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映画「30S」のススメ

 劇場で見ようと思っていたはずが、いつの間にか終わってしまうのが映画あるあるです。少しでも興味があれば、今すぐオンラインでチケットを予約しましょう。ムビチケを所持している方は早く使い切りましょう。
 現在は「シネ・リーブル池袋」で上映中の映画「30S」ですが、これから全国を巡ります。

映画「30S」を見る前に

 真田佑馬くんが映画にかける情熱に思いを馳せるところから物語は始まります。
 金八先生でチャラを演じ、お昼休みにはタモさんの横でウキウキ踊っていたあの彼も、30才という節目の年を迎えました。20代のうちにやっておきたいと自分に約束した期限ギリギリで叶えた夢は、彼の30才の誕生日に発表されました。原案・プロデューサーを務める映画「30S」です。
 ウキウキな芸能活動の傍、彼は大学に通っていたのです。大学の学費は自分で出しています。その辺の甘えたガキ(つまり私)がひれ伏す偉い方です。ハードスケジュールをこなす中出会ったのが、今回脚本と監督を務めた恩師佐藤先生と、スタッフを務めてくれたゼミ仲間でした。真田くんの案と熱意に賛同し10年越しの仲間たちで作る映画「30S」は、その背景までもがドラマです。"約束ってのは必ず守られるんだよ。その思いが強ければ強いほど"映画に出てくるセリフは、彼自身の言葉でもあるのでしょう。

 劇場や配信トークショーを通して伝わってくるのは、真田くんがプロデューサーとしてこの映画に携わった多くの人に慕われていることです。すべての工程に携わり先頭で引っ張る頼もしい姿です。目はキラキラと輝いて充実した精悍な顔つきです。トークショーの出番がなくても連日シネ・リーブル池袋に現れる姿は、自分の宝物が気になりすぎて映画館に住んでしまう妖精かと思いました。


「この映画が、見てくださった方の背中を押すことができれば」

キャストにいくら言われても、

「・・・」だった方は、自ら押されに行きましょう

 実際に「自分を見つめ直すきっかけになった」人にこのテキストは不要です。私のように一回見ただけでは残念ながらあまりピンと来なかった人に、ぜひとも読んでいただきたい。主要キャスト3人+カオルに自分を重ねられないと、なかなか背中を押してもらう感覚にはなれません。
 また映画はたいてい一度しか見ない方にも繰り返し見たくなるきっかけを作りたい。そして一度しか見ない予定のあなたには、より楽しんでいただくために、事前に見逃せないポイントはしっかり押さえてから鑑賞していただきたい。ネタバレになってしまうので注意が必要ですが、このテキストが鑑賞のきっかけになってくれたら嬉しいです。
 「考察を楽しんで」言われましても、残念ながら私のような人間は、二度目三度目の鑑賞を重ねたところでようやく考察欲が湧いてきました。決して難解なのではありません。

押さえておくべきポイント

 まず主要人物と背景を頭に入れます。
 タケル、レンカ、御手洗甲は、同じ誕生日に生まれた大学時代の同級生です。30才の誕生日を迎える5日前、タケルとレンカの元に、御手洗から久しぶりにメッセージが来ることで物語が動き出します。同じ時期、御手洗の妹カオルは、興信所から呼び出され、兄の甲が詐欺をして失踪していると告げられます。カオルは興信所から得た情報を元に数年前まで交際していたレンカと、バンド仲間の友人タケルに連絡を取り、兄探しを始めます。
 御手洗がタケルとレンカに送る最初のメッセージ内容もよく見てみましょう。句読点の位置が違いますが、それは特に意味はないと思われます。ただ「ミタライ」の名で送られるメッセージは、未登録連絡先から二人に送られてきたことはポイントです。

三通りの軸

 タケル、レンカ、カオル3人のストーリーが軸となり話は進みますが、この3軸の時系列は前後するので、注意が必要です。
 二人と連絡を取り始めるカオルですが、この二人以外には基本的に態度が悪いです。なんでこの子そもそもこんなに偉そうなの?と思っちゃいけません。親友みさき以外の人には心を許さず周囲に壁を作っているという設定なのです。
 アルコール依存症のレンカ。なんでこんなクソみたい人間なの?と思っちゃいけません。依存症になった原因なんかに思いを馳せましょう。そして今絡むのが何でこんなおっさん?そりゃ御手洗を忘れられるわけないだろなんて思っちゃいけません。渋い美声を堪能するお時間です。
 俺このまま30才になっていいのかな。ぼんやりしているくせにめちゃくちゃ婚約者の夕美に失礼なことしているタケルにもイラっとしてはいけません。誰が見ても幸せに見える贅沢な奴にもモヤる感情はあるのです。

