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アークナイツアニメ勢が語りたい!    Grown-up's Paradise

私は去年アークナイツのアニメを見て、誰も救われない世界で自分の正義に葛藤しながらも、前に進む彼女たちに魅了されてしまいました。暗く荒廃しながらも美しさを放つ世界観がとても綺麗で、理想だけで実現されない残酷な物語に心を痛めながらも、強く生きるアーミヤに感情移入してしまいます。
最近はソシャゲをやる元気があまりなくて、アニメ1期、2期は見終えることができたのですが、アプリを未だにDLできていません。しかし、最近拝見した アークナイツ「2024特別記念動画」 にて流れている楽曲、Miliさんの「Grown-up's Paradise」があまりにも刺さったので語らせてください。

”Grown-up's Paradise” 大人たちの楽園とは?

タイトルは直訳すると "大人たちの楽園" となりますが、歌詞ではさらに hellish が入り "大人たちの地獄のような楽園" となります。PV冒頭で描かれる華やかな服を纏い、煌びやかな食器で食事をしている大人たちはまさに"楽園"のような暮らしをしています。直後に地獄のような世界が展開されていくて、排除した者とされた者の対比が表現されています。感染者を社会から排除し、自らの豊かさを追求したことで得られたこの道徳が失われた世界を "大人たちの楽園" と皮肉って表現していると思えるのです。

アークナイツ「2024特別記念動画」 (0:20)

揺らぐ理想と背負う罪

私がこの曲で一番好きなフレーズに

"Do we advance, never stopping our steps,
because we are scared to look back on what we did?"

というものがあります。理想のために歩み続ける彼女たちですが、その過去は肯定してくれません。ふと後ろを振り返れば緋色で染まった川に、理想とはかけ離れた残酷な現実。一般的に肯定的な意味で用いられる”振り返らずに進み続ける”ことを、辛い過去からの逃避として表現されていて、この歌詞を初めて見たときにはっとさせられました。
掲げた理想を叶えるためにロドスは行動していますが、その行動は必然的に争いを生み出してきました。理想のために行動してきたのに、そこで生まれた犠牲は直視できないほど残酷であり、掲げていた理想は進めば進むほど揺らいでいきます。もう理想を諦めることも、立ち止まることさえできなくなってしまいました。それくらい大きな罪を背負い、罪を消すこともできないまま前に進み続けなければならないという覚悟をこのワンフレーズから感じました。

方舟はどこへ行く?

この世界において、"方舟" は重要なメタファーとして機能しています。歌詞の中に "I'm on your ark. Answer me, my sinking ship." という一節があります。方舟は一般的に、大洪水から選ばれた者たちを救う船として描かれてきました。しかしアークナイツにおいて差別や争いをなくし、天災から逃れるための理想郷へと向かうはずだった方舟は、今や沈みゆき、どこへ向かっているのかわからないものとなってしまいました。
理想を追求すればするほど、より多くの犠牲を生み出してしまう。そんな葛藤の中で今やもう降りることも、戻ることも叶いません。どこへ向かっているのか?私たちの理想はどこにあるのか?犠牲なしに進むことはできないのか?問いかけても何も語ることのない方舟にしがみつくことしかできない彼らの運命に、どうしようもなく切ない気持ちになってしまいます。

その弱さを抱きしめて

最後に、ロドスやアーミヤの行動は一見すると理想を追求する強い決意の元に成り立っているように見えますが、この歌はそんな彼らの内面に潜む弱さを歌っているように思えました。理想を追い求めて振り返ると、理想とはかけ離れた現実。これまでの信念は沈みゆき、未来がどこへ向かっているのかもわからない。それでもドクターとともに、進み続けなければならない残酷さを、美しく、切なく表現されたこの歌詞に魅了されました。特別記念動画の概要欄にはアーミヤの台詞が残されています。

"探し求め、かつて揺らめいていた夜明けの色は、光芒と共に駆け抜け暗黒を越える。 たとえその両手が空っぽだったとしても、私と一緒に、前へ進みましょう。"

長い、長い暗黒を、何も得られずとも進み続ける彼女の覚悟を、弱さを、抱きしめてあげて。ドクター。


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