【覚書】マイストーキング日記
娘が帰ってきた。
小学校の宿泊研修。4泊5日。
4泊5日!!!!!
宿泊研修を4泊5日に設定したのは一体どこのどいつなんだ!!!!と教育委員会に詰め寄りたいぐらいに、私たち(私と夫)は
「長いなぁぁぁぁぁ」
と、何度ため息を漏らしたかわからない。
出発前に、何度も娘に対して、「寂しいなぁ」とぼやき続けていた。
けれど、夫が「そんなこと言うもんじゃない。(娘)が寂しがって不安がるやろ」と窘めてきたので、それもそうだと思い、私は近づくにつれいわないように気をつけた。
が、しかし!!!
言った本人である夫からは、漏れてる漏れてる。
声に出ちゃってるから!!!
「寂しいよぉぉぉ」
「不安やわあああああ(娘)ちゃん、寝られるん?!」
「パパは寝られへん〜〜〜〜〜〜〜」
おいおい、ちょっと待て。私にあんなふうに言っておきながら、何、娘の不安を煽るようなこと言うてんねん!!!
出発前日には、「寂しいなあ。」「寝られるかな?」「ママの右手を持っていきたいわ〜(怖いって)」と言う娘には、
こちらの不安は悟られまいと、
「大丈夫大丈夫!疲れてすぐ寝られるって!」と明るく励まし、
娘は娘で、口では「不安」と言いつつも、不安で前日に寝られない、なんてこともなく、笑顔いっぱいで宿泊研修へと出発した。
大きなスポーツバッグと、大きなリュックに4泊ぶんの荷物を
なんとか詰め、我々は夫婦揃って、朝早くお見送りの場所まで行く。
見送り会、なるものがあり、
校長先生の「きっと、少し大人になって帰ってきます」という言葉に、
そうか…そうなのね、必要なことなのね、と自分に言い聞かせる。
どこのご家庭も、名残惜しそうに手を振る中、
子どもたちは元気に旅立っていった。
ちなみにバスから手を振る子どもたちを見て思い出したのは
10年ほど前の息子のお泊まり遠足だった。
見送ろうと、バスの窓を見上げた途端。
大絶叫している息子の姿が目に入り、こっちは絶句した。
「うちの子だけ…誘拐されてる???」というぐらい、
窓にへばりついて号泣している。
怖い怖いこわい。
ちなみに息子は、コロナの時期で小学校の宿泊研修はなくなってしまったが、
とにかく家が大好きなので、そっと胸を撫で下ろしていたに違いない。
1日目、パパが仕事で遅く、夜ご飯は息子と二人だった。
「…(娘)ちゃん、もうご飯食べたかな?」
「さあ…もう食べたんちゃう?」
私はすかさず事前に配られていた予定表をチェック。
「もう食べてるわ。今は順番にお風呂入ってる。」
「へえ。」
「10時就寝やって」
「え、おそない?俺なら眠いわ。」
こら待て、君はもっと勉強したほうがええんちゃうか?
2日目も3日目もこんなふうに、ことあるごとに行動予定表を確認する私。
寝る前には、「(娘)ちゃん、もう寝たかなあ?」とぼやく。
日に1、2度、先生から、写真が数枚送られてくる。
全体写真のようなものから、個人が識別できるものまで。
そのどれもをくまなく見て、拡大し、娘を探す。
娘は大体後ろを向いている。
「ほら、見て。ここに(娘)ちゃんおるで」
「ようわかるな、これで」と息子。
ふと、息子の前で娘のことばかりぼやいているかしら?と思い、
「あんたがおらんときもこんなんやからな」と言い訳を述べる。
息子は4泊はないが、1泊のお泊まりなら過去に何度かあった。
「スマホの位置確認で、あんたの位置を確認したりしてんねん」と述べると、
「こわっ」と一言帰ってきた。
あのバスの窓で泣き叫んでいた子が母親に向かって「こわ」とは、
大きくなったもんよ。
「ストーカーやん」と言う息子。
大きくなったもんよ。
全体写真を拡大してまで娘の姿を確認したいと言うのに、
先生は時々何を思ったか、風景写真を送ってくる。
よそのお子さんはまだしも、誰も得しない風景写真を
なぜ送る、先生よ。
部屋の写真とかいらんねん。
砂浜の写真とかいらんねん。
こっちは我が子が見たいねん!!!
わかってます。
わかってますよ。
どんなところにいるか、どんな学習をしてるか、とか
そういうことを含めてお伝えしようとしてくださってるんですよね。
わかってます。
わかってますとも!!!
でもね…
こっちはただただ我が子が見たいんですよ!!!
