東京クロノスの為にVRデビューしたVTuberによる感想と紹介【ネタバレ無し】
「今こそ時は極まれり――」
※VRの買い時的な意味で
はじめに
こんばんは、カフェ店員系バーチャルYouTuberを自称する水森と申します。エゴサーチがしにくい名前を後悔する日々を送っています。
2019年3月20日に発売された『東京クロノス』は、日本発の『VRミステリーアドベンチャーゲーム』として、今や世界にその名を轟かす最新VRゲームの1つです。
クラウドファンディングによって、国内外の1600人を超えるユーザーから計1800万円以上を集め、発売前の時点でも話題となっていたこの作品。ついに私も、遅ればせながらプレイすることができました。
さて本記事は、特に有名でもなんでもない一般VTuberによる、ネタバレの無い感想を紹介っぽくまとめた記事となっています。これを読んで「遊んでみたいかも」と思った方は是非体験版をどうぞ。
更に今ならVRヘッドセットのレンタルとセットになったキャンペーンも開催しており、非常に遊びやすいタイミングかと思います。遊ばなかったことを後悔する日々を送りたくないのなら――分かりますよね?
冗談です。
8/22発売予定のPSVR版を買うのも全然アリですよ、特典もつくしオトクですからね。私も欲しいです。
では、ゲームの説明から入りますので、既に内容をご存知の方はお手数ですが [紹介#1] からどうぞ。
『東京クロノス』とは
【ジャンル・VRミステリーアドベンチャー】
古くは『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』、最近だと『ダンガンロンパ』シリーズと同じジャンルです。プレイした体感で言えば、どちらかと言うと『428 〜封鎖された渋谷で〜』などのサウンドノベルにも近いと思いました。
プレイヤーは、テキストで綴られる物語を辿りながら、時に大きな選択を迫られます。その選択の結果が物語に反映され、更に続いていく……というものです。簡単に言えば大体の美少女ゲームと同じです、『Fate』や『シュタゲ』みたいな。物語を楽しむことを主軸に置いたジャンルを楽しむことを主軸に置いたジャンルですね。
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【あらすじ】
誰もいない、時が止まったかのような渋谷に閉じ込められた、8人の幼馴染たち。記憶もところどころが欠けていて、それでも意気をあわせて脱出しようとした彼らの前に現れたメッセージ――「私は死んだ。犯人は誰?」
友情と疑念、過去と真実、犯人と死者、9人目の幼馴染。
幼馴染の1人=あなたの選択の先に待つ結末とは……。
※私が考えたものです。公式サイトの「ストーリー」もご覧ください。
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【クリエイターの方々】
ここは是非総合プロデューサーの岸上健人さんによるnote記事をご覧いただきたいです。熱い思いと共に、豪華制作陣の方々が紹介されています。
あえてお一人だけご紹介するのならば、キャラクターデザイナーの「LAM」さんを挙げさせていただきます。バーチャルタレントの九条林檎さんの生みの親としても知られている御方で、最近では『HAL東京』のTVCMも手掛けています。
ちなみに個人的な信仰対象のお一人でして、先日のコミティアの本も神で、こうビビットで刺激的な色使いにクールなデザインが……ふふふ
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ここまでで『東京クロノス』は「豪華制作陣が作った、VRで遊ぶミステリーアドベンチャー」であることは分かったかと思います。
しかしここまではあくまで情報の羅列。ここからは数時間前にクリアしたばかりの、生の感情でお送りしたいと思います。一方的に語られる、痛みと怖さを教えてあげますよ。
[紹介#1] 舞台の上で劇を見るような臨場感
率直に言って、圧倒されました。
これがVRか、これが新時代ですか。
ゲームスタートと同時に、旧来のアドベンチャーゲームと比べ物にならない“臨場感”に息を呑みました。思わず声が出て、高揚が隠せません。すごい、目の前に……目の前に、物語の登場人物が立っているのです。
衝撃は視覚からだけではありません。キャラクターのボイスは立体音響を活かし、方向と距離によって異なる響きで耳朶を打ちます。隣にいる時は間近に、遠くにいる時はそれが分かるように音が伝わるのです。
※実際どういうものかについては、九条林檎様による実況プレイ動画をご覧になられるのが分かりやすいかと思います。こちらのリンクからどうぞ(恐れ多い)
どの小説より、どのアニメより、どの映画より、どのゲームよりも速く、私は一瞬で世界に「没入」しました。いえ、これはもう「同化」とも言えます。私の視点は最早観客(プレイヤー)ではなく、彼ら(キャラクター)と同じものになっていました。
劇に例えるなら、舞台の最前列を越え、舞台の上で物語を見届けるに等しい感覚です。まさにVRならではの体験です。
のめり込むを超えた「入り込む」、あるいは「登場人物に成る」実感。このオンリーワンな体験に、ゲーム開始数分でこれはすごい作品だと確信します。ですがそれは、まだまだ実力の一端でしかありませんでした。
[紹介#2] 日本のアドベンチャーゲーム世界の中へ
ここまでは、VRにありがちな感想かと思います。しかし『東京クロノス』の真の実力はこんなものではありません。覚悟の準備をしておいてください。いいですねッ!
