湊 舞

「日本語」と「人」が大好きな関西在住のフリーアナウンサー。2016年2月1日に作家デビュー。文芸社より「やっかいな人々」を出版しました。

湊 舞

「日本語」と「人」が大好きな関西在住のフリーアナウンサー。2016年2月1日に作家デビュー。文芸社より「やっかいな人々」を出版しました。

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  • やっかいな人々

    あー!こんな人おる!おる! これってうちの姑やん! 悪人でもなければ法を犯しているわけでも無いからこそ 「やっかいな人々」の話! ヤフオクで「やっかいな人々」単行本 (ソフトカバー)を出品中。

最近の記事

第十一話 えっ?

「新入生、集合!!」 「はいっ!!」 と言い終わらないうちに駆け出した私は、横を走る美咲と目を合わせニッと笑う。 恐らく今この体育館という限られた距離でも全力疾走しているのは、高校時代に運動部に所属していた人たちだろう。 運動部において先輩の声は神の声。 烏が白いと言われれば、白に見える。 それ位、先輩は怖いのだ。 特にここチアリーダー部は、「昭和」なのだ。 私が入部したチアリーダー部と応援団は、「昭和を生きる覚悟がなければ入部するな」と言われている。 案の定、小走りで来た

    • 第十話 正子ちゃん

      「お先に失礼します。」 パート先の更衣室を出ながら、鞄の中のスマホを取り出す。 やはりランプが点いている。 誰からのメッセージかはわかる。 『ちょっと聞いてよー! さっき買い物に行ったら、赤信号を渡ろうとしていたおじいさんがいてさぁ、「赤ですよ」って注意したら「車が来てないからいいだろっ!!」って逆ギレされたんだよ!! 「赤信号で渡るのは交通違反です」って言い返したら「うるさいばばあだなっ!!」って怒られたのよ。 「あんたより若いわ」って言い返してやったけど、腹立つわぁ。

      • 第九話 災 難

        私は、悠々自適の生活を楽しんでいる。 やっとである。 舅姑に仕え、娘二人を嫁がせ、舅姑の介護をし看取り、やっと夫婦二人でゆっくり過ごせると思っていた矢先に夫を亡くした。 そこへ早くに未亡人になっていた母が痴呆を発症した為、嫁ぎ先の家は夫の弟家族に譲り、母の介護の為に実家に引っ越してきて大変な介護の末、母を看取った。 やっと、生まれ育った懐かしい実家で悠々自適と言える生活をしているのである。 長年、放置していた畑で自分が食べる分だけの野菜を作り、単調な毎日をちまちまと楽しんでい

        • 第八話 二時間ドラマかサスペンス劇場か

          二時間ドラマやサスペンス劇場みたいなことが、我が身に起ころうとは・・・。 母は若い頃から華道を学び、時折、華展に出展している。 華展の最終日には、片付けや花器などの荷物持ちに駆り出されるのが常である。 しょっちゅうあることではないし親孝行と思い、安物ではあるが着物を着て出かける。 その日は、お仲間の皆さんと食事をして帰るという母に大量の花を持たされた。 母とお仲間の皆さんが展示していた花に加え予備の花もある。 確かに、まだ綺麗に咲いている花を処分するのは勿体ないが、五人分の花

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        • やっかいな人々
          11本

        記事

          第七話 祖 母

          「健ちゃん。」 ホテルの地下駐車場に飛び込んだら、そこに立っていたシワシワの塊にぶつかりそうになった。 急いでいた僕はひょいと避けて通り過ぎようとしたその時、懐かしいニックネームで呼ばれた。 振り返ると二人の老女が立っている。 ぶつかりそうになったシワシワの塊は二人のおばあさんだったのか。 頭の中では、シワシワの乾燥した巨大梅干しが映像化されていたのだ。 「健ちゃん、久しぶりやねぇ。」 声の主は、僕の祖母だ。 就職した年には何度か会ったが、二年目に今の部署に配属され、近

