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司法試験に10位代で受かるまで
推定78期です。
今回の投稿は、予備(司法)試験の勉強を始めた令和3年9月頃から、令和6年度司法試験合格までの勉強の振り返りになります。
簡単に経歴を紹介しておくと
・令和4年度が予備短答合格(約170点)・予備論文不合格(188点、1844位)。
・令和5年度が予備短答合格(202点、210位)・予備論文合格(約280点、約110位)・予備口述合格(121点、70位)。
・令和6年度が司法試験合格(短答60位・論文10位台・総合10位代)。
といった形です。
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司法試験の再現答案は以下のリンクになります。
自分はほぼ独学だったので、予備校の賢い使い方等については何も言えません。他方で、基本書・演習書・過去問をやりこんだので、基本書等の使い方についてはお伝えすることが出来るのかなと思います。単なる勉強の振り返りだけでなく、勉強する際に気をつけていたこと等も含めたつもりなので、参考になれば幸いです。
なお、箇条書きのような形式を取ったために、常体の部分が多々ありますが、ご了承ください。
1 勉強開始からの大まかな流れ
①令和3年9月〜11月 入門講義期
スタディングの基礎講義を聴いていた。講義は電車の中や家で聞き流していた。この時、復習等せずとにかく終わらせることに重点を置いていた。もっとも、一通り聞き終わったあと完全に忘れていたので、もう少しちゃんと聞いておくなり復習するなりしておけば良かったと後悔している。
②令和3年12月〜令和4年2月 入門講義復習期
上記入門講義の復習のため、とりあえず短パフェを全科目1周した。ほぼ一からの状態だったので大変だった。ただ、全科目をある程度思い出すことはできたと思う。
③令和4年3月 論文対策期
ネットで論文の書き方を調べる。ネットに上がっている過去問の答案例の流し読みをし、なんとなく法律論文の書き方を理解した。
④令和4年4月〜5月 短答対策期
学部2年で論文を1回受けてみたかったので、とにかく短答合格を目標に勉強していた。勉強法はただひたすら短パフェを周回するというもの。この時は脳死で過去問をやれば受かると思っていたので、理解することを放置してとにかく回していた。今改めて振り返ると極めて効率の悪い勉強だったと思う。商法のロト6が当たったり、一般教養でそれなりに取れたりしたことに救われ、滑り込み合格となった。
⑤令和4年6月〜7月 論文対策期
法務省のHPで過去問をダウンロード・印刷し、過去問答案構成、参考答案の流し読みをしていた。元々学部2年で論文に受かるつもりはなく、加えて細かい知識は間に合わないと思ったので、三段論法を意識して答案の型を掴むことだけに重点を置いた。
無事、論文大差落ち。この時期にもう少し詰め込みをしていれば今後がもう少し楽だったかもしれないと後悔している。
成績通知表を見て、意外と行政法と実務基礎は受験生のレベルが低いということを理解する。
⑥令和4年8月〜令和5年5月 インプット期
基本7科目に関しては、基本書・演習書の通読がメインで、たまに答案を書くといった方針だった。例えば、基本刑法を読む→刑法事例演習教材を読む、あるいは、紅白本を読む→会社法事例演習教材を読むといった感じで当該科目の基本書を読んだ後に当該科目の演習書を読んでいた。基本書の通読により知識をインプット、その後記憶が薄れないうちに演習書の通読により知識の使い方をインプットするイメージで勉強を進めていた。大体2週間で2科目終わらせていた。1日1科目だと飽きてしまう一方、1日に何科目もやってしまうと1日当たりに進む量が減ってしまい、深く理解することが難しいため、1日に2科目勉強するということである。答案作成は週に1、2回。たまに復習や頭の体操も兼ねて答案構成を10年分に1日でやる等していた。
経済法に関しては令和5年の1月に条文から学ぶ独占禁止法を1周した後、すぐに1冊だけで経済法に掲載されている問題(つまり過去問)約10年分と出題の趣旨・採点実感を読んだ。インプット量が少なく、自分に合ってると感じたため、その後短答後まで放置した。
