電源トランジスタの損失タイプとGaNによる低減方法、および体積削減に関する技術
電源スイッチング供給システムにおいて、電源トランジスタは主要な損失源の1つです。トランジスタの損失は大きく分けて2つのカテゴリに分類されます。それは「オン損失」と「スイッチング損失」です。オン損失は、トランジスタが導通している際、電流が流れることによって生じる損失です。一方、スイッチング損失は、トランジスタがオン・オフを切り替える過程で発生する損失です。
GaNトランジスタが導通する時、その動作はシリコントランジスタと同様に、ドレインとソース間の抵抗として振る舞います。この抵抗は「Rds(on)」と呼ばれ、オン損失はこのRds(on)に比例します。GaN(ガリウムナイトライド)デバイスは、シリコン(Si)やシリコンカーバイド(SiC)と比較して、同じブレークダウン電圧であってもRds(on)が非常に低いです。そのため、GaNを用いることによりオン損失が大幅に低減されます。
GaNがスイッチング損失をどのように低減するか
スイッチング損失は、トランジスタがオンになる瞬間に電流が流れ始めるが、ドレインからソースへの電圧がまだ下がっていないという現象が原因で発生します。この短時間の間、電圧と電流が同時に存在するため、その積である損失が発生します。しかし、スイッチング速度を上げることでこの時間を短縮でき、スイッチング損失を抑えることが可能です。GaNトランジスタはシリコントランジスタに比べて高速でスイッチングが可能であり、この高速性が損失の低減に大きく貢献します。
さらに、GaNトランジスタにはボディダイオードが存在しないため、シリコンMOSFETのボディダイオードによるスイッチング損失が生じません。これを理解するために、シリコンMOSFETを使用した降圧コンバータを例に挙げます。半橋構成において、FETがオフになると、コントローラーは次のFETがオンになるまで短い「デッドタイム」を設けます。このデッドタイムの間、電流はボディダイオードを通って流れますが、ボディダイオードの効率はRds(on)よりもはるかに低いため、損失が大きくなります。
一方、GaNトランジスタは三象限動作で導通することができるため、デッドタイム中にボディダイオードを介する必要がなく、Rds(on)を通して電流を流すことができ、デッドタイム内の損失を大幅に削減できます。また、シリコンMOSFETのボディダイオードが閉じた後に発生する「リバースリカバリ損失」もGaNトランジスタではほとんど発生しません。
GaNによる体積削減の方法
GaNが装置のサイズを縮小する方法として、まず動作周波数を上げることが挙げられます。高周波で動作することにより、インダクタやキャパシタなどの受動部品のサイズが反比例して小さくなります。GaNトランジスタのスイッチング損失が低いため、スイッチング間隔を短縮しても平均損失は安全な範囲内に収まります。その結果、より高いスイッチング周波数での動作が可能となり、インダクタやトランス、出力コンデンサのサイズを縮小し、装置の全体的な体積を減少させることができます。
さらに、GaNデバイスはシリコンよりも優れた熱伝導率を持ち、高温にも耐えられるため、大型のヒートシンクや冷却ファンなどの熱管理用部品を削減できるという利点があります。このような特性により、GaNを使用した装置の総合的なサイズはさらに小さくなります。
以上の理由から、GaNトランジスタは電源設計において、損失の低減と装置の小型化に大きく貢献しており、今後ますます注目される技術です。詳しい情報や参考資料については、以下のリンクを参照してください。
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