          第七話 祖 母

          第六話 義 姉

          ピンポーン。 日曜日の午後一時。夫と昼食を食べ始めた時に玄関のインターホンが鳴った。 口に入れたご飯を呑み込みながらインターホンを取る。 宅配かセールスだろうと思いつつ 「はい。」 「まさちやあああん、あたくし」 「お義姉さん!」 驚きのあまりほぼ叫んでいた。 私の声に夫も箸をもったままフリーズ。 義姉が突然やって来るなんて考えられないが、絶対に義姉だ。 私を『まさちゃん』と呼ぶのは、夫の兄の妻しかいない。 しかも『まさちゃん』ではなく『まさちやあああん』と静かにネ

          第六話 義 姉

          第五話 引っ越し

          夫の実家が、三十年居座り続けた社宅から引っ越すことになった。 舅が退職するので、仕方なく引っ越すのだ。 夫の実家は、とにかく汚い。 和室に敷かれたカーペットは、使い古したタオルのように薄くなっている。 我が家の雑巾の方がよほどふかふかだ。 荷物が増えるごとに買い足したのであろうちぐはぐなタンスもかなり年季が入っている。 押し入れは、パンドラの箱だ。 私たちが結婚する時に姑が「綺麗な食器があるから。」と、くれた物は、黄ばんだ箱に入った地元の信用金庫の粗品だった。 私の実家の母に

          第五話 引っ越し

          第四話 携帯電話

           昼間の電車はすいている。 私が乗り込んだ車両は、数人がパラパラと離れた座席に座っているだけだ。 私も適当な座席に腰を下ろすとシャカシャカと何か音が聞こえてきた。 音源を探すとむかえに座っている大学生らしき青年のイヤホーンから漏れている音楽だ。 あんなに大きな音で聴いていたら耳が悪くなりそうだ。 その青年は、イヤホーンの音にリズムを合わせて軽く体を揺らしながら携帯ゲームに夢中になっている。  次の駅で数人が乗り込んで来た。 私の並びには、六十代半ばと見受けられるおばさんトリオ

          第四話 携帯電話

          第三話 ばばあ

          その『ばばあ』と『みいちゃん』は、上映の一瞬前に私の左隣りの席にやって来た。 ガサガサと紙袋の音を派手にたてながら 「ああ、ここ!ここ!」 と、大声で座席番号を確認しにぎやかに座った。 ほどなく、バリバリ、ポリポリとポップコーンをみいちゃんがむさぼる音が聞こえてきた。 「みいちゃん、見えるか。子ども用のクッションもろてきたろか。」 でっかい声のばばあ。 まあ、孫を思うばばあ心と思いがまんする。 「みいちゃん、のどかわけへん?ジュースいらんか。」 うるさい!もっと小

          第三話 ばばあ

          第二話 善良風無思考人たち

          『寝た子を起こす』という言葉があるが、文字通りやっと寝付いた赤子を起こしてくれる迷惑な人々がいる。 例えば、むずがる幼子をやっと寝かしつけたところへやって来る宅配便。 しかし、これはいたしかたない。 先方に非は無い。 インターホンを鳴らさないでほしいと張り紙をするなり、インターホンの音を消しておくなり、こちら側の対処の問題である。 だが、電車やバスの中で、いきなりベビーカーを覗き込んで 「いない、いない、ばあっ。」 などと奇声を上げる輩には対処のしようがない。 もちろん、

          第二話 善良風無思考人たち

          第一話 間違い電話

          「リンリーン、電話だよ」 最近、買い替えた携帯電話は 可愛いアニメキャラクターの声で着信を知らせてくれる。 咄嗟に枕元の携帯電話に手を伸ばしながら、 「誰だ?母の具合が悪いのか? 田舎の叔父に何かあったのか?」 と、寝ぼけた頭で考えながら画面を見る。 表示された電話番号の市外局番は田舎だ。 「もしもし」 「ご主人様は、もう出かけられましたか?」 「はっ?」 「もう、出かけてはりますよね?」 七十代と思われる女性の声。 「間違っておられますよ」 と、電

          第一話 間違い電話