catalinaと"Walls,Fragments"(後編)
前編の内容投稿してから、トイレの落書き的に書いた内容が意外と色んな人に見られていたので、結構びっくりしました。
前の投稿から時間がたって、空いた時間につらつら文字を足してったらこんな文量になってしまいました。前編はバンドの変遷とレコーディングの詳細について書いてみましたが、リリース1週間前となった今回は、もう少し自分とcatalinaの音楽性について深掘った話と、曲についての詳細をつらつらまとめています。CD版には歌詞カードがついてるので、このnoteの内容と歌詞の内容を照らし合わせてみてもらえたらうれしいです。
自分とcatalinaの音楽性について
中学~高校と、Greenday⇒エルレ⇒ハイスタ⇒FATと、多分メロコアキッズ”正史”的なものを辿っていった。歯車が狂い始めたのが、ブックオフで買ったFATやPunk-O-ramaのコンピに入ってたSNUFFとDESCENDENTSでした。
SNUFFって初期ばっかり話題に上がるけど、FAT期のSNUFFも大好き
DESCENDENTSについては多分”正史”的扱いなんでここでは割愛して、ネット勃興期にSNUFFに魅了されてしまった俺は、膨大なテキストサイトの海に記載された”UKメロディック”というワードを脳の中で反芻し、AmazonマーケットプレイスでLEATHERFACEの”MUSH”を購入して高校生活を終えることになった。当時は音楽の情報収集といえば、タワレコかブックオフで完結してしまっていた俺にとって、テキストサイトのレビューは”俺だけが知ってる情報”として、少なからず優越感はあったけど、”引き返すことができなさそうな沼”にも見えたんですよね。
大学に入って、多摩の大学まで神奈川の南の端から電車で2時間かけて通う中で、町田のユニオンが通学範囲に入ったことで、ほぼ大半の大学生活をここで過ごすことになった(当時の町田ユニオンはとにかくメロディックの中古盤の品揃えがすごかった)。UKメロディックもテキストサイトのレビューを頼りに少ないバイト代で買い漁っていったが、SNUFFやLEATHERFACE、MC4、BroccoliといったUKメロディックメインストリームどころよりも、VAやシングル編集版くらいしか残っていないバンドの方が好きだった。
理由として、まず、俺は肉体、精神的にマッチョじゃないので、SNUFFやLEATHERFACEのように当時革新的に新しい音楽性を表現していたバンドよりも、UK独特のセピア感がある音像を、ナヨナヨした感じで歌ってるのが性に合った。SNUFFやLEATHERFACEはもちろん好きとしてね。そういったメインストリームじゃないバンドにもテキストサイトから歴史を読み取ることができたし、どういう感覚をもって表現してるのかを自分の中に落とし込んで考えてみるのが楽しかった。
そして、単純な理由として、メインストリームどころは音源が高かった。当時再発もされていなかったので、アルバム1枚に4~5,000円出すのは当時バイト代が限られていた学生からするとかなり博打を張るイメージで、ファミチキや吉牛の牛鍋丼を食べるのを躊躇いながら、300~500円のコーナーをかき集めていた。(UKじゃないけど、Plan-it-X、Traffic Streetとかのフォーク・ラフパンクバンドの音源を買ってたのもこの時期なので、多分前者のナヨナヨした感じが好きなことに拍車をかけていたと思う)
UKメロディック最高の到達点であるHorace Goes Skiing
アンディバーナード先生率いるGAN。ここら辺の編集版も
リリースしたてで新品で安く買えました
そんな音楽の買い方をしていたのと、某大学のように”メロディックに強いサークル”でもなかったので、バンドサークル内で好きな音楽を共有してもどこか苦い笑顔でやんわり突き返されることが多く、自分が好きなバンドに対してさっぱり自信がなくなってしまった。2~3年の頃からは人から勧められた北海道系のエモやオルタナ、90sエモやポストロックとかを中心に聴くようになった。中でもブッチャーズとナンバガは死ぬほどハマって、大学で必死にコピーした癖がついて、パワーコードも開放弦を交えて弾かないと違和感が出るようになってしまった。
