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【読書記録】今読んだ!「オリエント急行殺人事件」

「オリエント急行殺人事件」
表紙がいい感じでジャケ買いした。書店にはこんな出会いがある。

何度も映像化された有名作品で、少し前にも映画になったのは聞いていて、そのときに、映画ファン、ミステリーファンがこぞって

「結末を知っているのが当然なので、映画版は有名俳優たちの演技のすごさを見るもの。万が一、結末を知らない人がいたらうらやましい」

といった感想でして。知らないのがここに約1名おりますが・・・。

逆に考えれば、今から結末を知ることのできる俺はみんなに羨ましがられる存在なのか、そいつはいいやワッハッハと気をよくして読んだ。おもしろかった。

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ふだんはガラガラのオリエント急行に、その日に限って世代も出身も違う乗客が集まり、雪によって列車は止まってしまい、閉鎖空間が出来上がる。

何かが起こりそうな夜。
いつもと違う夜。
不穏なムードが高まっていく感じ。殺人事件が始まるまえのセッティングでもうすごくいい。もちろん通信手段も限られていて、見ず知らずの男女が自然によって閉ざされた車両で夜をすごす。

当然、タイトルのとおり殺人事件が起こるのだが、
どうやっても物音や人影が乗客同士で監視された状況でどうやって? という話だ。当然オチには触れない(これから読める幸福な人のため)

結末とおなじぐらい新鮮でおもしろいと感じたのが、事件現場に「イニシャル入りのハンカチ」が落ちていたことだ。
犯人をハンカチで、犯行時刻は被害者の手巻きの腕時計が止まっていたことから推理する。

現代の小説に出てこない。ハンカチを落とす人。
欧米では使い捨てのティッシュがなくてハンカチを持ち歩くから、現実にハンカチを拾ったことで出会ったカップルや、ハンカチから検出された体液が証拠で逮捕された人も、いなくはなさそうだけど。

ハンカチに刺繍されたHのイニシャルがある者が犯人だ!
いや、しかしその時刻にはアリバイがあるぞ!なんてこった!この事件はさすがの名探偵もお手上げだ!てな具合で読み進めていくと、ああ、推理小説の古典を読んでいる!と笑みが浮かんできた。
たしかに結末はしっかり想像を越えてきたし、残酷な話のはずなのに「品」がある。列車そのものがその日限りの劇場のように、雪のかなたに消えていく。

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南ミツヒロ
読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。