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ソフトウェアを守る「SPDX」と「SBOM」って何が違うの?

突然ですが、ソフトウェアの中身が気になったことってありませんか?
例えば、自分が使っているアプリやサービスがどんな部品でできているのか、さらにそれが安全かどうか。こうした疑問に答えるのが、「SPDX」と「SBOM」です。どちらもソフトウェアの透明性を高める大切な仕組みですが、それぞれの役割には微妙な違いがあります。


SPDXとSBOM、それぞれの役割

まず簡単に説明すると、SPDXは「ソフトウェアのライセンス情報」に注目した仕組み。
一方、SBOMは「ソフトウェアの構成や依存関係」を明らかにする目録のようなものです。

SPDX: ライセンス情報を管理する標準フォーマット

SPDXは、ソフトウェアがどんなライセンスのもとで提供されているかを明確にするためのもの。例えば、「このソフトウェアはMITライセンスだから安心して使っていいよ」というような情報が含まれます。これにより、法的なリスクを減らし、ソフトウェアを安全に再利用できるようになります。

SPDXのサンプル
以下は、SPDXのJSONフォーマットで記述された例です。

{
  "SPDXID": "SPDXRef-DOCUMENT",
  "name": "example-project",
  "spdxVersion": "SPDX-2.2",
  "documentNamespace": "http://spdx.org/spdxdocs/example-project",
  "packages": [
    {
      "SPDXID": "SPDXRef-Package",
      "name": "example-library",
      "versionInfo": "1.0.0",
      "licenseDeclared": "MIT"
    }
  ]
}

このサンプルでは、プロジェクト名やバージョン、ライセンス情報が簡潔に記載されています。これにより、どのライセンスに基づいて利用可能かを簡単に確認できます。

SBOM: ソフトウェアの構成をリスト化

一方でSBOMは、ソフトウェアの「部品表」です。アプリやサービスに含まれるライブラリやツールがどんなものか、そのバージョンや相互の関係性を一覧で見られる仕組みです。特に脆弱性管理やサプライチェーンの透明性を確保するうえで重要視されています。

SBOMのサンプル(SPDX-JSON形式)
以下は、SBOMをSPDX-JSON形式で表現した例です。

{
  "SPDXID": "SPDXRef-DOCUMENT",
  "name": "example-software",
  "spdxVersion": "SPDX-2.2",
  "documentNamespace": "http://spdx.org/spdxdocs/example-software",
  "creationInfo": {
    "created": "2025-01-23T10:00:00Z",
    "creators": ["Tool: SBOM Generator 1.0"]
  },
  "packages": [
    {
      "SPDXID": "SPDXRef-Library1",
      "name": "library-one",
      "versionInfo": "2.3.4",
      "supplier": "Organization: Example Supplier",
      "licenseDeclared": "Apache-2.0"
    },
    {
      "SPDXID": "SPDXRef-Library2",
      "name": "library-two",
      "versionInfo": "1.2.0",
      "supplier": "Organization: Another Supplier",
      "licenseDeclared": "MIT"
    }
  ]
}

この例では、ソフトウェアに含まれる複数のライブラリやそのバージョン、ライセンス情報を詳細に記録しています。SPDX形式を使うことで、SBOMが標準的で機械可読な形に整理され、他のツールとの互換性も確保されます。


それぞれの目的と得意分野

(1) SPDXの目的
SPDXは「法的リスクを回避する」ための仕組みです。例えば、オープンソースのソフトウェアを使うとき、ライセンスに違反してしまうと大きなトラブルになりかねません。SPDXは、こうしたリスクを未然に防ぐために必要な情報を整理してくれます。

(2) SBOMの目的
一方、SBOMは「ソフトウェアの中身を把握する」ことが目的です。たとえば、新しく見つかった脆弱性(セキュリティの弱点)が自分の使っているアプリに影響するかを調べるとき、SBOMがあると迅速に対応できます。


例え話で理解する

これを身近な例に置き換えると、次のように考えられます。

  • SPDXは「契約書」や「取扱説明書」
    SPDXは、このソフトウェアをどう使うべきか、どこまで自由に利用できるかを書いた契約書のようなものです。「このライセンスなら商用利用OK」みたいな情報が詰まっています。

  • SBOMは「部品表」や「材料リスト」
    SBOMは、ソフトウェアの中身を全部リストアップした材料表です。「このアプリにはどんなライブラリが入っているか?」を知るためのカタログのようなもの。これがあれば、問題のある部品をすぐに特定できます。


SPDXとSBOM、どう使い分ける?

実は、この二つは一緒に使われることが多いです。
SBOMのフォーマットとしてSPDXを採用することで、ライセンス情報と構成情報を一元管理できます。言い換えると、SPDXはSBOMの中の重要なピースとして機能するのです。


まとめ

SPDXとSBOMは、ソフトウェアの透明性や安全性を高めるための重要な仕組みです。

  • SPDXは「法的リスクを減らすための契約書」。

  • SBOMは「中身を明らかにする部品表」。

どちらか片方だけでなく、両方を活用することで、ソフトウェアをもっと安心して使えるようになります。
「中身を知って、安心して使う」――そんな世界がすぐそこにありますよ。

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