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【覚書】娘ときどき友だち

月曜日、娘は運動会の代休で休みだった。
お兄ちゃんは学校、パパは朝から仕事。
私は朝のリモートを終わらせて娘に付き合うことになっていた。
最寄り駅近くのハンバーガー店(チェーンではない)に行きたいと前から言っていたので、
そこにお昼を食べに行くことになっていた。

娘は小さい頃から食に対する執着が強い。
グルメというわけではない。
とにかく「執着」が強いのだ。
そういう面は夫に似ている。
グルメではない。B級でいいのだが、「これが食べたい」「今はこれの気分」というのがはっきりしており、譲らない。

さて、このハンバーガー店に行くと、なんと定休日だった。
多いよね。月曜定休日。
しかし、娘は「ハンバーガーの口」になっているらしく
(しかも、それはチェーンではないとのこと)
他にハンバーガー店がないか探してみる。
その過程で、午後はワンちゃんカフェに行きたいという。
ワンちゃんカフェというのは(娘の言葉で)、いわゆるドッグカフェ(飼い犬と
一緒に食事できるところ)ではなく、
ワンちゃんと触れ合うことのできるカフェであるらしい。
猫カフェとかフクロウカフェとか豚カフェとかあるらしいね。
娘はワンちゃんが大好きなのだが、私が「これ以上、何かの世話をしたくない」とお断りしている。
要するに、動物の世話全般が苦手なのだ。(身も蓋もない)
そんな私は実家でワンちゃんを飼っていたのだが。大人になって気が付く
本当の私、というやつである。

とりあえずハンバーガーの口を叶えるべく、隣の市のハンバーガーショップを
目指す。ワンちゃんカフェは要予約なのだが、時間の見通しがついてからにしようということになった。
ところが、どうだろう。
二軒目のハンバーガーショップも定休日。
やっぱり多いのね、月曜定休。
「もうハンバーガーじゃなくてもいいよ」と言うが、
とりあえず近辺に美味しいご飯やさんがないか探してみることに。
ところがどこもかしこもめぼしいところは全て定休日。
「もう、パンでいい」と言い出す。
娘の頭はワンちゃんカフェに入っている。
近くにあったパン屋(チェーン)で各々のパンを買い、
車に戻って電話をかけてみる。
が、「あいにく本日は予約がいっぱいで…」と断られる。
オーマイガー!
ここに来て、先ほどまで機嫌の良かった娘の雲行きが怪しくなる。
「ハンバーガーも食べられへんし!」
「パンで我慢したのに!」
「ワンちゃん〜!!!」
「せっかくの休みやのに〜!!!」
涙ながらに助手席でわんすか言っている。
ちなみに、先週も娘ご所望の最近できた大きな公園に行き、
近くのイタリアンで、娘ご所望のカニパスタを食べている。
(私は上に載ったカニの身を延々とほぐす役)
何も久しぶりのおでかけというわけではない。

けれど、数日前から「今度の月曜、何しよっかな〜」というのを
聞いていた親心としてはなんとか答えてあげたい…
そういう私の性格だから、最近娘は私と二人で行動したがる。
パパやお兄ちゃんがいると、思い思いの場所、思惑がぶつかり娘の言い分は通らない。しかし、私は誰でもその他を優先させるので、娘は自分の要望が通るとわかっているのだ。
私:「映画見に行く?」
娘:「見たいのない」
私:「カラオケいく?」
娘:「…どこの?」
近くのカラオケ店の空き状況を調べてみると、あいにく満室。みんな…平日の昼間のカラオケって意外と埋まってるのね?普段行かないから知らんかった。

ことごとくうまく行かない…予約が必要なものというのはみんな前もって計画的に行動しているのかもしれない。とことん計画性のない私はうまく娘をエスコートしてあげられない。

「そうだ、家でお菓子買って、おうち映画ってどう???」
はじめこそ渋っていた娘だが、
ディズニープラスでまだ見ていなかった「ウィッシュ」と
有料だと思い込んで見ていなかった「今夜、世界からこの恋が消えても」を
みることで合意。



