昔は、ゲームの実況プレイは山賊と蛮族が行っていた。

バーチャライバーの月ノ美兎さんの「アンティルドーン」実況プレイ配信を見ていた。
僕が実況プレイにはまっていたのは、5年以上前。
ニコニコ動画で、ゲーム動画をみんなの目に入るところで流すことがグレーゾーンだったころだ。

そのころは、配信者が何かするたびに文句が画面に流れる。
アイテムを一個とりのがせば、この配信者は考えがない、注意力もないのか、もっとおもしろい会話をしろ、ゲーム内容を理解しろ、と画面に流れる。

配信ではなく編集済みの動画なので、会話のやりとりもなくて、いい発言が出ても「wwwwww」しかない、今から考えると原始人が石を投げあうようなコミニュケーションだった。


月ノさんの配信は、バーチャルライバーの中でもトップクラスに機転がきく人(だろう)というのもあるが、僕の知っているゲーム実況よりもずっと配信者とコメント両方の質が上がっていた。

「アンティルドーン」はえぐめの映画的ホラーで、残酷シーンにおびえながらも、ありえない展開には笑ってしまうようなプレイスタイルになる。

昔の「ホラーゲーム実況プレイ」は、ひたすら怖いシーンで絶叫しているのを視聴者が笑う、それだけでも当時は皆で集まって楽しむこと自体が新鮮だったけど、大声大会みたいなところがあった。
やりすぎなシーンにショック受けたりときに笑ったり、誰が犠牲になるのか予想するといった、ちゃんとホラーを楽しむ余裕のある配信者はほとんどいなかった。

その前に、日本人には、スラッシュホラーを笑って楽しむ文化が浸透してなかった気がする。
何にでもふりかけみたいにゾンビを添付するブームを経て、日本人にホラー耐性がついて、
「欧米人は人が死にまくる映画で爆笑するのはなぜだ!」
という人が減った。

月ノ美兎さんは明らかにホラー慣れして、怖がりながらも「どんなパターンでびびらせてくるか」で製作者と知恵比べのように進行して、金田一パターンでいけば・・・とするどく犯人に近づく。
視聴者もどこか「この配信をするのは簡単ではない」とリスペクトがあった。

「アンティルドーン」を楽しんだ身なので、規制が入ってることだけ話題にされるのはずっと納得いかなかったけど、ちゃんと、魅力とアレな部分が混在している忘れがたいゲームなのが伝わる。
なんなら、ホラーの楽しみ方はこうですよ、と啓蒙する動画になってるぐらい。
犠牲者に感情移入しないで、どんなパターンで来るかを予想して、やりすぎなシーンにはみんなで声を出したり、笑っちゃってもいいんですよ、ってチュートリアルになるぐらい!

アクションゲームを存分に楽しむために操作ガイドがあるんだから、ホラーにも「こういう心がまえで遊べば後味悪くならず楽しめます」って案内があってもいい。

グレーゾーンの動画に、編集済みなのに罵声をあびせるコメントといった、山賊と蛮族のやりあいみたいなものがゲーム実況だった時代から、ずいぶん変わっていた。

ひとつだけ、犬を「わんわんお」って言う謎文化は、まだ残っていた。

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南ミツヒロ
読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。