【雑文】本気で悪ふざけすること
Pollyanna(ポリアンナ)という本を買った。
これはMotherシリーズというゲームの、公式アンソロジーコミックスだ。
Motherシリーズの1作目が発売されたのは1989年のことなので、実に誕生から30年以上の時が経っていることになる。
ここまで長く、時代を越えて愛されるゲームというのは珍しいと思う。改めて凄いゲームだったのだなと思わされる。
Motherといえば、あの糸井重里氏が手掛けたゲームである。
Motherのゲームシステム自体は、キャラクターを動かして敵を倒しながらストーリーを進めるといういたって普通のRPGだ。
けれど、糸井氏の遊び心や独特のセンスが随所に盛り込まれていることによって、このゲームは他のゲームと一線を画す作品として、多くのファンを獲得している。
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ところで糸井氏といえば、世間的にはコピーライターやコラムニストとして認識されていると思うのだけれど、僕の中ではどちらかと言えば、埋蔵金おじさんというイメージが強い。
1990年ごろ、TV番組では頻繁に徳川埋蔵金の発掘プロジェクトが行われていたのだが、糸井氏はそのプロジェクトリーダーを務めていたからだ。
僕はその番組を楽しみに見ていたという記憶がある。
子供の頃の記憶なので細部が間違っていたら申し訳ないのだけれど、初めは超能力によって埋蔵金を見つけ出そうという番組だったように思う。そのほかにも古くから伝わる古地図を紐解いてみたり、その地に伝わるお伽噺を解読してみたりと段々趣旨が変わっていって、最終的には最先端科学を使って見つけよう、という感じになった。
初めの、超能力で見つけ出そうとするというのも随分荒唐無稽で、いかにもその当時のテレビ的な話だなと思うのだけれど、それ以後の探し方も随分バラエティ的だなという気がする。
〇〇という文献が示しているのは、この古井戸のことで、ということはこの付近にあるのでは? とか、この地に伝わる伝承によれば打ち捨てられた祠が三つあって、ということはこの三点を結んだ中心部に埋められているのでは? とか。
そんな月刊ムーにでも書いてありそうな理由で地面を掘ってしまう。
なんというか、ものすごくRPG的で、ロマンに溢れる試みではないだろうか。
それで何億円という製作費を投じて、巨大な重機を使ってガンガン掘れるのだから、さぞや楽しかっただろうと思う。
実際に巨大な地下洞窟を発見したりして、当時は僕もワクワクしながら見ていたように思う。
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とはいえ、結局埋蔵金は見つからなかった。
手を変え品を変え、10回近く番組は放送されたのだけれど、これと言った成果もないまま番組は打ち切られたようだ。
その後も後発の番組で何度か挑戦していたりしたけれど、ついぞ埋蔵金が見つかることはなかった。
多分、埋蔵金などというものは、どこにもないのだろう。
後に糸井氏本人も、「これだけ掘っておいて言うのもなんだけれど、多分埋蔵金は無いのだと思う」的なことを言っていたように記憶している。
結局埋蔵金探しは、客観的にみれば、大金を投じて大人が本気で悪ふざけをしていただけのことなのだ。もしかすると糸井氏も、見つかれば最高だけれど、別に見つからなくても構わないと思っていたのかもしれない。
こうした本気の悪ふざけこそが、糸井氏の最大の個性なのだという気もする。
実際Motherシリーズにも、悪ふざけとしか言いようのないテキストやイベントがあって、むしろそれがMotherの特徴だったりする。
大人が本気で悪ふざけをすることは、きっと周りから観ていても面白いし、それ自体がコンテンツになり得る。
もちろんバランスを見誤れば顰蹙をかうし、炎上してしまうかもしれないけれど。
埋蔵金を掘り続けるような、そんな少年の心を忘れないでいたいと思う。
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