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私とドリカムと溶けて消えた想い

ドリカムの「もしも雪なら」って知ってます?
失恋どころか、はじめから叶わない恋のうた。

ちょっと胸が痛むクリスマスソングですが、
↑動画をBGMにお読みください。

もし音は聞けないわっていう方は、
先に歌詞をご覧ください。

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…10年も前の話だから時効でしょ?

この曲を初めて聞いた学生のときは、
自分がそんな恋をするなんて思わなかった。

夫と出会うはるか以前。

社会人一年目の私は、ある人に憧れた。

一回りも歳上の人で、
何もわからない私に色々教えてくれた。

会えるのは毎日午後四時過ぎ。
彼とチーフを含む三人で同じ仕事に出るとき。

新婚ホヤホヤの体育会系チーフと、
奥さんと二人の子供のいる彼と、
彼氏いない歴3年目の私。
(ちなみにこれ8年続くw)

今思うと面白い組み合わせだった。

ほぼ毎日顔を合わせていたんだけれど…

ある冬の日。

ドリカムの歌と違って雨も雪も降ってなかった。
ただ、からっ風が強く吹いていた。

彼の仕事上の些細な一言が、
後日、仕事相手とのトラブルになった。

普通なら激励ととれる言葉だったが、
相手は逆恨みに近い形でこちらの配慮不足を訴えた。

その最初の訴えを聞いたのは私一人。
初期対応を誤った。

と、今ならわかるが、
当時出張中だった彼もチーフも
表立ってそうだとは言わなかった。

夜遅くまで相手との話し合いは続けられ…

結局、彼はその仕事から身を引いた。

会えなくなって、
会えないことが辛いと気づいた。

後悔しても遅かった。

仕事上の接点の減ったまま、
廊下のガラス越しに駐車場を見て、
彼の大きなファミリーカーを見つけては、
ああいるな、帰ったな、と思う日々が続いた。

そういえば、
奥さんに怒られるから○時には帰らなきゃって、
よく言ってたな、なんて思いながら。

でも、唯一会えそうな場所があった。

朝一番の給湯室だ。
彼は毎朝、コーヒーを飲みにそこへやってくる。

そしてある日。

私がお湯を沸かしていると、
果たして彼はやってきた。

私は生意気にも告げた。

納得がいきません、と。

彼がなんと答えたのか、もう覚えていない。

でも、先輩が後輩を諭すような、
そんな当たり障りない会話だったと思う。

当時持ってたガラケーに、
会いたい、とか、でも言わない、とか、
背中ごしに声が聞こえるだけでいい、とか、
秘めた想いをポチポチ書き溜めていた。

誰にも言わないまま4月になった。

彼は転勤で職場を去っていった。


でも、送迎会のときに印象的なことがあった。

当時の職場は、昔ながらの習慣が根強くあり、
ほぼ全員、乾杯の直後から食事もせずに、
周囲の人に酒注ぎ行脚をするのだが…

この日、乾杯した直後、
彼が一番最初に注ぎに来てくれたのは、

私だった。

単純に、たまたま席が近かっただけだろう。
でも。

管理職よりも、同じ部署の主任よりも先に、
あんなペーペーの小娘のところに来てくれた。

もう、それだけで十分だった。

それから二、三度、
出張先で顔を合わせたけれど、
それこそもう十年近く会っていない。

私のはじめから叶わない恋は、

自然と終わっていった。

ーーーー

もう12月か、冬だな〜なんて思いながら、
何気なくドリカムの「もしも雪なら」を口ずさんだら、
あのときのことを思い出した。

もうすぐ私は、あのときの彼の年齢になる。

もしドリカムの歌に例えるなら、

私の想いはあのとき、
みぞれ混じりの雨のように、溶けて、消えた。

でも、その溶けて消えた想いは、
きっと地中を巡って、私という木の根を養い、
今の私の人生を、確かに豊かにしてくれている。

あの経験ひとつ欠けただけで、
行動指針や人付き合いが変わって、
夫との出会いは無かったかもしれない。

そう考えれば、
どんなに辛くせつない思い出だって、
大切にしていきたいと思えるのだ。

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あとがき 〜クリオネさんへ〜

クリオネさんのツボにハマるかわかりませんが、
ご高覧いただけると幸いです。


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南葦 ミト
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