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さよなら代行〜オペレーター編〜(テレ東ドラマシナリオ案)

●あらすじ:
 暁斗の副業は、さよなら代行会社の電話受付。WEB申込みが主流の今でも、お年寄りや子供など電話申込みをする人間は一定数存在するのだ。依頼主から指定された日時を確認し、都合の合う社員を派遣する、それが彼の仕事だ。
 彼の会社では、まず依頼主に自分でさよならするように促すことになっている。この日も暁斗は転校を友達に告げられない小学生・俊樹を諭していたが、彼の知らない悲しい事実を暁斗は知っていた。心痛める暁斗は退職を決意し、これを機に恋人で代行会社正社員の美冬にプロポーズする。
 勤務最終日。自殺願望の疑いがある女性・佳代を諭すことが暁斗の最後の仕事になり、その結果に暁斗は満足するが、翌日、暁斗は美冬から代行でさよならを告げられる。途方に暮れる暁斗だが、俊樹や佳代と思われる人物の笑顔を見て顔を上げ、その先には…

●登場人物
西山暁斗(にしやまあきと):主人公。副業でさよなら代行の電話受付をしている。
北町美冬(きたまちみふゆ):暁斗の恋人。さよなら代行の正社員。
水沢俊樹(みずさわとしき):さよなら代行の依頼主。小学校の友達に転校を告げてほしいと電話してきた。
小泉佳代(こいずみかよ):さよなら代行の依頼主。両親と元恋人にさよならを告げたいと泣きながら電話してきた。
宇多川(うだがわ):ライバル会社の社員。
受付嬢:さよなら代行本社の受付係。
男性:佳代に平手打ちされる。

●選んだテーマ
みねたろうさんの「そのさよなら、代行します」
シーン少なめに…と思ったので室内で済ませる電話受付です。小学生キャストは難しそうだけど声だけならなんとかならないかしら?

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01 暁斗の仕事

・暁斗、帰宅。室内の電灯を点け、コンビニのレジ袋をリビングの椅子に置く。テーブルの上に置いてあるスマホとタブレットの電源を入れ、台所からコーヒーを持ってくると、レジ袋からサンドイッチを取り出して食べ始める。暁斗がテレビのスイッチを入れると「さよなら代行」のCMが流れる。(アディーレの無料相談っぽいCM)

TV「そのさよなら、代行します。直接お別れを伝えにくい方に、我々ホワイトメッセンジャーがお客様の思いをお届けします。相談料は一切かかりません!まずはお問い合わせを。ホワイトメッセンジャー♪詳しくはWEBで検索!」

暁斗「…何がホワイトだよ。派遣料一律3万って、業界じゃブラックだって有名なのに…」

・暁斗、サンドイッチを食べ終えて、本棚から「SMILE BYEオペレーターマニュアル」を取り出して椅子に座る。テーブルのタブレットを操作してログオンする。コーヒーを飲みながらテレビを見ていると、スマホの着信音が鳴る。

暁斗「はいはい…よっ………お待たせいたしました、スマイルバイ電話受付担当・西山でございます」

・暁斗、テレビの音を消し、マニュアルを開く。

暁斗「はい…はい…さようでございますか。それではお客様のお名前をお伺いさせていただきます…」

語り〈昼間は会社員として働き、帰宅後はこうして副業をしている。自宅でできるし時給制だし、週3でもそこそこ稼げるこの仕事は、さよなら代行電話オペレーターだ。今ではほとんどの業者がWEB受付を主流としているが、スマホやパソコンを持たない人も一定数いるからね。お年寄りとか、まれに子供もいる。ちなみに、俺の所属するスマイルバイはさっきのCMで見た悪徳業者と違ってかなり良心的だよ。派遣料は各支所からの距離に応じて千円単位だし、オプションをつけたって平均7,8千円程度。今は認可外の個人営業者が法外な値段を要求することも多いっていうから、みんなには気をつけてほしいね〉

・暁斗、タブレットを操作する。

暁斗「それでは、3月9日月曜日、水沢様より黒木様にお別れのメッセージをお届けいたします。定型文Cのご利用で、オプションは無し、合計6,600円でございます。振込用紙を発送してから7営業日以内にお振込が確認できない場合は自動キャンセルとなりますのでお気をつけください。え?はい…安すぎる?…いえ、当社はこの価格で最高のサービスを提供いたしております。チラシと口コミだけで広告料を抑えているので可能となっているのです。どうぞご安心ください。この度の受付は西山が承りました。ご利用ありがとうございます」

