと未来会議」は実際にこの中高一貫校を視察し、校長を始めとする学校関係者ならびに千代田区役所の担当職員にじっくりとお話を伺いました。その際に、卒業なさった天文部の部員に向けられた色紙も拝見させて頂きました。武井区長はどんな高校生だったのだろうと、会派のメンバーと話し合ったものです。
いずれにしても、話を伺うことで分かったことは、この学校は当時の千代田区長の強いリーダーシップにより実現されたことでした。区立の高校を実現するには、高校の運営を担っている東京都との交渉が欠かせないこともあり、一筋縄ではいかないものだからです。
加えて千代田区立九段中等教育学校において最も苦労されている点は、「教員の採用」とのことでした。先述のように、区が中高一貫校を設置し、その設置者となった場合は、区独自でその中高一貫校の「高校部分」の「教員採用」をする必要があります。
高校の課程は科目も多岐に渡り、大学受験を控える世代を預かる重要な仕事です。それを担う高校過程の教員を全く経験のないところから、区で採用する体制を整えることは非常に大変な仕事になることが予想されます。
加えて港区においては用地、土地の確保も非常に難易度の高い課題です。九段中等教育学校の場合は、東京都が設置する都立九段高等学校と、千代田区が設置する区立九段中学校が、元々隣接しており、用地確保という課題解決の必要がなかった点が実現のポイントにもなっておりました。翻って、港区においては区立中学校の近くに都立高校がある場合もありますが、隣接しているとまで言えるようなものは見当たりません。用地をどのように確保するかも、港区で中高一貫校を実現する上では大きな課題になると予想されます。
しかし、港区で子育てする保護者の目線に立った時、腰を据えて来たるべき「大学受験」に取り組める中高一貫校が、経済負担の少ない「公立校」で実現することは、魅力的な教育の選択肢を増やすということに直結します。さらにその教育過程が国際バカロレアのような特色のあるカリキュラムであれば尚更です。
また、平成23年に港区教育委員会によって実施された「魅力ある区立学校づくりのためのアンケート調査報告書」では、「区立中学校へ進学する子どもを増やすために充実させる内容」では、第一位が「受験対策を含めた質の高い授業」、第二位が「教員の指導力」、そして第3位が「中高一貫教育校の設置」でございました。私立中学校に進学させた親へのアンケートでもその理由の第3位に「中高一貫校だから」が挙げられており、中高一貫校が区民から強く求められていることはアンケート結果からも明らかです。
加えて、今受験業界で起きていることは、2015年頃から始まった都内の有力中高一貫校における「高校募集停止」です。つまり「完全中高一貫校」化です。その傾向は近年さらに加速しており

私立では高輪を皮切りに、海城、浦和明の星女子、成城、近年話題になったところでは本郷高校、豊島岡(としまがおか)女子学園開智日本橋学園、東邦大学附属東邦、三田国際学園などがあります。
なぜこうした高校募集停止が起きるかといえば、新学習指導要領の影響が大きいと言われます。
「新学習指導要領」により「歴史総合」「理数探究」「情報」などの新科目が導入されました。
中高一貫校では多くの場合、6年間の学習内容を5年間程度で終わらせるカリキュラムになっていることが多いため、高校から外部入学してくる生徒たちと内部進学生では授業進度が異なり、講師は2パターン以上のカリキュラムや習熟度別クラスを用意しています。
教育現場では講師の過剰労働が問題視されて久しいですが、すでに無理があるところに、これらの科目が一気に新設・導入される現場での負担は計り知れないということです。これを軽減するために高校からの外部入学を停止しようという流れが生まれていると分析されています。
加えて、大学入試改革の影響
大学入学共通テストではこれまでの全マーク式から記述式が検討され、国公立、私学入試においても全体的に思考力や表現力がこれまで以上に重視されるようになりました。AO、小論、グループ面接などを使用した入試、推薦入試もより一般的になり、これらの対策としては留学なども含めた様々な経験から得られる幅広い知識や視野、自由な発想・思考力、表現力が有効とされているため、中高一貫の6年間をどのように使うか、いかにそのような探求学習に充てる時間を捻出できるかも勝敗を分けるカギになると言われています。
新たな大学入試の形に対応するために完全な6年一貫教育に舵を切った学校も少なくないのです。
結果として、このような状況が「高校受験では選択肢が将来の狭まってしまうのでは」という危機感につながり、高校受験が必要な区立中学校の進学を躊躇される傾向を生じさせているのです。これが港区の区立中学の進学率の低迷の大きな原因ではないでしょうか。シンガポール海外修学旅行は、区立中学の在り方に一石を投じたことは間違いないと思います。ですが、こうした要因について、今こそ丁寧に目を向けるべきではないでしょうか。
もちろん、中高一貫校にもデメリットはあり、高校受験がないことでむしろダラダラしてしまうといったケースもあり、お子さんのタイプによっては求められる教育は様々です。しかし重要なことは、公立に中学校という選択肢と、中高一貫という選択肢の両方があることです。それを選択できる環境を作って欲しいというのが区民の思いだと思います。
そんな区民の悲願を叶えるための、一つのアイデアは、東京都のあきる野市や、大平台みなと荘のある箱根町など、港区と関係の深い地方都市に、区立中高一貫校を設立するという構想です。例えば、英国首相チャーチルやインド首相ネルー、ノーベル物理学賞を受賞したジョン・ウィリアムらを輩出した英国の全寮制インターナショナルスクールの「ハロウ・スクール」は日本の岩手県八幡平(はちまんたい・人口:2.2万人)市に日本分校を開設しました。2022年9月に開校し、900名規模、つまり日本最大規模の全寮制インターナショナルスクールとなっています。
また、1962年に設立され6万人のアルムナイを有するユナイテッド・ワールド・カレッジの加盟校でもあるISAKジャパンは長野県軽井沢町に立地しています。また広島県は国際バカロレアの中高一貫校である「広島叡智学園」を大崎上島という6400人の島に開校させています。
自然豊かな環境で、充実したキャンパスを構え、魅力的な国際教育を行うことは一つの定石ともなっています。
これは「みなと区民の森」の事業にも共通する「都市と地方の互恵関係」を生み出すものでもあります。また、港区立伊豆健康学園という前例もあります。もちろん港区内に設置する可能性も排除すべきと考えません。しかし、「港区内には立地に適する場所がないから、中高一貫校は作れません」という言い訳は聞きたくありません。また多くの課題があるから、研究課題とするといった後ろ向きの答弁も求めておりません。できない理由を考えるのではなく、執念を持って、あらゆる可能性を探り、区民が求める魅力的な中高一貫校の設立を強く望みます。
そして私はそのような中高一貫校を実現するには、区長の強いリーダーシップが欠かせないと考えます。
担当所管としては、これまで述べてきた課題もあり、「中高一貫校の新設に関しては、今後の研究課題とする」とする公式見解がHPにも記載されているところであります。であるならば、担当所管の判断を超越した区長のリーダーシップがなければ、中高一貫校が近い将来実現することはないと考えます。それを踏まえ伺います。
区長が「ぜひとも中高一貫校を実現させるのだ」という意気込みを持っているのか、そうでないのか、が、この政策が実現する否かに決定的に重要になってくると考えます。そのような背景もあり、教育に関する質問ではございますが、ぜひ区長のお考えをお聞かせください。

