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「ALL OK!」国籍・年齢なんて関係なく笑って過ごせる場所を目指して/国境のないお家ULU

南区情報ステーション「みなみなみなみオンライン」は,京都市南区役所が,南区に関わる誰もが南区をもっと知って・学んで・楽しんで・好きになってもらうことを目的に,南区の皆様によるまちづくり活動の紹介,区役所からのお知らせ等を,SNS等を用いて配信するWebサイトです。このnoteでは,まちづくり活動に取り組む方々,地域貢献活動などに取り組む企業・事業者の方への深堀りインタビューを掲載していきます。

京都市南区の東寺から徒歩すぐの九条大宮にある,多世代・多国籍の人が集えるコミュニティスペース「国境のないお家ULU」では,『ALL OK!』を合言葉に,英語学童,親子英語幼児教室,国際交流イベントやワークショップを軸に多様な活動を展開されています。今回は,この場所が生まれたきっかけをお伺いしながら,これからの南区での活動の展望についてお聞きしました。

お話をきいた人
伊藤 裕子(いとう ゆうこ)さん / 国境のないお家ULU 代表
Julie(ジュリー)さん / 国境のないお家ULU スタッフ

きっかけは,大人の学びの場づくりから

最初に,伊藤さんがこの事業を始めた経緯について伺いました。

伊藤さんは,大学で外国語学部に入学し,アメリカ・カナダに短期語学留学するなど英語に触れることで世界が広がることを体感し,卒業後は海外で日本語教師として活躍。帰国後には,日本語学校や大手旅行会社にてイベントや国際会議に関わる仕事を経て,ご両親が経営する幼稚園・幼児教室で15年ほど勤務をされていたそうです。その後,オンライン英会話講師として2016年に独立し大人の英会話の学びの場となる「やりなおし英語サロン」を開始されました。

そのときに,伊藤さんが受講生に感じたことが「大人は“英語=勉強”だと思っていて間違えられないという意識が強い。そのため,アウトプットする機会が私との週1回のオンライン授業だけしかない。せっかく周りに外国人観光客がたくさんいて,外国人と交流できるイベントも開催されているのにもったいない…」ということ。受講生の方々に伊藤さんがこうしたイベントのご案内をしてもなかなか足を運んでくれない状況が続きました。

そこで,まずは伊藤さん自身で外国の方と交流できる機会を企画したら参加してくれるかを受講生に確認をしたところ,来てくれるとのことだったので,生徒さんのために毎月1回,地下鉄九条駅近くの元銭湯「レンタルスペース九条湯」で国籍・年齢・性別関係なく集まり,さまざまな企画を楽しみながらご飯を食べる「国際交流イベント~銭湯dEnglish cafe~」を2019年1月より始められました。

その参加者から「子どもを連れて行ってもいいですか?」と尋ねられた際に,「子どもの頃からこういう場があることが大事なのでは」ということに気づき,将来,大人になったときに英語と接することが楽になるようにという思いで,現在のULUの構想が生まれたとのことでした。

この場所を選んだ理由

そこから「国境のないお家ULU」のスタートに向け,まずは物件探しから始められました。当時は宇治市にお住まいでしたが,より多くの観光客とのつながりや出会いを求め,京都市内で場所を探すことに。「外国人の方が日本にきているのに,地域の人と交流できる場所がないのがもったいない」「接点のきっかけとして,茶道などの日本文化の体験を実施する」など,さまざまなアイデアもこの当時に考えていたそうです。

そして,友人の紹介で出会ったのが現在の場所でした。多くの外国人観光客が訪れる「東寺」から近く,元々は子ども服屋さんで入口がガラス張りになっており,外から中が覗けることで観光客も出入りがしやすいのではと考えて,この場所に決めたとのことでした。

