おゆまるによる二面型複製
ⅩⅤ,二面型による複製。
前回、破損したパーツを一から作る手法として複製という方法をご紹介しました。
しかし、一面型はその性質上、片面は平面になってしまいます。
そのため、武装神姫の補修としては、スペーサーぐらいにしか用いることは難しいと思います。
大抵のパーツは立体であるのに対し、一面型は平面を複製するための方法だからです。
そこで今回は、二面型による複製方法をご紹介します。
二面型であれば、パーツの両面を型取りするので、立体をそのまま複製することができます。
その分一面型よりも手間のかかる方法ですが、今回は簡単におゆまるとパテを用いた二面型を作成します。
おゆまるによる二面型はシリコン型よりも事前の準備などに手間がかからない反面、精度には劣るので量産には不向きですし、複製品にも手直しが必要な場合があります。
手直しはいくらでもするから、もうひとつだけこのパーツが必要!というときにはおゆまる複製の方が手軽でいいでしょう。
しかし、アイリペイントの練習用に顔パーツが無限に欲しい!というような場合はシリコン型を作った方が結果的には楽だと思います。
どちらの方法が優れているというのではなく、自分のケースではどちらの方法が適しているかを考えてチョイスができるといいでしょう。
・準備。
今回の原型には、破損しやすい手首パーツの中でも複製の簡単な握り手を使います。
使う道具は一面型を作った時とほぼ同じです。
おゆまるとエポキシパテ、スパチュラとメンソレータムに使い捨て手袋があればいいでしょう。
あとは補修用に瞬間接着剤とデザインナイフや紙やすり、手首のジョイント穴を開ける用にピンバイスとドリル(1.5mmと1mmがあるといいでしょう)が必要でしょうか。
また、複製品の修正にポリパテがあると便利です。
ポリパテはチューブに入った軟膏状のパテで、乾燥が早い反面、曲げなどに弱く脆いのが特徴です。
これ単体で立体を造形するには不向きですが、芯材に盛りつけて形を作ったり、あるいは傷やへこみに塗り付けて傷を消したりするのには便利な素材です。
今回はこれを使った複製パーツの補修方法も合わせてご紹介します。
なお、ポリパテは溶剤が使われているのでシンナー臭がします。
使う際には換気に注意するとともに、集合住宅や小さなお子さん、ペット等と一緒に生活している方はそこにも注意が必要です。
それでは複製の手順を確認していきます。
写真では手首の軸がついたままですが、複製するときには軸を外して手首部分だけにしておきましょう。
1,おゆまるを柔らかくする。
まずは前回同様、熱湯に1~2分浸しておゆまるを柔らかくします。
今回は二面型ですので、一パーツにつきおゆまるは二個必要です。
柔らかくなったら、適当な大きさに千切ってやりましょう。
2,ひとつ目の型を取る。
一面型を作った時と同様、柔らかくなったおゆまるを上から被せてパーツに押し付けてやります。
この時に、単純に上から押し付けるだけでなく四方から中央に向けて押し付けてやると余計な隙間ができません。
一面型とは違い、このあともうひとつ型を作るために柔らかくなったおゆまるを押し当てます。
そのため、十分にひとつ目の型が冷えていないと、ふたつ目の型と一体化してしまうことがありますので、十分に熱を冷ましてから次に進んでください。
3,ふたつ目の型を取る。
ひとつ目の型が上手くいっていれば、ほぼ全面を包むような形で型ができていると思います。
ふたつ目の方は、空いている口に蓋をするようなイメージで、上からしっかり力をかけてやりましょう。
この時、ふたつ目のおゆまるは平面を押し付けるよりスタンプのような凸字状にして押し付けると楽です。
4,原型を外し、パテを詰め込む。
おゆまるがしっかり冷えて固まったら、一度開いて原型を取り除き、エポキシパテを詰めてやります。
このとき、反対側の型にもパテがいきわたるように、若干型の縁より多めに盛りつけるようにします。
ポリパテはまだ使いません。
パテを詰め込んだら、型の位置を合わせながら蓋をし、おにぎりを握るようなイメージで四方から力をかけてやります。
パテが多いと型からはみ出てバリになります。
あまりにバリが多いようならパテが多すぎるので、一度型を開いてパテの量を減らしてください。
また、パテが少なすぎると型の中にいきわたらず、複製パーツが歪んでしまいます。
透けて見える中身が歪んでいるようなら、やはり一度型を開いてパテを増やしてみてください。
エポキシパテはすぐには硬化しないので、やり直す時間は十分に取ることができます。
何かおかしいな、と感じたらやり直しをすることも視野に入れておくといいでしょう。
5,整形
パテが十分に硬化したらおゆまるから外してバリを取ります。
形状としては一見歪みはあまり見られませんが、印をつけたところには気泡が残っていた跡があり、微細な穴がいくつか残ってしまっています。
この穴にはバリ取りの後でポリパテを使って埋めてやります。
また、もう一方の手首はパテの量が少なかったのか、指の造形が甘くなってしまっています。
ここにもポリパテを盛りつけ、修正します。
スパチュラにポリパテを少量取って、気泡穴に擦り付けてやります。
ポリパテの硬化時間は少量なら10分もあれば固まってしまいますので、手早く作業をしましょう。
これはポリパテがなければ、瞬間接着剤をチョンと盛ってやり、乾いたらはみ出た部分をやすり掛けしてやっても処置できます。
さて、ここで問題発生です。
指の造形が甘かった方の手首は型が歪んで指が一本分程ずれて成型されていました。
仕方ないのでズレている部分を一回切り取り、瞬間接着剤で固定した後隙間にポリパテを補充して、足りない部分を造形してやります。
少々予想外の事態はあったものの、何とか修正完了。
今回は修正できましたが、実際にこういう不具合が起こったら型から作り直したり、再度パテを詰めるところからやり直したりしても大丈夫です。
おゆまる型は作り直しが容易ですし、パテも半日あれば硬化しますので。
ジョイント穴をあけ、ジョイントの収まる空間を確保して、合体。
手首横の穴は1.5㎜ですが、正確に穴の位置を決めないと簡単に破断してしまいます。
そこで、一回1㎜の穴をあけてから太いドリルを使う方が正確に穴の位置が決まりますし、手首への負担も少なくできます。
また、破断してしまっても瞬間接着剤で直せますので、あまり心配はいりません。
ぼくも片方は破断してしまいました。
最後に紙やすりで形を整え、手首パーツの複製、完成です。
メインの複製材であるエポキシパテは一日二日程度なら多少曲げても弾性を残していますので、ジョイントを入れるために広げても大丈夫です。
完全硬化してしまうと破断しやすくなりますので、形に満足ができたらジョイントを合わせるのは忘れずに行ってください。
もしヒケなどが起こって破断してしまうようなら、ポリパテで隙間を埋めてあげてください。
その時は瞬間接着剤を表面に薄く塗ってやると膜ができて強度が少しだけ上がります。
ぼくの例でも、ジョイントを嵌めた翌日には一カ所破断が起きていました。
このように、おゆまるによる二面型は比較的準備の手間は少ないですが、出来上がった複製パーツの精度はあまり高くありません。
そのため、修正には多少のスキルが求められます。
あるいは、修正の必要のないものができるまで複製をつくるというのも手ですが、時間と労力はかかります。
よって次回は、より精度の高いシリコンを使った二面型複製の方法を紹介します。
作業手順や準備が多いので、複数回に渡ると思います。
長くなりますが、挑戦してみる価値はあると思います。