実務基礎に関しては、ほとんど何もしなかった令和4年度予備論文ですらCを取れたことから、実務基礎のための勉強はほとんど不要だと思っていた。そのため、民法や刑法、両訴の勉強をしていれば十分だと思い、大島本上巻と定石本を1、2周通読した以外は特に何もしなかった。しかも、大島本上巻については民事実務対策というよりは、民法及び民事訴訟法の理解促進のために読んだみたいなところがある。
⑦令和5年5月〜令和5年度予備短答 短答対策期
短パフェ+判例六法で勉強していた。短パフェは、基本は1周のみ、間違えたところは出来るまでにとどめ、判例六法の素読にかなり時間を充てていた。民訴、刑訴、民法、商法、行手法は条文そのままの問題が多いので、素読の効果が大きいと思う。常に判例六法を携帯して暇さえあれば素読していた。
⑧令和5年7月〜令和5年度予備論文 超高速復習期
今までの教材に、事例で考える会社法、ロジカル民訴、行政法解釈の技法追加した。
上記のインプット期に通読と並行して行っていたメモを定義集のような形でコンパクトにまとめ、それをひたすら周回するというのが基本的な方針だった。それに加えて、この期間は、インプット期に使用していた教材及び上記の追加教材を1、2周通読し、適宜上記の定義集にメモすることもしていた。この時も1日2科目、4日で当該2科目を終わらせるというペースで進めていたと思う。答案作成は一切しなかった。
直前1週間はひたすら定義集の暗記+事例を読んで脳内で答案構成をすることにより事案把握の感覚が抜けないようにすることだけに徹した。
なお、以下の⑫でも出てくるが、超高速復習期とはいわゆるピーキングのために行うためのもので、使ってきた教材を高速で周回することによって今までの勉強で撒いてきた種を全て回収していくためのものである。これにより、知識が血肉となって身につき、本番での点数を最大化することができる(時間が有り余っている学生だからこそ取れる戦法ではあるが)。
⑨令和5年度予備論文〜令和5年12月 自作論証集作り
論文の手応えについて、終わった直後は受かったかなーと思っていたが、日が経つにつれてミスが発覚し、10月には50%、11月には30%、12月には3%みたいな推移だった。そのため、来年の予備試験のために今のうちに論証集を作っておこうというモチベだった。
今までの教材に読解民訴、事例研究行政法、応用刑法Ⅰ、ロースクール演習刑訴法、ロースクール演習民訴法を追加した。なお、下記の通り、この時期に憲法についても色々入手したが、レベルが高く挫折した。一読してそれ以来読まなかった。
論証集作りは、上記の定義集を論証の形にまとめ直すというものだった。結果が気になるため、あまり集中できなかったが、Wordで打ち続けるだけなのでなんとかなった笑。下記の論証集は、当時の論証集を改変したものである。これらの脚注がなく、やや内容が薄いものをこの時期に作っていた。
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⑩令和5年12月〜令和5年度予備口述 口述対策期
論文合格発表までに、大島本、基本刑法、基本刑訴を1周ずつしておいた。
合格発表後、上記の基本書を読みまくった。刑事系及び民法の論証も適宜確認した。
⑪令和6年2月〜5月 司法試験対策期
まず、司法試験に慣れるために司法試験の過去問の答案作成をするところから始めた。伊藤塾の特待生制度により、令和5年度~平成29年度の7年分の過去問については答案例等を5000円で入手できたので、7年分についてはフルで書いた。
刑法に苦手意識があったため、また、憲法は憲法ガールに解説があったため、それぞれ7年分の答案作成に加えて、全年度分の答案構成をした。
並行して上記の基本書や演習書を高速で通読した。ここまで来ると大体内容を覚えているので2日で1冊読み終えることもあった。通読に際しては、適宜自作論証集の修正・加筆も行った。予備合格者の中では比較的勉強時間を確保した方だと思う。
今までの教材に徹底チェック刑法、民法サブノート210を追加し、それぞれ1、2周通読した。また、民法の択一六法については短答対策も兼ね5周くらいした。
