人と人のつながりが新しいフェスティバルに発展!―西寺公園フェスティバル 多世代交流実行委員会の思い―
JR西大路駅東、平安時代に東寺とともに二大官寺として創建された「西寺」がかつて存在した場所が、「西寺跡」として国の史跡に指定されています。その西寺跡の一部にある唐橋西寺公園で2022年6月4日、「西寺公園フェスティバル」が初めて開催されました。“地域の公園を活用し多世代が交流できる機会を作ること”を目的に開催されたこのイベント、当日はめんこやお手玉などの懐かしい遊びや誰もが楽しめるスポーツのブース、区内のさまざまな福祉団体の物販ブース、地域の図書館を目指すまちライブラリー*のブースや地域企業が提供する移動図書館、新鮮野菜の販売、キッチンカーなどが出店した他、塔南高校*の吹奏楽部が演奏で盛り上げ、大いに賑わいました。
このイベントは、子ども食堂やコミュニティカフェを運営するNPO法人happinessの宇野さん、地域のつながりづくり、見守り、助け合い活動に取り組む地域コミュニティケア研究所の西堀さん、パトロールとランニングを組み合わせた“パトラン“などを行うチームkusabiの鳥本さんの3人が「南区多世代交流実行委員会」を立ち上げ、公園を管理する京都市の「公民連携 公園利活用トライアル事業」として京都市と共催することで実現しました。西寺公園での開催には、地元の唐橋学区自治連合会会長の天野さんをはじめとする地域の方々の多大なる協力がありました。
今回は多世代交流実行委員会の宇野さん、西堀さん、そして唐橋学区自治連合会会長の天野さんにお話を伺いました。
Q:どのような経緯でイベントが作られていったのですか。
西堀―実行委員の3人は普段は全く違う活動をそれぞれで行っていて、最初はつながりがありませんでした。それが宇野さんが運営するコミュニティカフェ「ハピネスカフェ」で宇野さんと知り合って、普段子どもと関わっている宇野さんと、高齢者と関わりのある私とで、多世代が交流できる仕掛け作りができたらと話しているうちに、一緒にやろうと話が進んでいきました。宇野さんや鳥本さんが、子ども食堂の活動を通して唐橋付近の子どもたちの遊びの様子もご存知だったので西寺公園を開催場所の候補に挙げてくれたんです。その後、公園利用に向けて必要な手続きを調べていたところ京都市の「公民連携 公園利活用トライアル事業」について知りました。京都市に相談を持ち掛け、事業の一環として共催で実施することになりました。トライアル事業のため柔軟な公園の利用方法が認められ、通常なら実現しないキッチンカーの乗り入れなども出来ました。
宇野―唐橋西寺公園で開催することになり、それなら、普段から地域での子ども食堂の活動についても協力をしてくださっていた唐橋の自治連合会会長の天野さんならいろいろと協力してくれるんじゃないかと思って、相談を持ちかけました。まさか、数百人の方に来てもらえるなんて当初は夢のような話でした。
天野―宇野さんからこの話を初めて聞いたときは、見当もつかなかったので一体どんなことになるんやろうと思っていました。話が進むにつれてだんだん規模の大きな話になっていったので、西寺公園の利用について、また周辺道路の安全対策について、唐橋学区の皆さんにも相談し、特に学区の交通対策協議会などからの協力を得て、安心・安全な開催をサポートしました。
また、来年西寺公園の近くに移転してくる塔南高校の吹奏楽部に声をかけました。コロナ禍のため人前で演奏する機会が少ないそうで、快くお話を受けてくださいました。そして公園の目の前にある唐橋小学校のPTAから観覧席設置の協力の申し出があり、たくさんの演奏を楽しむ人で盛り上がりました。
Q:当日は、それぞれどのような役割を担われたのですか。
宇野―私は「まちライブラリー」のブースを出しました。運営しているハピネスカフェの一角にライブラリーコーナーを設けていて、本を通じて様々な人たちが交流できる「まちライブラリー」の取組を地域に拡げていこうとしています。
フェスティバルに来ていただいた方に、まちライブラリーや子ども食堂について知ってもらうことを期待しました。 また、社会福祉協議会などと協力して、地域の福祉団体にもさまざまなブースを出店してもらいました。
西堀―私は、高齢の方々から子どもたちまでが多世代で遊んでほしいと思っていたので、めんこやこま回しの昔遊びや、誰でも参加できる簡単ボッチャ*のブースを担当しました。簡単ボッチャには順番待ちの列が途切れませんでした。また世代間の交流を促すため、多世代クイズを行いました。子どもたちにクイズを出題し正解者に景品を渡すのですが、クイズの問題は年配の方に聞かなければわからない昔の知恵やこの地域の歴史を問う内容にしていたんです。子どもたちは公園内を走り回って大人たちに質問をしていました。とても楽しんでくれて、多世代の気軽なコミュニケーションがあちこちに生まれていました。
※ボッチャ…目標球にどれだけ自分のチームのボールを近づけられるかを競う球技。障害を持つ人も持たない人も共に楽しめるスポーツとして人気上昇中。
Q:こうしたイベントを開催できたことで、改めて感じたことはありますか?
