
タマリバタケ出張企画。民家園で昔の農具を使って麦を食べものにする
東京都世田谷区のみんなの畑、タマリバタケでは、今年も麦がとれました。でも食べられるようにまでするのは道具もなくて大変です。そこで、昔の農村を再現した民家園で教えてもらいながら加工を体験するワークショップを10月20日(日)に開催しました。その様子をお知らせします。
会場は、同じ世田谷区の次大夫堀公園民家園です。
タマリバタケとは
ネーミングは地域交流のタマリバと農体験のハタケを組み合わせた造語。都市部における「日常生活の一部としての農」をコンセプトに世田谷区の上野毛地域に、地域のだれでも自由参加できる農の場として区と区民の共同事業として運営されています。たまり場でありハタケでもあるので、出会った人とおしゃべりしたり、ぼーっとしている人もあれば、せっせと種まきや草刈りしている人もいます。他の地域の農活動の情報交換をしたり誘いあったりも良く行われています。卒論のための活動場所にしている学生もいました。
麦がここにやってくるまでと今までの麦のいただき方
以前の麦の栽培と加工の試みついては、こちらをご覧ください。昨年この記事を書いた後、次大夫堀民家園で麦の加工体験ができたのですが記事を書けていないので、一年を経て今回のこのワークショップの報告にちょうどつながりました。
昨年粒粒にまですることができた小麦は麹にして、春のお彼岸にお味噌に仕込みました。先月の秋分の集いでその味噌が無事出来上がっていたことが、こちらにちらっと載っています。タマリバタケで出会った方々と一緒に育てている麦なので、ご覧ください。
次大夫堀民家園とは
江戸時代に多摩川の水をひいて作られた六郷用水を復元した水路の傍らに区内の民家を移築、民具や農具も集めて昭和の初めごろまでの農村としての世田谷の風景を再現した公園です。囲炉裏やかまどでは火が焚かれ、ボランティアの方々による藍染、鍛冶などモノづくりの実現や体験もあり「生きている古民家」をテーマにした展示が行われています。
この日、いろいろ教えてくださったのは民家園係の学芸研究員の乗松さんと田村さん、そしてボランティア「そばの会」の方々です。

当日の様子
この日は早朝から断続的に雨が降って心配でしたが、午後の開催前には晴れて、会場の「旧加藤家」という茅葺屋根の民家の前庭にござが敷かれ、昔の農具も準備が整っていきます。

民家園を知る
いよいよワークショップの始まりです。参加されたのはタマリバタケのユーザーと、イベントの案内に応じて集まられた地域の方々です。
まずは民家園がどのようなところか、学芸研究員の乗松さんから教わります。冒頭に書いたように移築、復元された農村時代のこの地域の様子を体験できるように、当時の作物である麦、ソバ、藍、綿、唐辛子などが季節ごとに栽培されています。養蚕用の桑、紙漉き材料になる楮(こうぞ)、三俣、雁皮といった木も育てられています。肥溜めも肥はためていませんが復元されています。雑木林は落葉樹の葉が肥料になり、枝は焚き付けに、幹は木材と、重要な生活の資財源として利用されていたので、ここでも規模は小さいながら積極的に保全されています。
区内の小学校の郷土史の学習もよく行われているそうで、昔の生活がとにかく不便で辛かったとだけ思って欲しくないと力を込めておっしゃっていました。この日の参加者は昔ながらの光景や手作業の道具に親しみをもって来ているし、ボランティアの方々も木挽きや藍染などを楽しまれているので、対比があるのだなあと思いました。


麦はもともとは主食だった
会場に戻ると、説明パネルを用意されていた田村さんから畑の作物の歴史を教わります。古くから水稲を皆が食べていたわけではなく、この地域は主に大麦を育て主食にしていたそうです。時がたつと近郊農業として野菜栽培が盛んになり、麦は風よけや肥料として野菜の脇で栽培されたり、麦粉が進物や現金収入の元として使われるようになったりします。麦の粉を炒った麦こがしはそのままおやつにするだけでなく、炊き立てでないごはんの風味付けとして振りかけて食べたりしたそうです。