[区長答弁]
中高一貫校は、中学校入学から高等学校卒業までの6年間を通じ、一貫した教育を受けられることや、高校受験がなく部活動や習い事を無理なく続けられるというメリットがあると認識しております。
一方で、基礎自治体である区が中高一貫校を新設するためには、一貫校とする高等学校との調整や卒業生をはじめとする関係者の合意形成、区民と区民以外の生徒の受入れの検討など、様々な課題があります。
中高一貫校の設立については研究課題とし、教育委員会と連携しながら、子どもにとって一層充実した教育環境を整えてまいります。

        

(2)放課後塾について

次に放課後塾について伺います。現在、港区では六本木中学校で「放課後Study」という取り組みが行われています。定期試験の二週間前に、ボランティアや教員が、学生たちの学習支援を行う取り組みです。あくまで六本木中学の自主事業であり、実力のある講師を継続的に確保することが困難な状況にあるようです。
実際に六本木中学校の「放課後スタディ」に、先日私も実際に見学にいかせて頂きました。学校の宿題をする人、高校受験を見据えた塾の課題をやっている人、定期テスト対策をしている人。実にさまざまなニーズがありました。定期テストひとつとっても、数学、英語から保健、家庭科まで様々な教科をやっている生徒がいました。
この放課後スタディを担っているのは、数名の学校教員でした。そのため17時にはこの放課後スタディも終了となります。「時間が短いな」「もっと長くできればいいな」という印象も率直に受けました。
加えて、それをサポートすることをボランティアが担うことも難しいとも感じました。見学の際に、母校である慶應大学の後輩4名に協力をお願いし、一緒に見学させて頂きましたが、当然ながら、質の高い学習支援を実現するには、一日ポッキリのボランティアではなく、定期的な学習支援によって、生徒と学習支援のスタッフが信頼関係を築いていくことが重要になると、見学者一同感じました。
ただ継続的に学習支援をするという責任ある仕事を大学生などが無償でするには限界があります。それでは人が集まらないのは当然の帰結だと思います。
そうした課題を踏まえた上で、私が提案したいと考えるのは、民間事業者と連携する「放課後塾」・「校内塾」です。放課後塾とは、その名の通り、放課後の空いた教室に、学習塾の講師に来てもらう仕組みのことです。
すでに神奈川県箱根町においては、城南予備校と連携し「箱根土曜塾」を行っております。22年度の実績としては、受講者33名が志望校に合格するという成果も挙げられております。また、足立区ではZ会と連携し、区立中学3年生の家計が困難な学生を対象とする学習支援の取り組み「足立はばたき塾」の取り組みが行われています。