西堀―たくさんの人が来てくれて盛り上がり、世代を超えた交流が生まれていたことが嬉しかったです。また僕としては、やってみたいと思っていた高齢者から子どもまで多世代の催しを実現できる方法が見えたことに喜びを感じています。多世代交流実行委員会の3人とも住んでいるのは唐橋学区ではありませんが、会場である唐橋西寺公園の周辺地域の方々と協力して開催することができました。自分の住む地域だけではなく、どんな場所でも協力し合うことで新しい催しが開催できるという可能性が開けたことがよかったと思います。
宇野―普段子ども食堂を運営しているため、子どもたちとのつながりはありますが、保護者の顔がなかなか見えませんでした。それは保護者の方も同じで、私たちのことは子どもを通してしか知りません。今回イベントを開催し、子どもたちが楽しそうに笑顔で参加する様子を見れたことはもちろん、保護者の方を連れて私のブースにきてくれて、そこで初めて保護者の方と顔を合わせることができました。そうやって少しずつでも関係ができていくことが嬉しいです。
Q:今後この地域、唐橋だけでなく南区全域がどのようになっていくといいなと思われていますか?
宇野―その学区の住民ではなくても自治会との連携で実現できた今回の開催方法を、唐橋モデルとして他の地域にももっと広めていきたいですね。地元の人だからできるとか外からの人だからできないとかではなくて、やりたいと思った人が挑戦できたり、それをサポートする人が増えていけばいいなと思います。
西堀―地道な活動がつながってより良いまちができるのだと思います。その一つとして、他の地域で成功したイベントを参考に新たなイベントも開催してみたいですね。これからはSNSに強い世代が高齢者になっていくので、住む場所や活動拠点を問わない活動もできるということを伝えていきたいです。
天野―宇野さんや西堀さんのような、私たちの次の世代が何かやりたいと言ったときに、どんな手続きが必要なのか、どんな準備が必要なのかなどを伝えて、地域として協力できる体制でいたいと思います。
Q:今の子育て世代の中には、やりたい思いはあるけれど動き出せない方や、転入してきて地域になじめないままでいる方もいると思います。そういった方々に向けて新しい試みを実現した皆さんから、応援のメッセージをお願いします。
西堀―僕自身、やりたい思いを持つ人をどこで見つけたらいいんだろうという悩みを持っていたので、自宅の一階に「ブレンディングカフェたんぽぽ」という交流スペースを作り、地域の皆さんに開放しています。やりたいことの気軽な相談でもいいですし、アイデアや自分の活動の発表の場としてもいいですので交流スペースを活用してみてください。まずは簡単なことから始めてみませんか。
宇野―今回のイベントは、本当にたくさんの方に助けていただいて実現しました。そして、私は意外といろんな方を知っているのかもしれないと気づきました。これまでの子ども食堂やコミュニティカフェの活動を通じてさまざまな企業に知り合いができましたし、福祉関係の方や、地域の方。いろんなことを始めるのに、協力してくださる方はきっとたくさんいますので、一度私のところに思いを話しにきてみてください。
天野―今の現役世代が忙しいことはよくわかります。子どものいる親も多くが共働きの時代です。それでも一度、PTAでも民生委員でも町内会でもいいので、今ある地域の活動を手伝ってみてほしい。そうすれば地域の人間関係を理解しながら、自分のことも知ってもらえます。何かあった時に、お互いに連絡し合える関係を作っておくことができたら、それが地域みんなで暮らしを見守ることにつながると思うんです。人とのつながりが発展していけば、今回のようなイベントを開催したり、新しい動きを起こしていく可能性も拓けてくるでしょう。
今後のイベント情報
「わくわく どきどき 西寺公園秋祭り」
2022年11月19日(土)11時~16時
6月の西寺公園フェスティバル出店団体に加え、区内のお店や企業、子ども食堂の運営者が集まり、地域の協力のもとまた新たなイベントを行います。キッチンカーや屋台の出店、子ども向けのスタンプラリー、まぐろ解体ショーの実施など楽しそうな催しが盛りだくさん、ぜひ家族そろってご参加ください。
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