それから準備を進め2021年2月22日に活動を開始し,同年4月1日から本格的にオープン。しかし,最初は周りの反応があまりなかったそうです。

世界を知れるユニークなプログラムがいっぱい

そこで,まずは春休み期間中にチケット制でさまざまなプログラムを受講できる体験会を企画。こちらは当時のプログラム内容で,英語を使いながら「プログラミング」「ボードゲーム」「クッキング」「ダンス」などを体験できる機会を用意されました。

子どもたちも親御さんも,何度か体験をしているうちに入会されたり,GWがあけてからはご紹介の方も増えていったそう。そして,今では多くの方々が継続して利用してくれる場になってきたようで嬉しいと話されていました。

その他にも伺ってみると,ULUさんではユニークな取組がいくつも行われていました。スタッフとの会話はすべて英語で話されていることに加えて,体操の先生に来てもらって運動しながら,また,さまざまな科学実験をしながら英語を覚える機会も作っているそう。

お部屋の壁面。防音対策として色とりどりなクッションが飾られています。

メインのカリキュラムの後には,いろいろな国の情報を伝えるようにされています。例えば「レバノンって国はどこにあって,普段はどんなものを食べていて,どんな通貨を使っている?」というのをクイズ形式で学んでみたり,世界各国のお茶を楽しむ時間があったり。ほかにも,いろいろな国の料理を,おにぎりの具材にして味わう「United Onigiri」,ホットドッグにして味わう「ULUDOG」といった「食」をテーマとしたユニークな企画も行われています。こうしたアイデアはスタッフが考えるだけでなく,子どもたちが考えることもあるそうです。

また,取組の中には,南区東九条にあるカフェ「Odashi」など区内のお店と一緒に行っているものもあり,地域でのつながりもできているとのこと。今後も,春休みや夏休みといった期間には近くの梅小路公園や美術館に行ってみたり,キャンプなどもやりながら子どもたちの視野を広げていきたいと考えているそうです。

プログラムの背景に10名のスタッフとの出会い

ULUがこれだけ多様なプログラムを提供できる背景には,10名の外国人スタッフの存在があります。

現在のスタッフとの出会いは,先に紹介した九条湯でのイベントでした。常連の参加者だったフランス人やオーストラリア人など5名がコロナの影響で職を失ったことを知り,最初は伊藤さんが営むオンライン教室のスタッフとして雇います。そして,ULUのスタートともに5名は学童保育でもスタッフとなってくれました。

今では,スタッフは10名まで増え,雇用は大変ではあるけれど,さまざまな国からきたメンバーが揃うからこそできるプログラムも多く,良いメンバーに出会ったと話されていました。

現在,スタッフとして活躍されているブラジル出身のJulieさんにもお話を伺ったところ,日本での仕事が見つかったことや子どもが好きだったのでULUで仕事ができて嬉しいと話されていました。

子どもも大人も世界が広がるように

運営していくうえでは,お子さんの利用がもう少し増えてくれると嬉しいと話される一方で,お父さんやお母さんの視点も広げていきたいとのことでした。海外に行きづらくはなったけれどオンラインで世界中どこでも繋がれるようになり,世界で活躍する日本人とお仕事についての対談を行ったり,子育てや教育について質問形式で話したりする「ULU TALK」という取組も実施。

その際,参加者から「もっと自分が人生を楽しまないといけない!」「いろいろな生き方があっていいじゃん!」という意見が出たことが嬉しかったとのことで,子どもも大人も両方が楽しめる機会をもっと増やしていきたいと話されていました。

実際に「国境のないお家ULU」にお邪魔すると,伊藤さん,スタッフの皆さん,そして子どもたちのハッピーな笑顔と明るい声で溢れていて,その場にいるだけで,自然と笑い合えるような空間が生まれていました。

オンラインでも参加できる「ULU TALK」,ランチをしながらお話をする「ULU Fika」など,どなたでも参加できる企画も多数あります。

大人も子どもも,まずは一度気軽に足を運んでみてはいかがでしょうか。

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南区情報ステーション「みなみなみなみオンライン」
取材/文 まちとしごと総合研究所


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