就職して、catalinaというバンドを始めて2枚デモを出したんだけど、メンバー脱退したタイミングで、ある種自分の中で勝手に壁を作ってしまっていたメロディックパンクのバンドを改めてやってみようと思った。バンドやるモチベーションとしても、多分最後の機会だし、"自分がかっこいいと思っていることが共感できることなのか"というのが、めちゃめちゃエゴ丸出しのアルバムのテーマだったりします。そういう意味でのWalls(壁)と、Fragments(断片)。
前置きが長ったらしくなったけど、俺が勝負したかった自分がかっこいいと思っていることとして、
メインストリームどころじゃない(失礼)UKメロディック(前述のHorace Goes Skiingや、Drive、Strookas、Elmerhassel、Wordbugとか)
90sSnuffySmiles(Lovemen、Middishade、Snatcher、IJSとか)
メロディック影響下が強いパンク、オルタナ(HuskerDu後期、Sugar、Lemonheads初期、The Nils、Superchunk初期とか)
コード感が独特な日本のエモ、オルタナ(ブッチャーズ、ナンバガ)
がcatalinaの音楽性の軸になってます。この自分がかっこいいと思っている音楽をどれくらいオリジナリティをもって頭の中から吐き出せるかっていうのが重要で、EP段階で良くて2~30%くらい出せていたのを、このアルバムだと60~70%くらいは出せてるんじゃないかと思います。
でも、曲の元ネタはSNUFF、LEATHERFACEとかが多かったりする。するんだけど、結局出来上がった曲を振り返ると、ストレートにそのバンドは表現できてなくて、Goober PatrolとかHooton 3 Carとかを聴いたときに思うような不器用な仕上がりになってるのは、多分俺がマッチョじゃないからだろう。
"Walls,Fragments"曲解説
#1 Stage4
■曲について
藤井君が加入するまでのコロナ禍の期間である程度構成が固まっていて、LEATHERFACEの「Do The Right Thing」っぽいことを3コードでやりたいな~と思いながら作った曲。
イントロからはかなり雑多な感じはUNWOUNDをパクったりしてるので、精神性も含めてポストハードコアチックな表現はなんとなくまだ憧れがあったりします。
メロで解像度が上がるとこが気に入っとりますが、ライブでやってる時はそのタイミングでめちゃめちゃテンポ上がるように仕込んでるので、そこもテンション上がるポイント。
■歌詞について
高校の時に見まくってた今は亡き(あるのか?)「NOFXを和訳するスレ」で、その中でめっちゃ気に入ってた歌詞が「Wore Out Soles Of My Party Boots」でした。
30超えたくらいでキラキラした世代の眩しさに耐えかねて、
気が付くとライブハウスや新譜から足は遠のき、同じ音源を繰り返し聴きながら冷笑的になった自分を顧みたことを「Wore Out Soles Of My Party Boots」と照らし合わせています。
今じゃあ俺のパーティブーツの底はすり減っちまった。
#2 No Mercy
■曲について
2018年くらいに、EPリリースされてから2番目くらいに作った曲。結構明確にもうちょいメロディックっぽいことやろうと意識し始めて、大学時代のお財布事情で買えなかった90sSnuffySmilesの音源を買い漁ってる時に、スプリットやVAでしか聴いてなかったSnatcherの解像度がアルバム聴いてモリモリ上がったタイミングで作った曲。
■歌詞について
JR横浜線・京王相模原線が交差する橋本駅の歌。
Arioなどのショッピングモールや映画館などの娯楽施設が整いつつ、
いい感じの居酒屋が多いことで有名。
#3 Stamped Note
■曲について
これは、EPリリースされてから最初に作った曲。EPの曲がテンションでごり押しする曲が多かったので、ミドルテンポでSugarみたいなことやりたいな~と思ってたら、Rec時のBPMは余裕で190超えてた。
EPの曲が変則チューニングと変なコードを多用してた中で、初めて3人でレギュラーで変な展開を作らなかった曲だったので、作ってからしばらくは全然気に入ってなかったけど、二本目のチャンネルのギター入れた録音聴き返して凄いしっくりきました。
■歌詞について
「メモをとる」ことって、その行為に対して様式として勝手に満足したりするものではあるけど、メモの中身は評価されることほとんどないし、そもそも見直すことってほとんどなかったりする。