コンビニでお菓子とジュース、アイスを購入。
「ママ、ワイン飲もっかなー」というと「いいやんいいやん」と言ってくれたので、昼間っからワインを買い込むあかん親。
「飲んだらもう出掛けられへんからな」と念押ししつつ、
テレビの前のソファに鎮座。
ポテチとカールをお皿に広げ、ワイングラスにジュースとワインを入れる。
娘はデカンタを出してきて、その中にジュースを入れ雰囲気を出す。
「楽しい〜」とテンションが上がってくる娘。
午前授業で帰ってきた息子を誘うも丁重にお断りされる。
さあ、映画スタート。
「ウィッシュ」は前から気になっていたが、娘はあまり気乗りしていなかったようで見ずにいたもの。ディズニープラス入ってるうちに色々見ればいいのに、娘のディズニーブームは収まっているらしい。よくわからんが、「もう子どもっぽくない?」と言う。え?ディズニー映画に子どもっぽいとかあるん?ドラえもんを見ながらニヤニヤしていて、ディズニー映画が子どもっぽいというその基準がわからん。
隠れキャラとやらを二人で探しながら鑑賞。
「今の!今の隠れキャラちゃう!?」と大声で言い合いながら、一つも見つけられず。最後は、「こーのーねーがーいーあきらめるうーことはーない!!!」と二人で熱唱。酔っ払いとシラフ二人の合唱。
続いて、「今夜、世界からこの恋が消えても」。
有料だと思い込んで我慢していたら、アマプラで見放題だった。
みっちー推しの娘。
みっちーが出てきた瞬間からこれまた二人で「みっちー!!!」
「色白〜!」「かわいいー!!!」「よっ!ミチゲッタシュンスケ!」と
ヤジを飛ばす酔っ払いとシラフ二人組。
自室で息子は一体何事かと思っていたに違いない。
ラストは二人で号泣。
「みっちー。みっちーが…」
「うう…みっちぃいいい〜」

娘の周りではK-POPアイドル好きはいても
スタートアップアイドル推しはいないらしく、寂しいらしい。
その分、私が盛り上げるがな!と日夜スタートアップアイドルの
出ている番組をチェックしている。(ただただ自分の趣味)
そして、
二人で、「もしもみっちーに嘘の告白をされたなら」という謎のお題で話し合う。

とまあ、このお家映画鑑賞会は、思いの外娘を楽しませたようで、
ずっと「今日は楽しかった〜」と言っていた。
その後、ポテチとカールでお腹いっぱいだった我々。
簡単に済ませよう、ということになり娘がパスタを作ってくれることに。
最近、創作料理にハマっている娘が、
カボチャをペーストして、牛乳を混ぜ、チーズで味付けをして、
ソーセージとニンジンを投入してパスタソースを作り、
そこにペンネを混ぜ合わせる、という自作パスタを作ってくれた。
親バカながら、味付けのセンスがある。
勉強は苦手なようだから、是非ともこの料理好きを活かして、
管理栄養士の資格をとってほしいと目論んでいる今日この頃。
翌日は運動会明けのため給食がなくお弁当だった。
お弁当メニューも娘は細部までこだわりを見せていた。
白いご飯で行くかおにぎりにするかで最後まで悩み、
白いご飯にふりかけ、と決定したにもかかわらず、
娘にふりかけを持たせるのを忘れてしまった。
いつもだったら忘れ物に気がついてもスルーするが、
食に対する執着心が強い娘が悩み抜いたふりかけ、という選択を思うと
無視できず、ふりかけを届けることにする。
ふりかけを持っていくと、娘は席替えの途中で、先生経由で渡された
それを戸惑いなが受けとり、遠く離れた私に目で会釈していた。

普段、近くで過ごしていると一心同体の娘のように、
はたまた気の合う友人のように感じているが、
不意に娘を集団の中で認めると、
彼女が私とは違う、一個人であることを思い出す。
当然のことなのに、普段は忘れてしまっている事実。

自分よりも大切な存在が、自分とは違う自我を持っているという
当たり前の事実を、普段は忘れてしまっていて、
不意に思い出して戸惑う、ということが時々ある。

時々思い出して、ああ、彼女を尊重しなければ、と
思い直し、また日常に帰っていくのである。



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