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kanro055
キャンセル待ち
しりとり式にテーマの言葉を連鎖させていく掌編小説。
テーマは、軍艦巻き に続き 「キャンセル待ち」 です。
待つことが、私の価値だ。
どこかの歌じゃないけれど。
そのひとは、取引で月に一度私の会社にやってきた。
背が高く白い歯をしていて、いつもさっぱりとした香りがした。
毎度の会食の後、二人でバーに行き、そのまま朝まで過ごした。
月に一度だけ、でも必ず。
そのひとには恋人がいた。
遠い外国に駐在しており、3ヶ月に一度会いに行っているとのことだった。
そんな遠距離恋愛、そのうち終わるに違いない。
友人は言った。
「先の見えないキャンセル待ちだ。やめたほうがいい」
私はやめなかった。
待ち続ければ権利は消えないでしょ。
ある日そのひとは言った。
「結婚するんだ」
そうなんだ、おめでとう。外国に住んでいるって言ってた彼女さん?
「ううん、彼女とは少し前に別れた。最近入ってきた会社の後輩となんだ」
どこの女だろう。
キャンセル待ちの横入りは許せない。
でも、三組に一組の夫婦が離婚する時代だ。
次を待つことなんてわけない。
待つことだけが、私の価値だ。
じゃあ今日はあなたの結婚祝いだね。
次、何飲もっか。
次回は
キャンセル待ち → 「チケット」です。
友人の、なしころもサクサク(@jupiter_00270)が担当します。
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