Kieselオーダー記②実機レビュー
前編(発注まで、費用等)はこちら。
後編はギター本体についてのレビューです。
ルックス、質感
まずは見た目。見事です。ケースを開けた瞬間にウワ〜ッと声が出ましたw
このギターは「太陽」をコンセプトにデザインしたけど、イメージ通りの仕上がり。塗装が綺麗ですね〜。トップのメイプルとバックのマホガニーで色味が微妙に違うのも良い。サテンの質感もサラサラで最高。
Kiesel自体が初めてだったのでトップ材のアップグレードはやめておきました。これでも十分だけど、$200払って5Aにアップグレードしてもよかった。
ヘッドは1mm程度のベニヤですがこちらはエグいバリトラ。
ナチュラルバインディング好きにこれは垂涎モノ。コンター部分のみかと思ってたら全周回している。芸が細かい。$220取るだけのことはあります。
ボディがやや薄く(40mm)、コンターも前後しっかり入っているのでフィット感も良い。全面サテン仕上げも相まって抱えてるだけで気持ちいい。
ゴールドのPUカバーはブラシ仕上げでシック。
コントロールは3wayトグルにしたらデフォとは若干位置が変わっていた。この位置はあまり使いやすくないけど、僕はライブやらないので、REC中に誤ってヒットするのを防げると思えば悪くない。営業のKeithには「トグルスイッチはゴールドになるよ!」と言われたけど黒プラだった。こんなもんです。
ゴールド×パーロイドのノブは上品で美しい。しっかりと重みがあり、スイッチ類もブレなくしっかりしている。
ポジションマークもMoPでイメージ通りの仕上がり。ルックスはほぼ満点。
サウンド
肝心のサウンドはどうか?
あとで詳しく書きますが重量は3.3kgとやや軽め+極薄ネックなので、クソ重いSolarのように「ローが図太くサスティンが長いメタル専用ギター」という感じではない。これは良い意味でも悪い意味でもなく個性ですね。レスポールと同じ材のセレクトにしたけどレスポールっぽさは全くありません。逆にストラトっぽいギラつきもある。ボディはややエアリーな鳴りも感じる。締め込みすぎずヤワすぎずバランス型ですね。
2本のカーボンロッドが入ったネックは剛性十分で、極薄のマホガニーネックに関わらず立ち上がりが速い。ローステッドメイプルと同等の剛性感があり、これは狙い通りでした。
今までのギターだと、アタックのガリッとした感じやタイトで小回りが利く感じはJR Cutlassに近い印象。JRのハードテイル版があったらこんなギターかな。重量的にもほぼ同等です。もしくは3.3kgのMayones Setiusがあれば近いかも。以前比較した3.0kgと3.7kgのちょうど中間のロー感、鳴り感です。ただしSetiusほど甘く太いマホガニーっぽさはなく、やっぱりCutlassに近い。
Cutlassはストラトが源流のメイプルネック+アルダーボディなので意外だったけど、材を替えてもモデルの差は埋まらないと思ってるので、これはAriesがそういうキャラクターってことです。
(上記は生鳴り込みの感想です)
Lithiumピックアップはそんなにホットではなく、パッシヴらしくピッキングの強弱やボリューム・トーンノブの位置によって色んな音が出せる。若干のエアリーさ、剛性の高さも相まってクリーンも綺麗で瑞々しくプリッと立体感があります。僕はメタルのリフをフルピッキングでバカスカ弾くタイプなのでもっとハイパワーなものに替えてもいいかもしれない。
総合的にみると「Jeffが考えたもっともversatileなギター」がAriesなのかなと思います。当初狙ったレスポール感、マホガニー感はあまりなかったものの、Cutlass 6を持っていた時は「こいつのハードテイル版があったらな〜」と常々思いながら泣く泣く売却したので、これはこれでかなり気に入りました。
ネック
ネック厚はThinner Neck Profileを選択しました。
勝手に19から20mm前後かな〜と思ってたけど、実測値はなんと1F=18.5mm、12F=20.6mm。Cシェイプでこの薄さは他ではJP6、Majesty、JR Cutlassくらいです。Mayones DuvellやSchecterのUltra Thin C(19mm程度)でもここまで薄くない。しかもカーボンが入ってミディアムジャンボフレットとなると吊るしでは他に存在しないと思う。
後でよく見たら公式にちゃんと「ノーマルで1F=19.3mm」と書いてありました。Thinnerで0.8mm薄くなるってことですね。
