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石碑見て 歴史を思う 睦月かな 決断の時 字より連想
スーパーに入ると等身大の鬼がいる。節分が近いんだとすぐに思った。鬼といってもスーパーの鬼は、優しい表情だと思う。スーパーを出ると、いつもならそのまま歩いて帰る。だが、今日は天気が良い睦月の晴天だからいつもと違う道を歩いてみた。あるくこと20分程度だろう。見慣れぬ新鮮な風景を見て楽しんでいたが、ふと足が止まった。そこには石碑が並んでいたが、その石碑がとても気になったのだ。
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「なんて書いてあるのだろう」と、読み始める。どうやら山のほうにあるダム建設に関する内容のようだ。気になって読んでいると、突然声が聞こえる。
声のするほうを見るために視線を変えると風景が変わった。建物の中にいて、ダムに反対する住民の姿が見える。そしてそれを説得する側の人の姿が対峙していた。反対派はやや怒号に近い声で明らかに怒っているようにも見える。説得側はただその怒り黙って聞いていながら、それでも将来のためだと必死に頭を下げていた。
気が付けば何の違和感もなく映像が変わっている。次は別の建物のようだが、説得に成功したようなシーンのようだ。反対側の表情は硬く、対照的に説得側の表情が穏やかになっていた。もちろんそこに介入することはない。あたかも映画を見ている観客席にいるような感覚だ。
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その時、我に戻った。文章の内容に没頭してそのシーンが頭に浮かび、いつの間にかその世界に意識が入り込んでいたようだ。
「そんなことがねえ」としか言いようがなかった。もう40年以上も過去のこと。ただ石碑を見ないとその事実もわからかったのかもしれない。
「久しぶりに詠んでみるか」とにかく頭の中に紛れ込んだ複雑な心境をアウトプットしたいと、短歌を口ずさんだ。
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石碑見て 歴史を思う 睦月かな 決断の時 字より連想
(せきひみて れきしをおもう むつきかな けつだんのとき じよりれんそう)
今日の記事「新滝畑台の石碑とダムに沈む集落のこと」を参考にしました。