⑫令和6年5月〜令和6年度司法試験 超高速復習期
短答に関しては、予備短答時と同様、短パフェ+判例六法(択一六法)で勉強。
論文に関しては、令和5年度~平成26年度までの10年分の過去問の答案構成、論理構成が不安だったものについてはもう1周答案構成をしていた。また、上記の7年分の答案作成も数科目残っていたため、6月半ばくらいまでは答案を書いていた気がする。これらに加えて、基本書・演習書の爆速通読、自作論証集の修正・加筆も行っていた。
なお、5月末に受けたTKC模試が総合で50位前後だったので自信を持つことができた。
残り10日間は割合的に9:1=自作論証集の暗記:判例六法・民訴択一六法の素読、という感じだった。
以上のような流れになるが、意識していたことは隙間時間の有効活用と勉強できる時は一気に詰め込むことである。ちょっとした隙間時間には論証暗記、判例六法・択一六法の素読を行っていた。それ自体では大した時間にならないが、塵も積もれば山となる。また、逆にある程度まとまった時間が取れる時は一気に進めて効率良く理解を深めるということも併せて意識していた。毎日少しずつ継続することも大事だが、間延びすることは否めないし、深く理解するという観点からだと短期間で詰め込む方が良いのかと思う。
また、勉強量か勉強の質かみたいな争いがあるが、個人的には勉強量が伴っていないのに勉強の質が上がるわけがないと思う。これをやれば劇的に成績が上がるといった魔法のようなものはないので、まずは勉強量を確保するのが大事。
1日にたくさん勉強する→ここをこうするともっと理解しやすいんじゃないか、この時間に科目入れ替えるとリフレッシュ出来そうだな、と反省する→次の日はそれに基づき変えてみる→結果質が上がる
といったイメージで、たくさん勉強するからこその気づきがあるのかなと思う。勉強のやり方以前にまずは絶対的な勉強量の確保が最優先である。
長時間勉強するうえで良かったのは午前と午後で場所を変えることと休憩するのではなく科目を変えることによってリフレッシュすること。前者は、時間の割に疲労感が無く、リフレッシュにもなる。自分は雑音が気にならなかったので良くマックで勉強していた。ちなみに、アイスコーヒーSサイズ1杯で12時間粘ったこともあり、この時は迷惑極まりない客だったと思う。後者について、スマホ等で休憩してしまうと帰って来れなくなる可能性があったり、そもそも絶対量が減ったりするというデメリットがあるが、科目を変えるだけならそのまま勉強を継続できる上、帰ってこれなくなる心配もない点で良かった。
以上を踏まえて、ここで一句
量やれば
自ずと質は
アガルート
ですね笑
2 使用教材
以下では、時期ごとに使用していた基本書等を簡単に紹介していきます。もちろん、当該時期に紹介している基本書等のみを使用していたわけではなく、徐々に使用した基本書等が増えていっています。番号は、上記の①〜⑫の各時期に対応しています。なお、書評については下記リンク参照です。
①〜⑤(令和4年度予備論文受験まで)
スタディング、アガルート論証、短パフェ、憲法学読本
⑥〜⑦ (令和5年度予備短答受験まで)
以下の教材をひたすら通読。通読時には適宜白紙のノートにメモ。
・憲法→憲法学読本、合格思考、憲法ガール、憲法判例の射程
・行政法→基本行政法、基礎演習行政法、実践演習行政法
・民法→民法全、新試験対策問題集(赤本)
・商法→紅白本、会社法事例演習教材、新試験対策問題集(赤本)
・民訴→リーガルクエスト、解析民事訴訟法、新試験対策問題集(赤本)
・刑法→基本刑法Ⅰ、基本刑法Ⅱ、刑法事例演習教材
・刑訴→基本刑事訴訟法Ⅰ、基本刑事訴訟法Ⅱ、エクササイズ刑事訴訟法、刑事訴訟法事例演習教材
・経済法→条文から学ぶ独占禁止法、1冊だけで経済法、論点解析経済法
・実務基礎→大島本上巻、刑事実務基礎の定石、試験対策問題集(赤本)
⑧(令和5年度予備短答から予備論文にかけて)
以下の教材も追加しつつ、短答後7月終わりまでに上記のメモをWordでまとめた。その上で、今まで使用してきた教材を高速で周回し、ここでも適宜Wordファイルを印刷したものにメモしていた。通読はゴールではなく手段であるから、やはり何らかの形で記録として残しておいた方が良いと思うというのが自論である。