様式とか体裁みたいな、ある種他者から評価されるポイントみたいなものは抑えつつ、本質的なことは何も理解してなかったりする人はいるなと、
仕事の引継ぎしてる時に、カバンの奥からグッチャグチャの手帳取り出してメモ取り出した職場の人を思って書きました。
#4 Some Kind Of Hate
■曲について
タイトルから完全にMisfitsの請負なんですが、「Static Age」が超愛盤です。
基本的にcatalinaの曲のギターは自己流のよくわからんコードの抑え方を開発していくことからスタートするんですが、Misfitsぐらいシンプルにメロディが分かりやすい曲を作りたくて、めちゃめちゃメジャーとパワーコードを多用して作ってます。
かなりレコーディング直前に作ったこともあって、曲の完成度的にどうなのかな?と思う部分はあったんですが、ミックスとマスタリングで完璧に仕上げてもらいました。
■歌詞について
EP以前は人に面と向かって言えないことや、不満を書きなぐることが多かったんですが、特に仕事であんまりうまくいってなかった時期だったり、コロナ禍で一人で過ごすことが多い時期だったので、
アルバムくらいから内省的な発散を歌詞にすることが多くなりました。
#5 Fracture
■曲について
アルバムのリードトラックって言えるくらい気に入ってる曲。イントロのリフは最初の構想だとかなり違ったんですが、初めてメンバーから遠回しにダサいかも。。。と言われ、かなり抵抗したんですが、家に帰ってからよくよく聴いてみたら確かにダサく、凹んだ思い出があります。
この曲村井さんのベースラインが本当に好きなんですけど、本当に(いい意味で)ショボくて牧歌的で親しみが持てる。到底パンクバンドのフレーズと思えないぐらい平和的(いい意味で)。大学生の折り返してチェックのズボン履いてる感じ。今はもうそんな人たちもいないのかもしれない。
■歌詞について
友達の結婚式の二次会で、酔っぱらった大学の同期から「お前って心から笑ったことないよな?」と言われたことを当日は笑い飛ばして聞いてたんだけど、後々になってめちゃめちゃ気にしながら、自分はどういう人間なんだろうと昔から今まで遡って考えて書いた曲。
コロナ禍で他人との関わり合いが希薄になる中で、いつの間にか周りはどんどん大人になるのに、自分だけ置いてかれているような気が今もしています。
"You're Not The Only One"って、解釈によってはめちゃめちゃ後ろ向きに捉えられる。
#6 Heaven
■曲について
2分くらいでスパッと終わる曲が書きたくて制作。
メインリフを主軸にして、ボーカルもコーラスもメインリフに完全に焦点を当ててHusker Duの"Eight Miles High"や、Snuffの"(Don't Fear) The Reaper"みたいな、60/70sのロックをメロディックバンドがカバーしたような雰囲気を出せるように、少し古めかしい感じで歌うようにしています。
■歌詞について
コロナ禍で完全在宅勤務に変わったタイミングで、不眠症みたいな症状になり、1日2~3時間しか寝られずにデスクに向かう日がかなり多くありました。
全然熟睡できなかったときって、起きてる間中、頭に霧とか靄みたいなものがずっとかかってる状態になり、
休憩時間に床にへばり付いて何もできなくなってしまうような有様でした。
思い出したかのように、アマプラでトレインスポッティングを観返しました。見返すとドラッグソングみたいになっちゃってる。
#7 Affirmation Of Yourself
■曲について
EPを作ったころにイントロのリフができていた曲で、
ずっと心の奥底に貯めてたんですが、藤井君が入ったタイミングでストックから出して曲として仕上げました。
EPの時の雰囲気を自分の中で完結をしたいと思い、レボリューション・サマー周辺やポストハードコアのバンドを意識しつつ、バーニングメロディック感を含めました。
■歌詞について
結構内省的なことを歌ってきた中で、多分この曲が一番攻撃的だと思います。
タイトルの「自己肯定」って自分にはあまり縁がないものなんですが、
安心できるコミュニティに依存したり、反論を受け付けずに作り上げた肯定感に関して、何かしらの意味はあるのだろうかと考えて作った曲。
#8 Another Silver Language
■曲について
ストレートに90s Snuffy smilesをめちゃめちゃ意識して作った曲。