 御手洗が、初見ではただのクズに見えてしょうがありません。しかし、御手洗は人たらしです。明るい未来しかないと信じる純粋な男です。ただの詐欺師でないと思えてからがこの映画は俄然面白くなるのです。

10年前の誕生日に3人でした約束ってなあに

 ポラロイド写真の裏面にそれぞれが10年後の自分の理想像を書いているのですが、ポスターでも微妙に隠されているし、なかなか映像で確認できずあれ見逃しちゃったかなと心配しなくて大丈夫。ちゃんとアップで映りますし、何度も言及しますので安心してください。
 これが実現しなければ、映画内では嘘つき認定されてしまいます。んなばかな。御手洗は約束に厳しい男なのです。

太陽と月と地球

 3人が太陽=タケル、月=御手洗、地球=レンカと例えられているということだけ一応頭に入れておけば大丈夫です。ぶっちゃけ御手洗が太陽みたいだし、ぶっちゃけカオルが主役みたいですが、そこもスルーしていきましょう。

クセ強キャラを見逃すな

 緒方興信所の二人、タケルの母、矢崎事務所の面々、三山直子など、脇を固めるクセ強キャラの皆さんの芸達者ぶりを思い切り堪能しましょう。特に最後に出てくる三山直子は、「御手洗と付き合ってると思っている女」です。これを知ってるか知っていないかで考察は大きく変わってくると思いますので、ここを押さえておくのは重要です。

みんな大好き蔵野とタケルのシーン

 夢を諦めた側と今なお夢追う人との面会シーンは必見です。会話の一つ一つが刺さります。10年前秘密基地として使っていたガレージで今なお蔵野は生活しています。シャッターが上がってタケルと蔵野がゆっくり現れる光景は、まるで正義の味方の登場シーンのようです。

美術さんの仕事出来ぶりに拍手

 つい登場人物に注目してしまいがちですが、クセ強キャラの牙城は美術センスも光ります。カオルの持ち物の一つ一つも凝っています。また大学の文化祭で、三山と待ち合わせるみさきが立っている後ろの壁に貼られているポスターにも注目です。監督が満面の笑みでトークショー開催の告知をしています。誰が行くか!思ってはいけません。文化祭の飾り付けも、真田Pが手伝っています。

挿入歌

 何といっても曲が最高です。とにかく最高です。マジでいいです。

20才で夢に描いた10年後の理想の自分

 10年後、誰しもなっていないと思います。理想通りにはいかない現実の自分を許し、周りに素直に甘えられる、支えを素直に受け入れることができるのが大人になるということなのかな。こんな人生も悪くないと背中を押せるのは、他でもない自分だと気付かせてくれるのがこの映画です。御手洗の今に思いを馳せるより、登場人物がどんな変化を見せたのかが重要です。

考察ポイント

・緒方興信所に依頼したのは誰なのか

 自分たちで探せばいいのに、なぜカオルを呼び出して御手洗の行方を探させるのか。見つからない場合はそれ相応のダメージがあると脅します。果たして本当のことを言っていたのかもポイントです。

・嘘もいろいろ

 誰がこのとき嘘をついていたのか、考えるのも楽しいでしょう。

・タケルはいつ夕美の妊娠に気付いたのか

 LINEでも聞かされていないタケルが、なぜ夕美の妊娠に気付いたのか。エスパー? 

・御手洗の行方

 御手洗はどこへ行ってしまったのでしょう。どう考えても死んでいる。って思いますよね?御手洗が死んだのだとしたら、いつ死んだのでしょう?太陽、月、地球の一つでも欠けたらバランスが崩れると言っていたくせに、なぜ自分が居なくなってしまうのか。一番諦めが悪いのが御手洗です。もしかして、本当に月に立っている??!
 
見終わった方は、感想や考察をSNSなどで披露してください。

まだまだ映画「30S」を盛り上げていきましょう!