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脱Apollo Twinしました

5年間使ったUniversal Audio Apollo Twin MkII Duoを売却することにしたので理由をつらつら書きます。「Apolloの良くないところリスト」みたいになっちゃったのでUAファンの方は読まないで下さい笑
特に故障したとかの急ぎの必要はなかったのですが、HPアウトがやや接触不良気味だったとか、KemperからのWet L/RとDryを同時に録りたくなったなどが買い替えの理由です。

後継機が高すぎた

それよりも後継機のApollo Twin X Gen 2の価格が上がりすぎたことで「ちょっとUAには着いていけないな」と思ってしまいました。5年前にMkII Duoを買ったときが90,270円。当時110JPY/USD程度だったので為替で30%値上げしたとしても123,000円くらいですが、実売はなんと192,500円。X4 Gen 2に至っては30万円を超えました。UADプラグインが付くとは言ってもさすがに高すぎます。

そのUADプラグインバンドルもGen 1のHeritage EditionからEssentials+ Editionとなりましたが、リストを見ると1073やEMT 140など皆さんが使いたいような目玉アイテムは入っておらず設計の古いLegacyやあまり人気ではないエフェクトが多い。UADを本格的に使おうとするなら課金が必須です。これならバンドルなしで本体のみで売るかプラグインを自由に選べるようにしてほしいですがその選択肢はありません。要するに抱き合わせ商法、殿様商売がちょっとひどい。

今現在Apollo Twin X Gen 2のDUOとQUADの価格差が49,500円です。単純に考えてDSP 2つでこの価格ですよね。UADのバンドルなしなら今のレートで本体123,000円です。ここからDSP 2つ分差し引けばオーディオインターフェイス本体としては7〜8万円くらいのもんです(もちろんソフトウェアミキサーの動作などにもDSPを使ってるのでDSPなしってのはあり得ないですが)。7〜8万円のAIFにDSP 2つと二軍のプラグインを33個つけて192,500円。つまりこの価格の6割はDSPと抱き合わせプラグインの金額ということになります人気プラグインを買い足そうとするとさらにお金がかかります。

Gen 2の新機能としてはハードウェアベースで動くSound ID Referenceオートゲイン機能があり、前者はけっこう魅力的ですが必須とまでは言えず、後者は4万円程度のAIFにもついてる機能で、2〜4ch程度ならそこまで恩恵は大きくないと思います。というかオートゲインのセットに10秒くらいリスニングタイムがかかるので手動でセットした方が絶対早いです笑

また「ApolloのI/Oはそんなに良くない」と言われますが↓の動画ではScarlett、Clarettとの比較が聴けます。

まあ出音は好き好きだしアマチュアのDTMでそんなに超高音質にこだわる意味はないと思ってるのでそこまで重視してませんが、「そのお高いDSPに割く予算をI/Oに使えばもっと良くなるんでは?」という感じは常にあります。

UADプラグインって要る?

つまるところ「I/Oそのものを多少犠牲にしてもDSPとUADプラグインを使いたい」というのがApolloを使う最大の理由になるわけですが、実際5年間使ってみて「別になくてもいいな」というのが正直な感想でした(あくまでアマチュアDTMerとしての個人的な感覚です)。

まずプラグインのクオリティについては、悪くないと思います。ただ「他のプラグインより圧倒的に良い!!」とまではなりませんでした。そもそもアマチュアDTMerで、UADでモデリングされてるようなアナログ名機を実際に触って使ったことある方ってどれくらいいますか?ちょっと借りて「なんかすげ〜!」と思った程度じゃなく、その機材のセッティングのスウィートスポットとか挙動、出音についてよく知ってるレベルの方ってそんなにいないと思います。これが実機のギターアンプとかならまだ分かるんですよ。いつも家やスタジオで使ってるアンプが音も挙動もソフトで忠実に再現されてたら便利ですよね。でも1176もLA-2Aも実機持ってるアマチュアは多くないので、それらのプラグイン版が本当に良いのか、どう良いのか、なぜWavesではダメなのかを確信をもって説明できる人もかなり少ないはずです。比較動画も沢山あってもちろん出音は他社と違いますが、本当にその違いが、UADを使うべき明確な理由になるでしょうか?実機(を模したプラグイン)を通せば必ず音が良くなるでしょうか。ここが曖昧な状態でメーカーやスポンサードレビューの絶賛を信じてかなり高額なプラグインを買い増していくのはあまりヘルシーじゃありません。