加えて、東京都においても、都立高校における「学力向上支援策」として、まさに今年度から放課後塾を開始しています。東京都の指定する進学指導推進校(15校)が対象となり、一校あたり約600万円、15校で9000万円の予算が計上されました。
エリアが近い都立高3校ごとにグルーピングされ、Z会グループが6校、城南予備校が3校、東進グループが6校が、入札により選定されております。
学習塾「トーマス」の場合は、この放課後塾を「スクールトーマス」として私立学校に107校に導入しており、導入校の中には、渋谷教育学園幕張や西大和学園といった全国でも随一の私立学校もある状況です。
このように、民間事業者を活用した「放課後塾」の導入は公立、私立問わず、大きく進んでいる状況です。
そんな状況も踏まえ、区では令和5年6月から7月にかけて「生徒の放課後の学習環境に関するアンケート調査」を実施していると伺っております。
①区立中学校在籍生徒の半数以上が都立高等学校への進学を希望している。 
②学習塾に通っている生徒の多くが1年生の1学期から学習塾に通い始めている。
③どの学年においても、平日や土曜日(学校公開日)の放課後に、学校で塾のような講座があれば受けたいと考える生徒は半数以上おり、一定のニーズがある。
こうしたニーズも確認されているところかと思います。
また私は大学受験塾の経営者出身で、12年間学習塾を経営して参りました。学習塾の三大コストは、「人件費」「広告宣伝費」「地代家賃」です。学校内塾であれば、地代家賃はゼロです。つまり良質な人材による良質な授業を、他のどこの学習塾よりも安価に提供できます。
加えて、これは教員の負担軽減にも繋がります。放課後塾の運営する際は、民間事業者と連携することになります。指導力の向上や、学力支援、進路サポートを民間のいわば助っ人を借りることによって、教員はさらにより正課の支援に集中できる体制になると考えます。
そして、区立中学と都立高の公立中高がより魅力的な選択肢になれば、私立中高一貫にかかる費用300万円程度の家計負担減になります。 子育て支援・少子化対策としても、ぜひとも実現が望まれます。 そしてこの施策は、どんな家庭に生まれた人でも、自分の夢に向かっていくことができる公平な社会に繋がるはずです。
「私立に行くことが経済的にできないから、僕の、私の選択肢が狭まってしまう。」そんな思いをする子どもたちを1人でも少なくしていくべきだと考えます。
そこで質問です。港区において、校内学習塾を導入する考えがあるか、区の見解を伺わせてください。

[区長答弁]
昨年、教育委員会が実施した学校教育推進計画改定に向けたアンケート調査において、中学生の学齢期の子を持つ保護者の多くは、区立中学校に対し、「受験対策・進路指導」の充実を求めていることが分かりました。
現在、各中学校においては、生徒の実態に応じて補習を行うなど、学力向上に向けた取組を行っております。
教育委員会として中学校ごとに塾を導入することは予定しておりませんが、来年度に向け、より多くの生徒の進路選択の支援を強化する取組について検討してまいります。


(3)英会話アプリについて

次に、英語のスピーキングをサポートするアプリの導入について伺います。英語の授業中のスピーキング対策は、集団授業が非常に難しい領域です。英語の授業においては少人数授業を実現していると伺っていますが、それでも25人の生徒のスピーキング力を一人一人見ていくことは極めて難しいことは言うまでもありません。
そこで今注目をされているのが、音声認識技術を用いた英語教育システム「World Classroom」(ワールドクラスルーム)です。沖縄県のスタートアップ企業が開発し、現在全国の33の学校で採用されています。音声認識技術を用いて英語で話すスピーキングの練習できる機能があることで、一人一人がマイクセットに向かって実際に「英語を話し」、それをスコアリングしてフィードバックして貰うことができます。そのスコアは全てデータに記録され、それを教員は継続的にチェックすることができます。スコアが上がった成果を褒めたり、スコアが伸び悩んでいる学生に個別にフォローするということが可能になるのです。
また、教室にいながら世界17カ国の同世代との国際交流ができる機能を備えています。実際に外国の人と英語を使ってコミュニケーションする機会を、英語の授業の時間の中で体験することができるのです。導入校からは「もっと世界に発信したいという生徒の声を聞くことができた」と大変好評を受けており、経済産業省のエドテック導入補助金の認定ツールにも採択されています。この補助金を活用すれば初年度は区の持ち出しはゼロで試験的な導入ができるのです。こうした補助金を活用しない手はないのではないでしょうか?
試験的導入を経て、本導入に至った場合のコストも、年間1アカウント5500円ですので、区立中学生全員の約2200名に導入しても、年間約1200万円程度のコストです。港区の財政状況からすれば、十分に実施可能な教育投資ではないでしょうか?
まずは経産省の補助金を活用し、試験的導入から始めるべきと考えますが、区の見解をお聞かせください。

[区長答弁]
教育委員会は、ICTを活用した英語力を育成するため、白金小学校をモデル校として、学習者用タブレット端末を使用する英語教材アプリケーションの効果検証を実施いたしました。
検証を通じて、児童が、よりネイティブに近い発話ができるようになったことや、自信をもって英語で伝え合う姿が見られるようになったことから、区独自に、全ての小学校で英語教材アプリケーションを学習者用タブレット端末で使用できるよう検討を進めております。


