僕の小規模な退職 その2
さてさて退職を決めたものの
次をどうするか悩んでいる。
自分に出来ることといえば
長年続けたグラフィックデザインのみ。
大学3年生の時にAdobe Illustratorに出会い将来の道を決めた。
途中脱線したこともあったが
もう20年以上は紙媒体のデザインを続けてきた。
今さら他の職種を行うことなんて出来ないだろう。
というよりも新しいことにチャレンジする意欲が無い。
今あるスキルで生活できればそれで良い。
だが世の中はそんなヌルい考えの人間など必要としていないだろう。
とはいえ無職ニートになるわけにもいかない。
何も行動しないよりはましと思い
ポートフォリオを作り始めた。
当たり前だが仕事でデザインを行っていたので
個人のデザイン作品など無い。
会社で作成したものは最近のものしか手に入らない。
過去のデータは転勤前の遥か遠い勤務地の
ロッカー奥深くにある外付けHDかDVD、
もしくはCD、いやMOの中に眠る。
(MOだったらメディアごと廃棄されているかもしれない)
なんとかメールの送受信フォルダを遡り
メールマウンテンサイクルの中から
10年ほど前の添付データ等をサルベージした。
ポートフォリオの構成はわりと簡単に決まった。
プロフィールと経歴、スキル等を前段でまとめ
デザイン作品を経歴に合わせてカテゴリー分け。
A4サイズで6枚のPDFにまとめた。
一番悩んだのは自己PR文章。
妻に添削を依頼し何度も修正させられた。
『させられた』という表現は適切ではない。
テンプル文章よろしく、思ってもいない文章を書いた自分が悪い。
「ここは事実だからヨシ。でもここはウソでしょ」
妻の言う『ウソ』の部分は
chatGPTに考えてもらい、良いなと採用した文章だった。
『充実したキャリアを実現していきたい』
キャリアなんて望んでいないじゃないか。
今できるスキルで生活したいと正直に書かないと
再就職先でもギャップに苦しむことになる。
いやはや妻の言う通りである。
仕事とプライベートのバランス重視のような文面に変えた。
続いて転職サイトの登録だ。
新規で登録したサイトもあるが
すでに登録してあるサイトもある。
そう、自分の中に退職の波が訪れた時期にすでに登録していたのだ。
登録情報を見て懐かしい気持ちになった。
住所や役職が7年前もしくは5年前のものだった。
そんな前から辞めようと揺らいでいたんだな。
やっと決心できて良かった。
などと感傷に浸りつつ入力を続ける。
職務経歴の項目はポートフォリオ用に作成したテキストをそのまま使った。
とここまでやっておいて
再就職する気持ちがあまり無い自分がいる。
求人要項を読んでもキラキラキャリアアップのような文章が並び
気が進まない。
ここはいっちょ個人事業主になるか。
収入面での不安がよぎるが現時点では雇用されない立場という点にものすごく魅力を感じている。
色々調べてみた。
再就職よりは前向きな気持ちの自分がいる。
とはいえ収入面の不安という影がすっと背後へ現れる。
再就職の求人要項には「賞与2回」「有給」など
会社員ならではの特典が目に入る。
収入面の不安という影は消えるが
組織という死神が首元にカマを突きつけてくる感覚に襲われる。
(また同じ状況になるのはイヤだ)
どちらにするか。
こんな年齢になってまで自分探しのような悩みを抱えるなんて思ってもいなかった。
それでも人生は続くのである。
結論を急ぐことはない。
最終出社日は目前だが、
その後有給消化で退職日は2ヶ月先。
それまでは在籍扱いなので収入もある。(目減りするだろうが)
そのあいだ家のことをしながら好きな趣味に没頭しよう。
そうしているうちに何かしらの衝動が訪れると信じて。
44歳、推定無職。人生の帰路に立つ。