「投資を始めるべきタイミング」なんてものはない
「あなたも純金積み立てやりなさいよ。月3000円でできるのよ」
と、最初に母に言われたのが大学1年生の時。2001年の出来事です。
我が母は、以前から身の回りの資産運用に関心があり、大きな投資はしないものの、株式、純金積立、外貨預金など比較的手軽な投資は少額ですが密かにしているタイプでした。
当時のわたしは、欲しいものの多くを親に買ってもらって過ごすぬくぬく実家暮らし。アルバイト代(約10万円)の使い道はほぼないはずなのに、毎月しっかりそのお金を溶かし続けていました。お金のかかる趣味はほとんどしていなかったにもかかわらず、あのお金はどこに行ったのか、今でも不思議です。
当時はお金の増やし方はおろか使い方もわかってない大バカ学生で、純金積立の話も「難しそうだなぁ」とほとんど関心を持たず、聞き流していました。当時の金相場が1グラムあたり約1000円の頃の話です。
始める前から、タラレバの洗礼を受ける
それから数年後、いまの夫と出会うのですが、私に再び純金積立の話題が舞い込んだのは2010年の時のこと。
資産運用に関心が高い彼は、カネの価値観においてはわたしと真逆のタイプで、いつもそれが刺激であり、お金は「使う」か「貯める」の二択しかないと思っていた私に大きな影響を与えました。
「純金積立したいんだけど、一緒にやってみる?」と言われ、相変わらずマネーリテラシーが低い私でしたが、「親の勧め」に「彼氏の勧め」がオンされたことで「純金積立はいいもの!」という危険思考回路で、ろくに調べもせずに即口座開設しました。
そして、約9年ぶりに金の相場を見てとても驚きました。母に誘われた当時、1グラムあたりの相場が1000円だった金は、2010年秋には4500円になっていました。なんと、4.5倍!月3000円の投資だとしても、100万円以上の利益になっています。
金といえばアクセサリー素材のイメージしかなく、「世の中における金っていったい何者?!」と本当に驚きました。
「あの時、お母さんの言うことを聞いていたら…」とは、もちろん思いました(笑)始める前から、投資界の無意味な妄想娯楽「たられば」の洗礼を受けたのでした。
4.5倍にもなれば、「これ以上上がらないのでは?むしろ下がるリスクない?」と考えるのが普通の人です。私もそう思いました。それでも「まぁ、安定とは聞くし貯金のつもりで」と思い、気軽に毎月いくらか積み立てを始めました。
「相場はこれ以上上がらない」という予想の結果
多額投資でデイトレードでもしてない限り、日々の細かな相場の動きを見てもあまり意味がない金投資。長期目線で観察しながら、気づけば今年で始めてから10年目になります。
私が始めた当時は、「もう金相場は上がり切ったから、ここから先は安定するでしょう」と言う意見もありました。私もそれほど期待せず、「手放すときにトントンだったらいいな」くらいに思って積み立てをしていました。
ですが実際10年目の今、2019年12月末時点の買取相場は1グラムあたり5790円です。「もう上がらない」と言われてから28%も上昇しているのです。もちろん、その間に下がったこともありますが、結果的には金は大きな暴落もなく、比較的安定的に成長してきた商品でした。
逆に負の異変といえば、10年前には金よりもグラムあたり1000円近く価値が高かったプラチナは、気づけば逆転し、現在は金よりも2000円以上低い相場を推移しています。これは、10年前は全く予想できませんでした。先のことは本当に誰にもわからないものだなぁと思います。
投資は、いつから始めるかがとても重要ではありますが、そのタイミングを予測するのはほぼ不可能で、意味がないということがよくわかります。
お小遣いの行方を追うことで、自立の第一歩を踏み出す
余談ですが、金投資を始めてみて、良かったと思えることがいくつかあります。
・経済の動きに関心が持てた
・生活におけるお金の動きに敏感になった
・自分で資産管理をする基礎感覚を身につけた
実家暮らし、なんでも親や彼氏にやってもらい、ニュースなどみない生活力ゼロの私も、少額とはいえ自分のお金の動きにはさすがに関心があります。純金積立を通じて社会の動きに関心を持ち、自分の生き方を少しだけ管理できるようになりました。
金相場は当時からバブルと言われていた中国経済と大きく関係しています。もともと金は、貨幣制度より前から通貨として取引されていた歴史があり、資産としての信頼度が高い商品です。中でも中国は金に対する価値意識が他国に比べ高く、自国通貨の価値が不安定になると金への注目が上がります。また、祝い事で金を贈る習慣があることも相場に影響します。
中国の経済は世界経済(特にアメリカとの関係)に大きく関わりますので、金相場の動きを見ていると、自然と世の中の情報が入るようになります。
ほとんどがYahoo!トップにのるような情報ですが、ジャニーズ情報と好きなブランドの新作チェックしかしていなかった私にはこれは大革命でした。
この先の金相場が安定し続けることを保証することは全くできませんが、少額で投資を始め資産運用の一歩を踏み出すために、私にとってはとてもいい入り口だったなと今は思います。