Kiesel GuitarsオーダーTips
(最終更新:2024.10.19)
Kieselのギターに興味がある人向けに、これまで3本オーダーした私が知る限りのオーダーTipsを書きます。
Kiesel Ariesってどんなギター?
材を変えてもそもそものモデル特有のサウンドというものがあり、それを出発点にスペックを選ぶ必要があります。Aries Bolt-onもA2もストラトがベースと感じますが、あまりtradなメタルに振り切ったローが図太いギターではなく軽量でアタックが速いギターです。公式が出してる標準スペックが「アルダーボディ、メイプルネック、ボルトオン」であることからもストラトをベースに作られてることが分かります。標準スペックで作れば3.54kgでHHが載ってるためモダン系でバランスの良いスーパーストラトって感じですね。
ネックは全てカーボン補強ロッドが2本仕込まれていてこれもfastさの要因です。カーボンのおかげで温湿度が変わってもネックは非常に安定しています。ネックジョイントは極薄できわめて弾きやすく仕上げられていて、個人的にボルトオンで弾いた中ではもっとも弾きやすいジョイントです。4点留にもかかわらず非常に剛性が出ており精度と造りのよさが伺えます。
ボディ材と重量
ボディ材って重視する人もしない人もいますよね。個人的には材種そのもの(トーン)はどうでもよく気乾比重と剛性(ヤング係数)だけを見ていて、ギター全体でHardtailなら3.5-4.0kg、Evertuneなら4.0kg-4.3kgくらいが理想です。
公称重量はアルダーボディで下記の通り。ここから個体差で増減します。
ちなみに私のA2はウォルナットボディで4.20kgありますが、Evertuneの重量(7弦で+350gほど)を差し引いてもボディ材だけで500gほど重くなったようです(リッチライト指板も重いらしい)。7弦Ariesはアルダーボディ+フレイムメイプル指板+Evertuneで3.70kgとこちらはほぼ予想通りでした。
オーダーだと個体差は予測できないためアルダー、ウォルナットなど比重のバラつきが少ない材を選ぶことも検討してください。個人的に重量と剛性の確保は必須なのですが、ウォルナットは比重は重い(約0.63)ですがホワイトアッシュ(0.7-0.8)ほど重くはなく、剛性が高く、ホワイトアッシュの代替材として良い木だと思ってます。マホガニー、スワンプアッシュはあまりに比重のバラつきが大きいので個人的にオーダーでは使いたくない材です。実際手持ちのDelos 7はスワンプアッシュボディですがトータルで4.16kgあり、Evertuneが載っているとはいえホワイトアッシュに近い重量です。軽いギターを求めてスワンプアッシュを選んでも軽くなるとは限らないです。
ちなみにストックの中でもっとも軽い材を選定して使うメールオプションもあります(有料)。反対にもっとも重い材を選定してもらうことはできませんでした。
また理想より軽いギターはウェイトを仕込んで重くすることができますが、理想より重いとザグるなどして破壊改造するしかないことにも注意して下さい。
ネックシェイプ
ネックシェイプは無駄のないCシェイプでMayones、EBMM、Schecter、Legatorなどに近く、IbanezのDシェイプやESP、Jackson系のUシェイプとは異なります。Thinner Neck Profileにしてもボリュートは付きません。個人的には無駄な曲率変更がなくどこに親指を置いても一定のフィールなのでもっとも弾きやすいシェイプです。
標準のネック厚は公式サイトに出ている数値で下記の通りです。(以前は6弦は1F=19.3mmだったと思いますが2024年頃から変わっています)。
7弦は剛性確保のために厚めにしてるのか?とも思いますが、8弦の公称値はこれより薄いので、この数値は誤植な気がします。いずれにせよ6弦よりやや厚いのは確かなようです。
Thinner Neck Profileを選択すると以下の通りです。
やはり6弦の方が薄く、6弦のThinner Profileはきわめて薄くなります。公称値とは±1mmくらいの誤差が出るようです。さすがに19.0mmを切ると剛性が落ちる気がします。
ネックフィールはネックの反り、弦高、フレット高などによってもだいぶ変わるので注意して下さい。
ネック材と指板材
個人的にネック剛性はかなり重要です。これは私の失敗談ですが、最初のAries 6はウォームさを求めてレスポール風にマホガニーネック+リッチライト指板で作ったところ、Thinner Profileだったこともありちょっと剛性が低くなりすぎました。046なら問題ないですが052だとややマイルドです。またネックはTung Oilのため湿度変化で結構反りが出ます。Tung Oil仕上げならメイプル以上の硬さがほしいところです。カーボンロッド入りとはいえ油断なりません。
また2本目のA2-7と3本目のAries 7はバリトラネックに憧れてFlamed Mapleネックにしました。トラ杢自体はあとで書くように非常に良かったのですが、Aries 7は指板もFlamed Mapleにしたためかこれもネック剛性が低くなりました(そういえばEBMM JP15もネックがヤワだったので買わなかったのを思い出しました…)。一方A2-7はリッチライト指板と合わせたためか満足いく剛性になりました。ちなみにリッチライト指板はエボニーより硬く、色ムラもなく、オイルが不要でついでに絶滅危惧種の木を切らずに済むので大好きです。
こんな感じでネック材とシェイプと指板材のペアリングでかなり剛性が変わります。バリトラネックはロマンですがソフトメイプルだし、ネック裏ってあんまり人に見せる機会ないので今後はハードメイプル以上の硬さで作りたいです。
杢はアップグレードした方がいい?
