Kubernetes の readOnlyFilesystem で守る安全な環境
使い捨てできる安心感、ありますか?キッチンを借りたとき、備え付けの調理器具や調味料だけで料理を作る場面を想像してみてください。持ち込み禁止で、必要なものはすべて事前に用意されている状態です。このルール、最初は少し不便に感じるかもしれませんが、後片付けや管理の手間が省ける安心感もあります。
Kubernetes の readOnlyFilesystem は、まさにそんな「制限された環境」を提供する機能です。セキュリティ対策の一環として、Pod 内のコンテナに書き込み制限をかけることで、不正な改ざんや誤操作からシステムを守ります。今回は、この機能の具体的な設定やポイントを見ていきましょう!!!
1. readOnlyFilesystem とは?
readOnlyFilesystem は、コンテナのルートファイルシステムを「読み取り専用」にする設定です。これにより、アプリケーションや外部からのアクセスによるファイルの書き換えを防ぎます。
この設定が役立つのは、次のようなシーンです。
悪意ある攻撃の防止: 外部から侵入されてもファイルを改ざんされない。
予期せぬエラー対策: プログラムのバグや設定ミスによる意図しない変更を防止。
シンプルな管理: 書き込み領域を限定することで、管理が簡単に。
2. レストランのキッチンに例えると?
この機能を、レストランのキッチンに例えてみましょう。
通常のキッチン: 材料や道具を自由に追加したり、アレンジできる環境です。新しいレシピに挑戦したり、急な変更にも対応できます。
readOnlyFilesystem のキッチン: 調理器具や材料はすべて固定されていて、持ち込みは禁止。ただし、あらかじめ用意された道具や材料を使えば、決まったメニューを作ることは可能です。
readOnlyFilesystem を適用すると、コンテナは「持ち込み禁止のキッチン」のように、安全性を最優先にした環境で動作するようになります。
3. 設定例
実際の設定例を見てみましょう。以下は、Nginx コンテナを使ったサンプルです。
apiVersion: v1
kind: Pod
metadata:
name: readonly-pod
spec:
containers:
- name: secure-container
image: nginx
securityContext:
readOnlyRootFilesystem: true # 読み取り専用を有効化
volumeMounts:
- mountPath: /data
name: data-volume
volumes:
- name: data-volume
emptyDir: {} # 書き込み可能な一時領域
この設定では、(1)readOnlyRootFilesystem: true を指定することでルートファイルシステムを保護しつつ、(2)/data には一時的に書き込み可能な領域を作っています。
4. 気をつけたいポイント
(1) 書き込みが必要な場合の対応策
一部のアプリケーションでは、設定ファイルの生成やログ出力などで書き込みが必要な場合があります。そんなときは、emptyDir や hostPath を使って、特定ディレクトリだけ書き込みを許可できます。
(2) ログ出力の確保
アプリケーションがログをローカルに保存する場合は、書き込み可能なボリュームマウントを使って対応します。これを忘れると、ログが記録されないトラブルにつながるので注意しましょう。
(3) アプリケーションとの互換性チェック
すべてのアプリケーションが「読み取り専用モード」で動作できるわけではありません。事前にテスト環境で検証し、設定変更が必要か確認しておくことが大切です。
5. readOnlyFilesystem が向いているケース
この機能は、特に次のような場面で役立ちます。
CI/CD パイプライン: 短期間で動作するビルドやテスト環境を安全に実行。
Web サーバー: 外部から攻撃されやすいアプリケーションの防御強化。
データ処理ジョブ: データは外部ストレージから読み込み、結果は別の場所に保存する設計。
まるで「レンタルキッチン」のように、その場限りの使い切り環境として運用できます。
6. まとめ
readOnlyFilesystem は、Pod 内のファイルシステムを読み取り専用にすることで、安全性を高める便利な機能です。調理器具や材料が固定されたキッチンのように、余計な変更を防ぎながら必要な作業をこなせる環境を提供します。
ただし、アプリケーションによっては書き込みが必要な場合もあるため、一時領域の確保や互換性テストは忘れずに行いましょう。
この設定を活用して、Kubernetes 環境をより安全に保ちながら、安心してアプリケーションを運用してみてください。