・暁斗、仕事用スマホをテーブルに置いて、大きなため息をつく。

暁斗「浮気相手と縁を切りたいねえ…みんな勝手なもんだよ」

・暁斗、自分のスマホを取り出して、彼女とのツーショット写真を眺める。

暁斗「代行なんかでさよなら言われたら立ち直れねえな…ま、代行がきっかけで出会ったわけだけど…」

・暁斗、タブレットを操作してログオフし、自分のスマホで電話をかける。

暁斗「…もしもし美冬?あ、別に大した用は無いんだ。最近LINEばっかりで声聞いてないなと思って…うん…うん…今週末、一緒に出かけようよ…うん…」

語り〈こうも毎晩、他人の別れを扱っていると、今ある幸せを失うことが、ものすごく怖くなる〉

02 俊樹からの電話

・暁斗、いつもと同じように副業用スマホとタブレットの電源を入れると、すぐに着信音が鳴る。

暁斗「今日は早いな…お待たせいたしました、スマイルバイ電話受付担当・西山でございます」

俊樹『こんばんは。チラシを見て電話しました』

暁斗「ありがとうございます。まずはお客様のお名前をお伺いいたします。」

俊樹『みずさわとしきです』

語り〈この声…明らかに子供だな〉

暁斗「みずさわとしき様…どのような漢字でしょうか。はい…ええ…」

・暁斗、電話しながらマニュアルの「未成年者への対応」ページを開く。

暁斗「ありがとうございます。失礼ですが、お客様の年齢をお伺いしてもよろしいですか?」

俊樹『…20歳です』

暁斗「さようでございますか。続いて生年月日をお願いいたします」

俊樹『え、えっと…にせん…』

暁斗「水沢様、本当のことをおっしゃってください」

俊樹『…ごめんなさい。本当は11歳です』

暁斗「大丈夫ですよ。未成年者の場合は親御さんの承諾書を郵送すればいいんです。まずはご依頼内容を教えて下さい」

俊樹『あ、はい…あの…実は僕、4月から違う学校に転校することになって…でも僕しゃべるの下手だし…友達の前に出たら泣いちゃいそうだし…最後にそんなカッコ悪い人間だって思われたくないし…』

・暁斗、マニュアルの「お客様が代行を使わずに済むのが一番!」のページを読みながら。

暁斗「水沢様…いえ俊樹くん。俊樹くんはみんなと別れるときにカッコ悪い姿で終わるのが心配なんですか?」

俊樹『うん。もうすぐ6年生になるっていうのにそんなのダサいじゃないですか』

暁斗「そっか。俊樹くんは泣くのはカッコ悪いと思うんだね。でも僕は、みんなとの別れを泣くほど悲しむって、逆にカッコいいと思うよ」

俊樹『え…?』

暁斗「泣くぐらい、今まで友達と本気で付き合ってきたってことだろ。しゃべりなんかうまくなくて大丈夫。俊樹くんがこれまで嬉しかったことや楽しかったことを話せば、みんなに思いは伝わると思うよ」

俊樹『そうかなあ?』

暁斗「そうさ。こんな仕事してる僕が言うのもなんだけど、代行なんか使って綺麗にさよならするのって人間味が無いんだよ。僕たちなんかに頼らず、自分の口で面と向かってさよならできる人間は、勇気があって最高にカッコいいぜ」

俊樹『…うん、わかった。がんばってみます』

暁斗「いいね、応援してるよ。では、今回はサービスをご利用しないということでよろしいですか?」

俊樹『はい』

暁斗「かしこまりました。お手数ですが、最後にアンケートにご協力ください。チラシを見てお電話いただいたとのことですが、どちらの店舗でお持ちになりましたか?」

俊樹『あ、拾ったんです』

暁斗「…といいますと…」

俊樹『自分の家のゴミ箱から拾ったので、多分お父さんかお母さんがどこかでもらったんだと思います』

暁斗「あ…」

(回想)
暁斗「…水沢様より黒木様にお別れのメッセージをお届けいたします…」
暁斗「…浮気相手と縁を切りたいねえ…」
(回想終)

