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Ninja World: JPN 第1話発売です

羽衣のようなインドの民族衣装、サリーに身を包んだ老婦人が私の席に座っていました。
付き添いやご家族の人が見当たらず困った私に代わって、キャビンアテンダントが英語で話しかけますが話が通じず、インド系のキャビンアテンダントが私には分からない言語で話してようやく意思疎通ができ、華奢な体を引きずるように、ゆっくりした足取りで前方の席に移動していきました。
シンガポール発、成田経由、ロサンゼルス行きの機内でのことです。
10年以上前のことなのでサリーの色は覚えていません。これから成田まで7時間、もしかしてその先のロサンゼルスまでだとプラス10時間の道のりに耐えられるものなのかと他人事ながらハラハラしたことを覚えています。

その旅(というか、マイルの修行)は、割とハードな日程でした。
東京から深夜着の片道特典でバンコクに1泊。

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ここからバンコクで買った1年オープンチケットを使い、翌日午後シンガポールに移動して2泊で、朝7時までに空港に行って9時の成田経由ロサンゼルス行きで乗り継ぎ時間を含めてざっと19時間の移動の後、国内線に乗り換えてラスベガスに行って東京に戻るのをゴールデンウィークの間に終わらせます。


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「この位やれるなら、ジェットセッターとか名乗っちゃってもいいかも」
といい気になっていた矢先、言葉も通じない国へ19時間も一人旅をする人生の先輩に出会ってしまい「まだまだ自分は修行が足りない」と自らのうぬぼれを反省しつつ成田の待合室で、機内清掃を待っていました。
いつもなら「おかえりなさい」と書かれた看板を横目に通り抜けて日本に入国する場所で、同じ機内にいたさまざまな人種の人たちとぼんやり座っていると、バンコクやシンガポールの待合室と変わらないと気がつきました。入国しなければ「自分の国」である利点も不利益もなく外国の待合室と同様、前の国から次の国に行くために時間を潰すだけの単なる休憩場所なのです。
周囲の「日本を乗り継ぎ場所にだけ使う人」にとっては、この待合室だけが「日本」なんだろうなぁと考えました。
そして、「この建物の外はどんな所なんだろう」と思いを馳せる人もいるかもしれないなぁと。
「Ninja World: JPN」の話を書いているとき、「異国としての日本」をイメージするのにこの感覚を何度も手がかりにしました。外から日本を見る人の気持ちになるのは難しいですが、少しでも近づけるように。

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この物語を考えるときに、二つの歌が頭の中で流れていました。
一つはSam Sparroの「21st Century Life」
この歌で歌われているように、私は子供の頃に夢見た「理想的な未来」を生きているとは言えず、また日本の行く先についても楽観的な展望を持っていません。
私にとって、この物語を書くことは「何かしらの希望」を探す旅だったのかもしれません。
もう一つはMilton Nascimentoの「Bridges (Travessia)」
いくつもの橋を渡っていく旅人を歌っています。その中には未来に続く橋もあれば過去から続く橋もあります。

このプロジェクトでブレインストーミングするとき、私と他の作家は「分断」という言葉をよく使いました。
過去に比べて、現代の人々は進化したコミュニケーションの道具を持っているはずなのに、未だにわかり合うことが出来ません。

草稿を書くときに、この歌の人と人を繋ぐ橋を架けるイメージが浮かびました。清書する段階で最後の場面を書くとき、この歌が再び聞こえて、それが私の書きたかったことで「何かしらの希望」だったのだと気がつきました。

件の老婦人は、ロサンゼルス空港職員の押す車椅子にのって去って行きました。彼女はきっと目的地にたどり着けたでしょうし、その後もまた用事が出来ては旅を続けていくのでしょう。

私の書いたこの物語が、最終的にどこまで旅していくのかはまだ分かりません。少しでも多くの人にたどり着けますように。そして、この文章を読んでいるあなたの所にもたどり着けたら幸いです。

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