【ゲームレビュー】PS4/5「MARVEL ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」は宇宙的「オトナ帝国の逆襲」
演出を盛りまくった足し算の美学みたいなゲーム
押し寄せてくるぞ。息つぐ間もなく押し寄せてくる。
なにげなく通る景色や1度きりしか出ない人物まで、凝りまくったビジュアルと世界観が押し寄せてくる。
PS4/5「MARVEL ガーディアンズオブギャラクシー」は、5人の荒くれが銀河を駆け巡るアクション・シューティングだ。
氷の惑星は雪が足をさす冷たさまで感じるし、脳みそにコードをつないだだけの商人が声をかけてくるブラックマーケットは、臓物とオイルの匂いが漂ってくる。触手モンスターが穴からはい出し、メタルアルバムのジャケットに採用されそうな竜がばっさばっさと空を飛び、こちらも刀や爆弾、手当たり次第に投げて大暴れ。
上品に「引いた演出」のゲームが多い中、たまにはドカドカ足してくるゲームで、久しぶりに据え置きゲーム機のパワーを体感するのもいい。
冒頭はいかにもな「古き良きアメリカ」の回想シーンで始まる。
80年代ごろの実在バンドのポスターがあり、古いテレビやゲーム機があり、ゾイドや野球カードがあり、スターウォーズのフィギュアと、理解してくれるママがいる。
それが、眠りから覚めると、多様性の4重奏みたいなメンバーと銀河を放浪中。
主人公の名はクィル。好きなバンドからとった「スター・ロード」を名乗り、ウォークマンで昔のロックを聞きながら戦う。
「主人公は地球出身。80年代カルチャー好き」
原作を知らなくても、これぐらいわかってればいい。あとは止まることない罵りと皮肉の応酬で仲間のキャラクター性がわかってくる。
専門用語らしき言葉が出ても、こいつらいろいろあったんだろうな、と想像の翼を広げるべきで、
「自分は映画やコミックを見てないから置いて行かれてる」と思う必要はない。(ここ重要。スパイダーマンとか、ほかのマーベル原作ゲーも同様)
「ガーディアンズ」の戦闘は、世界観のぶつけ合い。
見たこともない惑星で凶暴なモンスターにおされても、そこから円陣を組んで、80年代ヒット曲を流せば攻勢に転じる。
それまで敵の世界観だったのに、カセットを再生して日本ではラグビーのドラマで有名な「HERO」が流れたら、こちらのムードだ。適当に照準あわせてトリガーひいて、爆弾と投げ技でエイリアンをボッコボコ。
流れが変わることを、ここまで明快に見せてくれたのは初めてだ!
「それっぽい曲」やカバーでは意味がない。
地球のみんなが実際に聞いてライブで熱狂した、思いのつまった曲を流してエイリアンを制圧する。初めて外で音楽を聴いたら街の色が変わって見えたのを思い出す。ウォークマンのゲーム化といってもいい(?)
ゲーム配信では実在曲は流れない。買うべし。体感すべし。
音楽とビジュアル以外は、良くも悪くもアバウト。
障害物があるたびに「ひとりが怪力で岩をどけ、小柄なひとりがもぐり、ひとりが手を差し出す」
毎回にたような謎解きがある。美しい解法のパズルは出てこない。
細い道を通ると崩れかけ、足場がないならそのへんを崩せば橋がかかる。
それはまあいいけど、足を滑らせたらボタン連打の指示が出て、失敗したらゲームオーバー。PS4だと長いロードが挟まる。
そういうの何年も前にみんなやめてるよ!って感じのことをまだやっている。減点していったらきりがないんだが…
ただ、マイナス点を払拭する演出がある。どうしても本編後半の内容にふれちゃうんだけど。
!!ここからちょっと本編の内容をしゃべります!!
!!ネタバレになります!!
・・・
・・・・・・いいですかね?
ぼくがうなった展開は、敵が科学力ではなく、精神攻撃系できたところだ。
主人公らは得体のしれないヤツに襲われて、過去に囚われてしまう。
みんな、身内や仲間との別れを越えて明るくふるまっていたのに、もう一度「居心地のいい昔」の幻覚に閉じ込められてしまう。プレイヤーは、冒頭の回想シーンにあった80年代懐かしアイテムがあふれる家に戻されるのである!
これは夢だ!幻影だ!と否定しない限り、人生を前に進めることはできない。
この手の展開って、他にないほど衝撃なわけじゃない。
だけど、実在の懐かしいオモチャや映画ポスターを、「これあったあった!」と喜ばせるだけで終わらせずに、その居心地の良い空間を捨てて今と向き合おうぜ、という大人のメッセージまで込めている。
どこをとっても美しい、全ての構図が本の表紙になりそうなビジュアルは2021年ベスト級だと思うが、そこを評価されずに「ベストナラティブ賞」ってストーリーの語り口で受賞している本作。その理由がわかった気がした。
仲間との憎まれ口の応酬で人物像を紹介していく手法は、どうしても翻訳で良さがこぼれ落ちるし、そもそも実家が豪邸で日本人には懐かしいと思えない。
100パーセント楽しさが分かるのは欧米人なのかなーって、残念さがないといえばウソになる。
だけど、仲間たちがそれぞれ出自を否定せず、違うまま認め合ってわちゃわちゃやってる楽しさはわかる。
最近はやりの高難易度ゲーでもオープンワールドでもない、一本道で一度きりの旅を豪華に、比較的コンパクトな作りで楽しめるのはうれしい。
昔はよいが、それはそれ。
カセットテープに入る程度の音楽でも、十分ピンチのときに支えてくれる。懐かしいものを出しながら、未来もそう悪くないんじゃないか?と伝えてくれる前向きさがメッセージ気持ちいいゲームだ。
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読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。