南藍 短編詞『ドナー星』
私は寝台の上にいる。周りには誰もいない。
体が重い。真っ白な天井が見える。
まだ10代だというのに。
私はどうやら腎臓の重い病気らしい。
家族の記憶は無い。
『プシューッ』
部屋の扉が開いた。
毎日決まった時間にこのロボットが食事を運んでくる。
「キョウハシン鮮ナマグロデス」
このロボットだけが私のお話し相手。
物心がついて人間とは出会ったことがない。
「ありがとう」
私はそういうと、ロボットは人間のように微笑み、扉の奥に消えていった。
「良イドナーガイマスヨ…」
部屋の奥から聞こえたロボットの声で目を覚ますと、部屋の電気は真っ暗になっていた。
ドナーが見つかって、手術が始まるんだわ
そう考えた私は、少し不安げに待っていた。扉が開き誰かが入ってくる。暗くて見えない。
「ハジメマス」
その声と共に注射を打たれた私の意識は遠くの彼方と消えていった。
どれくらい時が経っただろう、
意識が戻った私が目を開くと知らない天井が広がっていた。
目の前で知らない女と男が泣いている
親なのだろうか。
身体中に痛みがあり、思うように動かせなかったが、私の心は晴れ晴れとしていた。
どちらにせよ助かってよかった.
体はまだ重い。