中でも自分が一番好きなのはMIDDISHADEなんですが、
「Enough's Enough」、「Another Rooms, Someone's Voice」あたりにインスパイアされました。
■歌詞について
「雄弁は銀、沈黙は金」。
「Fracture」でも同じようなことに言及したんですが、こっちは内省的というか少し否定的に。
自分の人生はなんとなくべしゃりだったりコミュニケーション能力に秀でた人たちにゴッソリかすめ取られているような気がするんですが、
あまりに強すぎる言葉では人を動かすことはできないと思います。
#9 Valcanized Youth
■曲について
自分なりのInternational Jet Set感。
この曲作った時は、村井さんが資格勉強期間でお休みだったので、
ライブも含めてサポートでやってもらってた大学の後輩(赤阪)にフレーズも含めて作ってもらってます。
結果として村井さんが弾かないであろうアウトロのフレーズなどとても新鮮で、その後の曲作りでのベースラインも村井さんの中で参考にする部分が多くなったと思う(多分)。
■歌詞について
ヴァルカナイズド製法=職人さんの手で本体とソールを貼り合わせた靴を、
釜の中にセッティングし、100度以上の高温で1時間程加熱。
この製法により繊細な形を崩さずアッパーと強く結合した靴が生まれる。
そして美しいシルエットだけでなく、しなやかで柔らかいソールと比類ない丈夫さも手に入ります。
#10 Seemless Paddling
■曲について
社会人になって、夜寝ながら昔のラジオアーカイブを聴きながら寝ることがルーチン化してたんですが、
中でも「アルコ&ピースのオールナイトニッポン」には多くの瞬間で救われることが多く、そのラジオリスナーの交流が主となっている佐藤多佳子の「明るい夜に出かけて」小説を読み終えてから大体30分くらいで速攻で制作。
この曲のベースラインも赤坂が担当。聴いてたSamiamとかのUSエモメロディックの音を参考に、何となく自分的に王道な感じの曲構成に当てはめました。
■歌詞について
catalinaの歌詞って自分や他人のパーソナルな部分に焦点を当てたものばかりで、あまり救いのない内容だったりどうしようもなさを前面に出してるんですが、この曲は「明るい夜に出かけて」を読んだ感覚をそのまま歌詞にしています。
コーラス部分で歌っているのは「忘却の末、海に還る」というフレーズで、
アンダーグラフのアルバム曲のタイトルをそのまま持ってきています。
この曲も含めてアンダーグラフめちゃめちゃ好きなんですが、一発屋扱いされているのが本当に口惜しいです。
#11 DAVE
■曲について
元々アルバム構想は10曲だったんですが、プリプロ後にノリで作った曲にかなり手ごたえがあったので、そのままアルバム曲としてRecしてもらいました。
チアーズパンクでPARASITES特集やってた時に、俺もこんな曲作りてえな~と思って制作。
イントロの爆発~ドラムのリフレインはシンマさんに作ってもらったんですが、妙に気に入ってしまって、バースデー感高いなと思ったのでSEも加えました。
■歌詞について
自分が通っていた大学は多摩の超郊外に位置しており、
駅前周辺はベッドタウン感がかなり強いんですが、イノシシ出るほど自然あふれる土地でした。
大学は村井さんと同じバンドサークル以外に、ショートムービーを作る(という名目で部室で酒を飲む)サークルに入っており、
当時でもお世辞にも撮影機材とは呼べないようなテープ式ハンディカムで、
菜の花が咲き誇る中撮影をした記憶を呼び起こしています。
最後に
前編の公開から時間経ってしまったけど、15年くらい頭の中で考えていたことをテキストに落とし込めて大分スッキリしました。俺たちはメロディックバンドとして大分変な遍歴で、最初からメロディックパンクをやっていたわけでもないし、途中で諦めたこともあったし、バンド同士の横の繋がりとかも全然ないのだけれど、少なくともこのアルバムをリリースするためには必要な寄り道だったんじゃないかと言えると思っています。
最初で最後のアルバムぐらい辛気臭くなってしまいましたが、全然まだ出せてない頭の中のイメージも死ぬほどあって、曲作りも延々と励んでるんで、また新しい音源出せるようにがんばるぞ~~~~~~~
catalina 三上
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