語り〈水沢っていう苗字…まさか…〉

暁斗「か、かしこまりました。差し支えなければ、ご住所を郵便番号だけ教えて下さい」

俊樹『106-0000です』

暁斗「ありがとうございます…この度の受付は、西山が承りました。俊樹くん、みんなと…良いさよならができるといいね」

俊樹『はい!ありがとうございました!』

・通話を終えた暁斗、タブレットで受付履歴を検索する。

暁斗「やっぱり…こないだの…浮気相手にさよならした水沢さんと同じ郵便番号…俊樹くん、知らないんだろうな…」

語り〈この仕事やってて、知らなきゃ良かったってことも多い。いちいち客に感情移入する俺は、この仕事に向いてないかもしれない〉

03 美冬への相談

・暁斗の部屋でコーヒーとケーキを食す暁斗と美冬。足元には、外出先で買ったお土産やパンフレット等が置いてある。

美冬「そっか、そんなことがあったんだ」

暁斗「うん…なんか男の子の純粋さが悲しく思えて…大人ってずるいな、汚いなって…そう思ってたらなんか疲れちゃってさ…だから副業はもう辞めようと思ってる」

美冬「そっか…でも私はそれでもいいと思う。暁斗が辛そうな姿、見たくないもん」

暁斗「ごめんな、こんな弱い奴で…」

美冬「優しいってことでしょ。暁斗のそういうとこ、好きだよ」

暁斗「…美冬はすごいよな、俺なんか週3のオペレーターだけで参ってるのに、正社員のメッセンジャー達は毎日派遣先で修羅場をくぐり抜けてるんだから…」

美冬「修羅場ってことも無いよ。前はそういうこともあったらしいけど、最近はさよなら代行も認知度が上がってきてるから、相手も『ああ代行か』って諦めが早いの。こっちが『お気持ちお察しします』って下に出ればそんなに揉めないよ」

暁斗「そうなんだ…でも、代理でさよなら伝えるのって、つらくない?」

美冬「最近は仕事だって割り切ってるから平気。お葬式の業者と一緒よ。厳かな雰囲気出してるけど、毎回毎回参列者と一緒に泣いたりしないでしょ」

暁斗「そりゃそうだけど…」

美冬「あのね、暁斗の優しいとこは好き。でも、誰にでも優しすぎるとこは心配。もっと自分のこと中心に考えていいと思うよ」

暁斗「自分中心ね…」

・暁斗、コーヒーを飲み干し、意を決したように美冬を見つめる。

暁斗「美冬、俺と結婚してくれないか」

美冬「え⁉」

暁斗「俺、本職は安定してるし、副業で稼いだ金で引越しも結婚式もまかなえるから」

美冬「急すぎるよ…まだ両親に紹介もしてないのに…仕事のこともあるし」

暁斗「美冬が仕事続けたいならそれでもいい。結婚が急すぎるなら、まずは一緒に住むだけでもいい。俺、もっと美冬とずっと一緒にいたい」

美冬「暁斗…ありがとう…私も、一緒にいたい」

暁斗「美冬…」

美冬「今度、二人で新しい部屋探しに行こう」

・暁斗、満面の笑みで頷く。

04 佳代からの電話

・暁斗、いつもと同じように副業用スマホとタブレットの電源を入れる。

暁斗「今日が最後か…」

・暁斗、マニュアルを取り出して、頬杖をついていると、スマホの着信音が鳴る。

暁斗「お待たせいたしました、スマイルバイ電話受付担当・西山でございます」

・佳代、涙声で。

佳代『う…ううっ…チラシを見て…電話しました…ひっく…』

語り〈おっと…最後の最後にちょっとヤバそうなやつが来たな…〉

暁斗「お電話ありがとうございます。それではお客様のお名前とご依頼内容をお伺いさせてください」

佳代『こいずみ…かよ…です…うっ…実家の両親と…元恋人に…さよならを伝えてください…ううっ』

・暁斗、マニュアルの「命の危険があるとき」ページを開く。タブレットを操作し、自殺防止用ダイヤルのページにアクセスする。

暁斗「小泉様、契約を進める前に、私で良ければ涙の理由をお伺いさせてください」

佳代『余計なことはいいわ!いいから両親とあの人に…』

暁斗「小泉様、失礼ながら、簡単に決済できるWEB申込みではなく、わざわざ人と話す必要のある電話申込みをなさっているのは、今のお気持ちを誰かに聞いてほしいということではありませんか?」

佳代『…』

暁斗「無礼はお詫びいたします。ただ、追加料金は一切かかりませんし、秘密は厳守いたしますから、話すだけ話していただけませんか?もしお気に召さないようでしたら、このまま電話を切って他の代行業者にご連絡くだされば構いませんので…」