とかなんとか、文句を言いながら過ごした4泊…
ちなみに夫は、娘から与えられた、「娘の部屋にベッドを組み立てる」という
指令を忠実にこなすべく、それに専念していた。
ある意味すごい。
不在の娘への忠誠心だけで、4泊を乗り切り、その間、目の前にいる
私たちのことは全く見えていない。
私はその間も息子の試合の応援に行ったりしたのだが、
夫は、「いや、今日は(娘)ちゃんのベッドを組み立てるわ」とのこと。
息子はもはやそんな夫の「娘命!!!!!」な行動になんら反抗心も疑問も持たない。
とりあえず、私は文句を言ってみる。
「娘のベッドもいいんですが、そろそろ私の誕生祭りなんですが…」
「あ!!!忘れてた!!!!」
もういいもん…別に…
5日目。
雨の影響で、少し早く帰宅することになった娘たちを、
私と夫は嬉々として揃って迎えに行く。
出会ったお母様方は、みんな口を揃えて「寂しかったねええええ」という。
そう、寂しかったのだ。
正直に言って、一人分のお世話がなかったり、と羽を伸ばせる部分もある。
塾の送り迎えもないし、晩酌でもするか…とか。
息子は部屋にこもって勉強してるし、私は読書タイムとするか、とか。
日頃できないことをしたりもする。
いつもなら娘に延々話しかけられる時間も、ゆっくりと自分と向き合える、とか。
でも、やはりどこか寂しい。
娘の姿を見たら、私泣いちゃうかも。
娘も私の姿を見たら泣いちゃうんじゃない?
目と目があった瞬間、ひしっと抱き合っちゃったりして…むふふ。
と思いながら、集合場所に行く。
体育館の入り口で保護者の方はちょっと待ってください、と言われ、
私と夫は集合時間よりかなり早くに到着し、体育館の中を覗き込む。
しかし、いくら目を凝らしても娘の姿は見当たらない。
そのうち、何人かの生徒は、自分の親が来てるのかなあーと体育館入り口横にある
トイレに来たふりをして、外へ顔を出したりするのに、
うちの娘は全く姿を見せない。
知っている子は何人か通りかかり、手を振るもののお互いに「君じゃないんだけどね、てへ」的な空気が流れる。
やっと、入っていいですよと言われ、子供達が整列している近くまですっ飛んで行き、娘の姿を認める。
娘は大きなカバンにもたれかかり、脱力している。
後ろの友人が私を見つけ、娘に、ほら、ママがいるよ、的な感じで
ぽんぽんとして指をさす。
それに促された娘は振り返り、私は懸命に手を振る。
娘は私を一瞥し、軽く手をあげ、また前をむく。
え…それだけ…?
大きく手を振る、とか。
満面の笑顔を見せる、とか。
あるじゃん。ほら。
感動の再会、なんてものはなかった。
解散の合図を受け、娘のところへ行く。
「ぎゅーってしていい?」と聞くと、「今はあかん」とのこと。
「は、はい。」
疲れているのかもしれない…と自粛する私。
ところが、車についた途端、娘は
「めーっちゃ楽しかった!!!!全然疲れてない!あと五泊ぐらいできるわ!」とのこと。
「ママのことぜんっぜん思い出さんかったわ!夜もすぐ寝た!」
親の心子知らず、とはこのことである。
でも、泣いて泣いてどうしようもなかった、と言われても
悲しくて胸が苦しくなるので、明るく元気に帰ってきてくれた方が
何よりも幸せである。
家についてからも、こんなことをした、あんなことをした、と4泊の間のあれこれを私に聞かせてくれる娘。
本当のところは、四泊の間に嫌な思いもたくさんしたらしい。
4泊も友人と一緒にいたことはなく、段々互いの嫌な面が目についたり。
我がでたりしてわがままになったり、意地悪を言ったり言われたりする。
そういうことも含めて、少し大人になって帰ってきたんだろうな。
正直に言うと校長先生の仰る「少し大人になって帰ってきます」という
実感はないのだけれど、
久しぶりに娘の横で娘の寝顔を見ながら、
とりあえずこの子は留学とかも平気なんだろうな、と
前から薄々気がついていたことを改めて思う。
お兄ちゃんの方が、実家から出そうな気配が全くない。
毎朝、角を曲がるまで見送る時に、必ず角を曲がる直前で振り返る息子。
それはそれで可愛いけれど、
やっぱり…
親は、少し寂しい思いをするぐらいでいい。
後ろなんか振り返らず、元気に前を、前だけを見て進んでいってくれる方がいい。
宿泊研修で、家のことを思い出して楽しめないより、
家のことなんて忘れて思い切り友達と楽しんでくれる方がいい。
秋には息子の宿泊研修がある。
どうぞ、家のことなんぞ思いださず、
友達と思い切り楽しい思い出を作ってほしい。