・行政法→行政法解釈の技法
・商法→事例で考える会社法
・民訴→ロジカル演習民事訴訟法
⑨〜⑩(令和5年度予備論文から予備口述にかけて)
さらに以下の教材を追加して、上記のWordファイルを論証集の形に改編した。憲法や行政法といった論点数の少ない科目で40ページ前後、民法や刑法といった論点数が多い科目で80ページ弱になった。なお、憲法に関しては一読したがよく分からかったため、それ以降放置した。
・憲法→憲法演習ノート、判例から考える憲法、憲法上の権利の作法、憲法Ⅰ基本権
・行政法→事例研究行政法
・民訴→読解民事訴訟法、ロースクール演習民事訴訟法
・刑法→応用刑法Ⅰ
・刑訴→ロースクール演習刑事訴訟法
⑪〜⑫(令和6年度司法試験受験まで)
民法、刑法が他の科目に比べて苦手だったので以下の教材を追加した。択一六法と徹底チェック刑法は神である。
・民法→択一六法、民法サブノート210
・刑法→徹底チェック刑法
3 短答対策
短パフェと判例六法(司法試験前の民法に関しては択一六法)で勉強を進めていた。
もっとも、短答の勉強の基本は条文素読だと思う。短パフェは暗記のとっかかりを作るものであってあれを使って覚えるわけではない(もちろん、短パフェに載っている問題は解けて当然)。
ので、個人的には短パフェ等の問題集を回す時間よりも判例六法等の素読の時間を設けるべきだと思う。以下、意識していたことについて。
・現場思考問題は解く必要なし
学説対立問題等の現場思考問題は解かなくて良い。その場でできても本番解けるとは限らないし、またその逆も然り。むしろ、当該箇所について記載した基本書を読むべきだと思う。
・最終的には条文素読
上記の通り、短答の問題は基本的に判例六法に全て載っているのだから最終的な目標は判例六法の記載事項を全て暗記すること。問題を闇雲に解くくらいなら判例六法を素読すべきである。特に、民法・会社法・民訴法・刑訴法に関しては条文素読の効果が大きいと思う。憲法・刑法に関しては条文というより判例部分を読んだ方が良い。行政法は難しいので、行手法、行訴法をしっかり固めて、爆死しないことを最優先にするのが良いかと思う。
・短パフェを解く時に思考しない
勉強開始後最初の1周目はともかく短答対策時期は、一目で分からなかったら印つけてさっさと判例六法等で確認した方が良い。考えている時間がもったいない。また、考えて分かった問題は、本番異なる思考を辿った結果間違えてしまうおそれもある。一目見て、使うべき知識を把握してそれ通り解けたかどうかが重要であって、単に正解できたかどうかは大して重要でない。
・条文の見出し部分を見て、内容を想起してから素読をする
司法試験直前にやり始めた。多少時間はかかるが、脳に負荷がかかるため非常に良かった。もう少し早くから始めればよかったと後悔した。
予備短答の時は、憲法・行政法・商法の3科目で50点、民法・刑法・民訴・刑訴の4科目で100点、一般教養で21点の計168点を最低ラインにしてそこから何点伸ばせるか、司法短答は憲法30点、民法70点、刑法50点を目標にしてそこから何点伸ばせるかということを念頭に置いて勉強していた。
4 論文対策
まず、よく答案作成が大事だという人がいますが、個人的には答案作成より基本書等を用いた網羅的なインプットの方が重要だと思います。なぜなら、論文の書き方は基本的に全科目同じで、答案の型さえ身につけてしまえば書き方に困ることはない以上、あとは答案の引き出しを増やすという意味で知識を増やすことに徹した方が良いからです。過去問の答案作成及び当該論点の復習はあくまで「過去」問が解けるようになるにすぎません。もちろん、予備試験過去問・司法試験過去問を解くことを通じて論点抽出方法の習得、答案の型のストックといった一般的・抽象的なものとして落とし込むことは重要です。しかし、あくまでこのように一般的な形にしてストックするのであって、過去問で出た個別的な論点について時間をかけて復習する必要はないかと思います。