いよいよ麦と昔の道具を使った体験
お待ちかねの麦加工ワークショップとなりました。ここからはそばの会の方々が先生です。
まずは麦の束から麦の穂、粒粒をかき落とします。千歯こきという道具に茎を通します。下には箕というちりとりのような道具をセットしておき、落ちてくる実を受けます。本来は太い束の単位で行いますが、ここでは皆で少しづつ。恐る恐るやっても動かず、意外に引っ張るのに力を入れるんだなーという印象です。


次はくるり棒で穂をばらします。子供たちに大人気でしたが、大きな棒を振りかざすのでなかなか大変。女性陣も重さでちょっとたじろぐので安定して短い部分が回転して振り下ろすには少し慣れがいりました。そして、結構な運動量です。農作業としては夏の暑い時期にこれを延々と続けけなければならないので、労働歌をみんなで歌ったとか、嫁の悪口を節にして景気をつけたとか聞きました。


次に麦わらと茎を分けます。手ではちくちくとノギが刺さるので手袋をしてふるいの目に押し付けて細かい粒を落としていきます。


チリと粒を選別する便利な道具、唐箕(とうみ)
殻やちぎれた藁などをくずを吹き飛ばして麦粒をより分けるのに便利なのが唐箕という道具です。上から選別途中の麦を流し込んでハンドルを回すと、風が起きて軽い塵は飛ばされます。これも大人気で次々と子供たちがトライしましたが、安定した速度で回さないとうまく塵が飛んで行ってくれません。



これだけの麦が選別されました。
大麦ですので、これを炒れば麦茶の素になります。

いよいよ石臼で粉ひきです
実は今年は大麦小麦をまいたのに収穫できたのはほとんど大麦。昨年大麦は麦茶にするしかなくて、今年は何とか食べるための加工をしてみたいという希望がありましたが。しかし、大麦を食べるには外側のざらざらした皮を削り落してから押し麦にしたりするようですが、ここにはその道具はないそうで、残念ながらまた麦茶行きです。そしてイベントのためにそっと仕入れた小麦を使って石臼を体験します。
まずは石臼の上と下を合わせるところを見せてもらいました。溝があるのでそこに粒が入り、回転しているときにすりつぶされて、外側から粉になって出てくるという仕組みです。

石臼の上に置いた麦粒を少しづつ穴から中に落としながら臼を回します。

あっという間に行列ができました。






挽いた粉をふるいます
石臼から出てきた粉を集めて、先ほどよりずっと目の細かいふるいにかけます。そうして麦粒の皮が粉になった茶色い「フスマ」と白い小麦粉をより分けます。

みんなで手に入れた小麦粉はこちら
ふるいで小麦の皮など薄茶色「ふすま」が取り除かれ、きれいな白い小麦粉が出来上がりました。

今後の行事を紹介してお開きとなりました。
多くの方とたくさんの学びのできた回でした。
タマリバタケではこの後も秋植えの植物の手入れ、有志メンバーが通い農をしている新潟県十日市市松代のお米の収穫祭などがつづきます。民家園では11月1日から元日まで、稲作モノ語りという稲作にちなんだ展示があり関連イベントも毎月行われます。また11月23日は毎年恒例のせたがや民家園まつりで、民家園で活動するボランティアや協力団体による実演や体験、手作り品の販売、活動紹介などが行われます。
この場に来てくださった方にもぜひ来場いただきたいです。
参加くださった皆様、教えてくださった先生方、どうもありがとうございました。

タマリバタケについての詳しい情報
こちらに、場所と週に一度のコミュニティ活動日も合わせて載っています。タマリバタケ | NPO法人 neomura
日頃の活動については下記のFacebookグループで様子を見ていただくことができます。
次大夫堀公園民家園についての詳しい情報
こちらも世田谷区のホームページに紹介があります。こちらも世田谷区のホームページに紹介があります。民家園(次大夫堀公園民家園) | 世田谷区公式ホームページ
また、11月からは「稲作モノ語り」という企画展が始まるようです。とても素敵なチラシをいただいたので掲出します。ご興味のある方はぜひご参加ください。