佳代『…先週……』

暁斗「はい」

佳代『さよなら代行を通して、恋人に…恋人だと思ってた人に振られたんです…実は妻と息子がいる、今まで黙っててごめん、って10万円と一緒に…うぅ…何かの間違いかもと思ったけど、電話もLINEもメールも一切繋がらなくて…この数年間、彼と結婚するのを夢見て生きてきたのに…自分の人生が無意味に思えて…うぅ…もう死のうと思って…うあぁ…』

・佳代の嗚咽が収まるのを待って、暁斗、口を開く。

暁斗「それは辛い思いをされましたね…その代行業者というのは、私どもスマイルバイですか?」

佳代『…いいえ、ホワイトメッセンジャーです…業者の人、淡々と内容を告げて、渡すもの渡したらさっさと帰っていって…私の気持ちなんて1つも聞いてくれなくて…』

語り〈あんの悪徳業者…届け先のメンタルケアなんて基本中の基本だろうが…〉

暁斗「その時言えなかったお気持ち、私で良ければお聞かせください」

佳代『…いいんですか』

暁斗「存分にどうぞ」

佳代『…シュンイチのばっかやろーう!うそつきー!恥知らずー!奥さんと子供に捨てられちまえー!』

・暁斗、耳を押さえながら。

暁斗「本当にそのとおりですよ。小泉様、良かったら、そのお気持ち、直接お相手に伝えてはいかがですか?」

佳代『でも…アカウントをブロックされてるみたいで…』

暁斗「我々にお電話いただいたということは、その方の住所もご存じなのでしょう?」

佳代『はい。でも…さっきは勢いでああ言っちゃいましたけど、向こうの家庭を壊すような真似は…』

暁斗「小泉様。小泉様はとてもお優しい方だとお見受けします。ですが、もう少し自分中心になっても良いと思いますよ。こんなに傷つけられた今くらい」

佳代『…考えてみます。なんか、スマイルバイさんって、他の代行業者と違って変ですね』

暁斗「変…でございますか?」

佳代『こんな風にわざわざ依頼を断って、売り上げ伸びないんじゃないですか?』

暁斗「お客様が笑顔で別れを告げられるなら形は何でも構わない、それが当社の理念です」

佳代『あはっ…やっぱ変ですよ』

暁斗「褒め言葉として受け取らせていただきます。では、今回はサービスをご利用しないということでよろしいですか?」

佳代『はい』

暁斗「かしこまりました」

・暁斗、タブレットの自殺防止ダイヤルのページを閉じる。

語り〈こうして、俺の最後の仕事は終わった。正直、最後の契約が成立しなくて良かったな。ちょっとだけ、人生に希望が持てた気がしたんだ。このときは…〉

05 暁斗の前にメッセンジャー現る

・某ビルの前。暁斗、副業関係の機材を紙袋に入れて代行会社に向かう。

暁斗「機材返却のついでに、美冬に会っていくか」

・暁斗、ビルに入ろうとする。

?「西山暁斗様ですね?」

暁斗「はい、そうですが…」

?「ホワイトメッセンジャーの宇多川と申します。北町美冬様よりご伝言をお預かりしていますので、お時間頂戴いたします」

・暁斗、持っていた紙袋を落とす。

暁斗「美冬が?…嘘だろ…」

宇多川「読み上げます。『暁斗くん、今までありがとう。もう会えなくなりました。さようなら』以上です」

暁斗「人違いじゃありませんか?」

宇多川「いいえ、お預かりした写真は確かにあなたのものです。それでは、確かにお伝えしましたので、私はこれで失礼いたします」

暁斗「…嘘だ」

・暁斗、紙袋を拾って会社の受付に急ぐ。

暁斗「すみません!昨日で退社した契約社員の西山ですけど…あ、これ返却なんですけど、落としちゃったんで壊れてたら弁償します…あと現場派遣部門の北町美冬さんはいらっしゃいますか?」

受付「少々お待ちください」

・暁斗、待っている間、美冬に電話をするが、電源が入っていないメッセージが流れる。

暁斗「なんで…?」

受付「お待たせいたしました。申し訳ありませんが、北町は本日休暇をいただいております」

暁斗「そうですか…えっと…今まで…お世話になりました…」

・街なかを歩く暁斗

語り〈一緒に住む家探そうって言ったのに…あれ嘘だったのかよ…〉

・暁斗、ふと信号待ちをしている車をのぞくと、鼻水まみれで号泣している少年が見える。彼の手元には、花束やプレゼントと「俊樹、転校しても元気でな」と書かれた色紙がある。