(4)オンライン英会話について

次に、「放課後英会話教室」の事業について伺います。この事業は、大変素晴らしい事業の一つだと考えますが、更なる拡充を図るべきだと考えます。例えば、現状は中学3年生のみが対象ですが、中学1、2生も対象の範囲とすること。放課後に学校で受講するという仕組みだけでなく、アカウントを用意し自宅からでも受講できるような仕組みにすることで、部活に参加している学生たちも参加しやすいような工夫を行うことなどが挙げられます。
このような更なる拡充することで、さらに子どもたちに喜ばれる事業になると考えますが、区の見解を伺わせてください。
[区長答弁]
中学校3年生を対象とした放課後オンライン英会話教室では、これまでの英語科・英語科国際等の成果を生かし、積極的に英語で発話することを通じて、実践的コミュニケーション力の向上を図っております。
本事業は、受験対策の一環として実施していることから、中学校1・2年生に対象を広げて実施することは予定しておりません。
また、オンラインによる自宅での実施については、生徒同士で教え合いながら学習することで成果が上がっていることから、今後も学校での受講を基本としますが、取組の成果を検証しつつ、よりよい実施方法について研究してまいります。


(5)大使館と連携した国際交流事業について

次に大使館と連携した国際交流事業について伺います。6-⑤港区に所在する80以上ある大使館は唯一無二の港区の地域資源です。しかしながら、大使館との連携事業は、一日限りのイベントのようなものが多く、独自の予算枠をとっている訳ではありません。予算枠を確保し、民間の教育団体、NPOと連携し、プログラムを委託することによって、飛躍的にプログラムを充実させて行くべきだと考えます。区の見解を伺わせてください。

[区長答弁]
各学校では、港区の地域特性を生かし、近隣の大使館への訪問や、学校に大使館職員を招き、各国の生活様式や伝統文化についての講話や体験学習を通じて、児童・生徒が、海外や日本の文化を理解する教育活動を行っております。
教育委員会では、各学校が、実態に応じて大使館との連携を進めていることから、連携のプログラムを外部委託することは考えておりませんが、引き続き、全ての学校で大使館との交流を通じて、児童・生徒が、異文化を直接体験する機会を重視した教育を展開し、国際理解教育の更なる充実を図ってまいります。


(6)AIドリルの導入について

次にデジタルAIドリルについて伺います。AIドリルは、子どもたちのつまづきポイントを分析し、それぞれの子どもに最も適した問題を出し分けることができ、習熟度ごとの指導をサポートできる強力なツールとして注目されています。そして、子どもたちの成長を客観的に把握し、先生方がきめ細やかに児童・生徒に伴走できるよう、教育ダッシュボードを整備することもできます。デジタル教材を活用した先進的な授業モデル、学校間で学び合う機会などを作り、区内の学校の教育水準を向上に取り組むべきだと考えます。
実際に、経済産業省「未来の教室」実証事業では、千代田区麹町中学校でAIドリルが導入され、教科書の学習指導計画の1/2の時間で知識の定着が可能になったと報告されています。現在では、東京都でも世田谷区や足立区といった自治体で、全小中学校でのデジタルAIドリルの導入が進んでいます。
港区もデジタルAIドリルを導入すべきと考えます。区の見解を伺わせてください。

[区長答弁]
現在、各学校では、各学年が使用している紙のドリル教材に準拠したデジタルドリルを導入し、授業中はもとより家庭での学習で積極的に活用しております。
また、教育委員会では、児童・生徒がタブレット端末を活用し、個々の学力に適した問題に取り組み、知識の習得を効果的に行うことができるよう、一部の中学校をモデル校としてAIドリルを使用した検証を実施いたしました。検証では、生徒が、自分の習熟度に合った問題に意欲的に取り組む姿が多く見られるなどの成果が得られました。
この検証結果を基に学習効果を一層高めることができるようAIドリルの小・中学校への導入について研究を進めてまいります。


不登校問題について

次に不登校について伺います。現在、義務教育における長期欠席者は29万人近く(約30人に⼀人)となっているのはご存知でしょうか。「先生と合わない」「病気を抱えている」「発達特性がある」など、さまざまな理由で学校に通うことが難しい子どもたちがいます。学校に通えないのは家庭の問題や子どもたちの問題ではなく、子どもたちに合った学習環境を整備できていないという行政の問題として捉えるべきです。そしてこうした不登校の児童、生徒は港区でも増加傾向であり、対応が急務となっています。


(1)適応指導教室つばさについて

現状においては、港区適応指導教室つばさがありますが、このつばさの、学校の教室に戻るべきという考え方がある“適応指導教室”という名称も改め、子どもたちの個性を尊重した居場所・学びの場を、より拡充させていくべきと考えますが、区の見解を伺います。
また、「学びの多様化学校」ができれば、不登校の生徒たちにとって魅力的な受け皿の一つとなると考えます。
※学びの多様化学校とは、不登校児童生徒の実態に配慮した特別の教育課程を編成して教育を実施する必要があると認められる場合、文部科学大臣が学校を指定し、特別の教育課程を編成して教育を実施することができる制度を活用した学校のこと。

[区長答弁]
適応指導教室は、不登校児童・生徒への適切な相談や指導による在籍校への復帰を目的としているため、名称変更は考えておりませんが、通室している児童・生徒の復帰が困難な場合は、個々の状況に応じて、つばさ教室で安心して過ごすことを優先とした個を尊重した対応をしております。
教育委員会では、学校内の新たな居場所づくりとして、東京都の事業を活用し、区立学校3校をモデル校とした「校内別室」を実施しており、不登校傾向のある児童・生徒の多様な実態に応じた体制を整えております。
引き続き、教育委員会は、これらの取組により、不登校児童・生徒の学びの場を確保するなど、児童・生徒一人ひとりに寄り添った支援を行ってまいります。


