寂しくて暖かい、どこか懐かしい歌詞を作り出す天才、てれかす
あなたの脳は、すぐ忘れる。
夕暮れ、雨の中。悔しくて泣いたあの日を。
朝、やけに清々しく、空気がおいしかったあの朝を。
風が冷たくなって、体全体を駆け巡って抜けていくあの冬の日を。
でも、覚えている。あなたの体はそれを覚えている。
感覚として、断片的な情報として、匂いや風をトリガーに、ふとした瞬間に呼び出される情報として。
要は、そういった曲なのだ。
あなたが過去に経験しているかもしれない、体が知っている感覚を、暖かさを、苦しみを、喜びを、悲しみを、呼び起こす曲なのだ。
忘れていく。
あなたはすべてを忘れていく。
きっといつかはこの曲だって忘れて、今はまだない曲を聴いている。
でもあなたは戻ってくることができる。
また、思い出すことができる。
それは、匂いや風をトリガーに、ふとした瞬間に呼び出される情報として。
あの匂いを、あの風を、あの景色で、きっとあなたはまた、戻ってきたくなる。