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占子のいる回転寿司屋


その回転寿司屋は座席の作りのせいで視界が狭く、自分の前に何の寿司が通過するのかギリギリにならないと分からない。

店員が少なく個別注文はできるものの、いつ届くことやらだ。

私は白身の魚が好きでエンガワを待っている。待っているが、回ってくるのはマグロ、中トロ、エビ、ビントロ、サーモン、漬けマグロ……

マグロは嫌いじゃないけど、今食べたいのはエンガワだ。

なぜか、その回転寿司屋には占子という常連客がいる。

占子は常連のせいなのか、感が鋭いのか、いつ頃、どの寿司が回ってくるかが分かるらしい。

占子に尋ねてみた。
「エンガワは流れてきそう?」

占子は少し目を閉じると、軽く頷き「あと数分ね。」と答えた。

礼を言って、回転寿司のレーンを見つめる。

あと数分……。
それって1分?3分?5分?

気になって周りを見回したが占子は別の客と話していた。

1分経ったがまだ来ない。

待っている時間というのは、異常に長く感じる。

占子の言葉を信じて、ひたすら待つ。

たしかに、数分後。

取らなきゃいけない。取らなきゃいけない。と思い過ぎて力が入っていたのだろう。

ちょっと時間を確認するためにスマホを見ると、友人からのメッセージが届いていたので、気になり見てしまった。

ふと顔をあげるとエンガワが通り過ぎて行ったのが見えた。涙。

もう一度、占子に声をかけて事情を説明する。

「まぁ、そんなこともあるわね。」と、再び目を閉じた。
次に目を開けた時、少し悲しげだった。

「エンガワは後の楽しみにして、珍しいノドグロが流れてくるから、食べてみたら?けっこう美味しいよ。その後のエンガワはさぞかし美味しく感じられるでしょうね。」

と、語った。
今のこの状態では、他のものを食べる気になんてなれない。

でも、占子の言葉を噛み締めてみる。

エンガワをひたすら待っていたら、どうなるだろう。

エンガワに対する期待が膨らみ過ぎて、いざ届いて口にすると、なんでそこまで楽しみにしたんだろうと、ちょっとガッカリするのかもしれない。

オススメのノドグロを今度は気軽に待ってみようと思う。

ひょっとしたら、エンガワのことなんて忘れてしまうかもしれない。

#tarosu杯
(占い師としての占いをテーマにした創作です)

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