(2)学びの多様化学校について

「不登校特例校」改め「学びの多様化学校」の設置を港区で実現していくべきと考えるが、区の見解をお聞かせください。

[区長答弁]
不登校の要因は、複合的なケースが多く、一度、不登校となると、学校への復帰が困難となる場合が増加しております。
こうした状況において、学びの多様化学校を設置することは、不登校児童・生徒一人ひとりに応じた、特別なカリキュラムの少人数授業の実施により、確実な学びの機会の創出につながるものと考えております。
現在、教育委員会では、学びの多様化学校の設置についての検討を進めております。


区の職員の働き方改革・インセンティブ作りについて


(1)区の職員数について

次に区職員の働き方について伺います。港区の人口は2010年から約10年間で6万人以上増えており、今後も増え続けると予想されています。一方で港区の常勤職員数は10年間で2192人から2213人とほぼ変わっていません。
区職員一人当たりの負担が適切であるかや、働きやすさなどの労働環境について考えることは、区民にきめ細やかな対応をすることや快適な生活を送ってもらうことにも繋がると思います。
区民の増加傾向に比して区職員の数が増えていない。区職員の働きやすさ、ウェルビーイングを確保するためにも、区職員の数を適切に配置すべきと考えるが区の見解をお聞かせください。

[区長答弁]
区は、事務事業の性質・業務量を精査し、直接職員が担うべき業務・分野には人員を積極的に配置しております。また、区有施設における指定管理者制度の導入により民間人材やノウハウを最大限に活用するとともに、効率化を見込める事業には業務委託を導入するなど、職員定数を適正に管理しながら、人口増などで複雑化・多様化する区民ニーズに的確に対応できる執行体制を確保しております。
 今後も、民間の活用も図りながら、簡素で効率的な執行体制を維持し、業務量に見合った職員数を確保し適正に配置してまいります。


 (2)区職員の働きやすさ、やりがいの創出について

また、区職員の給与に関しては23区が一律で決めており、23区すべて同額で定められているため、給与面でインセンティブを作り、やりがいを創出することは容易ではないと思います。しかし、区の職員がやり甲斐を持って、取り組める職場作りこそが、区民サービス向上の何よりの礎だと思います。区の職員の皆様の並々ならぬ努力に対する敬意を改めて表明させて頂きつつ、区職員の働きやすさや、やりがい作りについて、取り組みの拡充を強く求めたいです。区はどのように拡充するお考えか、見解をお聞かせください。

[区長答弁]
区は、職員の働く意欲や能力、仕事の達成感の向上に加え、働きやすい職場づくりなど職場環境の改善に取り組んでおります。
具体的には、テレワーク及び時差勤務の導入や男性育児休業の取得促進など、多様な働き方を推進しております。また、人事評価及び研修等を通じた成長支援、業務改善表彰等の取組に加え、区民の皆さんとの協働や交流による地域課題の解決を通じてやりがいを実感するなど、様々な取組を進めております。今後も働きやすい職場づくりと職員がやりがいを持って個々の能力を十分に発揮できる職場環境の整備や取組を推進し、更なる区民福祉の向上に取り組んでまいります。


スポーツする場所の確保について

次に、区民の方から切実な要望を頂くスポーツの場所の確保について伺います。赤坂中学校ではプールの開放や民間のスイミングスクールの導入により区民の楽しむ機会を提供するなど、スポーツする場所の確保と環境整備の政策が進んでおり、関係各所の皆さまのご努力に大変感謝しております。一方で残念ながら、2019年度の区民意識調査では、当該政策に満足している区民の割合は28・6%となっており、港区におけるスポーツ環境の整備が課題となっております。
公園で子どもたちがボール遊びをしていて苦情が来たために、その場所にボール遊び禁止の張り紙が貼られてしまったこともありました。公園でのボール遊びに関しては、きちんとしたルールがあるわけではなく、周囲に気遣いながらであれば問題ないというような状態であると思います。時代の流れもあるかと思いますが、苦情が来たから禁止するのような対処療法ではなく、公園の中でもきちんとボール遊びをしてよい場所としてはいけない場所や時間のルールを決めるなど、区民が運動できる場所を積極的に確保することが必要なのではないでしょうか。例えば足立区では、ボール遊びに関するルールや、ボール遊びがしやすいおすすめの公園を示したマップなどを区が広報しています。
あくまで公園のボール遊びについては一例にすぎませんが、スマートキーを導入し区有施設を24時間利用できるようにする、港南地区の東京海洋大学の野球グラウンドなどを始めとする地域の教育機関との連携調整、区外に区民が週末や長期休暇に利用できるグラウンドを整備するなど様々な施設や環境の最大限活用し、区民がスポーツできる環境の整備を求めます。
運動施設の確保の必要性がますます高まる中、区民の満足度を高めるためにも、これまで以上にスポーツできる施設や環境整備の充実に取り組むべきと考えます。今後の取組について、区の見解を伺わせてください。