UADって(GUI含め)良くも悪くも再現度がめちゃ高いので、実機をよく知らないと不便に感じる仕様や挙動もそのまま再現されてます。通すだけで出力が上がるとかね。また最近のネイティブプラグインなら当然付いているコンプのサイドチェインやMIXノブすらない製品も多いです。これは私のようにプラグインしか知らないDTMerにとっては「聞くところによるとなんか良いらしいクオリティ」よりも不便さ、難解さの方が目につきます。特にFairchild 670とかLexicon 224とかってUIが分かりづらいので使い方を学ぶだけで時間かかるんですよ。その時間って本当にクリエイティブでしょうか。

あと私個人の制作スタイル的に音作りはKemperやソフト音源で済ませることが多くなり、ミキシングではなるべく少ない手数で終わらせるようになってきました。最近はインスト曲を作ることが多くソフト音源とライン録りで完結するためマイクプリもそこまで重視してません。正直FabfilterとiZotopeがあればミキシングは終わってしまうんですよね。他社のネイティブプラグインもめっきり買わなくなりました。また私の場合作ってるジャンル(モダンメタルコア)的にも、歴史的名機の忠実な再現プラグインを使うより、デジタルやモダンなアレンジがされたプラグインを使って仕上げた方がカッコよくなると思ってます。

DSPエフェクターはミキシング用プラグインではない

そもそも、AIF内で動くDSPエフェクターって「ミキシングで使うプラグイン」だと思われてますが、違います。この点についてはNK Productionsさんが非常に詳しいので読んでみて下さい↓

書いてある通りですが、これ要するに「REC用のハードウェアエフェクター」の代わりなんです。つまり掛け録りやREC中のモニターサウンドの補正に使うものであって、本来はミキシング時に使うためのものではないです。「でもDAWのミキサーでUAD使えるじゃん?」というのも正しいんですが、それはあくまで応用的な使い方です。ミキシング中にセンドリターンでスタジオにあるアウトボードを通してるイメージで、プラグインで完結できるなら後からわざわざ面倒なアウトボードを使う理由がありません。「後から面倒な処理するくらいなら録りの段階の音作りとしてアウトボード通してRECしちゃおう」というのが本来の用途です。実際UNISONプリアンプは後掛けできません。
AntelopeのSynergy Core FXなんかだとより硬派で、DAWに直接プラグインとして挿すことができず、DAW内でルーティングを組みハードウェアインサートをしないといけません。書き出しもオフラインバウンスはできずリアルタイムバウンスしかできません。ただ、これが本来の姿です。AntelopeはFPGAを使っているためDSPのような計算処理をしないのもハードウェア的です。
なお、UADもSynergy Core FXもDAW内でネイティブプラグインとして使用するために別途ネイティブ版も用意しています。
以上のように実機の代わりとして使うことを想定しているからこそ、UADはGUI含め実機の完全再現を目指してるんですね。

で、「果たしてこれが必要か?」と考えると、私は基本掛け録りはしません。だってドライで録って後からエフェクト掛けた方が失敗も少ないし追い込めるからです。最初からIn the BoxでDTMを始めた人ならこれが普通ですよね。ギターはある程度やり方が決まってるので掛け録りでも失敗しにくいですが、ボーカルの掛け録りはそれこそギターと同じレベルでやり方が決まってて完成形がイメージできてない限り怖くてできないです。失敗したら録り直しなので。
まあボーカルRECの時にダイレクトモニタリングしつつコンプとリバーブ掛けられたりするのは便利なんですが、それだけならDAWでエフェクト掛けてソフトウェアモニタリングしてもそこまでレイテンシーは気にならないし、ギターならKemperでエフェクトかけちゃうので、私の用途的にはなくても大して困らないんですよね。
ミキシング用途では先ほど書いたように不便・難解な点もあるし、単価が非常に高いし、AIFの電源落としたら動作しないし、他社でもハイクオリティなプラグインは沢山あるので、あえてミキシングでUADを使う意味はあまりありません。
逆にボーカリストで「UNISONプリアンプの掛け録りがしたい!」という方とかなら大いにおすすめできます。マイクプリに合わせてインプットインピーダンスまで変えられるのはたぶんUA製品くらいなので、数十万する実機マイクプリの代替品としてはかなり良いと思います。こういう用途ならダイレクトモニタリングでモニターだけに掛けられるコンプやリバーブも真価を発揮します。


良くも悪くも「インプット段でDSPエフェクターを使いたいかどうか?」で買うべきか否かが決まるので、それが要らないと思った時点でApolloを使う理由はないんですよね。
長くなってしまったので代わりに買った製品については後日書きます。

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