
むずかしい愛
カルヴィーノ 和田忠彦訳 岩波文庫 1995年4月初版 2022年8月1日読了
誰しもが日常の中で空想の冒険をしている。
12の短編集の中で張り巡らされる各人の妄想。
ときめきと居心地の悪さ、どちらが空間を支配するのか。
姿の見えない相手との鬼ごっこのよう。
思い込みや私欲から恥じらいが生まれることもあれば、それだけで成り立つ愛もある。
2人の異なる人間だからこそ、予想だにしない行動に驚き、食い違う思いに疲弊するもの。
読者の冒険編では、一見自然で気ままな女性の美しさに気が散ってしょうがない男性とそれに何の興味も示さない女性という構図が見てとれる。
しかしながら実際の心理では気をひこうと試行錯誤する女性と読書を完結させたい男性という構図であった。
とはいうものの2人の情熱は高まっていく。
外見と心情と体現が全て噛み合わない状況が至極不偏のような表現。