[区長答弁]
教育委員会では、北青山三丁目地区市街地再開発事業において、新たなスポーツ施設の整備に取り組むほか、学校施設開放事業では、本年12月の使用から開放時間枠を細分化するなど、より多くの方にご利用いただけるよう、運用を見直しました。
本年8月には、区内企業であるJXジェイエックス金属株式会社と連携協力協定を締結し、現在、企業が保有する剣道場の活用について検討を進めております。
引き続き、スポーツができる身近な場所を広く周知するとともに、企業・大学との連携や区外の運動施設の活用検討など、区長部局とも連携し、様々な手法を用いて、運動施設の確保、充実に努めてまいります。


住宅支援(安心して住み続けられる街へ)


(1)高齢者の住宅支援について

次に高齢者の住宅支援について伺います。区では、住宅に困窮するひとり暮らしの高齢者などが、住み慣れた地域の中で自立して生活を続けられるよう、区立高齢者集合住宅を運営しています。また、都営住宅や都市再生機構を活用したシルバーピアの割り当てもあります。
ただ、いずれの住宅も住み替えを希望する高齢者にとっては、倍率が高く、必要な住宅の数と比較して、充足しているとは言い難いと思います。高齢者人口が増加するこの港区において、住み替えが必要な高齢者世帯も増加していくことから、高齢者の住まいを支援することは、重要な課題であると考えます。様々な理由で現在の住まいから住み替えが必要であるにもかかわらず、新たな住まいが見つからず困っている高齢者を支援する「港区高齢者民間賃貸住宅入居支援事業」についても、成約件数が伸び悩んでおり、課題解決に向けた更なる検討が必要ではないでしょうか。住まいに困窮する高齢者世帯が、安心して港区に住み続けられるよう、区としても更なる支援の充実が必要と考えますが、区の見解を伺わせてください。
[区長答弁]
まず、高齢者の住宅支援についてです。
様々な理由で住み替えが必要な高齢者の転居を支援する港区高齢者民間賃貸住宅入居支援事業では、区の協力不動産店が高齢者の入居可能な住宅を紹介しておりますが、家主の条件と高齢者の希望が合わず成約件数が少ないことや、家主が高齢者の入居に不安を抱くなどの課題が生じています。
このため、区は、区内の不動産団体とのヒアリング結果を踏まえ、高齢者の孤独死が発生した場合の損害補償など、家主の不安を解消する改善策について検討しております。
さらに、現在、設置の準備をしております、区と宅地建物取引業者、社会福祉協議会で構成します居住支援協議会において、住宅確保に配慮が必要な高齢者等の支援について協議してまいります。


(2)マンション住民の地域活動への参加について

次にマンション住民との共生について伺います。区民の多くがマンション住民である港区において、マンション住民に町会・自治会活動に興味をもっていただき、地域コミュニティの活性化につなげていくことが、大変重要です。
しかし、マンション住民には新たな住民も多くライフスタイルも様々であるため、町会・自治会活動に触れ、地域と接点を持つ機会は決して多くありません。
マンション住民を地域活動に引き込むことは、町会・自治会の会員数の減少への対策にもなり、また、双方で顔が見える交流をすることで、災害時などの共助にもつなげていくことができます。マンション住民が地域活動に参加し、地域住民同士の交流を促進することについて区の考えを伺います。
[区長答弁]
住民の約9割がマンション住民である港区において、地域コミュニティの発展には、マンション住民が地域活動に参加する環境を整えることが必要です。区では、建築物の計画等を予定している事業者に対し、入居予定の方への町会・自治会加入の呼びかけを依頼しているほか、マンション住民と町会・自治会が顔を合わせて、地域ぐるみの交流がもてるような取組を進めております。一例として、高輪地区で実施している町会・自治会潜在力向上プロジェクトではマンション住民と町会・自治会が防犯活動や地域清掃等を行い、交流のきっかけとしています。引き続き地域住民が交流する機会の創出に努めてまいります。

  

(3)障がい者グループホームについて

次に障がい者のグループホームについて伺います。障がい者の人口は増加しており、施設やサービスの需要が増加しています。特に、グループホームは、ホームに入居できず、やむなく短期入所を利用する方がいるなど、他の施設にも影響を及ぼしますし、障がい者や家族にとって、今最も必要とされている施設といっても良いと思われます。
区がグループホームを整備するためには、用地の確保が必要で、それはそれとして進めてほしいと思いますが、限られた港区の用地では限界があると思いますし、区が整備するには整備計画の策定など時間がかかることも事実です。
そこで、今後の障がい者のグループホーム需要にこたえていくためには、民間事業者による整備を促すことが必要だと思いますが、事業者にとって、より整備の動機付けになるような、補助を充実することが必要だと思いますが、区の見解を伺います。

[区長答弁]
今後、増加する障害者グループホームの需要に対応するためには、区における整備に加え、民間事業者による整備をより促進することが必要です。
現在区は、民間事業者に対して障害者グループホームの整備費を補助しておりますが、区内の運営事業者に実施したヒアリングでは、資材価格の高騰などにより整備費が上昇傾向にあることが、グループホーム新設の課題であると認識しております。
今後、グループホームの整備に係る民間事業者の負担軽減の取組について、積極的に検討を進めてまいります。