脳に対する負荷を掛けるということも意識していました。基本書や演習書を読む時にただ漠然と読むだけではあまり意味がないです。基本書等にある記述をどのようにして答案に反映させるかを考えながら読んだり、メモしたりしながら読むと必然的に頭に負荷が掛かるのかなと思います。また、脳に負荷を掛けるという観点なら答案作成までは不要で答案構成だけで足ります。事例を読んで論理構成を考えるだけでも頭を使うためです。そうすると、2時間あるいは70分かけて1年度分書くことと、数分で脳に負荷をかけることができる脳内答案構成のどちらがコスパよく勉強を進めることができるかはいうまでもないですね。同じ効果であるならばより時間が少なく済む方を選択するべきです。
そして、頭の中で論理構成をある程度出来るようになればあとは、インプットした知識を肉付けしていくだけです。答案の型が骨でインプットした知識に肉付けしていくイメージで、骨を過去問で習得、肉を基本書・演習書により習得するイメージですね。答案の型さえ自分の中で確立してしまえば、問題文読みながら頭の中で答案構成が出来るようになるので、読み終えて即答案作成に移ることができるのかなと思います(個人差あるかもしれませんが)。原則書いた分だけ点数が入る試験である以上、これが理想的だと思います。
答案作成はそこまで必要と思いません。が、実際に論文を書いてみると意外とあてはめの仕方が分からなかったり、問題提起の仕方で悩んだりと頭では分かっていても書きにくかったりするため、定期的には書いてみてもいいかなと思います。
論証暗記について1、2周目はとりあえず通読、その後は3周のうち1周は通読、2周は論点名見て頭の中で論証を思い浮かべてから確認するという感じで進めていました。3周のうち2周は脳に負荷を掛けるため(記憶のため)、1周は正確な理解のために行っていました。予備論文直前や司法試験直前は計10周はしたと思います。
以下、意識していたことになります。
・思考過程を書く
答案の書き方として、思考過程を書くことが最も重要。闇雲に書き連ねるだけの答案はあまり評価されない。説明が足りないと思ったら「なぜなら、〜。」とやってでもいいからちゃんと説明するべき。また、難しい問題ほど問題提起をしっかりして問題の所在に気づいているという思考過程を示すことが重要だと思う。
・本番までに頭を使い続けて、処理手順ないし論証展開の流れのストックを増やし続ける
本番は上記のストックに従ってひたすら書き続けるだけで、ほとんど思考をせずに書き始められる形にしていた。賛否両論あるかもしれないが、試験前に準備し続けて本番はそれを吐き出すだけという状態にしたかったためである。その上で、処理手順にない問題や処理手順とややズレた問題に対して思考して、論理を組み立てる。知識を吐き出すだけの問題に思考してしまうと、このような問題に対して時間を書けることが出来なくなる。ここまで来て現場思考が求められるのであって、知識を吐き出すだけの問題(いわゆる正解のある問題)に現場思考しても点数は付かない。むしろ基本的な知識を疑われかねない。特に予備では、「あてはめが重要」と言われているが、これは「(論点射的を当てた上で)あてはめが重要」という意味であって、あてはめ以前の段階で現場思考をしても点数は入らない。また、事実を使い切るのが大事という言説もあるが、これもただ闇雲に現場思考に基づいて事実を羅列しても点は入らない。論点ごとに適した事実引用求められるのであって、とりあえずあてはめで大量に事実を引用をするという作戦は、冗長になるばかりか、論点の理解を怪しまれてしまうため避けるべき。
また、自分の場合は、論証の暗記だけでなく、ナンバリングの型までストックしている論点もあった。自分はこの型を事前準備により確立させていたから答案構成が不要になったのだと思う。不安なものは論証の準備だけでなく、ナンバリングレベルで準備しておくと安心。
・端的かつ理解を示した問題提起
