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「自分のことを占ってはいけない」は本当なのか?

タロットには占ってはいけないタブーというものが存在します。それは古今東西の占いの多くに共通する暗黙のルールと言えるものです。
そんなタブーの1つとして、『自分自身のことを占ってはいけない』と聞いたことはあるでしょうか。これについては人によって判断がまちまちです。「全然問題ない」と言う人もいれば、プロの占い師さんでも「自分のことは視ません」とおっしゃる場合があります。実際の所どっちなの?と疑問に感じておられる方もいることでしょう。



なぜ『自分のことを占ってはいけない』という意見が出るのか?

自分自身を占う時、最も懸念されるデメリットは、“客観性が担保されない”ことです。第三者の視点では冷静で公平な判断ができる人も、自分のこととなると途端に現実が見えにくくなります。人間はそれぞれにプライドや劣等感を持っており、自分自身への強い思い入れがあったり、認めたくないことから目を逸らしていたりするものです。そういった自分への色眼鏡が、カードリーディングに大きな影響を与える可能性が高くなります。
たとえば、「〇〇の件がうまくいってほしい!」と気負った状態でカードを引いたとしましょう。良い意味のカードが出れば「きっとうまくいくんだわ!」と飛びついてしまいたくなりますし、悪い意味のカードが出たなら「見なかったことにしよう」「大丈夫に決まってる」と過小評価しそうになります。

これをやってしまうとアウト……もはや正確なリーディング結果は望めません。しかし人間ですから、どうしてもこのような傾向が出てきやすいのです。「楽観しすぎて失敗した!」とか「不安のあまり行動できなくなった」といったマイナスの効果が生じやすいために、『自分のことを占ってはいけない』がタブーとして語られるようになったのだろうと思われます。


占い師デビュー前に私がやったこと。

さて、私自身はどうかというと、“自分のことは自分で占える占い師”です。むしろ積極的に自分を占い、カードリーディングの腕を磨くことを好むタイプです。
最近は副業をしている人も増えてきて、「気軽に占い師をやってみたい!」とおっしゃる方をよく見かけます。そのための準備として占い教室や通信教育を受講して、基礎の学習を終えたところで先生から言われるのは「身近な人のことを占ってみましょう」でしょう。占い師デビューする場合はなおさら、家族や友人に練習台になってもらったり、SNSで無料鑑定を請け負ったりして実績を積もうとなさっている方が多いように思います。

しかしながら、私はちょっと毛色の違う経歴の占い師でして(詳細は別の記事として書く予定です)、子どもの頃から古代文明が大好きで、大人になってからもその手の論文や歴史学・民俗学の本を読み漁ったり、世界の神話に傾倒したりしていました。また、元の職業はエンジニアで、1人でゴリゴリと分析しまくるのが大好きな性格です。
そんな私が占いに興味を持ち、30歳を過ぎて初めてタロットカードを手に入れました。すぐに入門書では飽き足らなくなり、より詳しい専門書を求めるようになりました。そうしているうちに、独学で通信教育レベルまで追いついてしまったので、結局プロの先生に師事しないままデビューに至りました。

私はデビュー前に他者を相手にした練習期間を設けませんでした。つまり最初の1件目から、ビジネスとしてお金を貰ってお客様のことを占ったのです。
練習の代わりとして、私が積み重ねてきたのは“何百回と自分自身についてカードを引くこと”でした。それまでの人生で起こった印象深いこと、嬉しかったこと、辛かったこと、そして「占い師デビューすべきかどうか?」も含めて、数えきれないほどカードに問いかけ、その結果をノートに書き写していきました。自分にとって都合の悪い結果から目を背けなくなるまで、カードの意味に一喜一憂しなくなるまで、それをひたすら続けたのです。


自分を占う=自分を制する。自分占いで自信がつけば、二度と揺らぐことがない。

自分に対しての客観性を持つことは何より難しいこと。裏返して考えれば、『自分を客観的に見ることができるならば、その占い師にはもう怖いものは無い』のです。自分を占うことは、自分の感情・体験・心の奥に眠るトラウマまでも制御すること、すなわち“自分自身を制すること”に他なりません。

何百回と自分のことをリーディングしていると、あるときストンと腑に落ちる感覚がします。【腹を括れ!】と私はそのメッセージを受け取りました。腹を括れ。どんな結果が目の前に展開されていようと、開かれたカードに全てを委ねること。それが自分のことであれ、お客様のことであれ、カードの意味を読み違えないことに集中すること。
この感覚を得てから、私は「お客様に伝える結果が外れていたらどうしよう…」という恐れと無縁になりました。1度腹を括ってしまったなら、自信が揺らぐことはもうありません。うまく読み取れない、あるいは矛盾しているカードが出たなら、素直にお客様に尋ねることもあります。出ているカードに無意味なものは無いはずだからです。いざお聞きしてみると、リーディング前には開示されていなかった重要な情報があったり、お客様から「たぶん〇〇のことだと思います」とお心当たりを教えていただけたりします。

【腹を括れ!】が最も力を発揮するのは、占い師を試したり揶揄ったりする目的で依頼をしてくる人がいた時です。99パーセントのお客様は良い方々ばかりですが、ほんの1パーセントほど悪意のある人と出会います。これは占い師を職業とする以上、避けることのできないものです。わざと間違った情報を伝えられる、問題の根幹にあたる大事な内容を隠される、などもあります。あるいは、(同業者さんなのだと思いますが)占いの事例集のような当たり障りのない相談内容でこちらの反応を見ているらしきパターンも。
そういう人に出会うと、自分のリーディングへの信頼感を崩される感覚や、傷ついたような気分が生じてきます。ここで直感力を狂わされてしまうと、占い師としての自信を失いかねません。だからこそ【腹を括れ!】なのです。どんなときも自分がカードから受け取ったイメージを信じること。もし感覚をおかしくされたと感じても、本当に狂いが生じているのかどうかを判断し、軌道修正する方法を知っておくこと。私にとってはその方法が、“自分を占ってみること”そのものなのです。


ただし、自分自身を占う際には、いくつか注意しておいた方が良い点があります。それについてはまた後日、<タロットで自分を占うことのメリット(その2)>としてアップしたいと思います。

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