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デンマークへ旅した話。(2)モスクワの悲劇

2019/8/26 18:08

デンマークへの道のりは長かった。私が乗っていて機体は燃料漏れのため、モスクワに緊急着陸した。モスクワで数時間で修理して、飛び立つ。とアナウンスが流れる。

へえ。こういうこともあるのね。
あまり大事だとはとらえず、私は眠って離陸を待っていた。

トントン。隣の席のデンマーク人親子に肩を優しく叩かれ目覚める。
"修理不可だから今夜ほモスクワのホテルに泊まるんだって!"。

え、本当なんですか?
状況理解が追いつかないまま、モスクワに放り出されたのだった。夏服には寒すぎる夜だった。移動用シャトルにのって空港に運ばれたが、エアラインからのの情報伝達はゼロ。


冷え切った大理石の床の上に縮こまって、眠ったのか眠っていないか分からない状態で一夜を明かす。本当に情報がなかった。

VISAが必要だということになり、訳が分からないまま書類を記入させられ、パスポートを取られる。そこから数時間、いや10時間以上何も進展はないまま時だけが過ぎた。容量の悪すぎるロシアのスタッフは一体何をしているのか、そう悶々としてもただひたすら、待ち続ける他はなかった。

そこにスタッフ以上に、スタッフらしい動きを見せる乗客の人が現れた。


台湾人のピカさん。彼は自分でビジネスをやっていて、今回のデンマークも出張らしい。水をくんで配ったり、スタッフに代わってて書類記入の指示をだしたり。エアラインに電話してくれたり。すごく感心させられた。ああ。こういう状況でも文句を言うのではなくて、当事者意識をもって動くっていう選択肢もあるんだなって。

私も、自分にできることをやろう。そうピカさんを見て、思った。何か貢献するという発想が無かった自分が恥ずかしくなった。私に出来るせめてもの事は、英語でスタッフの人や外国人のお客さんとコミュニケーションを取って得た情報を、他の日本人の人達に伝えることだ。そこから、私は情報伝達係としての役割をピカさんと一緒に担った。そのおかげで色々な国の人と話すことが出来た。

遂に、夜が明けた。担当者もこないし、何の情報のアップデートない。しかも旅人にとっての命とも言える"パスポート"すら返ってこない。

時間を追って、ホテルやラウンジに通された人たちもいたが、私が案内されることは最後までなかった。最後まで残ったメンバーは日本人6名、台湾人数名、スウェーデン人、ドイツ人、イギリス人、デンマーク人。15人くらい。

もうさすがに黙ってはいられない。(ここまでも何回もカウンタースタッフに話しに行ったが、担当じゃないから"I don't know"t. Just Wait, That' it"と冷たくあしらわれ続けていたのだ。いや、タイ航空の担当者ではないしろ、空港スタッフなんだから関係あるだろうに。苦笑)

ピカさんと私は、二人で強気の交渉にでることにした。カウンタースタッフとばちばちの喧嘩をした。交渉のつもりだったが、あちら側の理不尽さに耐えかねて私も感情的になったのでそれは明らかに"喧嘩"だった。

担当者(責任者)はいつくるか具体的に聞いたのか?とつめる。ロシア人の" I don’t know戦略"にその頃にはもう、多少免疫がついてきて"だったら5分おきに電話して!私たち10時間以上もここにいるの!"と私も一歩も譲らず目力をこめて、粘りづよく交渉する。逆ギレをされ続けたが、私も負けじと言葉をバンバン返したのでどうやら私たちは勝利したようだ。

"優しく穏やかに"海外にでるとそう言っていられない場面がある。なめられちゃいけない場面。そんな時は、背筋をしゃんとして立ち向かうべし。
この交渉によって、お偉いさんを出してもらうことに成功しようやく私たちは解放された。

出発まで10時間くらいラウンジで過ごすことができた。安心して、幸せで、ほっとして。ラウンジで初めて、口にしたコーヒーがどれだけ幸せに感じられたことか!ふかふかのソファに身を埋め、少しだけ眠ったりぼーっとしたりした。

生まれて、初めての空港ラウンジ。
解放祝いのビール。みんなで乾杯。

仲良くなった他の乗客の人と一緒にいれたことで、すっかり楽しい気分になっていた。

一刻とかわりゆく、爽やかな空。
ピカさんともすっかり仲良くなって、仕事、人生とか。そういう深い話をゆっくりする時間はとてもいい時間であった。終盤かなり、体力的に厳しくなった私にとても良くしてくださって。ブランケットを貸してくれたり、横になるソファを確保してくれたり。感謝しかありません。

デザートのチョコレートケーキ。 ラズベリーの酸味が大人っぽい。


目的地につくまでにこれほどののストーリーが展開されたことに驚きを隠せないが不思議なことに、"もう、時間を無駄にした、最悪としか言えません"という暗黒の気持ちに包まれなかった。それよりかは深い達成感と充足感に満たされ、少し自分が逞しく感じられた。


このアクシデントのおかげで色んな人に出会えたし、水知らずの人と団結できた。困難の時に自分がどう対応するべきか。そのお手本のような人にも出逢うことができたのは、貴重な収穫だ。そして生まれて初めてビジネスラウンジも使えたしね〜:)

ただ言えることは、もうロシアに行くこと(乗り換えも含む)は当分ないということです。笑精神的及び身体的苦痛は相当なものでしたので。

そうやってどうなることやらと思った長いモスクワ滞在も、幕を閉じた。
ここまで書いてると私の今回の旅が北欧旅行だということを忘れそうになりますね。笑

Minami



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