HPVワクチンについて

男性へのHPVワクチン接種の費用助成について

 次にHPVワクチンについて伺います。HPVワクチンは子宮頸がんワクチンとも呼ばれることから、女性だけに特化したものと一般的に認識が醸成されてしまいがちですが、HPV(ヒトパピローマウイルス)は人の下腹部周辺などのがんの因子であり、男性の尖圭(せんけい)コンジローマや肛門がん、中咽頭がんの因子でもあります。性的な接触によってウイルスは相互感染し、男女にかかわらずがんを引き起こすため、男性に対するHPVワクチン接種での予防対策は、自らやパートナーのためだけでなく、集団免疫効果による予防にもつながり、広く社会の感染リスクを劇的に下げると指摘されています。
世界保健機関WHOの発表でも、世界39か国において男性にも接種が行われており、先進国での接種率は男女とも80%に達しています。有効性を検証するという段階は当に過ぎており、一刻も早い対応が求められると考えます。既に中野区では8月に、独自の事業として、小6~高1の男性向けの全額助成を始めています。

また、まさに今月の初旬には、令和6年度から東京都の小池知事が英断を下し、国に先駆けて、男性向けのHPVワクチン接種の助成を始める区市町村の負担を補助する方針を打ち出しました。東京都の補助を活用しない手はないと考えます。
東京都の助成を活用し、港区において、男性も含めて自己負担なく、積極的にHPVワクチンの接種を受けてもらえる環境作りを速やかに進めていくべきと考えますが、区の見解をお聞かせください。

[区長答弁]
昨年8月から、国の厚生科学審議会において、男性へのHPVワクチンの定期予防接種化に向けた議論が始まりましたが、現在も、有効性や安全性の評価検証や、最新の科学的知見を追加するための情報を収集し、整理している段階と聞いております。
男性へのHPVワクチン接種の助成については、今後も国における定期予防接種化に向けた動向等をしっかりと注視してまいります。


給食について

(1)保護者負担軽減策について

続いて、給食について伺います。給食費の実質無償化がこの秋から実現しました。街角でも喜びの声を大変多く伺います。ただこれは暫定措置でもあります。
給食費の無償化の恒久化に向け確実に、来年度も給食費が無償化が実現するよう求めます。現時点でどのように考えているかについて答弁を求めます。

[区長答弁]
まず、保護者負担軽減策についてです。
現下の物価高騰が続いている中、保護者負担が増加しないよう、来年度の学校給食費不徴収の継続について検討してまいります。
また、引き続き国に対し、学校給食費無償化の実現を要望してまいります。


(2)給食の質について

それと同時に重要なのが「質の確保」です。子どもたち、保護者の満足度やニーズがどのようなものであるかを把握することはとても大切なことだと考えます。
私は時々「給食費の味を改善して欲しい」とか、「有機の食材を使って欲しい」というお声を頂きます。一方で、「とても美味しいと子どもは気に入っている」という話もよく聞きます。
私は総合的にこうした区民の要望をまず把握することが重要だと考えます。その先に、どのような改善を図ると良いのかという施策が明確になると考えています。
公明党の野本たつや議員が熱心に、有機栽培や農薬を抑えた食材を給食に導入するよう訴えておられますが、私も強くここに賛同致します。無償化の恒久化が実現した暁には、こうした質の向上にかかる費用負担を積極的に行うステージに移して頂きたいです。

その質の向上に欠かせないのが、実際に給食を食べている子どもたちの声です。もちろん現在でも、各校の栄養士が生徒たちに聞き取りや意見交換などを行っていることは承知しております。ただ、網羅的なアンケート調査は行われておりません。
全校生徒を対象とするアンケート調査およびニーズ調査を行うことについて、区の見解をお聞かせください。

[区長答弁]
教育委員会は、質の高い給食を提供するため、日頃から、子どもの食への関わりや意見、課題の把握に努めております。
具体的には、学校給食は学校別で献立を立てていることから、各学校栄養士を中心に、給食提供の際に児童・生徒の食事の様子の確認や声掛けを行い、給食や食生活に関する生徒の声を聴くことで子どもたちの食のし好や食生活の課題を把握し、日々の献立作成に生かしております。
今後も、アンケート調査を各学校で実施するなど、様々な意見聴取の機会を活用し、学校別の献立に生かすことで、給食の質の向上を図ってまいります。


多様性政策〜LGBTQ〜

(1)性的マイノリティの方が行政サービス等を利用しやすくするための取組について

次にLGBTQの当事者の生きづらさに寄り添う街づくりについて伺います。性的少数者が抱える課題の一つに、行政や福祉にアクセスしづらいことが挙げられます。NPO法人ReBitが2023年に行った「LGBTQ医療福祉調査2023」の中でも、40代のトランスジェンダー女性の方が「生活保護が必要な状況だが、親族への扶養照会をされると、名前と性別を変更したことが親族に伝わってしまうため、それが不安で利用できていない。」といった声を寄せています。また、健康診断ひとつとってみても、トランスジェンダーの方にして見れば、自身の性自認とは異なる対応をされることを恐れ、健康診断を受診したくないといった事例もあるようです。病院はどうしても自分の身体的性別と向き合う必要がある場です。しかし、トランスジェンダーの方々からすれば、自分の身体的性別にこうした場を避けるがゆえに、その方の病気が重症化してしまうケースもあるのです。
性的少数者が行政や福祉にアクセスしやすくなるための取り組みをどう進めていこうと考えているかについて、区の考えをお聞かせください。

