
大人のための儒教塾
加地伸行著 中公新書ラクレ 2018/11/10出版 2023/3/3読了
大阪大学名誉教授の著者が儒教について解説する。
仏教のしきたりに従って行っていると思っていた慣習が、実は大半が儒教由来だったと知って驚いた。
海外の友人から、同じ仏教起源の国なのにインドと中国と日本で社会構造や教育制度が全然違う理由をうまく説明できなかったが、これを読んで納得した。
仏教がインドで勃興し中国へ伝播する前に、すでに中国社会には儒教が広まっていた。儒教をベースとした中国に新たな宗教が取り入るためには、儀礼習慣や意味づけをローカライズする必要があった。
その流れで中国仏教は儒教の要素を多く取り込んだ独自の体系を作り上げ、それが日本に伝来し日本仏教となった。
特に日本では寺院が幕府の庇護を受けたこともあり、明治維新以降朱子学に基づいた道徳としての儒教が普及した。
東北アジアでは、戦乱が繰り返されたヨーロッパに比べ、狩猟型から農耕型の社会システムに移行した。
農耕社会では個人主義でなく家族主義が重視され、男と女の役割が区別された。
家族主義は一族主義とも言え、父母や先祖を敬う儒教の教えと一致する。
お彼岸・お盆など、元々儒教の年中行事として行われていた風習に、後から仏教的要素が加わった例も多い。
また、祖霊を供養する迎え火・送り火の概念も仏教にはない。
仏教が輪廻転生を素軸としているのであるから、墓や祖霊や祭祀などの法事とは結びつくはずがない。
インド仏教において、その風土環境から現世で生きることは苦行であった。
輪廻転生という概念が人々に救いを与えたのである。
人間は死を迎えると、それまで生きていた世界と死後の世界の間である中陰の世界へ入る(49日間)。
それを7つに区切った期間のうちに、閻魔様がその人の生前の行いを評価判定する。
死後の世界には全部で10コースあるが、現世で解脱した人は仏となり上位4コースに行く。
ほとんどの人が行く残りの6コースには、四王天となり仏様のガードをする天道、人間道、争いの絶えない修羅道、この世で悪いことをした人が行く畜生道、さらに下の餓鬼道、最下ランクの地獄がある。