時に、『Fate』や『シュタゲ』、そして数多くの美少女ゲームに深夜アニメ。それらをプレイしたことがある方、見たことがある方、こう思ったことはありませんか?
「この世界に行きたい」と。
その夢を、『東京クロノス』はある程度叶えることができるでしょう。何故ならこのゲームの正体は、ただのVRアドベンチャーゲームではなく、日本のアドベンチャーゲーム世界にプレイヤーを叩き込むゲームだからです。
ゲームを始めたあなたが目にするのは、リアルに再現されたバーチャル世界ではありません。バーチャルで表現されたアニメの世界なのです。このゲームの中にはリアルではなく、私たちオタクにとってなじみ深い「アニメ・ゲームの世界」が広がっているのです。
そもそもの話ですが、アニメ的な可愛さと、リアルな綺麗さを同居させるのは非常に難しいものです。不気味の谷現象にも通じるところはあるのですが、要するに「リアルになればなるほど、アニメっぽい可愛さは薄れていく」からです。
そう、VRのR=リアリティ、即ち現実らしい表現を追求してしまうと、アニメの良さとゲームの良さは失われてしまう可能性があります。だって、現実にはアニメキャラはいませんし、セリフテキストも宙に表示されませんからね。
この作品は、アニメ・ゲーム的表現を巧妙にVRへと落とし込んでいます。キャラは眼の前にいるのにアニメチック、辺りを見回せるのにUI(ユーザーインターフェース)はしっかりとアドベンチャーゲームなのです。
キャラクターには、日本に暮らす私たちになじみ深い「アニメらしい可愛さ」、それでいて「目の前にいる迫力」があります。システムにはゲーマーなら誰でも理解できる「ゲームらしい分かりやすさ」があり、しかして「物語への没入感を邪魔しない」のです。
口にするのは簡単ですが、それを形にするのには相当な艱難辛苦があったことでしょう。実際、公式の開発レポートにその様子を見ることができます。多くの試行錯誤、その果てにこの極致があるのです。
コンセプトの「次のアドベンチャーは画面の向こうだ」という言葉が体現しているように、VRゴーグルをつけた私たちは画面の向こう――キャラクターたちの世界へと入り込むのです。夢にまで見た、アニメやゲームの世界へと。
―—私たちバーチャルYouTuberが「現実世界に現れたバーチャルな存在」であるのなら、『東京クロノス』は「バーチャル世界に現実の存在を送り込む装置」とも言えます。ある意味、対極なのかも知れませんね。
[紹介#3] 完成度の高い世界とキャラクターたち
この『東京クロノス』の世界、そしてキャラクターたちは、万人に分かりやすく、かつ魅力的に創り上げられています。物語に登場する人物の数が多すぎるということはなく、さりとて少なすぎる寂しさもありません。
キャラクターは、1人1人が個性をしっかりと確立していて、誰が誰だか分からなくなることはありません。LAMさんによる、それぞれのカラーがしっかりと分かるデザインがすーっと効いてきます。
世界についてもシンプルです。「誰もいない、鏡の壁に囲われた渋谷」、これだけで説明がつく。勿論、ゲームを進めればその真実も明らかになっていきますのでご心配なく。
この完成度の高さ、すごいんです。
あらゆる場所で数多の物語が展開されているこの昨今、差別化の為に複雑な設定がされている作品も少なくはありません。奥深さを演出するのには有効ですが、一方で「とっつきにくさ」を持ってしまうという側面もあります。例えば、全100巻の小説はちょっと手が出しにくいですよね。
『東京クロノス』は、設定を複雑化させすぎず、かといって「物足りなさ」もあまり感じさせない、絶妙なバランスの世界観を形成しているのです。これ、意図して作るのってとても難しいんですよ。
ボリュームも、しっかり腰を据えて遊べる長編でありながら、ダレも疲労もない絶妙な量。映画で言えば100分くらい、マンガで言えば12巻くらい。これくらいがちょうど良い気がします。
