【極短編小説】ネコババ

「はぁー、ここにもねぇか......」

 いかにも浮浪者といった風情の中年は、白い息とともに吐き出す。
 自販機の釣り銭口を恨めしげに見つめる姿に、俺は他人事ながら情けなくなった。

 こんな寒い日にまで、そしてこれからも小銭を追いかける人生を送るのか、こいつは。

「ここにもねぇかぁ......ビットコイン......」

 その日から俺は今日に至るまで、夢を追い続け自販機を漁って回っている。

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