論点の結論、理由付けを逆から結論ありきで知らない振りをするイメージ。前にもツイートしたが、毒樹の果実の論点であれば、「第1次証拠ないしその採取手続に違法性が認められる一方、第2次証拠それ自体は適法な手続で採取されたものである場合における第2次証拠の証拠能力の有無」という論点であるから、それを逆から「第2次証拠それ自体は適法な採取手続により獲得されたものであるが、その前提となった第1次証拠の採取手続に違法性が認められるところ、第1次証拠採取手続における違法性を理由に第2次証拠の証拠能力が否定されないか。このような場合の判断枠組みが問題となる。」といった形で逆から問題提起すると上手くいく。
こうすることで採点官に論点を理解していることをアピールできる上、問題提起で迷うこともなくなる。
・主語と述語の一致
主語と述語が一致していない答案が多々ある。これはテクニックというよりも意識するだけの問題なので見返して違和感がないか確認するべき。
・パターン化した規範導出
基本書・演習書通読、論証作成期に意識していたのは、「〜である。そこで、〜の場合、〜に当たると解する。」という形に全て揃えること。最初の〜が理由付け、次の〜が規範、最後の〜が条文や請求の要件。こうすることで、規範を書く時に悩まなくなる。基本書・演習書の通読は最初の2つの〜の知識をストックすることと論点抽出力の向上のために行っていた。
・事実+評価を脳死でやる方法論の確立
「本件では、〜である。そうすると、〜といえる。」の形で事実の引用+評価をしていた。最初の〜が事実、次の〜が評価。接続詞等により多少は変わってくるが基本的にはこれを繰り返すだけだと思う。
・ナンバリングの次元をそろえる
同じレベルのものは同じレベルの番号で揃えましょうということ。刑法における構成要件該当性、違法性、責任については同レベルの話だから同レベルの要件で記載する。例えば、窃盗罪においては構成要件該当性(1)の中で、「他人の財物」、「窃取」、故意、不法領得の意思を同レベルのナンバリングで記載する、違法性(2)のなかで、正当防衛の成否や自救行為の成否を検討する。これらは一例であるが、常に意識すべき。
1 甲が乙所有のXを取った行為につき、窃盗罪(235条)が成立しないか。
2(1) Xは乙所有に属する財産的価値を有するものであり、「他人の財物」にあたる。
(2)「窃取」とは、他人の財物の占有を占有者の意思に反して自己又は第三者に移転することをいうところ、上記行為は、Xを占有者乙の意思に反してその占有を甲に移転するものであるから、「窃取」にあたる。また、上記行為の時点で、甲はXの占有を取得したといえるから、「窃取した」と認められる。
(3)甲は上記構成要件該当事実を認識しており、故意(38条1項)が認められる。
(4)甲に不法領得の意思が認められる。
3(1)正当防衛の成否(*占有取得に過ぎない場合は正当防衛も成立する)
ア 「急迫不正の侵害」とは~。
イ 正当防衛の成立を理由に違法性は阻却されない。
(2)自救行為の成否
ア
イ
ウ 自救行為の成立を理由に違法性は阻却されない。
4 よって、上記行為につき、窃盗罪が成立する。
・主張、請求といった大きな枠から書き始める
民事系であるあるなのがいきなり論点から書いてしまって崩壊すること。そうではなく、「AのBに対する〜請求が認められるか。かかる請求が認められるための要件は〜と〜である。」といった形、あるいは、「Aの主張は〜というものである。かかる主張が認められるための要件は、〜と〜である。」といった形で記載すると上手くいく。大きな枠組みを作ってから論点の検討に入ると、論点主義に見えにくいし、要件の検討を忘れることもなくなる。ただ、一方で必ずしも全要件先出しにする必要はないと思う。
・条文の文言解釈として論点を顕在化させる
上とも関連するが、基本的に論点は「〜」という条文の解釈や請求や主張の要件の解釈として顕在化するってことを意識する。そうすると、条文の文言に紐づけて覚えやすいし、実際に書く時も迷わないで済む。加えて、試験委員からの印象も良くなる。
・徹底的な言語化