ちなみに、好きなキャラクターをあえて1人を選ぶのなら「東国ユリア」ちゃんが私のイチオシです。天才小柄白衣っ娘いいよね、いい…。
[まとめ] エポックメーキングに相応しい1作
まずご注意を。私はアドベンチャーゲームの歴史にも、VRゲームの歴史にも深く通じているわけではありません。ここまでもこれからも、ただの一般VTuberとしてのあくまで一意見です。
そのうえで主張します。
これはエポックメーキングに相応しい作品だと思います。
前述の『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』は、コマンド選択方式をアドベンチャーゲームに持ち込んだ、まさにエポックメーキング的作品です。1つの分野に、新しい時代を切り開いた立役者です。
であるのなら、この『東京クロノス』はVRアドベンチャーゲームのエポックメーキングになり得るのではないでしょうか、いやなり得ります(反語)
ご存知の方もいるかと思いますが、VRアドベンチャーゲームは他にも様々な名作が既に世にでています。『アーマード・コア』や『ソウルシリーズ』で知られる、かのフロムソフトウェアが手掛けた『Déraciné』が有名ですね。
しかして、『東京クロノス』はこれまでのVRアドベンチャーゲームとは明らかに異なる特徴を持っています。そう、[紹介#2] で挙げた「日本のアドベンチャーゲーム世界を、VRゲーム上に再現している」という特徴です。私の知る限り、それを成した作品でここまで完成度が高いのは『東京クロノス』のみ。
日本の誇るアニメ・ゲームの魅力を活かしたVRアドベンチャーゲーム。後に続くものはありましょう、しかし先頭を歩むのはこの『東京クロノス』ただ1つであると、私は思います。
おわりに
そもそも、何故私がこのタイミングで『東京クロノス』を遊んだのか。答えは単純、最近になってようやくVRヘッドセットを購入したからです。
このタイミングで購入した理由は2つあります。1つ目は『Oculus Quest』購入用の貯金がようやく貯まったから。2つ目は『東京クロノス』が『Oculus Quest』で6/21にリリースされたからです。
実は、私は『東京クロノス』の総合プロデューサーでもある岸上健人さんの記事「平成最後にVRゴーグルを"持っていない"すべての人に読んでほしいnote。」を読んでいたのです。
この記事を読んでから、私はVRゴーグルを近々買うことをひそかに決めていました。なぜなら「1人のクリエイターとして、そろそろVRに触れるべきなのではないか?」という元々持っていた先入観が、記事を読み、確信へと変わったからです。
しかし踏ん切りが中々つかず、それでも記事を開いたタブは常にブラウザ上に表示して意識だけはしていました。そうこうしているうちに最新機種が発表され、時間は悠然と過ぎていくばかり。
そんな私の背中を押したのが『東京クロノス』のOculus Quest版発売でした。
以前より作品の概要は知っていた、VRを買ったら一番に手を出そうと思っていた『東京クロノス』。そしてそれが新たにQuestで出ると知った時、天啓だと感じました。今がその時なのだと。
気づけば、発売日直前にヘッドセットが届くよう注文しておりました。
かくして、私は運命的なめぐり合わせで『東京クロノス』をプレイするに至ったのです。なお、天啓というかほぼノリなのでは? という質問については回答を控えさせていただきます。
そしてこのめぐり合わせの先に、私がどんな体感を得たのかは、まさに先述の通りです。とても、とても素晴らしいひと時でした。
新時代を切り開く1作を世に送り出したクリエイターの方々に、心からの感謝を。そして「制作共犯者」の方々に、少しの羨望と大きな感謝をおくりたいと思います。本当にありがとうございました。
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―—クリア当日に、すぐさま駆け込んだ『東京クロノスカフェ』にて。
バーチャルYouTuber 水森