暁斗「もしかして、あのときの俊樹くん…?」

・暁斗、声をかけようとしてためらい、車は行ってしまう。

暁斗「…勇気出したんだな。カッコいいぜ…それと比べて俺といったら…はあ…」

・再び歩く暁斗の前に、中年男性の頬を叩く若い女性の姿。

女性「奥さんと子供に捨てられちまえー!」

暁斗「このセリフ…もしかして昨日の小泉さん?」

男性「待って…ごめんね佳代ちゃん…」

女性「あ、忘れてた…これ返すから!」

・女性、男性に封筒を渡す。

女性「さよならくらい、自分で言え!意気地なし!」

・暁斗とすれ違う女性、清々しい顔をしている。

男性「…ちっ…」

・男性、何かを落とす。

暁斗「あ、すみません、落としましたよ」

・暁斗が拾ったのは「水沢俊一」と書かれた社員証。

語り〈水沢…?俊一…?あ…〉

(回想)
暁斗「…水沢様より黒木様にお別れのメッセージを…」
暁斗「…浮気相手と縁を切りたいねえ…」
佳代『さよなら代行を通して…ホワイトメッセンジャーです…』
(回想終)

語り〈いくつも業者使って、何人と浮気してんだよ…救いようがねえな…〉

男性「ああ、すみません、どうもありがとうございます」

・暁斗、社員証を手渡しながら。

暁斗「あの!」

男性「何か?」

暁斗「…ご家族を、お大事に…」

・男性、舌打ちして無愛想に去っていく。

男性「ちっ…大きなお世話だ!…あー、代行業者は下手な仕事するし、女房子供に逃げられるし…くそっ…」

語り〈逃げられ…小泉さんが心配するまでもなく、あの人の家庭は壊れてたんだ…あ!…だから俊樹くんは転校するのか…あの歳で、本当によくがんばってるな…〉

(回想)
・号泣する俊樹の顔。
・清々しい佳代の顔。
(回想終)

暁斗「あー、俺も勇気を出して前に進むか」

・暁斗、顔を上げると。

美冬「暁斗!」

・目の前に、美冬が息を切らして走ってくる。

暁斗「え…美冬?どうして…」

美冬「…代行が来たと思うけど、それウソだから!」

暁斗「嘘?」

美冬「ウソっていうか…昨日うちの父さんに彼氏紹介したいって言ったら、一人娘を嫁にやれるかって大喧嘩になって…そしたら父さんが勝手に代行頼んで別れさせようとしたみたい…」

暁斗「なんだよそれ、お前の親父さんすげえ人だな」

美冬「ネットの履歴見た母さんが連絡くれて、いま父さんのことぶちのめしてきた!」

暁斗「ぶちのめし…」

美冬「ごめんね、もっと早く連絡したかったのに…父さんが暁斗の連絡先消しちゃったみたいで…トーク履歴も消えちゃった、本当にごめん…」

暁斗「そんなのいいよ…美冬が戻ってきてくれただけで…」

・暁斗、涙をこらえる。

美冬「泣かないでよ!第一、さよならするときは自分で言うし!」

暁斗「さよならしないでよ〜!」

・暁斗、こらえきれず泣く。

美冬「例え話でしょ!あー鼻水拭きなよもう…」

語り〈面と向かって人と話すのって、時々大変なこともあるけど…悪くないよ。さよなら代行を使いたい人、理由はそれぞれあると思うけど、ちょっとだけ勇気を出してみたらどうかな?〉

〜後日〜

・暁斗、郵便受けから手紙を取り出して開封する

暁斗「げ!弁償代44,800円天引き?きっつ〜」

おわり!

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あとがき

ハッピーエンドにしたかったんですが。
俊樹にとって辛い話になってしまいました。
でも勇気を出した彼は、きっと前に進めるはず。
うーん。モヤモヤが残るかも。

冒頭にも書きましたが、小学生キャストは難しいだろうな。中学生くらいなら衣装化粧でなんとかなりそうだけど初稿は(採用されるかわからんけど)これでお願いしますm(_ _)m

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南葦 ミト
応援してくださるそのお気持ちだけで、十分ありがたいのです^_^