ハロウィンと『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』
今年もハロウィンの時期がやってきました。
ハロウィンは元々、ケルトのお祭りであるサウィンが起源です。11月1日、より正確には10月31日の夕方(太陽が沈んだ時)から、ケルトの新年が始まります。ですから現代の私たちが賑やかに楽しんでいるハロウィンの夜は、じつは年が明けたばかりの瞬間を祝っていると言っても良いのかもしれません。
サウィンは半年間にわたる闇の季節の入り口。この世とあの世の境界が弱まり、死者たちが家へと戻ってきます。秋に収穫した麦などの作物、冬に養いきれない家畜などを死者と共に食べて、寒い季節を乗り越えるパワーをもらうのです。また、ケルトの民にとってサウィンは戦争が始まる日でもあったそうです。春~秋は大切な農作業の季節なので、戦争は冬に行われました。
サウィンはやがてキリスト教に取り込まれていき、11月1日の万聖節(キリスト教の聖人の祝祭)へと変わっていきました。キリスト教の行事には、それ以前の異教の風習を残すものが多くあります。土着の文化を完全に消し去ることは不可能だったため、聖人にまつわる行事などに置き換えて受け入れていく形となりました。
イベントとしてのハロウィンが一般的になったのは、アイルランド系移民がアメリカ大陸にその文化を持ち込んでから。今ではハロウィンに飾るのはカボチャ(ジャック・オー・ランタン)が有名ですが、これはアメリカで手に入れやすい食材だったためです。元祖のアイルランドでは、カブをくり抜いてランタンを作るそうですよ。
さて、私にとってハロウィンといえばこれ。
1993年公開の映画『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』です。粘土などで作った人形を少しずつ動かして1コマずつ撮影するストップモーション・アニメーションという手法で作られたミュージカル映画。
もしかしたらクリスマス映画なのかもしれないけれど、実情はほとんどハロウィン映画だと思っています(細かいことは気にしない!)。ティム・バートン特有の、ダークとチャーミングが同居する雰囲気が素晴らしいです。
ハロウィンタウンの王様ジャックは、毎年同じことの繰り返しであるハロウィンに飽きてしまい、虚しさを感じています。そんなとき、森で見つけた不思議な扉の向こうにあるクリスマスタウンに迷い込んで、すっかりクリスマスに魅了されてしまいました。
クリスマスタウンでジャックが歌う『What’s This?(クリスマスって何だ)』はぜひ字幕版で、オリジナルの英語の歌を聴いてほしいです。日本語版も素敵だけれど、私にとってはやっぱり初めて耳にしたオリジナルが印象深いので。
ジャックはハロウィンタウンの仲間たちとクリスマスをやろうと計画するものの、クリスマスが何なのかよくわかっておらず、事態はどんどんおかしな方向へと進んで……。サンタクロースのおじさんを拉致して成り代わったジャックは意気揚々とプレゼント配りに出かけますが、プレゼントの中身はもちろん、おどろおどろしいものばかり。
闇の半年の始まりであるハロウィンからクリスマス(=昼が1番短い冬至)までの期間、はしゃぎながら楽しそうに計画を練るジャック。それは闇(冬)が抱える生命の胎動、その力強いきらめきを表現するにふさわしい、じつに生き生きとした姿です。
時間が取れそうなら久しぶりにDVDを引っぱり出して、ハロウィンの夜にまったり鑑賞したいなぁ。そして思いっきり笑いたいなぁと思っています。外にお出かけしなくても、ハロウィンにはいろんな楽しみ方がありますよね。