この薄さにも関わらずカーボンロッドのおかげで剛性は出ているのでサウンド的には問題ない。けど演奏性としては、最近Mayones とかSolarみたいな20mm前後のネックにも慣れてきたところなので、さすがにちょっと薄すぎたかも。
雨で前日と湿度が30%以上変わった日でもチューニングがほとんど動きませんでした。もちろんペグの精度とかもあるけど、この薄さでオイルフィニッシュのマホガニーネックにしては極めて安定した造りだと思う。
シェイプは期待した通りの無駄のない放物線Cシェイプで、指板横からRが始まりショルダーもフラットスポットもありません。EBMM、Mayones、Schecterあたりと同系統。
ボリュートはほんのわずかにあり。
極薄のCシェイプ、ネック裏のオイルフィニッシュの完璧なサラサラ感、ミディアムジャンボフレットという共通点から、ネックフィールもオリジナルJP6やJR Cutlassとかなり近いです。しかも12-16インチコンパウンドラディアスなので、もしかしたら知る限り唯一のJP/JRを超えるファストなネックかもしれない。
ネックジョイントは薄いプレートレス4点ボルトオンにも関わらず、ここも剛性がしっかりしてる。
僕は全体の剛性をチェックするために開放で鳴らしてネックベンドするんだけど(もちろんギターには良くないですが)、このテストでもピッチが揺れず、造りはかなりしっかりしてます。ヤワなネックとジョイントだとウニョウニョとピッチが揺れる。
このギターに限らずカーボンロッドって素晴らしいと思う。ただし、マホガニー特有のローミッド感って剛性の低さから来ると思うので、そこはトレードオフかも。Kieselはデフォでカーボンロッドが入ってるので、マホガニーっぽいサウンドを狙うなら他のメーカーにした方がいい(CS6シェイプとかでもネックは一緒なのでたぶんレスポールっぽくはならない)。
ヘッドストックは3x3にしており、ペグ同士が離れていて回しやすい。3x3にして正解でした。
重量
オーダーなので重量ガチャが怖いところ。公称はアルダーボディで3.54kg。重めになればいいなとマホガニーバックでオーダーしたけど、実測は3.3kgでした。もう少し重い方が好みだけど、これは鉛シールを貼って調整できる。重心バランスもデフォで問題なし。
そういえば3.3kgという重量もJR Cutlassと同じでした。やっぱりサウンドへの影響は材種より重量と剛性の方が大きいな〜と改めて感じる。
反省点
ボディ材のマホガニーは重量のバラつきが大きいため、重さ重視でウォルナットにしてもよかった。
トップ材はどうせなら思い切って5Aにアップグレードすべきだった。
Thinner Neck Profileにしなくても十分薄かった(Thinnerでも剛性は十分あるので、薄すぎると弾きづらいとか、より剛性がほしいって人はノーマル厚が合う)。
モデルの個性とカーボンロッドの影響でどうせマホガニーっぽさが出ないなら、見た目と剛性重視でフレイムメイプルネックにしてもよかった。
PUはもっとハイパワーなIllusionistかThoriumにすべきだった。
セレクターは5wayのままでもよかった(オーダー後に趣味が変わったため)。
まとめ
オーダーメイドって「現物を見て弾いて納得して買う」っていうギター購入の基本とは対極にある買い方です。杢目、重量、ネック厚、そして一番肝心なサウンドすら届くまで想像がつかない。
なので自分の中で「このスペックをこうすると結果はこうなる」というリクツがある程度確立された人が、それぞれのスペックを確信を持ってチョイスしていかないと、「こんなはずじゃなかった」となる可能性が大きい。既製品のギターをある程度(最低10本以上)所有してきた人でないと理想のオーダーシートを作れないという意味では、やはりマニア向けかなと思います(演奏スキルとは関係なく)。
それだけに僕のようなスペック厨にとってはパラダイスです。今後40万以上の吊るしのギターを買うことはないかも。
あとはケチらないこと!これは鉄則。オーダーってめちゃくちゃリセール悪いので、ケチって微妙な部分を残すより、てんこ盛りで満足行くものを頼んだ方がいい。「10万以内なら誤差」くらいの気持ちで。
で、届いたものは多少の欠点や想像と違うところがあっても世界に1本のギターと思ってまとめて愛す!という度量の広さが必要。
個人的には、初めてのオーダーにしてはとても満足のいくものができました。
ドルが下がったら7弦も行きます。