[区長答弁]
これまで区は、性的マイノリティの方への調査を通じて、医療や福祉サービスを受ける際や、住まいの確保における困り事を把握し、困り事を解消するため、パートナーと生活する上で家族と同等の取扱いを受けられるよう、みなとマリアージュ制度を導入いたしました。今後も、区は、性的マイノリティの方を対象とした講座の実施等を通じて、当事者の抱える悩みやニーズを把握し、施策に反映するとともに、民間サービスにおいても配慮されるよう、多様な性への理解促進や普及啓発に取り組む東京都等の関係機関と連携し、事業者に働きかけてまいります。 

また先ほどと同様の調査によると、中学校のクラスに2-3人、高校生の9.2人に1人が友人からカミングアウトや相談を受けたことがあるということがわかっています。
ある学校の先生からは「男子なんだから○○すべき」と他の教員が生徒に対して言っていたが、何も言えず、話題を変えることしかできなかった、という話も聞きました。
実際、75.3%の教職員がLGBTQについての相談を受け、対応・支援をしたが、適切であったか自信がないと答えており、性の多様性を大事にしなくてはならないと思っていても、周囲の友人も先生も手探りで支援をしていることがほとんどだと思います。(私ごとで恐縮ですが、私も高校生の時に初めて男性を好きなった時、本当に戸惑い、誰に相談していいか分からず悩んだ経験があります。教員が頼れるかといえば、私の学校はそうは感じることはできませんでした。思春期の思い悩んだ時、ふとした言葉で深く傷付き、最悪の場合、命を絶ってしまう恐れもあります。)


(2)学校教育現場でのサポートについて

性自認について悩んでいる生徒が安心して相談できるようにするなど、学校教育現場でLGBTQの自認がある子どもたちをサポートする体制が必要だと考えます。区の見解をお聞かせください。

[教育長答弁]
教育委員会では、教員が、LGBTQの自認がある児童・生徒に適切にサポートができるよう、人権教育研修会において、性の多様性に関する講演を実施し、教員の理解増進を図っております。
各学校では、性に関する悩みを打ち明けた児童・生徒に対して、担任や養護教諭、スクールカウンセラーによる相談を随時実施するなど、児童・生徒の個別の悩みに対応する体制を整えております。
また、学校で性に関する悩みを相談しづらい児童・生徒に対し、教育センターで電話や面接での相談も行っております。
今後も、LGBTQの自認のある児童・生徒が一人で悩みを抱えることがないよう、誰もが相談できる多様な体制があることを全ての児童・生徒に周知してまいります。
よろしくご理解のほどお願いいたします。


基金について

(1)円建てのみで基金を運用することについて

急激な円安が進行している。大規模な金融緩和、日米の金利差、人口減少などの国力の衰退など、様々な要因があると言われています。その国の通貨は長期的にはその国の経済力に収斂されていくものであり、大変残念ながら、今のままの日本では人口減少が続き、人口ボーナス期に入っていく新興国や、米国に対して、円安のトレンドが見込まれています。

翻って港区が保有する2000億円の基金は全て日本円、円建てのみで構成されています。これは、グローバルな金融市場という観点からはリスクが大きいという見方もできると思います。この点についてどのように考えるか、区の見解をお聞かせください。

[区長答弁]
基金は、地方自治法で確実かつ効率的に運用しなければならないとされており、区ではこれを基金の元本を損なうことなく運用することと考え、株や外貨建て債券など、元本が変動する商品ではなく、円建て債券及び円定期預金により運用しております。
また、港区公金管理アドバイザーからの助言を基に、港区公金管理運用委員会で毎年度、公金管理運用計画を策定し、効率的な運用に努めております。
今後も、アドバイザーの専門的知見に基づく助言を得て、金融商品の選定や金融機関の健全性の判断などを行ってまいります。


(2)  1,000億円の預金について

次に、​​金融において、世界人口が増大し、ベースで緩やかなインフレが続く中では、インフレと連動しない「現金」は、日々目減りすることになります。現金を「不動産」や「株」など、物価上昇と連動しやすい何かにしておかないと自動的に減る、というのは、誰がみても明らかだと考えます。流動性が高い預金を一定程度保有することは理解できます。また首都直下型地震のような、いつ起きるかも分からない大規模災害に対応することを考えれば、その必要性には疑いの余地もありません。一方で、人口比で考えて、1000億円もの巨額な預金を保有している自治体は港区ぐらいしかないように思います。
グローバル金融市場のトレンドの中では、日々目減りしていく性質を持つ「預金」を1000億円も保有することは資産管理の側面から改善が必要と考えるが、区の見解をお聞かせください。

[区長答弁]
「港区財政調整基金」及び「震災復興及び新型インフルエンザ等感染拡大防止基金」は、基金の性質上、急激な減収局面や首都直下地震等の発生後などの緊急時に直ちに活用することが求められます。
このため、区では、この基金残高の一部に相当する約1,000億円については、債券による長期運用ではなく、元本を確保したまま中途解約が可能な1年以下の定期預金により運用することで、必要な時に必要な額の取崩しを速やかに行えるように備えております。
よろしくご理解のほどお願いいたします。


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