マイ・ストーリー 努力と葛藤と希望の本
becoming
ミシェル・オバマ (株)集英社 2019.8.28初版 2021.12.13読了
2008年より2期に渡りアメリカ大統領を務めたバラク・オバマの妻。
黒人初のファーストレディとして世間の好奇な目に晒されながら、
自分に与えられた使命を全うするべく夫を支え家庭を支え、
多くの試練を乗り越えてきた。
シカゴの労働階級出身で黒人貧困家庭も多いサウスサイド地区を地元とし、
生涯に渡りアメリカの格差社会・人種差別を身近に経験した。
政治を通じて、地域の再復興・女子教育の促進・給食を中心とした
食育への財源増加を図る。
ロースクール出身の弁護士という圧倒的な学歴と肩書きから、
一般的には高圧的なイメージを持たれている著者。
本書では自身の生い立ちと共に一家が寄り添う家庭像を
実際の思い出と共に書き記すことで、それを見事に覆している。
学生時代の恋やバラクとの出会い・結婚に至るまで、
細部の気落ちを曝け出し自身を作り上げている女性観・人生観を表現している。
一国のファーストレディでありながら、妻であり、母であり、
女性であり、有権者である彼女の語る悩みは、
あらゆる女性の共感を呼び、芯の強い優しさを伝えている。
こんなにも自分で政治のことを、自国の将来のことを考えることがあるだろうか。
黒人だから、人よりも勉強し、人よりも成績を残し、人よりも努力した結果、
他の誰もが羨むキャリアを手に入れた。
そんな彼女でも自身の信念に従い道を突き進むバラクの傍では、
本当に望む道は何なのか幾度となく再考しなければならなかった。
実父の死や流産の体験は心の傷を乗り越えた者だけが語れるものである。
自身のキャリアだけではなく、家庭との両立には
パートナーとの度重なる話し合いが重要であるとの教訓を与えている。
信じる心を貫き、バランスを保つ彼女の生き方に活力をもらえる。