いちだいぢ

新しい体で生活を取り戻す日々がスタートした。
傷の状態を確認してリハビリを開始せねばならない。
ゆる〜いリハビリしか習っていないから、しょうがない。ネットで”乳がん” ”全摘” ”リハビリ”と検索し、ある大学病院の動画を見ながら実施することにする。
「痛みを感じたら無理はしないようにしましょう」というけれど
切ったのだから痛いはずだし、その無理をしない範囲がどうにもわからないから、とりあえずできるだけやってみる。
そして案の定、一通り終えて痛すぎたこれはやりすぎだと反省する。

痛すぎるといえば、ぢである。おそらく、リハビリで無理した患部より痛い。

DTXの副作用で、酷い下痢になった。
元々が、燃費の悪いランクルなので食べたらその分排出してしまう。
副作用でそれに拍車がかかり、酷い時はトイレから出れないほどの下痢になった。
何度も何度も愛する人の家に通うかのように狂ったようにトイレに通う。
たまに、通いすぎてなのか、想いの強さが暴発するのか軽くその場で貧血を起こすほど。
出てしまうともちろんお腹が空くわけで、その都度食べる。
食べるのが好きだからここぞとばかり食べる。そして、また狂ったようにトイレに通う。
ここまでくると、愛する狂気の想いは火傷をしたかのように熱くヒリヒリする。
たまに優しく接してくれるネピアだってその逆立った部分を癒すには手遅れとなる。最大限恐る恐る様子を伺うように調整した温水だって気をつけないと最初は手加減を知らずに突進してくる。
そして、ついに想いは溢れかえって痛みとなり血となる。
ぢになった。

入院時に、あ、入院ぢに先生に相談して薬を出してもらった。
ちゅうっと入れるお薬。
ちゅうっという可愛らしい表現とは正反対に脱力した状態で肩幅に足を開き投薬する。手術後の痛み止めは1度だって飲まなかったのに、ぢの薬は毎日使った。

リハビリを終えて痛んだ術後の部分は大層立派な傷だけど、そこよりどこよりも
お尻の穴が痛い。

そして、今日ももちろん何度もトイレに通う。
最近はわたしも学習して便座にお尻を下ろさないという技を試している。
膝裏に手を入れてお尻を少しだけ高い位置に配置する。
極力その核に負担をかけず、気づいたらすんなり終わってましたね〜という煙に巻く騙し作戦。
たまに、「Wow!」とオーバーリアクションに取られかねないような声が出る痛みを伴うが、そんな時は過去一番に笑った面白いことを浮かべてやり過ごすようにする。でも痛い。
そして必ず終わったあとはすぐ座れない。
椅子取りゲームをするかのように、徘徊するように椅子の周りを何度か周遊し大きく息を吐きながら覚悟を決めて腰を下ろす。

手術が終わってから傷に新しいガーゼをあてるたび、「よくやった」と思いながらそこを撫でる。
ぢにはどうだっただろう。お尻の穴に対する敬意をわたしは怠っていたのかもしれない。ACでは吐き気どめでいつもより出にくくなり、DTXでは下痢になり。
約半年、副作用に耐えてくれただいぢな存在をおざなりにしていた。
術後の傷の健診で先生にまたちゅうとする薬を出してもらった。
薬剤師さんに、塗るということもできると教わった。
”ちゅう”と一方的すぎた。いきなり過ぎだった。最初はタッチからとか違うアプローチで何とか癒されてくれるといいなあ。尻軽だと思われちゃうよ。

最大限の敬意を払って思う。
今まで、よくやってくれたね。まだまだこれからもお願いね。



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