ここは悩みどころだと思いますが、オーダーでトップ杢が外れると悲惨なので個人的には多少無理してでも5Aくらいにはアップグレードすべきだと思います(アップチャージについては後述します)。たとえばBuckeye Burlだと↓こんな杢目が出ることもあります。
↓はKiesel公式が投稿していたPoplar Burlのグレード比較です。やはり4Aだとちょっと不安です。一級品のトップを目指すなら7Aに行きましょう。費用対効果のバランスが良いのは5Aだと思います。
とはいえいくらアップグレードしてもガチャはガチャです。バール材はBuckye Burl>Poplar Burl>Burled Mapleの順に当たり外れが大きいと思ってます。個人的にBuckeye Burlは7Aだとしても好みの杢かは別の話なのでオーダーでは使いたくありません。いろいろググって「この中で最悪の杢が来ても許せるかな〜」と想像してみましょう。個人的にはアップグレードなしで↓が来るBurled Mapleが一番おすすめです。
一方Flamed Maple Neckの杢に関しては2本ともアップグレードなしで↓が来ました。KieselのFlamed Maple Neckの杢はトップレベルだと思います。このレベルならアップグレードする必要はないと思います(もっともネックと指板のフレイムをアップグレードできるかはKieselに聞いてないので不明です)。
細部のオーダーはできるの?
国際営業にメールして細部の注文をしたり質問したりできます。当然すべて英語でのやりとりです。相手はアメリカ人なのでメールは3往復くらいで終わらせましょう。4往復目以降はメチャクチャ適当になります笑
トップ材のアップグレードはメールで頼む必要があります。今まで営業に聞いたアップチャージをまとめると↓です。K-Topは7Aの中でも特に優れたものです。この値付けは変動しているかもしれません。
ほかにも3wayトグルスイッチへの変更、カスタム配線なども見積もってくれます。3wayトグルにするとボリュームノブとトーンノブが縦に並ぶように配置が変わるので注意してください。Evertuneを選ぶとBuilderではブラックハードウェアしか選べませんが、メールすればブリッジ以外のハードウェアカラーは変えてくれます。
Ariesの標準ボディ厚は42mmですが、Evertuneを載せると45mmになります。購入後にEvertuneに換装することは可能ですがスペーサーを挟む必要があります。
逆に対応してくれないのはオリジナルインレイなど。これはCNCルーターの設定がないためらしいです。また22フレット+Evertuneも無理でした。ここらへんがセミオーダーの限界ですね。とりあえずメールでいろいろ聞いてみましょう。
注文からどれくらいで来るの?
公式は「7〜14週間で届く」と言っているので1か月半〜3か月半くらいですね。
実際には6弦が2か月半、7弦が4か月弱と4か月ちょうどで届きました。たぶん特殊なスペックになるほど納期が長くなるっぽいです。待ってる間に気が変わらないようによく吟味する必要があります。
セールってあるの?
ほぼ毎月セールしてます。メルマガ登録しておけば教えてくれます。セールと並行して"Multiscale May"(マルチスケール無料)など別のセールが行われることもあります。どのオプションが安くなるかはランダムなので貯金しつつ待ちましょう。セールはいつ終わるかは明示されないので、自分のbuildが安くなるセールが来た時にすぐに発注できるよう細かい質問は事前にメールで聞いておくことをおすすめします。
総支払額はいくらになる?
・本体価格(本体+メールオプション−セール値引)
・送料$80ほど
・カード会社やPayPalの海外送金手数料
・消費税(3%ほど。後述)
これが全てです。ドル円レートはVISAデビットの場合支払い時点で確定するようです。レートはYahooの株価アプリより少しドルが高くなるっぽい?
ちなみにPayPalの手数料は4%、クレジットカードは3.3%程度とPayPalの方が高いです。地味に忘れがちですが事前にカードの利用限度額を上げておかないと支払いできません。
たとえば本体$3,000のギター、1ドル150円でクレジットカードで払うと、
送料込$3,080×150円×手数料1.033+消費税12,700円=489,946円ほどが総支払額になります。
消費税の払込書は後日FedExから郵便で届きます。PayPayで支払えます。ギター本体の日本円代金の10%がかかるわけではありません。課税標準額がもっと安いので大体ギター代金の3%くらいになります。6弦が12,700円、7弦が18,100円、18,400円でした。
関税や国内配送料は今のところ請求されたことはありません。
そもそもオーダーすべき?
これは難しいです。Kieselはオンラインビルダーが優秀なのでルックスのイメージは付きやすいですが、そもそもオーダー品は肝心の出音が届くまで分かりません。「届いたものは欠点も含めて愛す」くらいの覚悟じゃないといけません。どうしても気に入らなければ売却もできますがオーダーギターはかなり値落ちします。
まずはオーナーに試奏をお願いするか、中古を買うか、できるだけ安いオーダーで作ってみて気にいるか試せるとベストです。
スペックと出音の関係について自分なりの方程式が確立されている人か、吊るしのギターにどうしても理想のギターがない人にはおすすめです。あとできれば全てのスペックを理由があってチョイスできると一番いいですね。なんとなくで選んだパーツは後で「こっちにしとけばよかった…」となる可能性が高いです。
総合的に言えばシリアスなギタリストよりも私のようなギターオタクの方がオーダーには向いてると思います。