ただ漠然と次はこうしたい、といったレベルの振り返りでは意味が無い。ここをミスった原因は何なのか、その原因は何が足りないから生じたものなのか、その不足を補うためには何が必要なのかを突き詰める。ミスの原因を漠然と努力不足や知識不足、ケアレスミスで片付けているうちは成績が上がらない。とにかく、掘り下げて掘り下げて問題の根本を突き止め、それを修正改善することが重要である。例えば、知識不足→基本的なインプットが足りてない、といっても単に知識が足りていないのか、知識の使い方のインプットが足りていないのか、知識と論理構成の結びつけができていないのか、これだけでも3つはある。このように、細かく失敗の原因を把握して、その上で適切な改善策を講じていかないと、自己満足の勉強に終始してしまいかねない。
・よく使う条文は覚えておく
これは特に意識していたわけではなく、勉強していたら勝手に覚えただけだがらよく使う条文の番号は覚えた方が本番楽。探す手間が省けるため、時間短縮になる。
5 口述対策
自分なんかよりもバッタくんの口述noteを読む方がよっぽど参考になると思うので以下にURLを貼っておきます笑。
6 経済法に関して
経済法に関して、自分は勉強を初めて合計約1.5ヶ月の勉強で司法試験で3位を取れたので、実践していたことを詳しく残そうと思います。このように少ない勉強時間で良い成績を取れた1番の理由は自分なりに方法論を確立出来ていたのが要因だと思うので、その方法論をお伝えできれば幸いです。経済法で重要なのは、論証暗記や定義の暗記よりも競争がどのように制約されているのかを把握することだと思います。ただ、字面だけを追うのではなく、簡単な言葉で市場や競争、競争の制約といった言葉の意義を言い換えること、これを意識した結果、少ない勉強時間で最大の結果を出すことができたのかなと思います。不当な取引制限や私的独占に関しては覚えて問題に慣れるだけだと思うので、以下、自由競争減殺について書きます。
不公正な取引方法の条文選択が難しいという声をよく聞きますが、それは自由競争減殺の意味をよく理解せず、また競争回避と競争排除の区別ができていないことに起因すると思います。そのため、両者を明確に区別するだけでも条文選択で迷うことが激減し、当てはめもかなりやりやすくなるのではないかなと思います。
自由競争減殺について
自由競争減殺については、競争回避なのか競争排除なのか、よく理解しないまま書いてしまい、結果条文選択を間違えたり崩壊したりしがちである。まず、競争回避と競争排除を正確に理解すべき。
・競争回避
競争回避とは、価格維持効果があるものをいう。すなわち、価格の引き上げや価格の維持により価格競争を弱めることである。
・競争排除とは、市場閉鎖効果があるものをいう。すなわち、既存事業者や新規参入者といった競争者を市場から追い出すことにより競争が減るということである。
類型
以上を踏まえて、競争回避型と競争排除型に分ける。
・競争回避型→再販売価格の拘束、拘束条件付取引
・競争排除型→取引拒絶、差別対価、差別的取扱い、不当廉売、抱き合わせ販売、排他条件付取引、拘束条件付取引
なお、競争排除型の類型は、私的独占に該当する行為ともなり得る点で注意。
以下は、今年の経済法の再現答案になります、どちらも拘束条件付取引に当たるものですが、ハイライトをした部分では、明確に競争回避と競争排除を区別しています。この点が評価されたのかなと思います。
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7 予備試験と司法試験の違い
個人的に予備と司法どっちも受けて思ったのが、予備は法の適用に重きを置いている一方、司法は法の解釈・法の適用の双方に重きを置いているなということ。もちろん予備も法の解釈をも問うているのだろうが、時間と紙面の制約、問題の分量的に論点射的+処理に対する配点が大きいのかなと思う。他方で、司法は時間、紙面、問題の分量的に法の適用の前段階として法の解釈についても点数がかなり振られているのかなと思った。予備は、法の解釈:法適用=2:8くらい、司法は4:6くらいのイメージ。
8 おわりに
あくまで自分は予備試験、司法試験に1度受かっただけに過ぎません。そのため、自分の方法が唯一絶対なわけがなく、上記のような勉強法で受かる人もいるんだなくらいの気持ちで参考にしていただければ幸いです。質問箱も行っているので疑問点等あれば遠慮せずにご質問いただけると嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。